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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十八章:新式ダンジョンの芽吹き
992/1205

992:ボス リッチ? 1/2

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 六十層のボス部屋は広いがシンプルな作りだった。四角い部屋の作りにいくらかの柱、そして奥に玉座。ゴブリンキングの間も似たような感じだったな。


 そこまでの間には何もいない。どうやらいきなり集団戦という訳ではないようだ。いや、でもあとから召喚されるという可能性もある。なぜなら、玉座に鎮座するモンスターがモンスターだからだ。


 一言で言うと骨。豪華なローブといくつかの宝飾品に彩られた骨は肩幅こそそれほどないものの、頭には王冠っぽいものををかぶり……セプターって言うんだっけか、豪奢な杖を手にしている。


「あれはもしかしてリッチという奴ではないだろうか」

「知ってるんですか、洋一さん」

「骨ネクロの上位存在みたいな感じ。魔術を探究するために人の生死を捨てた不死の化け物ってイメージで合っている。本当に不死だったらどうしようね? 」

「不死ならこんな中途半端な階層でボスにはならないでしょうから倒せはすると思いますが、その感じだとスキルがどのくらい効くのかが気になりますね」


 芽生さんはスキル攻撃の効き具合が気になるらしい。確かに近接攻撃しか手段がないなら射出に任せるしかなくなる。近寄ろうにもスキルが飛んでくるだろうから中々に難しい所ではある。


「とりあえずドアを閉める間ぐらいまではじっとしててくれるらしい。このまま帰る? 帰って対策考えてもう一回来ることもできるよ」

「せっかく来たんですし戦闘をしてみて、ダメそうだったら逃げて出てそれから対策でも遅くはないと思いますよ」


 ドアを閉める。念のため、再度ドアを開けてみる。うん、ちゃんと開いた。どうやら出入りはまだ自由らしい。戦闘が始まってから開閉を確認するのは最終手段なのでさておき、動き出さない今はまだ大丈夫という事を確認できただけ儲けものだな。


「一定以上近づくと動き出しそうですねえ。何処まで近づけば戦闘開始になるのやら」

「今ここからリニア式射出したらそのまま刺さって終わってボス戦終了にならないかな」

「それ、前にほぼ近いことをやりましたよね? またやるんですか」

「ほら、ボスは何回倒しても美味しいし。この間もエルダートレント一人で倒してきてみたけど何ともなく美味しい思いだけ出来たし」

「あ、それ聞いてないです。無事だからよかったものの、蔓でまた腕をねじ切られたかったんですか? 本当に目を離すと危ない人ですねえ」


 しまった、黙っておけばよかったか。


「よし、ボスを目の前に痴話げんかは止めよう。やるにしても倒して無事に五十六層まで戻ってからにしよう。今はボス戦に集中する時じゃないかな」

「洋一さんが言い出したんですよ? ……でもまあ集中することに異議はないです。ゆっくり近づいて何をしてくるか、それからでも遅くはないと思います」


 二人ある程度距離を取った状態でゆっくりリッチみたいなもの……この際リッチでいいや、レッサーリッチかデミリッチもしれないがここは気にするところではないだろう。奴に対して近づいていく。


 すると、冷気みたいなものが徐々に発生しているような気がしてきた。足元がうすら寒い。これもリッチが放っているものだろうか。


「そろそろ来ますよ。準備は良いですか」

「そのようだな、こっちもそろそろ行くか」


 ある程度の距離、ハッキリ何メートルかとは言えないが、その距離に近づいたところでリッチが王座から腰を上げる。そのまま杖をかざすとカタカタ顎を鳴らし始めた。


 すると、途端に周辺に魔法陣のようなものが現れる。数は四つ。何かが出て来るらしい。しばらく様子見をしていると、どうやら骨ネクロらしいものを召喚してきたようだ。召喚中のモンスターにダメージは通らない。召喚が終わってから殴りに行けるように魔法陣に近寄っておく。芽生さんに目配せすると、それぞれ近い魔法陣に対応を、と通じたらしく芽生さんも魔法陣に近づいて行った。


 やがて十秒ほどの召喚時間が終わり、骨ネクロが一斉に召喚を始める。こういうタイムラグのある集団戦になるのはちょっと頭になかったな。目の前の骨ネクロを一撃で破壊し、もう一つの魔法陣が有ったほうへ急ぐ。二人そろって召喚に手いっぱいなら、手が足りなくなる可能性はあるかもしれないな。


 やはり射出で先陣を切ったほうが良かったのか。とりあえずもう少し様子見だ。このまま召喚がひたすら続くようなら手を考えよう。


 二体目の骨ネクロもスケルトンを召喚される前に倒すと、一気にリッチへ近寄っていく。すると、召喚するではなくスキルを発動させてきた。水の弾が俺のほうへ複数個飛んでくる。当たって……いや、ここはボス戦だ、当たって平気である可能性は低い。きちんと避けながら進もう。


 スキルは芽生さんのほうにも、こっちは火の玉が飛んで行っている。お互いに躱し、そのままリッチに肉薄していく。やがて手に届く……というところで振りかぶった柄が何らかの障壁に当たり、弾かれた。


 芽生さんのほうは槍をそのままリッチに突き込むことが出来ているが、躱されたらしい。もしかすると雷切に対して発動した魔法障壁かもしれない。だとすると柄の雷切ではこの障壁を突破できない可能性が高いな。ここは純粋な物理攻撃じゃないと効果は無さそうだ。


 柄を保管庫に戻し直刀を取り出すと、そのまま振りかぶる。が、硬い骨に当たってなおも弾かれる。芽生さんの槍はそのままなぎ払いの形で当たり、リッチの身体を揺さぶる。しかし、実際にダメージを与えられている様子はない。


 一旦二人そろって後退する。


「硬い骨ですね」

「グレイウルフに骨与えたら何かしら反応がありそうな食いでのありそうな骨だな。念のため、スキルを最大火力で撃ちこんでみよう。それで反応を見る。結果が解ってるような気がしないでもないが試しておくのは大事だ。次の行動に移られる前にやるぞ」

「了解」


 芽生さんは【水魔法】と【魔法矢】の混合、俺は極太雷撃をお見舞いする。しかし、さっき見た謎の障壁に阻まれて本体には一切さわれないようだ。


「やっぱりスキル攻撃はだめか。だとすると射出を試してみよう」

「純粋物理攻撃としてみなされるかどうか、ですね」

「これで終わりなら楽でいいんだけどな……と、その前に避けよう」


 そっちがスキルで来るならこっちもスキルだぞ、と水の弾と火の玉がそれぞれ乱打で発射されてくる。こっちも【魔法耐性】があるとはいえ相手はボス。無事に済むとは思っていないので回避に専念する。しばらく撃ちっぱなしに対して回避に専念する時間が取られたところで、今度はまた召喚を始めた。


 召喚すると十秒間ぐらいはリッチにも隙が生まれるらしいことは目視で確認した。なら、いかに手早く骨ネクロを静かにさせてこっちから切り込みに行くかが勝負どころだな。


 召喚魔法陣に近づいて骨ネクロが動き出すまで魔法陣の横で待機。その後で全速力で骨ネクロを倒すと再びこっちの攻撃のお時間。芽生さんが突撃するより先に射出でゴブ剣を撃ち放ってみる。とりあえず駆け付け三本、プシュンと発射。リッチの身体に刺さる。刺さったが、ダメージ演出である所の黒い粒子の放出はない。もしかして、あばらの間に刺さって効果がないとかそういう奴なのだろうか。


 射出に続いて芽生さんが槍で思い切り頭をぶん殴る。頭はガチンと金属のような高い音を出して、相手の足元を若干おろそかにさせる。その間に足払いをかけてリッチは一旦地面に倒れる。


 その間に芽生さんが槍を使って刺さっているゴブ剣をグリグリと捏ねりまわしている。痛そう。だが、すぐさま自分に向けて火の玉を打たれたのか、避けて距離を取る。


 再びリッチが発狂モードに入り、火の玉と水の弾を連打してくる。このリッチは少なくとも二パターンの戦闘動作をするらしい。三パターン目があるかどうかはまだ解らないが、ダメージソースたるものを見つけないとどうにもならないな。


 リッチの攻撃を避けつつ肉薄、再び直刀で斬りにかかる。リッチのローブに切れ込みを入れる事には成功したが、手で剣は受け止められた。その指輪をたくさんはめたゴツゴツとした指により俺の斬撃は無効化された。


 指……指……指輪か。もう一度肉薄出来たらよく観察してみよう。一度離れて様子を見る。リッチはまた召喚を始める。これはスタミナを結構使わされるな。魔法陣のほうへそれぞれ陣取ると、召喚が終わるまでの時間少しの休憩時間をもらう。


 これ、二人で戦うボスじゃなかったな。せめてもう一人欲しい。そんな感じだ。人数が居れば召喚タイムは一人は自由に殴れる時間でもあるし召喚を阻止する事だってできるだろう。今更だな。


 魔法陣召喚が終わり骨ネクロを倒すと、今回はすぐさま発狂モードに入った。火の玉と水の弾しか乱射してこないことを見ると、他のスキルは使えないのか使わないのか。何にせよ避けて近づくだけなら何とか出来る。かろうじて当たりそうなものは雷纏や雷切モードで斬ったりして回避。止まったところでもう一度斬りかかる。


 リッチは手で斬撃を受け止める。そこまでは予想通り。俺が知りたかったのはお前の指にはまってるそれだよそれ。まじまじと指を観察する。


 一体何個物理耐性と魔法耐性の指輪装備してやがるんだ。そりゃ攻撃も効かんはずだ。魔法障壁みたいなものができるほどの数装備してるってことだ。


 おそらく杖を持ってて見えないが、もう片方の手にも同じくいくらか指輪は装備されているんだろう。これはまず指輪のほうをはがしてやらないとまともに攻撃がとおらないというギミックらしい。もしくはもっと特大の火力を持ってくるかどうか。特大火力をこれ以上盛るのはなかなか難しいだろうから、このギミックを解くほうで試してみよう。


 さて、どうやって引きはがしてやろうか。指を一本ずつ引きはがす訳にもいかんし……とりあえず芽生さんと相談だな。どっちが手首を引きはがしにかかるかも気になるし、両手にフル装備してるなら杖も奪い取って引きはがす算段までしなければならない。


 剣を持たれている手首を奪い取ろうと試してみる。リッチはそれに若干の抵抗を見せた。目のない眼窩が赤く光り、まるで何をすると言ったような感じでくぼんだ眼窩に本来ならあったであろう目が俺を威圧してくる。


 もしかしたらこれが正解ルートか。一つ解決法を見つけたような気がする。しかし、モンスター退治に手順を踏んでくるとはダンジョンにしては頭脳を使う戦いになるな。これ、一切指輪を拾わず指輪の情報も知らずに突っ込んできてたら死亡もあり得ていたぞ。


 一旦リッチから離れて芽生さんと相談しつつまた発狂モードを避け続ける。柱の陰に隠れて芽生さんと合流、相談を始める。流石の非破壊オブジェクト。ボスの攻撃と言えども柱に当たっては消滅していく。一応安全地帯はあるってことなんだろうな。


「攻略の糸口が見えた。あいつ指にえげつない数の耐性指輪着けてる」

「それで物理も魔法も大して効果なかったわけですか。じゃあ指輪をもぎ取れば勝機が見えてくるんですかね」

「問題はどうやって指から引きはがすかだな。手首ごと奪ってもいいかもしれないが俺にはちょっと方法が思いつかない」


 効率的な手首の外し方とか学んでおけばよかったな。勉強不足を痛感するが、こんなボス戦でそういう知識が役に立つとも思わなかった。何事も学んでおくべきだな。


「その辺は私が担当します。一応手首を狙って外す、ぐらいなら出来ると思いますので」


 相棒が頼もしい事を言ってくれる。ここは任せるほうが確実だろう。後はパターンの変化がないかどうかだけを心配するべきだな。


「よし、任せた。何とかして指から指輪を外してみてくれ。何なら指ごととか手首ごとでもいい」

「任されました。とにかく体から引きはがせばいいんですよね。なら何とかなると思います」


 とりあえずまた発狂モードに入った。こっちのパターンなら近寄るのは比較的楽。召喚モードは休憩時間が少しあるとはいえ、ネクロダッシュが待っているしその間に後ろから火の玉が飛んでくる可能性もある。また、二連続召喚された時にはスタミナを確実に削ってくる。


 やはりパーティーは人数が居るのが大事だな。俺達じゃなく例えば高橋さん達ならもうちょっと楽に戦うことが出来たのだろう。そういう意味では彼らにボス戦を任せるという手段もあったのかもしれない。


 まあ、ここまで二人でやってきてしまったのだ。スタミナの限界はまだ来ていないし体力的にもまだまだ動ける。攻略法が正しいものかどうかは解らないが、それに従ってまず動いてみるか。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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指輪のために周回する価値が上がるな 複数個で重複ありならスキルと同じかそれ以上の価値がある!さらに安全にダンジョン周回に挑めるな!
指輪ドロップするなら周回対象だぞリッチwww てか趣味悪い付け方しても効果重複するんだ、想像以上に壊れアクセだったんだな。
指輪もゴブ剣みたく消えてなくなりそうでw 確定ドロップで1個は落としそう 収納の指輪とかあればいいな
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