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プロローグ

男子校を卒業して半年が経った。皆が大学で新しい人生を始めている中、俺は部屋に引き篭って勉強をしている。

俺は中学受験で成功し中高一貫の男子校である、それなりの進学校に通った。

しかしそれで調子に乗った俺は、6年もあると余裕をぶっこいていたため成績は下の下になり、それは高3になっても変わることは無かった。

そしていよいよ全ての志望校に落ちた俺は、謎の自尊心を持っていたため、唯一受かったFランを蹴って浪人した。

しかし受験まで約100日と言うのに、第一志望の判定はC。偏差値は未だ50。

ぶっちゃけ小学生の頃、俺は地頭がいいと思っていた。だから、浪人して本気で勉強すれば成績も上がると思っていたのにこのザマだ。

かなりキツいが、嘆いても時間が進むばかりなので、今日もひたすらに勉強をする。


「・・・・・・」


英語の長文問題と睨めっこしても、何も頭に入ってこない。 それどころか将来の不安がグルグルと頭の中を渦巻いて気持ちが悪い。かわいい女の子がたくさん出てくるソシャゲをしてもちっとも楽しくなんかない。

こういう時はとりあえず予備校で自習でもしに行こう。


「・・・・・・」ガチャ


最近あまり会話もしていない母親に対して「いってきます」の一言も言わず、家を出て電チャリに乗り込む。

9月の終わりも近づいてきて半袖だと少し肌寒く感じるひんやりとした風は、秋の到来を俺に感じさせ、受験までそれほど日数が残ってない事も実感させた。

チャリを走らせて5分ほど経っただろうか。俺の目には、見覚えのある顔が写る。

中高時代の親友、片野だ。俺は嬉しくなりチャリを止めて駆け寄る。


「片野か?!片野だよな?」

「ん?」


片野が振り向くと、その横には一人の美しい女性がいる。


「えっ....」


俺の思考は停止した。目の前に女の人がいて俺を見ている。そしてその距離約1メートル。6年間男子校に引き篭った俺が耐えられるはずがなかった。心臓が突然うるさくなって、胸に突然なんとも言えない痛みを感じたかと思いきや、突然の吐き気が襲ってくる。


「えっ小原か?マジかよ!元気にしてか?」

「あっえっ...はい」

「あっこの子?紹介するよ。この子は...」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ちょっ!待てよ!」


もう限界だった。彼女なんて絶対できないと思っていた親友には黒髪ロングの彼女がいて、ボサボサだった髪はワックスでイケてる髪型に進化していた。何より、こんなに近い距離に女の子がいて、目を合わせるのは、小学生以来だったのだ。

片野と女を背に、死に物狂いで走る。こんなに必死に走ったのは高校生以来だ。しかし足元を見ていなかったため、俺は歩道と車道の段差を踏み外し綺麗にずっこけてしまう。

また立ち上がろうとするも、半年間まともに運動もしてこなかった俺の体は、すでに車道に横になって電池切れになっていた。


「おいおい大丈夫かよ!」


誰かが体を揺すってくるが、俺の体はピクリとも動かない。なぜならその時にはもう、俺は事切れていたのだから。

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