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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十九章:いろんな更新、いろんな改定、新しいつながり
998/1205

998:健康診断当日

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 気持ちいい朝と共に目覚める。いつもならそのままシャワーを浴びて朝食へ……といったところだが今日は少し趣が違う。検便と検尿を取って今日の分として確保、そして健康診断へ提出せねばならん。


 今日は健康診断。もう一日気づくのが早ければ朝からごたごたせずに済んだはずだが、過ぎたことは仕方ない。いつもなら朝食を食べてその胃の脈動を感じ取り腸も元気に動き始め、その勢いを保ったまま朝の成果を確認するところだが、今日はそうはいかない。


 最近の健康診断はコップ一杯程度の水なら水分を補給しても良いらしい。暑いし寝汗もかくし、その間水分を取らずに脱水状態で健康診断へ、という流れでいかなくてもいいのでちょっと安心してコップ一杯の水をゆっくり飲む。


 渇きをいやしたところで朝のお通じタイムとばかりに胃が脈動をはじめ、腸が連動してきた。いつもの食事は今日は水だよ、しばらくはちょっと我慢しててくれと自分の身体に言い聞かせておく。


 無事に朝一の便と尿を採取し、書き入れる項目は全部書いた。後は今日の現場である所の病院に到着するまでちゃんと安全運転で行けるかどうか、それだけだな。


 暇なのでニュースを点ける。今日は一日晴れらしい。梅雨の空気はだんだん薄れ、本格的な夏の到来を予感させてくる。今年も暑くなるのかなあ。ほどほどであってくれると嬉しい。


 最近の夏は容赦がない。平気で地面温度四十℃を記録してくれるしじりじりと焼けつくような日差しが朝から刺激してくる。ヘルメットをかぶってる以上頭はどんどん蒸されていくしそれだけで汗をかく。今年はヘルメットはダンジョンに入るまで外して行動した方が良さそうだな。


 さて、ヘルメットはともかくとしてスーツフル装備で病院に行く理由はない。着慣れてはいないが涼し気で脱ぎ着しやすい恰好になると、時間が近くなるまで冷房の効いた自宅で過ごすことにした。TVのじゃんけんは負けた。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 時間三十分前行動とまではいかないが、二十分前に病院に現着。早めだが、スムーズに前の人の検査が終わっていれば俺の出番もその分早まるだろうだろうと思い到着した次第だが、順調に進んでいるらしく、思った通りの流れで健康診断が始まった。


 まず、撮影用の着替えに着替え終わると身長、体重、血圧、腹囲を測定される。それが終わった後、血液検査、血をピュッと抜かれる番になる。


 看護師さんの姿を見ると、熟練のおばちゃん看護師さんのようなので少し安心する。ここで若い人の練習台になるのも世の中のためにはなるんだろうが、やはり安心して血を抜かれる、というものには勝てない。


 ただ、若い看護師も経験を積んで熟練の採血作業を行えるようになるためにはやはり新鮮な生贄が必要であることも確かだ。今回の俺はそうでは無かったが、何処かの回ではやはり、同じように採血の練習台として血を抜かれることもあるんだろう。今回は運が良かったということにしておこう。


 採血をされる際、もしかして物理耐性のせいで針が刺さらないのでは? と心配したが、どうやら自分が受け入れる行為に関しては物理耐性は邪魔はしない様で、問題なく針は刺さった。血を抜かれる行程でも順調に血は抜けていっている。試験管に三本分ほどの血を抜かれたところで採血はおしまい。


 抜けていく血をよく観察してみたが、どうやら血もドロドロという感じではなく綺麗にプシャーっと試験管の奥にまで届くような勢いで血は抜かれていったので問題はないだろう。尤も、実際の数値は目で見えるほど解りやすいものではないとは思うが。


 続いて尿と検便を提出し、専門家に検証をしてもらう。俺の糞尿は健康的なのかどうか。大腸がんの可能性はないか。尿に糖分が流出してないか、たんぱくが出ていないか、尿酸は高くないか。年齢的に全部気になる所だ。


 一応健康的な生活をしているとは思うし、一時期の体重過多に比べればスリムになった。腹囲も問題なく引き締まっているし、もう腹筋も六つに割れても不思議はないぐらいだ。ザ・健康体とまではいかないだろうが栄養面でもそれなりに気を付けてはいる。


 さぁ次だ。聴力検査、視力検査。どっちも問題なし。どちらもダンジョンで使用しているし、ステータスブーストを少し利かせることでより強化された視力聴力を確保することが出来る。素直に言われたとおりに聴力検査を終えた後は、視力検査。椅子に座らされて黙って差されたランドルト環の開いてるほうを答え、問題なく視力は2以上あることが示せた。


 問題なくこれらの成果を担保できているのは大きい。どんどんこれから視力も聴力も衰えていってもおかしくない年齢なのだ。ダンジョンでの身体能力強化のおかげでこの結果が出せていると思えばかなり大きいだろう。前回受けた時はこれらの数値や行動に問題が無かったかどうか、前の結果を残しておけばよかったなと今更後悔する。


 もし一昨年までの結果が病院に残っていれば、急激に回復した視力や聴力に対してなぜこのような結果になったのか調べられるところだろう。探索者をしていれば体は健康になり視力は回復して金は稼げて彼女もできた。嘘は言っていない。


 続いて心電図。寝かせられて謎の洗濯ばさみと吸盤をあちこちにつけられ、それぞれの位置で電気的な反応を見て不整脈なんかが起きてないかどうかを確認する……らしい。昔気になって調べたが詳しいことは忘れた。落ち着いて横になり、されるがまま電極を心臓周りにきゅぽきゅぽつけられ、しばらく静かに寝ていろと言われる。


 しばらくして測定が終わり、次へと通される。次は医者との対面での問診だ。最近何か変わったことはないですか、等ということを確認されながら首筋に手を当てられたり、横にされて腹のあたりをグッと押され、内臓にも腫れや妙なしこりがあるかどうかなどを確認されている。


「お仕事は何なさってます? 」

「探索者やってます」


 世間話が始まった。気を楽にさせるためなのか、それとも体的なあれこれについて知っておく必要があるのだろうか。


「そうですか、探索者ですか。どうです、儲かってます? 」

「まあ、頑張ったなりにってところですね。一応一人親方みたいなものなのでこういう検診には自分の足で来ないと不調も確認できませんし、ダンジョンの中でそれが原因で倒れたら一騒ぎですからね」

「確かにそうですね。世の中の人々に聞かせてみたいぐらいですよ……と、問題ありませんね。では心音を聞きます。胸だしてください」


 胸を露出して医者に見せる。


「ほほお、これはこれは中々良い感じに仕上がってますな」


 そういったきり心音に集中する医者。背中にも聴診器を当てて、それからトントンと叩く。


「問題ないですね、今のところ健康と言えるでしょう。では、次レントゲンへ行ってください」

「はい、ありがとうございました」


 問題ないらしい。探索者をやっているとどうやら肉体的にも健康になれるらしい。昔の検査では時々何かの項目で引っかかっていた覚えがある。糖だったような、たんぱくだったような。その時々でそれぞれ変わってたが、健康というものはある程度維持できていたように感じる。


 今後は自分の健康は自分で確認、検査して維持していかなければならない。毎日のように肉ばかり食っておらず、ちゃんと野菜も取る、たまには甘いお菓子で自分を甘やかせるのも必要、と。


 レントゲンも撮り慣れたもの。冷たい金属の板に腹をペタッとつけてそれを脇から抱え込むようにしがみついて撮影。そして夕食からたった今まで絶食してきた最大の理由である所のバリウム検査が待ち受けている。今年のバリウムの美味しさはどのぐらいのものなのか。


 昔のバリウムは不味かった。不味かったとしか形容できないのがアレだが、とにかく不味かった。ただ、不味いには不味いだけの理由があり、美味しすぎると胃が活性化して検査がしづらくなるらしいことを昨日調べていて知った。


 それでも最近のバリウムが美味しく感じるのは、その胃を活性化させない範囲でいかにして美味しくバリウムを楽しんでもらって撮影に臨むか、そこにかなりの努力がなされているらしい。ちなみに俺はバリウムもバニラ味が好きだ。あの香りが何よりも楽しい。


 今回のバリウムは味が選べるらしいが、イチゴとチョコとバニラだったので迷わずバニラを選択。そして発泡剤を飲み、バリウムを半分ゆっくり飲む。そして上がってくるゲップ感を必死に耐える。


 その間に機械に滑り込むように入り込んで撮影スタート。機械が回って、上下左右に揺さぶられ、そして息を止めて撮影。終わったらまたグルグル回され、左を向いて撮影、右を向いて撮影、ぐるっと一周回転して横を向いて撮影。


 グルグル回されている間にゲップ感は何処かへ行き、そしてゲップ感よりも苦しい時間である、狭い機械の中で前後に一周二周する方がキツイ。体重を支えないといけないような姿勢でも息を止めて撮影。そして残ったバリウムをすべて飲み、またグルグル回って撮影。五分間ほどの撮影をこなして無事に終了。


「安村さん、本日はお疲れ様でした。結果のほうは後日郵送しますのでそちらでご確認ください。ではこれで健康診断、終了となります」

「ありがとうございました」


 終わった後、水溶性食物繊維が豊富らしい水ペットボトルと下剤を二錠渡される。これで今日中に全部出しきってくださいということだろう。


 しまったな、今日中に出し切らないといけないということはうっかりダンジョンに潜るとダンジョン内で腹を下す可能性もあるってことか。


 うーん、これは困ったな。午後の予定を調整せねばならん。家に帰って一杯食って……そうだな、夕食と朝食を作って持っていき、夜間狩りとするか。それまでに腹の中身を出し切ればなんとかなりそうだ。


 夕食と朝食か。朝食はいつもの物で良いとして、夕食は何にするかだな。そう考えるとお腹が空いてきた。昼食はもう家にある。夕食のメニューを考えながら腸の具合と相談しつつ帰ることにしよう。


 早速家に帰ると、保管庫で一晩、冷蔵庫で半日冷えていた例のでかいハンバーガーを食す。うむ、やはり想像通りにツナギが多くムニムニしている。パン粉がかなり多いのかな? という感じだ。まあこのデカさであの値段、ボリューム的にお得感はあるものの味のほうはお察し。ケチャップが足りないと感じたので自分で追いケチャップをして味わいを確かなものにする。


 やはり見た目のインパクトはあったものの、食べてみるとそこまでのものでもなかったな。まあそれが解っただけでも収穫だ。質より量ということだろう。そういえば他の食品も量は確かなものだったが、味のほうが想像できずに胃袋がこれは美味しいかもしれない、と教えてくれることも無かったなと思い出す。


 海苔巻きの巻き部分からはみ出た具の多い鉄火巻きやサーモン、それからでーんとでかい一枚肉の乗ったカツ丼やかき揚げ丼もあった。だが、行きつけのスーパーで感じるようなこれ美味しそうという何となく食品から漂う感覚みたいなものは薄かったように感じる。


 せっかく金があるんだし、安くて品質のそこそこなものよりも、確実な値段で確実に美味しいと思えるようなものを食べたいと個人的には思うところ。普段使いのスーパーで俺は満足できるんだということを教えてくれたそんな一品だった。ただ、インパクトが充分なのは確かなのでまた何かインスピレーションが欲しくなった時には行くかもしれない、という感想の出る店になった。


 朝食兼昼食をとったところで考えるのは夕食のこと。最近は食べる事ばかり考えている気がする。昨日の夕食は質素にお茶漬けだった。昼食はそばだった。ここは一つ、ステーキを豪快に焼いて持っていくことにするか。とりあえず米は炊こう。一合半もあれば充分か。


 さて、肉はどうしよう。今はどんな肉でも選べるぞ。今日の検査お疲れ様ということで馬肉を焼いていこうかな。二枚に横にスライスして薄切り風にしたステーキを焼いて、おろし生姜と醤油をベースに作ったステーキソースを最後に振りかけて全体に馴染ませれば完成。余ったソースで人参とジャガイモとマッシュルームを味付けしながら焼いて一皿に盛り付ける。


 これを後はダンジョンの内部まで運んで食べれば完璧だな。ダンジョン内でも作れないことはないが、腸が反応するまでの間することがないので仕方がないともいえる。


 下剤がうまく体に回り、そして体から排出されるまでの時間は休みの延長戦だ。ネットニュースとスレッドを見てまた時間つぶしとする。


 腹がゴロゴロっと合図をくれたあたりでトイレへ直行。白さの混じった便が排出されたのを確認して、最後の最後まで出し切るつもりで気張る。気持ちよく腹の中を空っぽにしたところでようやくお出かけが出来る。さ、いつも通りダンジョンにまいりますか。

人間ドック、慣れると楽しいんですけどね。まだ胃カメラを体験したことがないのでいつかやってみたいと思いつつも、胃カメラのほうが人気があるらしくて毎回バリウムを飲む羽目に。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
今なら不味くない検査薬もありますが やっぱり実績のある不味いヤツの方が 病院では採用されてますよね〜
尿酸値って血液中の成分割合だから検尿とは関係ないですよ~
着替える前に受付で検便と検尿は提出すると思うのですが、何か順番がおかしくは無いでしょうか? 採血の時に思ったのですが攻撃と認識していないものを認識せずに防御効果が発動しないという事は、暗殺などには対…
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