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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十八章:新式ダンジョンの芽吹き
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986:持ち球大放出

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 ジメッとした良い感じの朝。除湿をかけたままなので少し喉が渇いているが、汗もそうかかず気持ちよく起きることが出来た。だが、念のため、そしてこの季節の匂い対策のため、朝食を作り終わったらシャワーを浴びることにしよう。


 今日の朝食は昨日の残りご飯と残りシチュー、それから目玉焼きにキャベツ。栄養バランスはもしかしたらいつもより良いかもしれない。久しぶりに残り物を片付ける朝ごはん、というものになった。胃袋を満たすには充分な量があるのでしっかりと食べて今日一日色々するエネルギーをしっかり摂取していこう。


 今日は朝の時間に余裕がある。掃除洗濯細かい仕事、ゴミ出し庭掃きなんかを一通り終わらせるといつもの時間になった。さて、今日も布団の山本に行くか。


 いつも通り開店時間に電話で連絡を入れる。忙しいらしく、電話の受け取りがしばらくなかったが十数回の呼び出しの後ようやく電話がつながった。


「お待たせして申し訳ございません。布団の山本でございます」


 いつもの店長が出た。


「お世話になってます、安村です」

「これは毎度お世話になっております。お電話、ということは本日納品に来ていただけるということでしょうか? 」


 どうやら在庫がひっ迫しているのはまだ続いているらしい。ナイスタイミングという奴かな。


「その予定です。ダーククロウについては在庫から出せる分……大体十五キログラムになりますか。それだけ持っていく予定ですが、スノーオウルのほうはどうしましょう? 」

「そうですね……スノーオウルだけ枯渇する、という状況は今のところ予想はしていませんが、いつもの四キログラムをお願いしてもよろしいでしょうか」

「解りました十五と四で持っていきます。今から出かけますのでまた三十分後ぐらいに到着すると思いますがよろしくお願いします」

「はい、お待ち申し上げております。では、また後ほどよろしくお願いします」


 電話は切れた。どうやらあっちは相当忙しいらしい。今日はゆっくり商談してる暇はなさそうかな。早速車に十五キログラム分のダーククロウの羽根と四キログラムのスノーオウルの羽根を積み込む。


 早速車を出すが、急ぐ必要はない。その短い時間で布団が出来上がるわけではないからだ。あらかじめ持っていく量は伝えてあるため、今すぐ注文が入った布団が次いつ出来上がるのか。どれだけの予約を捌くことが出来るのかは組み上げられるはずだ。


 それ以降については俺の頑張り次第、いや、収入的にはサボり次第といったところか。一人で潜る時は毎日二回、朝と夜。週二で芽生さんに付き合うとして週に八キログラムか十キログラムが限界ラインってところか。


 三十分、きっちり使って布団の山本に到着したが雨が降ってきそうだ。早めに品物を引き取ってもらおうと入口に差し掛かると、ちょうど中に居た山本店長と目が合った。ハンドサインとボディランゲージで雨降りそうだから早めに引き取りお願いしますと伝えると、どうやら伝わったらしく奥から従業員が出てきたのでいつも通り説明しながら納品物を渡していく。


 一通りの納品を済ませ、店内に入ると、数名のお客様。忙しいのは確からしい。皆布団の新調に色々意見を聞いているらしい。今布団の新調がブームなんだろうか。まさかな。


 季節的にそろそろ買い替えるかって流れだろう。そこの選択肢の中にダーククロウの羽毛布団というものがラインナップされていることによって、夏でも気持ちよく起きれて快眠もできるとなると気になるってところだろうか。


 検品の結果を待つまで少し待たせてもらうついでに店内を見渡す。ダーククロウの布団のポップは出ている。やはりここがウリ、というところは外してないらしい。


 スノーオウルの製品も成分吸い用の枕は準備されているらしいが、その枕だけでもかなりお高い、ということは口にしないほうがいいだろう。下手に強盗するよりも金になる素材や製品がここにはある。


 しばらく見回っていると山本店長が戻ってきた。いつも通り席に座って冷たい麦茶を頂く。


「お待たせして申し訳ありません。ごらんのとおり、季節柄布団を買い替えるというお客様が増えておりまして。その対応と新しくダーククロウの布団を試してみようというお客様も増えてきて……と、これは前もお話しましたね。まあ、そんな感じでして」


 額の汗を軽くぬぐってようやく座って休める、といった具合だ。朝からこの客数ということはここのところ毎日こんな感じなのだろう。


「ご商売が好調で何よりです。とりあえず在庫を全部持ってきましたので次の納品についてはちょっとご約束できないのが残念ですが、出来るだけ努力はしてみようかと思います」

「有り難いお言葉です。今回の納品でまた予約待ちのお客様に布団を提供することが出来ます。これ以降のお客様は申し訳ないですが今のところ素材納入のめどが立たないので、と待ち行列に並んでいただくか諦めていただくかになってこちらとしては心苦しいですし稼ぎ時を逃すことになりますが、そこはまあ御縁が無かったということで仕方がないとあきらめるしかないですね」


 せっかくのお客様を……と残念そうな山本店長ではあるが、残念ながらこれ以上俺の手でどうにかこうにか出来る話ではなくなってきた。いっそのこと、ダーククロウをかき集めるだけの探索者を専属で雇って清州ダンジョンと小西ダンジョンでひたすらぶん回すぐらいしか思い浮かばない。


 そういう予定は……いや、そういうやり方もあるのか。そういう人生設計も面白いかもしれない。後でメモに書いておくか。


「こちらも全力で他からの納入をお願いしているところですので、どうぞ安村様は無理なくいつも通りのやり方で集めていただければそれで充分かと思います。こちらで無理を言ってかえって安村様に損をさせることは望む所ではありませんので」

「そう言われると気が楽になります。さて、お忙しいようですので早めに退散させていただきます。羽根のほうはまた溜まり次第こちらからご連絡する、ということで一つお願いします」

「了解いたしました。どうぞお気をつけていってらっしゃいませ」


 短いやり取りだったが仕事は済んだ。さて、家に帰って着替えて早速ダーククロウ狩りに出かけるとするか。そのまま車で……いやまて、このまま買い出しに行く方を優先してもいいのではないか。一日に二度も車を出すのは文字通りの二度手間だ。ここは買い物へこのまま向かってから家へ帰り、その後でダンジョンへ行こう。


 いつものスーパーで買い出し。悩むものは昼食を何にするか、ぐらいだな。昨日の今日だ、いくつか食欲を刺激させる弁当をチョイスして保管庫に放り込んでおく。これで昼食と夕食を済ませてしまうことにする。都合弁当を五つほど買い込んでおいた。


 コーラとミルコのお菓子も補充だ。お菓子は今回はどんなチョイスを攻めようか。ナッツ系で攻めてみようかな。ナッツのミックスの小袋をいくつか買って、まとめて渡してみよう。どれかが気に入ればこれをもっととせがまれるかもしれない。さて、ミルコはどんなナッツが好きなのか。


 ヘーゼルナッツ、アーモンド、カシューナッツ、そしてナッツの女王ピスタチオ。俺はどれもいける。ナッツだけをかき集めた一瓶四リットルほどもある巨大な奴を以前貰ったことがあるが、好きすぎてすぐになくなってしまった覚えがある。ただしピーナッツ、お前は仲間外れだ。種実じゃなくて豆だからな。


 さて、ナッツ類を色々仕込んだところで……酒か。冷えて無くても袖の下として通るように一本やっぱりいいのを入れておくか。常温で楽しむならブランデーが良いだろう。そこそこのお値段の物を一本入れておいて、高橋さん達と軽くコミュニケーションを取れる程度のものを足していこう。


 会計を終わり、メモを見返して隣のホームセンターに用事があるかどうかを確認、無さそうなのでそのまま帰る。


 家に戻って荷物を整理。葉物野菜とコーラはキッチリ冷やしておく。最下段の野菜室が半分コーラで埋まってしまっているがこれは諸事情でどうしようもないからだ。あえて突っ込みはすまい。


 たまには冷凍ものも悪くなかろうと思って買ってみた冷凍のライスバーガーを放り込んでおく。その内食べるだろうからその日までじっとしていて欲しい。


 念のため飲みたくなった時用のビールも冷やすと、冷蔵冷凍モノは一通りヨシ。常温のものは常温のままでいいだろうからそのまま保管庫に放り込んでゆっくり時を刻んでもらっておく。使うときはどうせキッチンかダンジョンの中だろうから保管庫に入る間は好きなだけ入り込んでもらっておこう。


 買った弁当をちんちこちんに温めて一応の殺菌を促し、保管庫へ。これで昼食夕食の準備はいいな。サラダは野菜ジュースで代用だ。今日の昼にはどれを食べようか。選べる幸せが手元にあるというのはいいね、悪くない。


 着替えていつもの探索装備になる。っと、朝洗っておいた洗濯物を干しておかないとな。部屋干しだが部屋干し対応洗剤で洗ったから大丈夫だろうし、除湿もかけておくから帰ってきたら乾いているだろう。さて……


 柄、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ナシ!

 保管庫の中身、ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。今日はほぼ昼出勤、到着して茂君したら飯を食ってそれからしばらくカニうまダッシュだ。久しぶりのカニの踊り食いだ。ここ数日は四十九層まで潜っていたから久しぶりの感触すらある。気合入れて、しかし明日潜る分の体力は残すべく、余力を確かめながらいこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 ダンジョンに到着した。そして、うっかり忘れそうになっていた指輪の提出を思い出し急ぎギルマスのところへ向かう。


「失礼します」

「はいはい……あぁ安村さん。結果ならまだ出てないよ」


 ギルマスはこの間の指輪の件について何かわかったことはあるかどうか確認をしに来たのだと思ったらしい。


「いえ、今回は追加案件です。もう一種類指輪が出てきまして。そっちの方もまとめてお願いに上がった次第です」

「もう一種類あるのか。更にもう一種類出てきたりはしないよね? 」


 一個ずつ送られても……みたいな顔をしている。気持ちはわかる。


「そこまで保証は出来ませんが、前回の物とは意匠が違うのできっと効果も違うものが出てくると思います。前回に引き続きつけたら最後外せない、なんてことになっても困るので、その辺を確かめるためにもギルドに提出しておいたほうが確実なのは確かですから」

「そうだね。解った、ちゃんと送って鑑定してもらうことにするよ。今日の用事はそれだけかい? 」


 他に用事……思い浮かばない。


「今のところ他の用事はないですね。昨日出たので今日持って来た、ただそれだけなので。多種類多装備をまとめて持ってきてよろしく、という形でお渡しするよりはこっちのほうがいいとは思ってますので、気長に待つことにします。効果によっては相当なお値段になるかもしれませんし、これが発掘できるのが現状小西ダンジョンだけ、という話になるなら小西ダンジョンの重要性が更に増しますから」


 流石に五十六層まで他のダンジョンでも潜りこんでるところはまだないだろうとタカをくくってはいるが、他のダンジョンから同じものが産出されることでドロップ品だという証拠として確認する、という段階にもなるかもしれないんだな。そう考えると今の段階で渡してしまってよかったのかとも今更ながら思うが、また出た時に考えればいいだろう。


「そういえば、熊本第二ダンジョンのほうの進捗はどうなってますか。何か情報はつかめてますか? 」


 ただ指輪を渡しに来ただけでは味気ないので世間話を振っておく。


「七層まで潜った後地図を確認して、その後で一般開放の流れになるかもしれない、という話かな。せっかくできた新しいダンジョンだし、海外からの流入客も見込んで民間に開放するほうが経済的規模を考えても儲かると考えたらしいね。観光旅行のトレンドになるかもしれないからと、空港から直通バスを引っ張ってくる案も検討中らしい。あっちはあっちで中々楽しそうでいいね」


 海外にもないダンジョンだからと色々と潜らせてみる、というのは確かに有りだな。海外からの旅行客も見込めるとなれば周辺地域に落ちるお金も多くなる。以前よりも活発な活動が見込めるとなれば是非もなし。もしかしたらいちご狩りツアーみたいに団体客でごった返すかもしれない。傍から見る限りでは楽しそうである。今のところガンテツの狙いは上手くいっている、という所だろうか。


「ま、安村さんは今日は一人のようだからいつも通り頑張って。無理はしないでね、うちの稼ぎ頭さん」

「無理せずできる範囲で儲けて帰ってきますよ。では」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
> 昨日の残りご飯と残りシチュー」 一日経ったカレーとシチューのイメージ差 > ハンドサインどボディランゲージ」 ピッ バッ サッ パタパタ 口で言ってもいいのよ > ダーククロウをかき集めるだけ…
そういやこの深さは他のダンジョンは到達できてないんだったか 限定ドロップは価値が跳ね上がりそうだなあ
( ◠‿◠ )
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