表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の王子と花の姫  作者: ブレイン
第1章:花

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/3

花が咲いた日

これは、星の物語を信じているひとりの少女が生まれた日の話。

運命が動き出すより、

ほんの少し前のこと。

天暦六二五年。


アルカディアの片隅、

花畑に囲まれた小さな村で、ひとりの女性が産声を待っていた。


夜は静かだった。

風が花を揺らし、

窓の外で虫の声が優しく鳴いている。


「……大丈夫よ」


女は自分に言い聞かせるように、そう呟いた。

汗に濡れた額を拭いながら、それでも笑おうとする。


その時――

部屋の隅に置かれた花のつぼみが、ふわりと揺れた。


風はない。

扉も閉じている。


それでも、花は確かに動いた。


助産婦が気づき、目を瞬かせる。


「……今、何か」


言葉を続ける前に、

赤子の産声が、夜を裂いた。


強く、澄んだ声だった。


生まれたばかりの赤子は、泣きながら小さな手を握りしめ、

そして――

部屋の隅で、白い花がひとつ、静かに咲いた。


誰も魔法だとは言わなかった。

奇跡だとも、呪いだとも。


ただ、母は赤子の声を聞いて、涙を浮かべた。


「……きれい」


赤子を胸に抱き寄せ、

そっと名前を呼ぶ。


「ミナ」


その瞬間、

花はさらに一輪、咲いた。



---


その夜、空の星は、いつもと同じように瞬いていた。


まだ誰も知らない。

この小さな命が、

星に選ばれた者たちと出会い、

物語を“結び直す存在”になることを。

ひとつの花が咲いた。

それは奇跡ではなく、

祝福でも、呪いでもない。

ただ――

誰かの心に、

物語を芽吹かせる力だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ