表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/1

第一話 念願の追放だけど追放先が終わってる件


「リリシー・ランドルフ!!

今ここで君との婚約を解消し、君を追放する!!!!」


はいきたー!!

その言葉待ってました!!!!!

念願の追放宣言!!


これには私ことリリシー・ランドルフは、心の中でガッツポーズが止まりません!!


私は前世の記憶を持つ元日本人だ。

この世界に転生した私は、ランドルフ公爵家の長女として生まれた。

そしてマリノス王国の次期王太子、ウィリアム殿下との婚約が決まっていた。


だけど私はこの婚約に納得していない。

ていうか、貴族なんて辞めたいし、結婚なんかしたくない。

一生一人で田舎でぬくぬく過ごしたいんだ。


だから私は、婚約を破棄すると同時に貴族をやめる方法を思いついた。

その方法とは——悪役令嬢になりきって婚約破棄&貴族辞めちゃえ作戦だ。

要するに、よく小説で見る追放ものの悪役令嬢ポジションである。

そしてその作戦を長年実行した私は、今まさにクライマックスを迎えていた。


「おいリリシー、聴いているのか!!」


聴こえてるよ、バカ殿下!

今どういう状況か説明してる途中だろうが!


「まぁ黙り込むのは無理はない!

なぜなら僕との婚約が解消すると同時に、

君は今日限りこの国から追放されるんだからな!」


おお、そうかいそうかい。

それはヒドイナー。

ワタシドウスレバイイノカナー……っと、流石にずっと黙っているのはまずいか。


「そ、そんな!?

追放って!! なぜ???」


追放されて喜んでいる気持ちを悟らせないために、

ここでベテラン女優顔負けの演技を繰り広げる。

さすがは名女優リリシー。長年悪役令嬢を演じてきた私の演技力は段違いだぜ?


「なぜだって? お前がマリアに何をしたか覚えていないのか!」


おん。知ってんで。

殿下が言うマリアとは、イゾルス子爵家の次女・マリア・イゾルス。

何があったかは知らないが、殿下と昔から仲が良く、お互い恋をしているらしい。

相思相愛ってやつだ。


「お前がマリアのことを……毎日いじめていただろう!

陰で『下賤の出のくせに』だの、『王太子妃の座を狙うなんて身の程知らず』だのと散々言って、

彼女のドレスに裏でインクをかけたり、馬車から突き落とそうとしたり……! 許せない!」


殿下がそう言うと、周りの貴族たちも

「そうよ」「可哀想なマリア様」「リリシーは本当に最低ね」と、

うんうん頷きながら私を非難の目に晒している。


私は心の中で盛大にガッツポーズをもう一度決めつつ、必死に震える声で返す。


「そ、そんな……私、そんなこと……覚えていませんわ……!

いじめだなんて……ひどい……うっ……」


涙を浮かべてうつむく。

完璧な被害者演技。


虐めてたのは事実なんだけどてへ。

まぁ私が追放されるにはこれが手っ取り早いし、

マリアちゃんには酷い思いをさせちゃったけど、しゃーないしゃーない。


指先まで微かに震わせて、唇を噛むところまで計算済みだ。

やはり私、演技の才能あるなぁ……。

追放された後、女優として頑張ろうかな……。


「とぼけるな! 証拠は山ほどあるんだぞ!

マリアが泣きながら僕に訴えてきた時のことを思えば……!」


そう言うと殿下は拳を握りしめて一歩踏み出す。

その後ろで、清楚可憐なピンクのドレスを着たマリアが、ちょこんと控えめに立っている。

彼女は私と目が合うと、怯えた顔をした。


悪徳令嬢のフリをしていた私のままだったら、

「何メンチ切ってんだぁ?」といびっていたところだ。


まぁそんなことしたことないけど。


「もう一度言う! リリシー・ランドルフ!!

今ここで、君との婚約を解消する!

そして今日限り、この国から追放する!!!」


今までお世話になりましたー!!!!!


心の中で花火が上がる。

念願の「追放フラグ」完全成立!!

これでやっと、このクソみたいな王宮から、悪役令嬢の仮面から解放される!!!


私は膝から崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込み、顔を両手で覆った。


「……わかりました……殿下……

私……この国から、出て行きます……」


声は完璧に震え、涙は本物(喜びの涙だけど)で頰を伝う。


殿下は満足げに鼻を鳴らした。

何鳴らしとんねんこいつ。


「当然だ。二度とこの国に足を踏み入れるな!」


りょうかい!!!


「……はい……」


私は立ち上がり、ぐしゃぐしゃに乱れた髪を直すふりをして、

周りの冷たい視線を浴びながらゆっくりとその場を後にした。


歩いていると、背中で殿下とマリアが寄り添う気配がする。

きっとこれから「僕が守ってあげるよ、マリア」みたいな甘い展開になるんだろう。


マリアちゃんもあんなアホのどこを好きになるんだろ。

やっぱりこの世界の人はわからんことが多いなー。


「お待ちください!! リリシー様!!」


私が王宮から去ろうとウキウキでスキップしていると、

後ろから声がかかった。

この低音ボイスは、執事のアルフォンスだ。


「どうしたの? アルフォンス」


「リリシー様、ガイロス様が至急お呼びです。

一連の騒動について説明しろと……。」


うわ、もうパピーの耳まで届いてるのかよ……。

まぁあんだけの騒動だ、届かないはずがないか。


「わかりました……。」


はぁ、パピーの耳に届く前にこの国から出たかったんだけどなー。

まぁ仕方ない。パピーのところに行くとするか。

無視して出て行って指名手配とかされるのは嫌だし……。


---


「どういうことだリリシー!

お前のせいで私のメンツは丸潰れだ!」


悲報。パピーガチギレなう。

まぁそりゃそうか、婚約破棄だもんなぁ。

相手が普通の貴族ならまだマシだっただろうけど、なんせ相手が王族だもんなぁ。


私と殿下の婚約が決まった時、一番喜んでたのはパピーだったし。

でも仕方ないじゃん。私、結婚したくないんだもん。

一生独身で幸せに一人で生きていたいんだもん。


せっかくの二度目の人生なんだし。

自分の人生ぐらい好きに生きていいでしょ。

こんな縦社会の生活なんて真っ平ごめんだね。


私は自然豊かな田舎でゆっくりスローライフしたいんだよ。


「申し訳ありません。

この件は私が責任を取り、私は身分を捨てこの国を出ます。

それでどうか許してはくれませんでしょうか。」


頭を下げて「まじすんません」という姿勢を見せる。

まぁぶっちゃけこれしかできないし、

パピーももう取り返しがつかないことぐらいわかっているだろう。


「それはならん。」


ナンデー?

いやナンデー?


「何故と言う顔をしてるな、リリシー。」


うん、めっちゃしてる。

ていうかパピーあまり怒ってない?


「確かに今の貴様は過去の悪事がバレ、殿下に国から追放された身だ。

そしてランドルフ家の名前に傷をつけた。勘当するのが普通だろう。」


うんうん、だよね。

私も思う。だから勘当して?


「だが、このままランドルフ家の名前が傷ついたままなのは俺が許さん。

なので今から貴様に命を下す。

リリシーよ、ここから東の国ガリュウスに魔術師として出兵してもらう。

お前は昔から魔術に才がある。ガリュウスは色々と激しい国だ。

だがお前ほどの魔術の才があれば武功を上げることもできるだろう。」


ん?ん?ん?

おい待て待て待て。

どゆこと?

東の国? ガリュウス? 出兵?

はい?はい?はい?


どういうことだってばよ……。

私これもしかして島流しにあうってこと?

島流しじゃなく国流しか。


いやいやそれにしてもガリュウスってあのばちばちの軍事国家だよね!?

あんなところに私を出兵させるってマ!?

私女だよ? か弱い女だよ!?


まぁ確かに前世の記憶を活かして幼少期に魔術を練習したおかげで、

無詠唱とか色々使えるけどさ。

ていうか何故他国なん!?

それなら自国であるマリノスがいいんだけど!

あと自慢の娘を出兵させるとかマジかよパピー!!


「ちょ、ちょっと待ってください。

出兵はともかく、何故自国ではなく他国のガリュウスに?」


「そのことなんだが、今は言えん。

ただお前がガリュウスに行くことはもう決定事項だ。

もうガリュウスの方には連絡を入れ、あちらは承諾した。

荷物の準備をしろ。明日にはもうこの国を出てもらうぞ、リリシーよ。」


え?早くね?

あっこれもう行くこと決まってるんだ。

私が騒動を起こして1時間ぐらいしか経ってないよね?

速すぎじゃね?

なんかこうなることをわかってたみたいな感じなんだけど。


ていうかマジでこれ行くんだ。

あっ私終わったな。


「あぁ言い忘れたが、逃げるとかは考えるなよ。

見張り用に腕利きの護衛をつけておく。

もし逃げたりしたら、ランドルフ家総出でお前を見つけ出し処刑する。」


「あ、はい。」


あ、おわった。

今までありがとうマミー、パピー。

あっこいつがパピーか……。


せっかく追放されるために悪役令嬢のフリをしてこんな国から追放されたのに、

追放先が軍事国家だなんて、そんなのありかよ……。

主人公は自分の幸せのためなら犠牲を伴わないという考えの自己中心なキャラです。


ブックマークお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ