第8話ドS心が見る夢は
「うわ、Lv9999って……こんなの見た事ないわよ」
「流石イリス様……イリス様の前ではプログラムである魔物達もメロメロという訳ですね」
「メロメロっつーか怯えてたけどね」
544:普通怯えねぇからw
545:プログラムだからエレミアにすら低級魔物は飛びかかっていくのにイリスには怯え。完全に異質でござる。世の理をぶち壊すのはドS力だったでござるな
546:#プログラムダンジョン生物も怯える鞭使いのイリス
えっそうなの……?!怯えとか逃走もプログラムされてんのかと思ってた……ってことはこの力、使い方次第でこのダンジョンを攻略できる……?
幼くして抱いていた、いつかの夢。500年以上未踏破であるダンジョン、"魔王の塔"の攻略者になれるかもしれない。
すべての冒険者の憧れであり目標であるダンジョン攻略。攻略時には巨万の富と名声が得られ、多くの人々を助けることにもなる。
「エレミア、アヤ……俺はこの力で、ダンジョンを攻略する」
鞭を握りしめる。
「小さい時はよくその夢語ってたわよね」
「あぁ。けど自分は凡人で、長らく中層階で躓いていた。アヤとカップル配信してた時は、それでも幸せだと思っていたんだ。情けない話だけど……このユニークスキルを使って、もう一度夢を見てもいいかな?」
「勿論です!どこへなりともお供します!」
「全く。アンタはいろいろ遅いのよ。"彼女"としてその夢応援してあげるわ」
厄介者達を引き寄せるだけの癖が、人を救い、英雄となる糧になるなんて。
「うん、ありがとう二人とも」
コメント欄もいつになく応援と期待て溢れている。
すべての運が俺に向き始めた。やってやる。
歪だが、スキルとパーティメンバーに恵まれた。浮き足立つ俺は知らない。得たものに潜む落とし穴を――
◇◇◇
王都シャルナーク。アルベルト=キルシュタインの豪邸。
「うぅ……アヤ〜……何故僕の元から去ったのだ。僕の何が気に入らなかったと言うのだ?なぁ!フローレン!」
「アルベルト様。布団饅頭となり、嘆いてもう三日になります。いい加減ダンジョンに入らないと、使用人達の餌が賄えませんよ」
フローレンと呼ばれた女は、黄緑色の垂れる二本の三つ編みヘアー。さらに、ぴょこりという効果音がピッタリな白い犬耳つき。獣人族である。
「うるさい!僕の痛みなんて、どうせ君には理解できないんだ!アヤは僕に笑いかけ、頬を包み込み、将来をともに誓いあった許嫁でもある。彼女を失った痛み等、君に分かるはずもないっ!」
切りそろえられたブロンズヘアー。"おぼっちゃま"という名称がぴったりなアルベルトは、白い絹のハンカチで涙を拭い布団を被る。
主人の情けない格好にフローレンはため息をこぼした。
「しっかりしてください。アルベルト様。貴方はキルシュタイン家が長男。欲しいものは、力で手に入れなくてはなりません」
フローレンは主人から布団を剥ぎ取る。
「な、何をする!主人に向かって……」
ズン。布団に突き刺すように置かれたのは、LIVE閲覧用の端末。
そこに映し出されたのは壁ドンされるアヤとドSな見知らぬ男。
『ギャアギャアうるせぇんだよ――』
綴られた言葉にアヤは怯え、しかし瞳を潤ませる中に潜む期待の眼差し。拒絶、ではないが、傷心中のアルベルトの復讐心に火をつけるには充分すぎた。
「アヤが、助けを求めている。この僕に」
アルベルトの白銀の瞳が鋭く光る。立ち上がり、ブラウスの上に長いコートを。
「フローレン。準備を整えろ。今すぐ奴を、イリスという悪人を成敗してくれる――!」
「ハイ。アルベルト様」
アルベルトは緑の耳飾りを靡かせながら、篭もりきっていた部屋を開け放ったのだ。
勘違いという名の、復讐心を胸に――




