第45話 変なおっさん、現る。
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その日の帰り道。
俺は一人、河川敷へとやってきていた。
なぜ一人で河川敷にやってきていたかというと、静かに西日を眺めていたかったからだ。
にしても、今日はよく分からない一日だった。
大して仲良くもない我部に一日付け回されるし、花音と桜花は俺のこと避けてるみたいだし……。
俺の知らないところで何かが起こっているのは確かなのだが、肝心の二人に距離を取られてしまっている以上、俺にはどうすることもできない。
……俺は一体どうしてしまったんだろうな。
今まで一人、もしくは妹である美彩に頼る選択肢しか持たないようにしていたはずなのに、気が付けば無意識的にあの二人を頼ろうとしている。
現状、距離を取られているあの二人を……だ。
今までの俺なら裏切られたのだと不信感を抱いていただろう。
でも、今の俺は不思議とそのような感情を抱いていなかった。
本当に、どうしてしまったんだろうな。俺は……。
「おいおい、辛気臭い雰囲気出してどうした? せっかくの綺麗な夕日が台無しだろう」
突然、誰かに話しかけられた気がした。
俺じゃないかもしれないけど、念のため声のした方に振り替える。
……どうやら、俺に声を掛けてきていたらしい。
アッシュグレーの髪に無精髭。上下灰色のスウェットに黒色のサンダルを履いた中年の男性が、咥えタバコをしながらこちらを見ていた。
当然ながら、俺はこのおっさんを知らない。
「……どちら様ですか?」
「人に名を尋ねる時は、まずは自分から名乗るべきなんじゃないか?」
「話かけてきたのはあなたからですよね? あなたから名乗る気がないのなら、これ以上話しかけないでください」
「可愛くねぇガキだな。もう少し可愛げがあった方が世の中生きやすいぞ」
そう言いながら、咥えていたタバコを手に取ってふぅーっと深く息を吐く。
これ以上、変なおっさんに絡まれるのは面倒だ。
俺は荷物を持ってこの場から早急に立ち去ろうとしたら、おっさんがポツリと呟いた。
「……何か悩みでもあんだろ? そうじゃなければ、学生がわざわざこんなところに足を運ぶことはない」
「……短絡的な考えですね。もしかしたら俺が河川敷が好きな高校生かもしれない」
「笑わせんな。お前の顔が全てを物語ってんだよ」
「……仮にそうだったとして、俺が初対面の変なおっさんに相談するメリットがどこにあるんですか?」
「俺はな、こう見えて元教師だ。学生の相談の一つや二つ、余裕で解決できる」
この人が元教師?
外見、言動……、どれを取るにしても教師だったとは到底思えない。
だが、まあ、肝心の二人に相談できない以上、他に頼れる人が美彩しかいないのも事実だ。
別に相談料でお金がかかるわけでもないし、参考程度に話でも聞いてみるか。
「これは友達の話なんですけど、女性関係のトラブルで少し悩んでいるらしくて……」
「お前の話だろ? 嘘が下手くそだな。お前は他人のことで思い悩むようなタイプには到底見えない」
「……」
……俺、このおっさん嫌いだわ。
全てを見透かされている気がして、なんか気に入らない。
「それで、女性トラブルがどうしたって?」
「……嘘が下手くそなんでしょう? 俺の口から一々説明しなくても、あなたなら分かるのでは?」
「本当に可愛くねぇガキだな。そんなんじゃ、可愛い女の子から好かれないぞ」
「別に好かれようとしてないので大丈夫です」
そうだ、俺は別に好かれようとしていないんだ。
だったら、俺は俺のやり方でバッサリと我部を切り捨ててしまえばいい。
最初から思い悩む必要なんてなかった。
俺のやるべきことは、最初から一つに決まっていたんだ。
刹那、俺の覚悟の揺らぎをこのおっさんは見逃さなかった。
「それはやめておいた方がいい。後で痛い目に遭うぞ」
「……俺の何が分かったんですか?」
「結論から言おう。お前、好きでもない女の子からアプローチされて困ってるんだろ? かといって相談できる人もいないから、一人静かに考えられるここへやってきた。違うか?」
「……その根拠はあるんですか?」
「学生時代の女性トラブルって大体はそんなもんだろ。それに、今さっき覚悟を決めた。そうだろ?」
言い返す言葉が見つからず、思わず黙り込んでしまう。
おっさんはタバコを深く吸い込み、吐き出す。
それからタバコの火を消すようにサンダルで踏みつけた後に言葉を綴った。
「時間は無限じゃないからな。無駄な話はなしでアドバイスをしてあげよう」
「アドバイス、ですか」
「そうだ、まずお前はその子を絶対に傷つけるな。結論を急げば、その刃は必ずお前に向く。人間は二面性、『本音』と『建前』を使い分ける生き物だからな。お前なら、その意味が分かるだろ?」
目の前のおっさんが不気味に微笑む。
全身に鳥肌が立つ。
「あなたは、どこまで俺のことを……」
「言っただろう? ただのアドバイスさ。少なくとも俺はお前のことを知らないし、お前は俺のことを知らない。どこまでも平行線なんだよ。俺も、お前も、カノジョも」
そう言って、おっさんはこの場から立ち去ろうと踵を返す。
俺自身何を思ったのか、気が付けばおっさんに問いかけていた。
「あなたは一体……!」
そしておっさんは、俺に背を向けたまま応える。
「通りすがりの、変なおっさんだよ」




