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ROUND.14 負けられない戦い

『Over Night. Duel Two!』


 息を吐く間もなく二ラウンド目が始まる。

 再びハクロは低姿勢で滑る様に移動して、ミナヅキの懐に潜り込む。今度は2Aを刻むつもり……なのだが、どういうことか。委員長のミナヅキが下段をきっちりガードしている。

 ガードされてもハクロの攻めは止まらない。続けて2A>5Cと小刻みなパンチから強烈なパンチに繋がる連携が続く……筈が、ハクロが上空に吹き飛ぶ。


『水月ッ!』


 地を蹴り、青白いエフェクトを放ってミナヅキの掛け声が響く。

 委員長の放った振り上げ技・水月が、ハクロにヒットしたのだ……!

 2A>5Cの連携に割り込んだ……!? 確かにガード時、この連携は割り込み可能なものではあるが、それを委員長が知っているとは思えない。偶然、だよな?


 吹き飛びダウンしたハクロに対し、ミナヅキがC版水玉を放つ。光の尾を引いて真っすぐに走る水の球を重ねるのは、ミナヅキの起き攻めの定番と言える流れだ。硬直が切れたミナヅキが一直線に走りだす。起き上がり、水玉をガードするハクロへ近寄りしゃがみパンチの2Aを出す。

 しっかり小技で固めもしてるぞ……!


 予想外の委員長の動きに思わず動揺してしまう。

 しかしミナヅキの攻めはそこで止まってしまった。やはりまだ攻めの継続、固めを知らない様で、この後どうすれば良いのか分からないというのが画面越しにありありと伝わってきた。


 その迷いを許す程にヒロさんは甘くはない。形勢は一気に逆転。あれよあれよとコンボを叩き込まれ、最後はド派手なハクロのゲージ使用超必殺技『フルクラッシュ・アッパー』でのトドメとなった。


 ハクロの勝利を告げる画面が表示され、委員長が立ち上がる。


「ありがとうございました」


 頭を下げて、筐体の向こう側のヒロさんに挨拶をする。その声は、初めての対戦で初めての敗北を味わったにしては溌溂としていて、敗北の辛さを微塵も感じさせるものでは無かった。


「ありがとうございました」


 筐体の向こうから返ってきたヒロさんの挨拶を聞き届けて、委員長が俺を見る。


「一応、目標達成かな? 伏見君、後はお願い!」


 拝む様に手を合わせる委員長に、任せておけと親指を立てて返す。

 今までで一番の負けられない試合かもしれないなと、気合を入れて椅子に腰かけた。


 今日の俺の使用キャラクターは、本命のムツキだ。

 オンラインで知り合ったハクロ使いとの対戦&反省会を繰り返していたお陰で、対ハクロには少しばかり自信がある。勿論、プレイヤーによって癖があるので一概に対策が通じるとは言い切れない。だが、ヒロさんのハクロは大会で何度か目にしているし、ゲーセンで対戦もそこそこしている。

 絶対とは言い切れないが、勝てる自信があった。


 とはいえ油断大敵。注意一秒、怪我一生。


 委員長の手前、決して慢心しないぞといつも以上に注意を払ったお陰か、一ラウンドを調子よく取り二ラウンド目に突入。積極的に距離を詰めてくるハクロをあしらい、こちらの得意な中距離を保つ。


 追ってくるハクロを、手にした竹刀を正面に突き出す攻撃・遠距離Bで牽制し、刺さったところを特殊技ボタンで発生する『拘束の鎖』で巻き取る。ムツキの特殊技『拘束の鎖』は、宙に描かれた魔方陣から鎖を呼び出す技だ。Dボタンとキー入力の組み合わせで様々な場所に魔方陣を展開することが可能で、鎖がヒットすればそこから高火力コンボを展開することも出来る。


「っし!」


 何度かの攻守のやり取りを経て、無事にハクロを倒しきる。一ラウンドも落とすことなく勝てたのは、正直、結構嬉しい。


「伏見君、凄いよ!」

「お陰様で何とか。でもまだだな」


 委員長の浮ついた声に俺もはしゃいで返したいところだったが、そうは問屋が卸さない。まだもう一人、残っている。


 筐体の向こう側で、ガタガタと椅子が動く音がした。間を開けずに、S木さんが座った様だ。S木さんの選択キャラはシワスで、俺は思わず口角が吊り上がりそうになる。シワス戦は植田と散々繰り返し、最早このゲーム内で一番得意な組み合わせと言っても過言ではない。

 決して油断はしないが、この自信をそのままぶつけて勝たせてもらうぜ!


 だがしかし。


 格闘ゲームというものには悪魔が潜んでいるものだ。S木さんのシワスはピノマン型……つまり近距離ぶん殴りタイプだったのだ。予想外の動きに混乱してしまい、一ラウンド落としてしまい焦るも、結局このタイプは余程の使い手でなければ弱点が露呈しまくってしまうのだ。


 落ち着いて対処すると、三ラウンド目のシワスは普通の遠距離戦スタイルに切り替わっていた。こうなればこちらのものだ。先ほどの対戦とは逆に、今度はこちらが距離を詰めて相手を追い詰める。

 画面端から出してやらねぇぞと圧を掛けまくり、崩れたところを一気に攻める。


『ムツキ Win!』


 勝利を告げるボイスが筐体から響き、俺は詰めていた息を大きく吐き出したのだった。


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