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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十八章:新式ダンジョンの芽吹き
988/1206

988:かにかにうまうま

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 食事が終わって休憩。他の連中はさすがに食べ過ぎたのか、腹を上に出して一斉にご休憩のポーズ。そらあんだけ食べれば充分腹膨れるよな。みんな浜辺に打ちあがったセイウチみたいになっている。


 俺はかき揚げ丼と結衣さんに少し分けてもらった肉野菜炒めを無事に適量胃に納め、気楽な気持ちで休憩をしているが、他の連中は全員唸っている。これは本当に長い休憩になりそうだな。


「食い過ぎで倒れてる人、ダンジョンで初めて見た」

「出されたものは食べきらないと失礼なので」


 苦しいながらも言葉を絞り出す横田さんに少し笑ってしまう。だったら一つ俺の夕食に残しておいてくれるとか色々あっただろうに。多分それぞれが全種類をつまみだしたおかげで後に引けなかったんだろうな。


「無理しないでね。しっかり休憩とって胃袋がこなれてから動くようにしないと地獄見るよ」

「つい最近味わったようなこと言いはりますなあ」

「ちょっと探索手順をミスったことがあってね。食後にセーフエリアを二十分歩くはめになったよ」


 平田さんから突っ込みを入れられる。もうあの時と同じ轍は踏まないぞ。ちゃんと移動してから食事、セーフエリアに入ったからって油断しないこと。俺は学習する生き物なんだ、同じことを繰り返すことは多分ないだろう。


 とはいえ、予定よりもちょっと腹が膨れているのも事実。だが、今日はダーククロウさえきちんと収穫できれば後は収入の細かい所を気にするつもりはない。いつも通り、好きなペースで好きなだけカニを喰って帰ろう。


 とりあえずしばらく、平田さんの腹をつついて反応を見て過ごす。平田さんの腹がつつかれるたびにうっ、うっ、と呻きながら反応する。後は怖いのでほどほどにしておくが、ちょっと面白い。


 しばらく休憩した後体を動かし、胃袋が良い感じにこなれたことを確認する。そろそろいけるかな。打ちあがったセイウチたちを横目にし、俺の椅子の上に寝そべっているセイウチはそっとしておこうと思い、机を回収せずに出かけることにする。帰りに回収すればいいだろう。


「じゃ、俺は一足先にいつもの周回運動してるんで。机と椅子は帰りにでも回収するんでそれまで好きに使っててください」

「お世話かけまーす、いってらっしゃい」


 一人腹の調子が平気そうな結衣さんに声をかけて先に四十三層に向かう。しばらく運動してる間に再起動して後からついてくることになるだろう。すれ違ったら挨拶でもしていつものスピードで動き続けることにするか。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 一時間ほどかけて一周してきた。まずは慣らし運転。ここから少しずつギアを上げてより高効率により経済的にダンジョンを巡っていく。胃もこなれたし動きも問題なし、さあカニをウマウマしていこう。


 しばらく進むと前に五つ以上の反応。戦闘中のようだし、多分結衣さん達が再起動してここまで来たんだろう。そのままスピードを一切落とさず横を通り抜け、ついでに一発ずつ当てていき手伝い代わりの殲滅をしていく。


 多村さんだけは【索敵】でこっちの動きに気づいたらしく、手をあげて反応してくれた。他のメンツは何が起きたのかわからないまま少し立ち尽くす。その姿を後ろにしてそのまま通り抜けた。


 さあスピードを落とさず続きへ行くぞ。結衣さん達の取り分を奪っていく形になるが、ここで足を止めたり道を変えたりして自分のペースを落としたくないのでそのまま階段方向まで真っ直ぐ走り、道中のドウラクを倒しながら走る。モンスターに出会えないことになるが、奥へ行くためには楽が出来ると思う。


 結衣さん達も目的地は四十五層以降だろうし、一層分戦闘せずに動き回れる余裕と荷物の邪魔を減らすことが出来るはずだ、決して悪いことばかりではない。ドウラクの身は重いから奥へ向かって帰ってくる際にも重すぎるドロップ品は移動や戦闘の阻害になりうる。


 俺自身はスキルのおかげで重さや邪魔さを感じることはないが、行きに荷物を抱えたまま厳しめの戦闘を行っていくというのは中々に制約のある作業だと思える。その分の負担をこっちで分担したということにしておこう。


 もしスキルオーブがぽろっと出てしまっていた場合はまた別だろうが、こっちも【保管庫】のおかげで百日以上手元に残しておく事が出来る。その間に色々と覚えるか誰に渡すか考える時間の猶予は充分に取れる。選択肢があることは良い事だな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 結衣さん達とすれ違って四時間ほど、休憩を取らなくても走り続けることが出来るようになった。スキルのほうも体力のほうも、しいて言うならカロリーか。ちゃんと昼飯を胃に納めたおかげだな。


 これだけ長い間動き回っていればそれなりにカロリーだけで消耗してノッキングを起こしそうになるのが通常だとは思う。そこそこ体を絞りはじめている俺でも同じことを思う。


 その割にきちんと動けているということは、ステータスブーストのある程度の段階においてはカロリーではなく魔力の方を消耗することでカロリー負担を軽減している、という可能性はあるな。


 これはそろそろ【身体強化】という一つのスキルにおいて、どの段階からと断定することは出来ないが、魔力の消費で身体を強化している、という話であるほうがどうも実情にあっている気がするな。


 毎日これだけの運動量をこなしていて普段通りのカロリー摂取で済んでいるということはその一つの根拠になるだろう。一日六時間近く走り回っているのを考えると、一日に何千カロリーと補給していなければ体が持たない計算になる。しかし、俺の食事は毎日決まっているしそこまでカロリーの高い食事をとっている訳ではない。


 しかし、お腹が空くのも間違いないのでカロリーをある程度消費しているのは間違いないだろう。どのぐらいの比率で、という話になるとなかなか難しい所だが理論としては成り立っていると思う。


 ダンジョンにおける【身体強化】の発動プロセスと稼働中の身体に対する影響と消費カロリー、消費魔力の問題。うん、面白い話だ。既に誰かがもっとわかりやすくサンプルも多くかき集めて研究をしているだろう。その内誰かが論文発表でもしてくれるだろうからそれを参考に読んで自分を高めるとっかかりにでもしておこうかな。


 ……と、そろそろ時間かな。今日も良い感じに汗をかいた。収入は……まあ時間なりってところか。最後の最後に、とトップスピードでアイテムを拾えるギリギリの速さで階段まで全力を出しながら四十三層を走り切る。


 階段までたどり着いたところで深呼吸して軽く汗を引かせて体に乾燥をかける。ちょっと温度を下げた温風で軽く乾かすと、四十二層へ上がる。


 忘れずに出しっぱなしだった机と椅子を回収して、リヤカーをエレベーターに積み込んで七層へ移動開始。その間にいつも通り荷物を積み分けて茂君へ向かう。


 そして時間があるのでその間にまたクロスワードをやる……ってしまった、クロスワードの本を探すのを忘れていた。次こそは忘れないようにメモに書いておこう。最近物忘れがひどいのか、俺の中でクロスワードというものがそこまでウェイトの高いものではないのか。どちらかは解らないが次は忘れないようにしよう。


 七層までクロスワードを解き、到着したところでいつものスタイルにリヤカーを設置して茂君。帰ってきて一層。今日も無事に回収できた。


 茂君もそろそろ離れるべきかどうか悩む所ではあるんだが、俺が止めて他の人が同じように布団の山本に納品するようになるかどうかを考えると迂闊に止めて良いものかどうかは悩みどころ。まだしばらく……そうだな、一年ぐらいは続けなければいけないだろうな。


 その間にもしかしたら俺が集める時間帯に被る探索者が出てきて俺の出番が徐々に減っていって、布団の山本にも納品する量が増えて。そうなれば良い経済循環が生まれることになるし、俺がひたすら貯金を貯めこむよりも他の探索者が色んな方面に金をばらまく方が経済システムとしてはいい方向に回っていくのだろう。


 一層に上がり、退ダン手続き。いつも通りのリヤカーの使い具合に受付嬢も特に何も言わなかった。退ダン手続きを済ませると査定カウンターへ。


 いつも通り仕分けたドロップ品を順番に渡して査定。その間にリヤカーを元の位置に戻して、少し待つ。しばらくして出て来た今日の査定価格、七千四百四十三万九千円。そこそこの金額にはなった。


 いつものウォータークーラーの冷えた水を飲み、少し火照った身体を鎮める。この一杯が何にも勝るな。これがあるだけでやる気と体力がかなり回復する。さて帰るか。


 帰り道に考え事をしながら帰る。明日は五十九層だ。昼もちょっといいものにして英気を養えるようにしておこう。明日の昼のメニューは……照り焼きか。久々にワイバーン肉の照り焼きと行くか。


 馬肉でも良いが、午前中は五十七層を流して、階段に近い部分のモンスターが湧かない回廊内で食事という形になるだろうからそれほど疲れを感じることはないはずだ。疲れよりもまだ効果の解らない体の活性化とお肌プルプルに力を入れていこう。


 家につく前にコンビニによってちょっと買い物。日付が確かなら今日あたりにいつもの雑誌の最新号が……お、あったぞ。二冊ちゃんと確保すると、ついでに並んでいたクロスワードの本も購入。試しに解くだけ解いてみよう。飽きたら俺はクロスワードにこだわりがある人間ではないということが判明するいい機会だ。


 ついでに夕食のガッツリ弁当を購入。昼はそこそこで済ませたから夜こそガッツリ食べて明日の活力にしたい。ついでにサラダチキンも乗せてたんぱく質マシマシにしておこう。


 会計を済ませ今度こそ自宅に戻る。洗い物は今日はほとんどない。ゴミになった弁当の入っていた入れ物を洗ってゴミ箱に入れるだけだ。今日は一日手抜きの多い日だった。たまには良いが、慣れ過ぎても良くないとは感じている。たまには、そうたまにはだ。


 今の内に風呂を沸かし、明日のワイバーン肉の下処理をしておく。塩水につけて保管庫速度百倍で数分。塩水から取り出したらキッチンペーパーで水気を切っておき、そのまま保管庫へ百分の一にして放り込んでおく。これで朝の数分が短縮できるはずだ。


 さて夕食は……夕食は何かのパスタだ。パスタのソースは色々ある。今回はキノコをマシにしたキノコパスタにしよう。これは明日仕込めばいいな。今の内に仕込んでおくのはワイバーン肉を柔らかくする処理ぐらいだろう。


 風呂が沸いたので入りゆったりする。五十九層の後は六十層。六十層にはボスがいる。うろついているのかボス部屋で待ち構えているのかは解らないし、何分初めての階層でもあり、高橋さん達も言及してなかったところを見ると六十層にはまだ潜りこんでいないか、ボスとはご対面してないのかもしれない。


 もしかしたら一昨日遭遇しに行っていたかもしれないが、情報が無かったということは実際に出会ってないという可能性のほうが高いな。まだ、チャンスはある。


 明日一日でどれだけ進捗が進むのか楽しみだ。ボスの居るエリアはシンプルな構造である確率が高い。ボス階である六十層も階段を見つけたら即座に下りて階層を確認したいところではあるな。うろうろ歩き回って戦い通して、若干疲れたところでボス戦と行くよりは疲労を出来るだけ抱えない間にボスとは出会いたいところだ。


 明日即行って即ボスとご対面、となるかどうかは現段階では不明だ。何より、五十九層や六十層で新しいモンスターに出会わないとも限らない。より迷宮めいたマップになっている場合六十層へたどり着くのは難しいだろうし、どれも進捗次第ということだな。


 湯船から出て、風呂から上がる前に冷水をピシャッと浴びて汗をひかせ、その間に寝間着に着替える。明日の準備は大体できている。後はいつも通り食事を作って持っていく、それだけだな。


 ネットで熊本第二ダンジョンについて調べるが、例の動画の録画されていたものが、本人のアップロードの確認がされないままの状態でネットに上がっていて話題になっている。動画の権利を持つ本人はまだ警察で怒られている最中らしいので違法ということにはなる。が、見たいものは見たいのでこっそり見ておくことにしよう。


 盾持ちのゴブリンが居たという事実、これはボス部屋にも居なかった新しいモンスターだとして話題になっていた。何処までが新しい要素なのかも予想大会が始まっている。俺も詳細は知らないから知りたいところではある。他にどんなモンスターが居るのだろう。


 坂野ギルマス曰く七層まで潜ったら一般公開の予定らしいから、早ければ今月中、遅くとも来月の頭、価格改定の頃には開放されるものだという予想がされている。来月から本格始動か。まあガンテツのほうもちょこちょこ人が入り始めたことは確認しているだろうし、今は待ちの時間だと思ってじっくりダンジョンの続きを作るなりドロップ品の品質を上げるなりいろいろしているのだろう。


 さあ、世の中はちょっとずつだが変化しているが俺も何か変化するべきだろうか。変化……変化……思いつかない。何かその内変わることもあるだろうか。とりあえず今日のところは気にせず寝るか。変化と言われて翌日からはい変わったとなるわけでもない。時間が解決してくれるよきっと。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
> 四時間ほど、休憩を取らなくても走り続けることが出来るようになった」 ダッシュ(フルマラソン(の時間)2回分) > お腹が空く」 減った体内魔力を補充するためのカロリー > アイテムを拾えるギリ…
( ◠‿◠ )
ダンジョン研究かあ、やってる人もいるんだろうけどもまだまだ少数なんだろなあ
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