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オマエの本性を暴いてやる!  作者: うちよう
第一章 姫柊花音の本性を暴いてやる!
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第16話 桜花 春という女子生徒

 翌朝、俺は頬杖をつきながら二人の女子生徒を観察していた。

 もちろん、俺の視線を悟られないようにね。

 これだけは言っておくが、別に邪な思いがあって見てたわけじゃない。

 花音かのんの噂の件で少し気になったから見ていただけだ。

 一人の女子生徒は、我部香凜がべ かりん

 茶髪ロングヘアの我部の第一印象は、ザ・陽キャって感じ。

 入学して間もないというのにも関わらず、制服は着崩しているし、おまけにピアスまで開けてる。

 そして恐らく我部は——————さかきのことが好きっぽい。

 現在、我部は他の女子生徒と一緒に榊と話しているわけだが、その表情がもう恋する乙女のそれなんだよなぁ。

 とりあえず榊さん、我々に構わず彼女と末永くお幸せに……。

 そう心の中で呟いて、俺はもう一人の女子生徒に視線を移す。

 さて、本題はここからだ。俺が一番怪しいと踏んでいた人物。

 その名は——————桜花春おうか はる

 桃色のミディアムヘアに、桜がモチーフの耳掛けヘアピンを付けた桜花の第一印象は——————春って感じだ。

 一々説明する必要もないと思うが、あくまで春というのは比喩表現だ。

 暖かな春を連想させる、まるで陽だまりのような女の子。それが桜花春という女子生徒だった。

 雰囲気で言うなら、陽キャのそれに近いかもしれない。

 だが、あくまで近いだけであってジャンルとしては別物と言っても過言ではない。

 さて、そんな心穏やかそうな桜花を、どうして俺は一番怪しいと思うのか。

 それはひとえに、彼女が人当たりの良い人格者だからだ。

 人というのは、無意識のうちに表の良い顔と裏の悪い顔を上手に使い分けている生き物である。

 要は、誰しも長所と短所はあるよねって話。

 人は、人に気に入られないと社会という生存競争に生き残ることができない。

 だから人は、己の短所を長所で隠しながら生活しているのだ。

 そうでもしないと、何らかの問題という形で社会から隔離されてしまうから。

 だが、桜花の場合は——————


 「マジで良い子すぎるんだよな……」


 そう、欠点という欠点が、まるで見つからない。

 会話のテンポが絶妙なのもそうなんだけど、桜花の周りに人が集まる要因、ずばりネガティブ発言を一切口にしないことだ。

 友達に何か相談されたり、愚痴を聞いても桜花は全てポジティブ発言で受け答えしていた。

 そりゃあ誰でも、ネガティブ発言する奴よりもポジティブ発言してくれる奴の方に集まるわな。

 だから俺は、()()()()()()()()()()()桜花春という女子生徒を怪しんでいるってわけだ。


 「もう少し、調査が必要か……」


 一人ボソッとその場で呟くと、突然後ろから「ガタンッ!!!」と椅子を引く激しい音が轟いた。

 思わず反射的に振り返ると、そこにはニッコニコの花音の姿が。

 え、どうしてこんなに笑顔なの? 一周回ってスッゲェ気持ち悪いんだけど……。

 とりあえず振り返ってしまった以上、挨拶だけはしておくか。


 「よっ、おはようさん」

 「……」

 

 まさかの笑顔スルー。

 マジでコイツのことは未だによく分からん。

 それから間もなく、始業のチャイムが今日も元気よく鳴り響く。

 そしてホームルームも滞りなく終わり、一限目の授業の準備を始めようとしたところへ榊が俺の元へやってきた。


 「久山、トイレ行こうぜ」

 「いや、俺は別にいいわ」

 「良いからちょっと来い!」

 

 そう言って榊は、俺の腕を掴んで半ば強引にトイレへと連れていこうとする。

 高校生にもなって一人でトイレもいけ……いや、今朝榊は我部と話をしていた。

 もしかしたら、すぐにでも共有したいような有益な情報を掴んだのかもしれない。


 「……分かったから、とりあえず腕を離せ」

 「おぉ! よし、それじゃあ早くいこうぜ」


 そして俺と榊は、足早にトイレへと向かっていく。

 トイレに着くなり、俺と榊はトイレで用を足すことなく個室トイレに背を預けた。

 ちなみに、トイレに向かう道中から現在に至るまで会話の一つもない。

 え、なに。この状況。話があるから連れションをねだってきたんじゃないの?

 困惑していると、深呼吸を終えた榊が突然俺の肩を掴んで揺さぶってきた。


 「久山、お前! 一体何したんだよ!!!」

 「いやいや、俺は別に何もしてないぞ?」

 「嘘つけ! 何かやらかしてないとあんな顔しないぞ!?」

 「とりあえず、何の話が順序立てて説明してくれ。いきなり非難されても気分が悪い」

 「……そうだね、ごめん。ちょっと取り乱した」


 いや、全然ちょっとじゃなかったけどな。

 俺の肩から手を離すと、榊は自分がその目で見た状況を話し始めた。

 

 「姫柊ひめらぎさん、久山のことを今にも殺しそうな目で見てたぞ……」


 なんだ花音のことか。てっきり噂の件の進捗報告かと………………ん? 今なんて言った?

 俺は再度、榊に問う。


 「悪い、もう一回言ってもらえるか?」

 「だから、姫柊さんが久山のことを今にも殺しそうな目で見てたんだよ……」

 「よかった、聞き間違いじゃなかった……。いや、全然良くはないな」


 むしろ、聞き間違いの方が良かったまである。

 てか、なんで殺意剥き出しにしてるのか意味分からん。

 別に、俺が()()()()()()()()()()()()


 「まあ、アイツの真意が分からんから直接聞いてみることにするわ」

 「そうした方がいい。もし仲直りできなかったら、久山の命は今日一日で終わりかもな」

 「どんだけブチギレてんだよ……。ちなみに噂の方はどうだ? 進捗とかありそうか」

 「いや、今のところは特にないかな」

 「そうか。とりあえず、教室戻るか。授業始まるしな」


 そう言って、俺と榊はトイレから出る。

 そして、トイレ付近で立っていた女子生徒とバチっと目が合った。

 桜の耳掛けヘアピンをつけた桃色の髪の少女——————桜花春だ。


 「あ、あの!」


 そう言って俺たちに話しかけてくる桜花。

 なるほど、どうやら桜花も榊狙いらしい。

 やはり、桜花も所詮は一人の女子。目の前のイケメンにはしっかり食いつくらしい。

 桜花の欠点——————「イケメン好き」っと。

 俺の心のノートに、桜花の新たな欠点が追加されました。


 「じゃあ、俺は先に戻ってるから」


 榊にそう言って教室戻ろうとしたその時、俺の袖口がグイッと引っ張られた。


 「お前、一体何のつもり……」


 振り返ると、そこにはキョトンと目を丸くした榊——————ではなく、桜花の姿が。

 

 「え?」

 「あ……」


 三人の間に沈黙が流れる。

 そして、先に均衡を破ったのは桜花の方だった。


 「ご、ごめん! アタシ、他に呼び止める方法知らなくて……。何というか、その……。気を悪くさせてたら本当にごめんね」

 「お、おう……」


 何だよ、頬も耳もクソ真っ赤じゃねぇか。

 てか、多分俺もだわ。

 クソッ、不覚にも可愛いと思ってしまった自分が情けなさすぎる。

 こういうのは、もう当てにしないと決めていたはずなのに……。

 ひとまず、平常心を取り戻すために桜花の真意をしっかり聞かなくては。


 「というか、なんで俺? 榊じゃなくてか?」

 「なんで榊くん? アタシは最初から久山くんに話があってここで待ってたんだよ?」

 「そ、そうか……」


 あのね、相手が俺だったから良かったけど、他の男子だったら絶対に勘違いしちゃうからね。その言い回しは。

 でも、これは絶好の機会チャンスだ。

 花音の噂の件で、桜花から何かしら有益な情報を盗み出せるかもしれない。

 

 「と、とりあえず! 今日のお昼休み、校舎裏のベンチで待ってるからっ!」


 顔を真っ赤にしながらこの場から立ち去る桜花の後ろ姿を見届けてから、俺は天を仰いだ。


 俺は、絶対に騙されませんからね。


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