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傷跡  作者: たかし
4/4

傷跡完結

それは突然だった。

先生が暗く重い顔で言いにくそうに告げた

「皆、落ち着いて聞いてほしい。村松音鳴が昨日亡くなった。詳しい事は言えないが、お葬式等はまた追って伝える。」

それを聞いたときは何も考えられなかった。何も思えなかった。

クラスの皆は動揺してざわついていた。中には泣いていた人もいたのだろう。

いたのだろうと不確定な言葉で伝えるのには理由がある。

何も考えられなくなったのと何も聞こえなくなったのだ。

覚えていることは体が冷たくなって動悸が激しくなっていた事だけだ。

その後僕は過呼吸になった。

「お、おい!歩大丈夫か!しっかりしろ!おい保険委員歩を連れて保健室にー…」

そこから先の記憶が無い。

完全にそこで途絶えている。

そして気がついたら保健室のベッドで寝ていた。

目が覚めて起き上がった。

視線の先に保健室の先生がいた。

「起きたね。大丈夫?」

僕は、ぼやける考えのなかでなんとか言葉を振り絞った。

「は、はい」

上手く口が動かなかった。

まだ体は動揺が収まっていなかったようだ。

「もう少し寝てな。」

先生はコーヒーを飲みながら告げた。

「僕はどうしたんですか」

何があったのかはわかるが、どうなったのかまでは今の精神状態では思考がまとまらなかった。

「君過呼吸になって倒れたんだよ。まぁ、無理は無いか。同じクラスの友達が亡くなったんだもんな。」

「どのくらい寝てました?」

おぼろげな思考で聞く

「今が大体四時限終わりくらいだから五時間くらい?かな?」

「そうですか、ありがとうございます」

ふぅ、と息をつき一旦落ち着くことにした。

「落ち着いてきたみたいだね。コーヒーでも飲むかい?」

「大丈夫です。」

「そうか、何か飲みたくなったら言いな」

「はい、ありがとうございます」

再びベッドに倒れゆっくりと考えをまとめる。

まとめた所で答えは1つだった。

音鳴が死んだのか。

実感は無かった。

昨日一緒に遊びに行ったばかりだし、そんな突然。

信じられなかった。

そんなことを考えていたら母がやって来た

「歩!大丈夫!?」

僕は落ち着いて

「母さん、大丈夫だよ」

母は慌てながら

「ほんと!?ほんとに?突然過呼吸になって倒れたって聞いて!?心配したのよ!」

僕は冷静に話す

「心配かけてごめんね。もう落ち着いてきたところだから。」

母はゆっくり呼吸を整えながら

「とりあえず今日は家に帰りましょう。そうは言っても心配なの。

いいわね」

僕は言う

「うん、わかった。」

その後は担任の先生と保健室の先生と母の三人で話をしていた。

僕は一旦教室に戻って荷物をまとめていた。

クラスの友達からは「大丈夫?」と心配されたが「大丈夫だよ」とだけ告げて僕は学校を後にした。

家についてお昼ご飯をまだ食べてなかったので母と二人で食べた。その日の仕事は終わりにしてきたらしくてその後母と二人で話をした。

「歩、話を先生達から聞いたわ。音鳴君亡くなったんですってね。」

僕はお茶を飲みながら

「そうみたいだね。」

とだけ言う

「歩落ち着いて聞いて、絶対あとは追わないでね。お願い。」

僕は驚いてお茶を変なところに飲んでしまった。

勢いよくむせてしまった。

「大丈夫だよ」

僕はむせながら言う

「歩、これは真面目な話。冗談じゃなくて本当にお願い。

お母さんと約束してね」

正直驚いた。母がここまで心配したのは人生で初めてだった。

「…うん。わかった。約束する」

その日はそのまま夜まで自分の部屋でぼーっとして過ごしていた。夜になり晩御飯を食べ終えてすぐに寝た。

翌朝起きて身支度をして学校に向かった。

教室に行く道中で保健室の先生とあった。

「昨日はありがとうございました」

僕は軽く会釈しながら伝えると

「体はもう大丈夫かい?もし色々と辛かったら俺が担任には話しとくからまた保健室においで。」

先生は少し笑みを含んだような顔をしたあと僕の頭をわしゃわしゃしていった。僕はなんだか少しほっとした。何に対してほっとしたのか、自分でもわからなった。

教室に着くとまだ人はまばらだった。今までと違うところがあった。音鳴の机に花が飾ってあった。僕はそれを無性にぶち壊したくなった。無論しなかったが、なぜだかそんな事を思ってしまった。友達が昨日あのあと大丈夫だったかと心配してきてくれた。僕は笑顔で大丈夫、ありがとうと告げた。

その後、ホームルームが始まり、いつもの日常が始まっていった。しかし、何に対しても集中出来ずにいた。常に頭がぼーっとしていた。その日の放課後であった。帰ろうと荷物をまとめていたところ突然話しかけられた。

「ねぇ、あんた、ちょっと面貸しなさい」

知らない人かと思ったら、音鳴の彼女だった。

「なんで?」

僕は彼女に告げる

「いいから、はやく来なさい」

僕は言われるまま付いていった。

人気の無い階段の踊り場に着いていた。そこにはもう二~三人ひとがいた。よく見ればそれは音鳴がいたグループの人達だった。

ちゃらそうな男が僕の胸ぐらを掴みながら言う

「お前、どうして音鳴が死んだか知ってっか?」

彼は僕を睨みながら言う

僕は一切目を逸らさずに言う

「知らない。」

「…本当か?」

「うん」

彼は手を掴んでいた手を離して言う。

「そうか、いきなり掴みかかって悪かったな」

彼は軽く頭を下げて謝罪する

「先生は誰にも音鳴がどうして死んだのか言わないんだよ」

隣の男が言う。

「いくら聞いても、お前達にはまた今度話すから、としか言わないんだよ」

彼女が言う

「そうなんだ…力になれなくてごめん」

僕は軽く謝ると

「いや、まぁ最近あいつとよく一緒にいるお前なら何か知ってるかと思ったが、あてが外れた。こっちこそ悪かったなこんな所に呼んで」

僕はその後彼らを後にして職員室に向かっていた。

中に入り担任の先生に聞く

「音鳴に何があったんですか?」

先生はこっちを見ながら言う

「もう少ししたら言うから待ってなさい」

僕はこれは言うつもりが無いのだと感じた。

「そうですか、失礼しました」

僕は軽く会釈して職員室を後にした。

家に帰り僕は音鳴の家のインターホンを鳴らしていた。

誰も出なかった。

人の気配がしなかった。

ぼーっとしながら家に向かうと玄関に警察の人がいた。

警察の人はこっちに気付いたのか

「こんにちは、君が歩君かな?」

そう聞かれ

「はい。」

と僕は答えた。

「ちょっと話をしても大丈夫かな?」

「はい。」

僕はその人達と一緒に家の中に入り母と四人で話始めた。

「えっとどこからはなしたらいいかな?」

若そうな警察の人が困ったような様子で言う。

そしたら年期の入った警察官が言う

「はっきりしろ。もう俺から聞く、お前は黙ってろ」

そういうのは人前ですんなよ、と思った。

「えー、歩君ももう知ってると思うけど君の友達の村松音鳴君がこの間亡くなったのだけど、何か知ってるかい?」

若そうな警察の人が慌てて言う

「えっと、別に君に何かあるとかじゃなくて、一応その彼が亡くなった直前に君が一緒にいたというのを聞いて、形だけの事情聴取ってやつ、深くは思い詰めなくても大丈夫だよ!」

その人はニコッと笑って言う。

その後僕は母と目をあわせてから言う

「いえ、本当に何も知りません。僕も昨日学校で初めて知りました。」

年期の入った警察官が言う

「そうか、うん。突然ごめんね。調査のご協力ありがとうございました。」二人は立ち上がり深々と頭を下げた。

「では、私達はこれで失礼します。お邪魔しました。」

二人はそう言うと家を出た。

僕は思わず玄関から出た二人に声をかけてしまった。

「あの!、えっと、」

二人は立ち止まり、振り返った。

「どうしたんだい?」

若い警察官がこっちに歩みよった。

「えっと、聞きたいんですけど、あの、」

言葉が上手くまとまらなかった。

「大丈夫、落ち着いて話してごらん。ちゃんと聞くから」

彼は笑顔で言う。

「その、音鳴はどうして亡くなったんですか?先生に聞いても答えてくれなくて、でも、僕、どうしても知りたくて。」

なぜだかわからないが僕は泣いていた。

自分でもよくわからなかった。

警察官の人は頭を撫でながら

「そっか、まだ知らないのかうーん」

若い人は年期の入った警察官に聞く

「…教えてもいいですよね。」

そうすると

「まぁ、いいだろう。」

何かを察したのかその人は僕を見た後に言った。

「じゃあ少年落ち着いて聞いてくれ。」

僕は必死に泣くのを抑えて聞く

「あまり他の人には言ってはいけないよ。約束出来るかい?」

僕は上手く声が出なかったので深く頷いた。

「よし、じゃあ話すよ」

その人は悲しそうな顔をして言う。

「他殺ってやつだよ。どうやら彼の母親が駅で男と言い争って、母を迎えに行った時に男が勢い余って母親を刺そうとしたのを庇ったみたい。なんとも悲しい話だよ」

驚いた、彼があの母親を庇ったということに。

そして嫌な事を思ってしまった、あんな母親庇う必要無いのにと。

警察官の人は頭を撫でながら

「他の人に言っちゃ駄目だよ。それじゃあね。」

警察官の人は、あっそれと、と言い

「いいかい、絶対復讐してやるとか考えちゃ駄目だよ、とてつもなく悔しくて悲しくても。

それをしてしまったら、今度は何も悪くない君を捕まえなくてはならなくなっちゃうから。それは約束してくれ」

僕の目を見ながら言う

「わかり、ました」

僕はひくつきながら言う

「よし、ありがとう」

彼はニコッと笑って頭を撫でる。

そして僕を後にして二人は去って行った。

その後僕は家に帰って母と話した。

「今警察官の人と話して音鳴がなんで死んだか聞いた」

母は悲しそうに

「そう、」

とだけ言った

「お母さんは知ってたの?」

僕は聞く

「うん、あなたを迎えに行った時に先生から聞いたわ。悲しいわね」

僕はその発言を聞いた瞬間なぜだかもやっとしたが気にしなかった。

「なんで音鳴はあんな母親庇ったんだろう。」

僕は悔しくてたまらなかった。

「音鳴は母親から虐待されてたのに。あんな母親庇う価値ねーのに!」

僕は声が大きくなっていた。

「歩!落ち着きなさい。言って良いことと悪いことがあるわ」

母僕を叱った。

「…ごめん」

僕は一言謝ると自分の部屋に帰った。食欲も無かったのでその日はもう寝ることにした。

次の日学校に行くとホームルームで先生が告げる

「えー、音鳴のお葬式が決まった。一週間後の日曜日に行う。皆は制服で来るように。」

その後再び泣き出す人が何人かいた。その中には音鳴の彼女だった子もいた。

僕はなぜだか何もする気力が起きなくなって、保健室に向かっていた。戸をくぐると保健室の先生がコーヒーを飲みながら外を見ていた。こちらに気づいて話しかけてきた

「お、久しぶり。どうした?」

僕は正直に言うことにした

「すいません、なんかやる気起きないので、ここで休んでもいいですか?」

先生は笑って言う

「わかった。ゆっくり休んでけ。担任には俺が話つけとく。」

そしたら先生は「ちょっと担任に電話するから待っててくれ」と言い、電話し始めた。

その間僕は保健室にあるソファーに座りぼーっと外を見ていた。

そしたら電話が終わったのか先生が話しかけてきた

「とりあえずこれで今日はここで休んでも大丈夫なようにはしたから安心しろ。お茶でも飲むか?」

僕は言う

「ありがとうございます。頂きます。」

その後僕の前のテーブルにお茶を置きながら向かいのソファーに先生は座った。

「今日はどうした?」

コーヒーを飲みながら聞く

「なんでかわからないんですけど、何もする気が起きなくなったんで」

僕は正直にいう。

先生は言う

「それは悲しいからだろ。」

「そうなんですかね」

僕にはわからなかった。自分の身近な人が死ぬのは初めてでは無かったが、幼い頃に祖父が亡くなった時はこんな気持ちにはならなかった。

「きっとお前の中で音鳴は結構デカイ存在だったんだろうな。まだ受け止めきれてないのもわかる」

そうなのか…

「まぁそのうち受け止められる。その時まではおもいっきり悲しめ。そして、乗り越えろ。」

先生はコーヒーを飲みながら言う。

「…葬式には行くのか?」

先生はコーヒーを置いて聞く

「…はい」

僕はなぜだか震えていた

「そうか、辛いぞ。自分の親友が死んでるすがたを見るのは。それでも行くか?」

先生はまっすぐこちらを見て言う

「…はい。彼にもう一度会わないといけない気がするんです。」

先生はこちらをまっすぐ見て言う

「そうか」

僕は震えた声で言う

「何故だか僕もまだよくわかりません。でも、会わないと、駄目だと思います。」

先生は少しの間無言でこちらを見つめた。僕は目を逸らさずにいた。

そしたら先生は目を閉じてゆっくりコーヒーを飲んだ。

「そうか、その目じゃ大丈夫だな。それじゃあ最後にちゃんと会って話してきな。それが正真正銘最後だから。」

僕はゆっくり頷いた

「はい」

先生はニコッと笑いながら言う

「まぁ今日はゆっくり休んでけ!

明日からも気が乗らなかったら遊びに来な。」

なんだか少し心が軽くなった。

僕はその日からお葬式の日まで教室には行かなくなった。理由は特にないが、何故だか悲しんでるやつを見るとイライラするからだ。

保健室では先生と話をしたり、自習したりしていた。それでも勉強は遅れたく無かったのでちゃんとした。

そして、時は流れお葬式当日になった。

泣き出す人が沢山いた。彼のいたグループの人や彼の彼女、先生達だ。彼等を見てるとムカムカしたので僕は誰とも話さず、目も合わせなかった。そして、棺桶に入った彼と会った。

彼の顔は最後に会ったときと違いまるで人形の様な感じだった。そこにいるのは紛れもない彼のはずなのに、彼に見えなかった。彼そっくりの人形がそこにはいた。

僕は何も言葉が出なかった。

後ろの奴が早くしろと言っているのが聞こえたが無視した。

僕はゆっくりと考えてその人形に話しかける。

「…音鳴、なんで庇ったんだよ。あんな母親庇う価値無いだろ。あんな奴庇ってなんでお前が死んでるんだよ。」

僕は気がついたら涙が出ていた。

「音鳴答えてくれよ!」

僕は声が大きくなっていた。

「また一緒に遊ぶんじゃなかったのかよ!」

僕は周りを見ずに叫んでいた。

「また一緒に海にいって、一緒に飯食うんじゃなかったのかよ!」

僕を見て周りが驚いていた。

「なぁ、答えてくれよ…音鳴…」

僕は大泣きしていた。

すぐに先生達がやって来て僕を叱った

「歩!落ち着きなさい!」

保健室の先生が駆けつけて来て周りの先生から僕を引き剥がした。

「歩!落ち着け!お前の言いたいことはそれなのか!」

僕は我を取り戻して言う

「…いいや違う」

先生は目をまっすぐ見ながら言う

「歩、もう一度言うぞ。これが最後だ。あいつとちゃんと話してこい。いいな。」

僕は目を逸らさず涙を拭き取りながら言う

「はい、ありがとうございます」

先生は僕の背中を強めに叩いて

「よし、行ってこい。周りには俺が話しておく。」

僕はもう一度音鳴の前に行って言う

「音鳴突然叫んで悪かったな。」

僕は落ち着いて言う

「俺、お前と会えて本当に良かった。お前と会えなかったらきっとこのまま何も考えず、普通に生きていたと思う。お前みたいに苦しんでる奴がいるというのに気づかず、のうのうと日々を捨てていたと思う。」

僕は再び涙が出てきたが今度はそれでも落ち着いて言う

「あの時、雨宿りした日から俺の人生は変わったと思う。ありがとう。お前と出会えて俺は幸せだった。楽しかった。お前のいないこの世界は少し退屈になったけど、お前の変わりに俺がこの世界を変えてやる。もう二度とお前のような悲しみを生まない世界に、俺が変えてやる。どうか、見ててくれ。」

僕は涙を拭き取りながらいう

「音鳴

本当にありがとう

俺と出会ってくれて

ありがとう

俺と遊んでくれて

ありがとう

俺を最高の場所に連れていってくれて

ありがとう

俺と笑いあってくれて

ありがとう

俺はずっとお前を忘れない

何があろうと

絶対に忘れない

またいつか

もし

会うことがあったら

その時は

また一緒に海に行こう

そして

嫌な事を忘れよう

また二人であの店に行って四人でご飯を食べながら笑い合おう

そして家でゲームを一緒にしよう

音鳴


ありがとう

そして

またな

バイバイ」



その後僕は保健室の先生にお礼を言いに言った

「ちゃんと話せたか?」

先生は聞く

「はい、僕が一方的に話しちゃっただけかも知れませんが。」

先生はニコッと笑いながら言う

「それでいいんだよ。よく言えたな」

先生は頭を撫でながら言う。

それからはいつもの日常に戻った。

時は7月の中旬になっていた。

もうすぐ夏休みだ。

彼のいない世界で僕は何が出来るだろうか。

夏休みの間に答えを見つけよう。

これからの僕に何が出来るのか。

長く短かったじめじめとした空気が終わり

からっと暑い日々がはじまる

僕は空を見て決意を固めた。

この世界を必ず変えると。


終わり。



実はpieceもたまに吸います。

ありがとうございました。

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