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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十八章:新式ダンジョンの芽吹き
982/1205

982:リビングアーマー考察

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!その他で発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 ほぼ昼になった。ちょっと早めの昼だが、午後からの時間を多めに取るために早めの食事をとって午後の探索の時間を長く取れるようにするのも配慮の内。


 回廊のモンスターが出ない場所まで移動するといつも通り机と椅子を出して着席。保管庫からまだほんのり温かいサンドイッチと飲み物を出す。普段の料理からすれば簡素なものだが、じっくり探索するためにあえて軽めにしておいて、その分夕食を豪華にはしたつもりではある。


 本当に豪華と言うならば何品目も用意して色々食べられるように配慮するのが本来の豪華な食事というイメージだが、そこはあくまでダンジョン飯。専属料理人がいるわけでも無し、料理だけのことを考えて探索に出られるわけでもない。


 それに何よりそれだけ前日から仕込んだり色々する時間があるならその分ダンジョンで探索して金を稼げと言われるのも目に見えている。


 だから美味しく栄養補給が出来れば今のところはそれで充分だということはお互い理解しているつもりだし、そもそも芽生さんはおごりの飯に点数は付けないと明言しているような女性だ。作ってきてくれてるだけでもありがたいと思ってくれているのだと俺が勝手に思っておこう。


「ふむぅ……何か考え事してますね。何ですか、昼食と夕食逆にすればよかったとかですか」

「それも考えたが、まあ満足して食べてくれているならそれでいいかなって」


 サンドイッチをパクパクと食べている芽生さんを見ていれば味がいまいちであるという感じは伝わってこない。味のほうは問題ない、胃袋のほうは解らないが、一応聞いておくか。


「それで足りそう? 足りないなら夕食からいくらか分けるけど」

「いえ、今からしっかり動くんでしょう? なら軽めの食事にしておいて夕食にゆっくり食べるほうがいいかと思います。今はお腹が空かない程度に食べられるならそれで満足ですよ」


 どうやら杞憂だったらしい。ホッとすると自分の分も食べ始める。うむ、いつもの慣れた味だが胃袋を満たすにはこれで確かに充分だな。そういえば最近満腹を通り越して喰いすぎるというほど飯を食った覚えはないな。腹八分で満足することに身体が慣れてくれたということだろう。


 食事を終えて読書タイム。芽生さんはサイコロ本の続き。俺はちょっと疲れを癒すためエアマットを出して寝転ぶ。ゴロゴロしている間に胃袋の消化をきちんとさせて動いてもお腹が痛くならないように体に寄りそう。


「クロスワードはしないんですか? 」

「あれはエレベーターの中だけということにしてる。そうじゃないと早々にやり終えちゃうからな」

「じゃあ、クロスワード集みたいなものをその内もちこむようになるんですかね。なんか売ってるでしょうそういう冊子」

「数独とか流行った時期があったなあ。それも悪くないかもしれん。エレベーターの中は純粋に暇だしな。暇つぶしになるようなものは後は食事ぐらいだが、においがこもってしまうのは料理によっては問題だ。一時間近く漂い続けるのはうんざりしそうだからな。本当にそうしようかな」

「よかったじゃないですか、それで新しい趣味が一つ増えますね」


 なるほど、趣味クロスワードか。認知症にも軽減効果があるらしいし、悪くないかもな。今の内に発生を遅らせていって、いざという時が来るのを遅らせることができるかもしれない。


 しかし、こうやってたまにやるクロスワードだから良いものであってクロスワードばかりを山ほどやることになったらうんざりするかもしれない。が、高いものでもないし保管庫に放り込むだけ放り込んでおいてやるかやらないかは気分で決めればいいか。やらないならそのまま保管庫の肥やしになるだけだし困るものでもない。


 横になりながら軽く目をつむることにする。アラームをかけて少しおねんねだ。午後の分しっかり動けるように……


 アラームの音でパッと飛び起きる。どうやら結構深めの眠りに入ろうとしていたらしい。疲れはそれほどないはずなんだが、今日の体調としてはそこまでコンディションが良いという訳ではないらしい。


 しかし、コンディションのいいときだけダンジョン、という訳にもいかないので眠れた分多少回復したんだと考えるほうがいいだろう。悪い時なりの付き合い方というのも学んでいかないとな。


 芽生さんはアラームの音で気が付いたのか、早速渡したしおりをあと何ページで挟もうか考えながらこちらが起き上がるのを待つ、といった姿勢だ。


 とりあえず起き上がってぐっと伸びをする。体が凝り固まっているとまではいかないが、横になっている間に多少硬くなっているであろう所を解きほぐしてストレッチをゆっくり始める。急にきついのを仕掛けると無理がかかるからゆっくりと、確実にやっていく。


 しばらくして体の解れを実感できたのでこのぐらいにしておく。その間に芽生さんは身支度を済ませ、いつでも出れるようにしていてくれたらしい。


「さて、ちょっとゆっくりしすぎた気もしないでもないが行くか。目標五十九層の階段の発見、可能なら五十九層での戦闘。多分四匹ワンセットになってくるだろうから一人当たりのプレッシャーはきつくなるだろうけどなんとかやってみよう」

「続きが気になるのでさっさと見つけて潜って戦闘の感触を確かめて、夕食食べて本の続きを読みましょう。今いい所なんです」


 どうやら続きが気になって仕方ないらしい。


「そんなに読みたきゃそのまま貸すけど? 」

「それはそれで休憩の楽しみがなくなるのでやはり休憩中に読むほうが楽しみ度が上がりますね。ダンジョンに潜る理由にもなりますし」


 本の続きが読みたいからダンジョンに潜るって理由で来る人、多分今は芽生さんだけだと思う。


 一通りの片づけを済ませるとそのまま真っ直ぐ階段へ。途中のモンスターを腹ごなしの一撃と思ってちょっと強めに攻撃を当てて倒していく。微調整をかけるにはまだ早い、もっと慣れてからだな。


 地図に沿って進み、道の真ん中に通せんぼするように設置されている階段までたどり着くと、下りて五十八層へ到着。到着したその場にはガーゴイルが三匹。二回来て二回ともいるので固定リポップらしいな。相手が動き始める前にこちらから動いて雷切一閃、至近距離で倒すと二匹目にも向かう。一匹は芽生さんが対処してくれているので安心して戦えるな。


 雷切でプツッと首を斬り飛ばしてしまうと素直に黒い粒子に還ってくれるのはリビングアーマーよりも解りやすくていい。あっちは黒い粒子に還るまでに何をすればいいのかよく解らない所があるからな。


 今度の戦闘の余裕が有ったら部位を一つずつ破壊していって何処まで破壊すれば倒した判定になるのか、そもそも急所は何処にあるのかを確認する必要があるな。


 とりあえず分かれ道まで小部屋を制圧しつつ前へ進む。ただ階段を探すだけではなく、道中の稼ぎも重要だ。特にポーションが落ちなければ今日の稼ぎは……うん、まだまだ目標には足りない。午前中軽く流した都合上予想よりも一本ほど少ない数しかドロップしていない。五十九層でそれを満たせるのかどうかは微妙な所だな。


 分かれ道まで来た。前回は真っ直ぐ進んで回廊部分に出ることを優先したが今日はどうするか。


「回廊部分らしきところをぐるっと回って部屋の広さを把握するのと、細かい所を巡って階段っぽいものに出会う可能性を上げるのどっちがいいかねえ? 」

「まだ巡ってない回廊部分に階段があるパターンもありますし、大人しく回廊部分を繋げる、でいいんじゃないですか? 」

「そうするか。一周するのに何時間もかかるわけでは無さそうだし、いきなり多角形の形になっているような場合はまた別だが今まで通りの法則で言えば四角形である可能性は高いんだ。角を見つけてきちんと折れ曲がっているのを確認するだけでも意味はあるな」


 回廊を完成させることにした。まず、回廊全体を完成させることによってこの階層のどの辺に階段があるのかを大まかに知ることもできるし、回廊から内側に入る道も把握することが出来る。焦って探し回る必要はない、落ち着いて、落ち着いていこう。ついでにリビングアーマーの数が少ない奴が出たら戦力評価もしよう。


 小部屋と通路を見比べながら、前回の地図が合っていることを確認。ついでに戦闘もこなしていく。しばらくガーゴイルが続いているが、小部屋に一か所リビングアーマーが二体だけという解りやすい局面が出来たので芽生さんと相談。リビングアーマーの弱点探しに役立てることにする。


 まず、一体を全力雷撃で吹き飛ばした後、二対一でじりじりと追い詰める。芽生さんがまず兜を飛ばす。リビングアーマーは兜を拾いに行くわけでもなく、そのまま戦闘を継続する。確かこれは前回も試したはず。リビングアーマーの視界? 視野? そのような器官は兜には付いてないらしいことはこれで確定した。


 次に槍を持ってないほうの片腕を弾き飛ばす。まだリビングアーマーは特殊行動に当たるようなことはしてこない。足を飛ばしたらその場に膝をつくのは解っているので、次は……槍だ。


 片腕を落とされ兜を吹き飛ばされてはいるが、吹き飛ばされているところから黒い粒子は噴き出ていない。ということはダメージにはなっていないということか。何処を攻撃すればダメージになるのか。やはり空っぽの鎧の中に何かしらのダメージの入るものを用意する必要があるのだろうか。


 試しに、吹き飛ばされた兜に対して雷撃を試みると、兜の部分から黒い粒子が微量噴き出すのを確認することが出来た。兜の中身にダメージは入るらしい。しかし、このまま兜を焼き続けても致死量までダメージを与えることは出来なさそうな手ごたえを、実際に触れた訳ではないが感じる。


 その間に芽生さんが槍術勝負で勝ったらしく、槍部分を手首ごと吹き飛ばす。すると、リビングアーマーはこちらの動きを見つつ槍のほうへ近寄ろうとしている。流石に武器がないのでは戦えないという判断をしているらしい。


 吹き飛ばされた槍を雷撃。すると、兜の時より多く黒い粒子が噴き出した。手首と槍が黒い粒子に変換されて消えていく。すると、リビングアーマーは動きを停止し、こちらに体当たりするように立ち向かってきた。


 どうやら攻撃手段を奪われると肉弾戦を始めるらしい。芽生さんが目で「もうやっちゃっていい? 」と促す。コクリと頷き、介錯してやることを確認。芽生さんはリビングアーマーの足を切り。その場に跪かせると中身が何もない鎧の内側に向かって槍を突きこむ。


 手ごたえらしきものはないが、黒い粒子が内部から吹き出し、リビングアーマーは全身が黒い粒子に還っていく。空っぽの中身から黒い粒子が噴き出して消えていく様は何とも不思議なものである。そして後には魔結晶と鎧の破片が残った。


「結局どういう仕組みなんですかね? これ」

「体の内部に当たり判定みたいなものがあって、部位にもそれぞれ当たり判定がある。槍を奪われると拾いに行こうとする。槍を消滅させると肉弾戦に移行する。どうやら急所は鎧の内部にあるらしい。足を切り飛ばせば移動をすることもできなくなる。拾いに行くって行動があったのは槍だけだから、槍さえ何とかしてしまえば対応はある程度絞り込める。こんなもんかな。得られたものはそれなりにあった」


 これまではスキルで吹き飛ばしていたから細かいことは考えていなかったが、見れば見るほど不思議なモンスターではあるな。


「面倒くさい相手ではありますね。なにより、鎧の内部に槍を突きこんだのに全く手ごたえが無かったんですよ。せめて反動の一つでもあってくれればいいんですけど、なんか倒した気がしないんですよね」

「そこはそうだな。確かに今までは肉感というか質感というか、ガーゴイルでも倒すだけの肉体があったし斬り込んだ感覚は残った。これは黒い粒子が鎧の内部を繋いでいて……いや、そうなるとキリ飛ばした部分から黒い粒子がもっと噴き出しても良いはずだ。多分鎧を構成して黒い粒子自体は内側にある程度の密度で残っていて、スキルなり攻撃なりでダメージ判定が入ったところでそれが噴き出す、ということだろう」


 今後は出来るなら槍を狙っていく方がより戦いやすくなるんだろうか。とりあえず戦闘評価は出来た。今後は四匹相手になったとしても槍にさえ注意していけば、逆に言えば槍を弾いてしまうことで正面戦力を大きく減らせることになる。雷撃で焼いてしまうのが最も簡単な手段ではあるが、非常時に相手がどういうアルゴリズムで動いてくるかを見定めることが出来たのは大きな収穫だろう。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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部位ごとに奪い取って他のリビングアーマーと差し替えたらどうなるのか見てみたい。 それぞれに個体認識があるなら差し替えは出来ないだろうけどそもそも浮いているのか、磁力的な物で固定化されているのか、霊体的…
リビングアーマーも槍を奪って逃げたらいじめられたりするのかな?
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