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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二章:出来ればおじさんは目立ちたくない

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99:初顔あわせ

いいね!が二万件超えてました。もっとしてくれても良いのよ。

 


 ジャイアントアントとの初戦闘だ。そして俺の復讐戦の始まりだ。これが普通の蟻なら巣穴に熱湯流し込んで終わりだが、ダンジョンではそうはいかない。


 まず警戒するのは酸。ショットガンのように飛ばされたら避けきる手段はない。できれば直線的であってほしいものだ。そのほうがまだ避けやすい。


 次に警戒するのは牙。現実大のサイズでさえ、硬い昆虫の殻を細かく砕いて運んでしまう力がある。腕ごと持っていかれる可能性は捨てきれない。


 相手の出方をうかがう。地面を這うようにそのまま真っ直ぐ突っ込んでくる。これは牙で来るかな。足元を噛みつかれそうになったので飛んで横に躱す。すると、すぐ方向を変えてこちらへ向かってくる。


 しつこいタイプは嫌われるぞ。


 相手のスピードに合わせて噛みつこうとする頭をスレスレで避け、そのまま相手の横をすり抜けその間に前足の一本と真ん中の一本を跳ね飛ばす。バランスを崩して立ち上がれなくなったジャイアントアントの頭の節を切り落とす。


 頭を切り落とすとアウトなのか、すぐに黒い粒子に変わった。ドロップとして魔結晶が落ちる。俺のキ〇タマを噛んだ恨みを一つ晴らした。


 多村さんも同じ戦法で向かったらしい。あっちのほうが手慣れているのか、俺が戦闘を終わらせたときにはもうドロップを拾い始めていた。


「無理そうなら援護に入る所でしたが、必要なかったですね」

「その辺予習はしてたんで」

「頭の殻を狙うと硬くて通らんのですよ」


 今度狙ってみよう、こっそりと。腕力全開で殴れば陥没ぐらいは狙えるかもしれない。もしくは触角か。アリは実は目がいいので、目を潰してやるのもアリか。アリだけに。


 そして次を探すが、次を探しに森へ入るのはリスクが高い、とりあえず順路に沿って獣道みたいになっている歩道を進む。横からうっかり飛び出してくるワイルドボアとジャイアントアントが時々いるのでそれを冷静に処理していく。


 ジャイアントアントが酸を吐いてきたら素直に避ける。一瞬足を止めてから尻をこっちへ向けてくるので合図としてとても分かりやすい。


 ただ、それに合わせて近づいて足か尻を切り落とそうとするのは危ういので止めておく。下手に近づいて酸の直撃を受けるのは避けたいからだ。


 ジャイアントアントは足を切り落として動けなくしてから頭を落とすのが最も安全だ。切り落とすまでに噛まれなければだが。


 十個目の魔結晶を拾ったところで気づく。


「もしかして、魔結晶のドロップ率が高い? 」

「まぁ、おおよそ二分の一ぐらいですかね」

「重さから予想して、八百円ぐらいですか? 」

「ニアピン賞ですね。後は牙が千五百円です」


 結構美味しいな、でも移動時間を考えたらどうだろう。やっぱり一日小西ゴブリンが安定じゃないかな。


 そのまま二人でサクサクと草を踏んでいく。草を踏んでいく感触が何だか心地いい。


 二人以外にサクサク、もしくはカサカサという音が聞こえたらそれはエンカウントの合図だ。二人して振り返り、ジャイアントアントが三匹現れていることを確認する。いつの間に後ろへ回り込んだのか。


「もうちょいわかりやすい足音してくれると助かるんですがね」

「音がするだけマシってものです」


 一匹ずつ相手にするが、後ろの一匹がこっちへ酸を吐いてきた。酸を横へ回避したら目の前の一匹が噛みついてくる。バックステップで牙を避けると、触覚を片方跳ね飛ばしその勢いで片目にグラディウスを突き刺す。


 見えなくなったほうへ身を寄せると、ジャイアントアントは俺を探し始めるがもう遅い、刃で首を叩き落とすために動いていた。首を叩き落とすと、嫌な予感がした。


 予感を信じてもう一度バックステップで回避すると、黒い粒子と化したジャイアントアントのすぐ向こう側から噛みつきに来ていた。いい勘してるぜ。


 そのまま正面から触覚を両方一気に落とす。狼狽えているジャイアントアントを前に右目を潰しにかかる。やはり目つぶしは有効。古事記にもそう書いてある。


 潰したほうの死角に入りセオリー通り首を落とす。両方とも魔結晶を落とした。


「中々でないですねぇキュアポーション」

「まあ、気長にやりましょう」


 まだまだ時間はある。戦闘には徐々に余裕が出てきたので言う通り気長にやるかな。


 それから三十分ほど戦闘が続き、まとめてではないものの、続々と奥からジャイアントアントが出てくる。


「そういえばアリはフェロモンで仲間を感知する器官があるそうですが、似たようなものを出してたりするんでしょうかね」

「これだけ連続で来るとそれも疑いたくなりますよね」

「さすがにそろそろ小休止したいかな……っと! 」


 ギリギリで酸を回避する。一発食らってダメージのほどを見てみたくはあるが、さすがに溶かされるのは困るな。噛まれてみて今の自分の防御力を試すのはアリかもしれないが。アリだけに。


「うん、やっぱりここは九層なんだな。戦闘の難易度が八層までとは違う」

「ソロで来なくてよかったですね。下手すりゃそのまま食い殺されていたかもしれません。多村さんには感謝しないと。帰りにボア肉出たら奢りますよ」

「やった、今日も肉が食える」


 確か在庫が一個バッグに入っているはずだ。最悪それを提供しよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 そこから更に休憩をはさんで三十分、ようやくジャイアントアントがキュアポーションを落としてくれた。


 手元のヒールポーションと見比べてみる。


「色が違いますね」

「ヒールポーションは緑色だけどそっちは紫なんですよ」

「なんか毒っぽく見えますね」

「薬と毒は紙一重って奴じゃないですかね」

「これ、病気に効くんですよね? 」


 本当に効くのか? 毒々しすぎるぞ。せめて黄色が良かった。


「風邪ぐらいなら半日で治るらしいです。リウマチも楽になるとか」

「医者代と比べると高い……いや、保険考えたら安いのか? 」

「芸能関係では重宝されてるらしいです。風邪ひいて出演見合わせになるぐらいなら金払って確実に治るほうがマシとかで」

「あ~……なるほど。ユ〇ケル飲んで数日療養するよりも飲んで半日で復活するほうが早そうですね」

「そんなわけで、わざわざ九層まで出向いてキュアポーションを集めるのも中々の儲けになるんです」


 納得した。芸能関係もそうだが、社長業でも同じだろう。年に二千万も三千万も稼ぐ人たちにとっても、仕事がしづらい時間はその分収入が減るわけで、ベストな状態を維持するにはもってこいの商品って事だな。


「さて、当初の目的は達成しましたがどうします? 」

「戻りましょう。下手な欲をかくと大抵碌なことにならない」

「引き際は大切ですね。帰り道の事を含めると一旦帰るのは良い選択だと思います」


 来た道を戻り始める。ワイルドボアがちょいちょいちょっかいをかけに来るが、ジャイアントアントに比べれば大したものじゃない。


 肉と魔結晶を回収しつつ、無事八層への階段へ戻ることが出来た。


 すると、階段で休んでいる人がいる。明らかに疲労している。


「上で何かあったんですか?」

「いやぁ、ダーククロウの群れに襲われましてね。ほとぼりが冷めるまでここに居ようかと」

「行きは良い良い帰りは……って奴かな」

「とりあえず階段を上ってみて量を確認しましょうか」


 最悪、全身をつつかれてフンまみれにされてひどいことになるのは覚悟しなくちゃいけないかな。


「ま、どうせ帰る道です。我々も一休憩してから上りますか。その間に散ってくれているかもしれない」


 糖分を補給する意味でも胃に何か入れておこう。カロリーバーを取り出して齧る。


「あ、それ巷で話題のバニラ風味ですね。スライムに使わないんですか? 」

「バニラ風味、気に入ってるんですよ。スライムにやるぐらいなら自分で食べたい程度には」

「ある意味贅沢なことしてますね」

「一本食べます? 糖分補給も大切ですし」

「いただきます。……なるほど、スライムが好むのはこういう味ですか」


 本当に好んで食べているのかどうかは解らないぞ。無理やり突っ込んだ感はあったし。


「好んでいるかどうかは解りませんが、これ食べてる途中に倒すとドロップが二個確定するんですよ」

「平田君が言ってたスライム狩り探索者の増加ってそういう意味でしたか」

「他の風味だと赤字だそうで。なんでバニラなんですかねぇ」

「スライムに聞くしかないでしょう」


 五分ほど休憩した。そろそろ上も落ち着いているはずだ。八層へ戻ろう。


 九層に居る間に、ワイルドボアの魔結晶が八個、ワイルドボアの肉を十個、ジャイアントアントの魔結晶を四十八個、ジャイアントアントの牙六個、キュアポーションランク1を一つ手に入れることが出来た。





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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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[気になる点] 平田さん相手にはカロリーメイト手に入らなかったって言ってたのに同じパーティーメンバーの多田さんに持ってること話すのはどうなんだろう? 確定ドロップの件はバレても良いと思ってるのかも知…
[一言] こちらで言うことじゃないかもしれないけど、良いねボタンの位置が悪いよね。 広告の下じゃなくて、読み終わった画面内に納まるようにしてくれてたらいいのに。 ついついランキングに載ってるような…
[一言] >もっとしてくれても良いのよ。 押したよー
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