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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十八章:新式ダンジョンの芽吹き
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975:最短査定、しかし儲けは多く

88888888PVキリ番踏んだ人は報告お願いします(無茶

 ご飯を食べ終えて十分の休憩。その後すぐに移動したのだが、流石にエレベーターまで移動するだけとはいえ、エレベーターの足元まで歩く時間を考えたら食べてすぐ動くのは体に悪かった。それを考えて先にエレベーターまで移動しておくべきだったのだが。流石に十分休憩ではまだ胃は充分に休まっていなかった。


「満腹になるまで食べた訳ではありませんが、砂で出来た丘を登るのは食後すぐには厳しいものがあります。次回改善を要求します」


 お腹を抑えつつ芽生さんと五十六層の階段へ向かう。


「同感だ。次回に活かそう。ご飯はテントのそばで食べる、とな」


 痛くなった胃袋を抑えつつ、エレベーターに到着。念のためノートの書き込みを見ると、「五十九層まで到着、モンスター密度高し。されど五十五層ほどではない」と高橋さんらしき字で書きこみがしてあった。


 こちらも「五十八層到達。階段発見こそまだなもののモンスターにはそれほど苦戦せず。勇戦を期待する」と報告はしておくか。


 書き物を終えたところでリヤカーを畳んでエレベーターに押し込み、ポーションを袋に放り込んで畳んだリヤカーの上に乗せると一層までエレベーターで移動開始。クロスワードの続きでもやるか。芽生さんは雑誌を要求してきたので渡して、それぞれ思い思いの事をする。


「そういえば今日、何匹ぐらいモンスターと戦いましたか」


 芽生さんから質問が飛んだので、今日の朝の数を今持ってる魔結晶の数から引いてざっくりと倒したモンスター数を把握する。


「そうだなあ……二百五十ぐらいかな」

「二百五十ですか。つまり指輪はそのぐらい倒しても出ない品物だってことですよね。ここまでドロップが渋いドロップ品はスライムのヒールポーションかスキルオーブぐらいかもしれませんね」


 確かにスキルオーブの簡易版でしかも持ち運び受け渡しが自由にできる、となればそのぐらいのドロップ率は設定されていても不思議ではないな。


「自由に付け替えが出来るスキルオーブだと考えれば利便性はスキルオーブより高いからな。何より摩耗しないだろうしフリーサイズらしいし、パーティーで今日前衛に出る人がつけるとか、フォーメーションを組み替えることが出来る。効果よりも高く引き取られる可能性は高いし、何よりあの指輪は【物理耐性】だ。要人警護の観点から見ても需要は凄く高くなる。もしかすると【物理耐性】のオーブよりも高くなる可能性だってある。数が出るまでの話だけどな」


 一般人でも使える簡易物理耐性。需要はうなぎのぼりだろう。要人が用心するためにでも効果は高い。その金で命が救えるなら、とお守り代わりに持たされることもあるだろうし、もしかしたら最初思った以上にこれは使えるアイテムかもしれないな。


「だとするとあの指輪、返ってこない可能性もありますね。ちゃんとお金は支払われるんでしょうか」

「金にうるさくなるつもりはないが、金額がどうの実物がどうのでゴネられるぐらいなら今後うちのパーティーからドロップしないかもしれないね、って遠回しの脅しをかけることもできる。その辺はお互い腹の探り合いとかそういうのを無しにして一定額で取引されるようになればいいね」


 会話しながらもクロスワードを解いていく。……と、答えが解ってしまった。ブツリタイセイだ。このタイミングでこのワード。何かしらいいことがあるかもしれないな。


 一層に戻って退ダン手続き。リヤカーを畳んだまま出てきたのを不思議がられたらしく、少し質問をされた。


「リヤカーは使われなかったんですか? いつもなら満載して帰ってくるところですが」

「今日の階層は今持ってきても査定拒否の品物ばかりなので。査定にかからないものは全部ダンジョンの中に置いてきました」

「そうですか、なら安心です。事故とか厄介な事態になって探索が出来なかったとかそういうのではないんですね? 」

「安心してください、大丈夫ですよ」


 きちんとそういう部分を見て中で何か無かったか判断をするのも受付嬢の仕事らしい。ちゃんと仕事をしていて何よりである。


 査定カウンターに行くまでにリヤカーを片付け、袋ごとポーションを査定カウンターに出す。ポーションの本数を数えて、色を確認して、入力して、終わり。ものの一分で終わる手短な査定だった。もしかしたらこの一年ちょっとの探索者人生で最も短い査定時間だったかもしれない。


「いつも通り二分割で良いですか? 」

「はい」


 きょうのおちんぎん、八千六百四十万円。ポーションだけが査定品なので非常にシンプルかつパワフルな査定金額だった。


 支払いカウンターで振り込み。これで今日の探索終わり。いつも通り冷たい水を飲む。朝から降りやまなかったらしい雨の湿っぽさでじめじめしてきたが、冷たい水を飲むことでいくらか誤魔化そう。


 着替え終わって帰ってきた芽生さんにレシートを渡し、芽生さんが支払いカウンターへ。その間に五十八層の地図を見直す。回廊の角に当たる部分を回ることが出来なかったので全体の大きさがまだつかめていない。一辺分でも進捗を進めておくべきだったか、次回への課題は残るな。


「クロスワードの続き……ではないですね。次回探索の方向性ですか」

「こっちへは行ったからな。次回はこの続きを巡ってまず回廊部分が本当に回廊なのかを探るのか、最初の十字路で逆方向へ行って新しい方面へ地図を描き始めるか。まだどっちを選択しても階段へはたどり着け無さそう、という点では同じだ。運で階段見つけるよりもある程度周りが解ってる状態で階段の位置が判明するほうが最短距離を見つけやすいからな」


 今日巡った五十八層の地図のポイントを記して次回向けの対策を練る。


「いざとなったら私がどっちへ行くか選ぶから大丈夫ですよ。洋一さんに任せるとほぼ遠回りになりますからね」

「そうだな、期待してるよ」


 地図を片付けてバスの時間は……まだちょっとあるな。濡れるのも嫌なのでギリギリまでギルドの中でとどまって、それから芽生さんにバッグ経由で傘を返すとバスが来る三分前ぐらいにバス停に並ぶ。同じことを考えていた探索者が居たようで、バス停は一気に混雑する。


「結構混んでますね今日は」

「まあこの時間ならこんなもんだろうよ。指定席に座れそうにはないな」


 バスで駅まで向かい、別れて……お腹空いたな。カロリーバーという気分でもないし、ここは家の近くまで我慢してコンビニで何か買うか。ちょっとの我慢は美味しいスパイスだ。ここで満足するよりも家に帰ってゆっくりと満足を味わうことにしよう。


 駅で最寄り駅まで帰って、すぐ近くのコンビニへ。サンドイッチとたまにはビール、そしてミルコ向けのおやつをいくつか購入し、会計。探索・オブ・ザ・イヤーと月刊探索ライフの新刊は来週のはずなのでまだ店には出ていないはず。後は買うものはないな。


 家についてサンドイッチを咥えながら片付けとスーツの手入れ。空にしたカレー鍋に向けて……ウォッシュ。カレーのシミはかなりの量あったが、半分ほどは綺麗にすることは出来た。ついでに鍋の底にこびりついていた焦げの跡も落ちている。大分精度が上がったな。


 おかげで洗い物に使う洗剤の量も少なくて済む。将来的には洗剤と水をぶちまけてグルグルと回して水を流した後、ウォッシュをかければ綺麗になるようにするのが目標だ。生活魔法を極める道はまだまだ長い。


 洗い物を済ませて風呂を沸かし、少し時間が空いたので明日の予定を立てる。明日は朝はまだ良いだろうが、帰りは騒ぎになっている可能性がある。ガンテツが今日中に何とかすると言った以上、明日にはダンジョンが新装開店オープンしているだろうから、その話題で何処のダンジョンも探索者サイトもスレッドも騒ぎになるだろう。


 一連のダンジョン情報を知らない一般市民や一般探索者にとっては、ダンジョンは踏破しても時間経過で復活する厄介な存在だ、という認識が新しく出来るかもしれないな。


 ただそのためには白馬神城ダンジョンのほうも新装開店するという行動が必要になるわけだが、リーンも同じ新式のダンジョンを立てるか、それとも前のダンジョンを立てるか。それとも何も立てずにあちこちフラフラしているのか。どうなるかは不明だ。何せあのリーンだ、行動を予想するのは難しいだろう。


 作らない場合、白馬神城には復活しないのはどういうことだろう? という新しいダンジョンの謎が生まれることになる。そろそろダンジョンの不思議も二十四個以上になっているだろう。新しい情報公開が必要になるだろうな。


 そうなると口裏と現実の示し合わせをするためにまた俺が呼ばれることにはなりそうだが、あらかじめそれを織り込んでおいて行動した方が良さそうだ。


 と、せっかく時間があるので生活魔法を華麗に扱っている探索者が居ないかどうかちょっと検索してみる。すると、愛車の洗浄をウォッシュでやっている動画があった。


 擦ると傷がつくような砂汚れをウォッシュで徐々に綺麗にしていく。早送りで時々眩暈を起こしながらも、二時間かけて新品同様の外見にまで持っていった。


 こういうの、こういうのが欲しかったんだ。平和で有効活用できている生活魔法、やはり一家に一人扱える探索者が居ると世の中が上手く回る気がする。そんな雰囲気すら漂わせる動画だったので、いいねとチャンネル登録だけしておく。


 と、風呂が沸いたので早速入る。全身綺麗に洗う前にウォッシュをかけて、試しに身体の匂いを嗅いでみる。が、自分では綺麗になったかどうかが解らないことに気づく。体の表面の汗とか垢なんかは落ちてるような気がするが……しかし、綺麗になったからと言って落ち着かないのは間違いない。


 やはりちゃんと石鹸でこすって全身をマッサージするつもりで丹念に洗い、綺麗に流し終わると、湯船に入る。やはり体を綺麗にするのは生活魔法よりも自分自身の腕で洗って確かめるほうが気分的に大事だな。


 物理的に実際に綺麗になっているかはともかく、精神的にはちゃんと毎日風呂に入りたい。湯船でゆっくり湯につかりながらいろんなことを考える。


 今日ぐらいの強度で戦い続けられればいい具合の探索であると思える。金額的にも満足の行くところへは来ている。指輪こそドロップしなかったものの、次回ぐらいには出てくれるとレアドロップ的に美味しい所ではある。


 やはり金になるかどうかで考えれば金になるほうがやりがいという物がぐっと違う。……と、そうだ。そろそろウルフ肉の補充をしなきゃいけないんだったな。明日の午前中はウルフ肉目当てに二層に潜ることにしようか。


 午前朝一に茂君して戻ってウルフ肉集め。午後からは……何層に潜ろうか。五十層でいいかな。一人でもグルグル回れることは解ったので五十一層を巡ることにするか。


 今頃は無事に熊本第二ダンジョンも設置完了されている頃だろうか。流石に深夜に発見されることはないだろうから、明日の朝散歩に出かけた近所の人がダンジョンがまた出来ていることを警察に通報、警察からダンジョン庁に通達、急ぎでダンジョン周辺を封鎖してダンジョン庁からD部隊の緊急出動。現地着次第探索開始。まずダンジョンであることと、以前の熊本第二ダンジョンの地図とは異なることを確認して階層を下り、三階層にたどり着いたところで変化に気づき、完全に新規のダンジョンが出来上がったことが確認される。そういう流れだろうな。


 長官は解ってるとはいえ、これまでとは違って完全新規のダンジョンが設置された、ということを認識することになるだろう。今回のダンジョンは通信が可能になっているはずだ。ダンジョン内部から通信が出来ると気づくまでにどのくらいかかるだろうか。もしかするとD部隊が颯爽と確認するかもしれないし、意外と後になるまで気づかれないかもしれないな。


 みんながどこまで驚くか、楽しみだなあ。通信が出来るだけでも驚きだろうけど、おそらく二層からであろうドロップ品の変化、それから歩きやすくなったであろう階段。色々と楽しみだ。あぁ楽しみだ、楽しみだ。


 俺は一切潜らないのにワクワクしてきたぞ。遠くから掲示板か公式会見を待つ身としては、その会見で何処までの情報が開示されていくのか、掲示板でどう盛り上がるのか。離れてしまった熊本第二ダンジョンに潜っていた探索者達は戻ってくるのか。


 風呂から出ても新しいダンジョンのことを考える。新しいダンジョンでドロップする米や麦、果物やキノコの味や香りはどうなっているのか。ちゃんと美味しいものを提供できるのだろうか。その辺ある程度はガンテツにも伝えたはずだが、味がいまいちという話を聞いたらリーンにでも言伝を頼んでちょっとずつ改善できるようにはなったりするんだろうか。


 気になるな、ちょっと眠れんかも。眠る前に掲示板でも……と覗いてみたが、それらしき情報はまだヒットしない。発見はされてないらしい。とりあえず今やれることはない、か。


 眠りなおすか。横になって目をつむっていればその内寝入るはず。今は明日のワクワク感を楽しみにしつつも視界に移すのは闇。真っ暗な闇を想像してそれを瞼の裏に映せばよく眠れると聞いた覚えがある。試してみよう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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> キリ番」 踏んだ人がその時最新話を読んでいるとは限らない > 五十九層まで到着」 絶妙な先行具合を見せるTWYS > 高橋さんらしき」 特定するおじさん > 五十五層ほどではない」 抜かり情…
スキルの有効な活用方法は先駆者が情報公開してくれるかどうかで大きく変わりそうよねえ 想像力豊かな人は面白い使い方をドシドシ投稿して欲しいですな
熊本に行っちゃうのかな? ちと楽しみw
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