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私だけ異世界転生しない件 5.小林和也

 --とうとう4人目の犠牲てんせい者が出てしまった。


 状況がわからないまま、和也はなるべく冷静に、感情的にならないよう努めつつ、今朝転生をしてしまった高橋真理の業務内容を頭の中でリストアップする作業を続けていた。

(とりあえず総務の業務の分は中村さんでも対応が可能だろう。佐藤さんには引き続きプロジェクトの進捗管理をメインに動いてもらって…)

「無理ですぅ~」と泣き言を言う割に、彼女は案外真面目に仕事をこなしている。吐き出すことでその場でストレスを発散してくれているぶん、対処がしやすい。

(佐藤さんは…大丈夫だろうか?)

 日ごろから真面目で、愚痴をこぼしているところも、誰かに吐き出したりしているところも見たことがない。趣味らしい趣味もないと、本人から聞いたこともあった。

(突然辞めたりしなければいいんだが…)

 ふと思いながら

(辞めなくても、また突然転生ということも起こりうるのか)と、心の中でも独りごちる。


「現状、難しいことは重々承知しているが、できる範囲でフォローをしてください」

 和也は頭の中で整理し終えた役割分担を極めて淡々と、事務的に言葉にして2人に告げた。

 中村恵は、文句を言いながらでも、なんだかんだで振られた分の業務はこなすだろう。営業職の石川陽介も、指示された分くらいは仕事をこなす。

 なんだかんだでこの部署チームは恵まれているのだ。そう和也は思っている。


 ミーティングとも呼べないミーティングを終え(むしろこれは下達というべきものだ)、和也は自席のデスクに向かった。

 無性に煙草を吸いたいと思ったが、喫煙ルームは昨年撤去されており、屋内で喫煙できる場所はどこにもない。

 溜息まじりでパソコン画面を睨みつけ、社内の情報共有アプリを立ち上げる。

 さきほどから佐藤さんが転生者の進捗管理とあわせて、現時点でわかったことなどをコンスタンスに情報共有をしてくれている。

 どうかこれ以上、転生者が現れないように…。そして1日でも早く、この謎の現象が終結するように。

 和也は心の底からそう願いながら、週末に予定していた家族サービスの日帰り旅行のリスケを考えていた。

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