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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十八章:新式ダンジョンの芽吹き
973/1206

973:ちょっとしたセーフエリア

2/28に第二巻発売予定です。

https://renta.papy.co.jp/renta/sc/frm/item/393666

是非とも友人引き連れてお買い求めください。マジで。

 五十七層へ下りたところは相変わらず何もない。ただ柱が林立し、ここから次のマップだということを象徴するだけの様相を見せている。


「下りてすぐは何もいないんでしたね。最初の小部屋にガーゴイルでしたか」

「あれが固定湧きならそういうことになる。もしかしたらリビングアーマーと入れ替わっているかもしれないが、小部屋ごとにモンスターが居ることは間違いないだろうな」


 早速小部屋へ。するとガーゴイルが二体。微妙に部屋の東西南北とずれて配置されているところが気になる。そこまできっちり合わせてほしい所だ。多分リポップがうまくいかなかったんだろう、微妙に斜めを向いたその石像らしき物体はこちらに背中を見せているのが一体、こちらを向いているのが一体。


「まるわかりですね。初見殺しのトラップは失敗ってところでしょうか」

「初見じゃないからトラップにもならんわけだが、サクッと終わらせて次へ行こうや」


 二人とも、小部屋の入り口からサクッと雷撃と水撃を発射。スキルだけで片付けてしまう。ドロップを拾うと次の小部屋へ。とりあえず三つ小部屋を経由して、そこから折れて回廊部分の内側に入ることにする。そこから先の地図がまだないからだ。


 次の小部屋にまたガーゴイル。さらに次の小部屋もガーゴイルだがこっちは三体。二体はスキルで処理して一体は近接で仕留める。やはり、ガーゴイルはスキル攻撃よりも物理攻撃のほうが良く効くらしい。と言うことは、ガーゴイルは【魔法耐性】の指輪を落とすということになるんだろうか。


 どのくらいの割合でドロップするのかはまだ判断することは出来ない。いくらなんでも母数が少なすぎる。運のいいことに保管庫でそれぞれの魔結晶が保管されているので、それを参考にしてドロップ率を算出することは出来る。


「指輪、スキルオーブと違って個数制限とか時間制限とか無さそうだし、探索者相手の商売品としては金になるだろうけど。それをギルド引き取りにした場合どのくらいの値段になるんだろうな」

「安全対策って意味でも持ってて損はないとは思うので、中抜きほとんどなしって形で販売するんじゃないですかねえ。そもそも行きわたらせるだけドロップを拾ってくる人員も倒すモンスターの数もとてもじゃないけど足りない気はしますが」


 まだ五十七層に下りて七体しか倒していないのに、レアドロップの話を始める。まだまだ余裕のある証拠なのか、それとも午前中だから肩慣らしとばかりに余裕をぶっこいているのか。それはさておき、三体相手なら問題なく倒せることは解っているのでおそらくだが、五十七層で苦戦するパターンというのは少ないだろうと思われる。


 可能性があるとすればモンスター二グループと同時戦闘になった場合どうするか、ぐらいか。前後を挟まれる事はないだろうけど前と横から同時に、という可能性はある。索敵をしっかりしておいて相手の動くパターンに注意して居れば大丈夫かな。


 回廊側から道に逸れて回廊内部に入る。ここは道沿いにも小部屋にも両方モンスターが出現する可能性がある。索敵と両目をよく使って、本当にモンスターなのか、それとも装飾なのかを判断しながらの探索になる。


 この辺の小部屋は一度回った。このしばらく進んだ奥は未踏破の地域なので、まずは階段周りから少しずつ埋めていく形になる。


 やっていることは迷宮マップや花園マップと同じだが、今回明らかに違うんじゃないかと思われるところは、階段の大きさだ。このマップは今までと違って階段の幅が広い。つまり、ただ並んでるだけの小部屋に階段が設置されている可能性が低い。そこがポイントになるだろう。


「階段の幅からして、通路の途中とか折れ曲がった先なんかに階段がある可能性がある。見落とさずに行こう」

「小部屋ばっかり見てても仕方ないってことですか」

「このマップはそうかもね。午前中目一杯使ってその辺の探りをしっかり入れていこう。もしかしたら階段の裏側に到着、なんてこともあるかもしれないし」

「そうなるとぐるっと迂回する必要が出てきますね。面倒ですねえ」


 そう言いつつもまだ回っていない小部屋を順次確認し、モンスターが居るかどうかを確認、そして狩り。まだ金にならないとはいえ魔結晶収入と、そしてレアドロップである所のポーションは確実に金になる。というか今はポーションしか金にならない。今日はリヤカー要らなかったかな。


 金の話を考えていたら目の前から金の種であるところのリビングアーマーがゆっくりと歩いてくる。他にモンスターは……よし、二グループとかち合う可能性は低いな。さっさと倒して保管庫の肥やしになってもらおう。


 全力雷撃を浴びせることで全身から黒い煙がぶすぶすと上がる。中身が無く鎧しかないのでこの煙は鎧から立ち上っていることになる。中身入りなら中身が焼け焦げているんだろうが、鎧だけが焼けて黒い煙を上げるという若干不思議な光景だ。鎧のコーティングが剥げているとかそういう表現なんだろうか。


 頭の中でぼやきつつ二発目の全力雷撃。二発目の全力雷撃でリビングアーマーは黒い粒子に還る。やはりこいつは魔法耐性はそれほどでもない。もしくはこっちの火力がかなり上回っている。これもインゴットを溜めつつ五十五層と四十三層でしっかり鍛えてきたおかげだろう。自己鍛錬の成果を感じ取れてとてもいい。


 芽生さんのほうもきっちり倒し、ポーションも出た。これで今日の稼ぎはゼロではなくなった。一安心したところで次へ行こう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 ここまででおそらく地図の四割ほどは埋めた。午前中にもうちょっと地図を埋めておきたいところだな。このまま真っ直ぐ抜けて行って、一旦回廊の反対側まで抜けてから回廊越しに帰ってくるルートでちょうどいい時間になるかな。


「まだ気楽に回れる階層ですね。お金にはなりませんが」

「他の階層に潜ることを考えたら充分金になるとは思うけどな。ここが最深層だから一番儲かるんじゃないか、という先入観はそろそろ捨てる段階に来ているかもしれんぞ。今のところそれぞれ効果があって価値があるから金額に反映されているだけであって、今後はそれほど金にもならないものを集めていく方向に向く可能性だってある」

「ふむぅ……たとえばどんな感じになるんですか? 」


 芽生さんはいまいち頭で理解できないらしく、はてなマークを浮かべている様子だ。


「たとえばポーションだけど、これ以上上位のポーションが出ても効果に差がないとかね。ランク5のポーションとランク6のポーションがあったとしても、おおよそこの世にある病というものがランク5のもので回復しきってしまうならば、ランク6であったとしても高値で引き取る理由はなくなるじゃん」

「なるほど、そういう意味ですか。だとするとランク6であることの理由が無くなっていきますね……というか、ランク5のポーションで実際にどこまでの病気や症状が回復するんでしょう? 私たち、自分が取ってくる物に対して割と無頓着ですよね」


 たしかに、身近で感じている物と言えば食べ物とすっかり忘れ去られている化粧品と今装備しているボア革の手袋ぐらいだ。


「あ、でもこのスーツはダンジョン素材だぞ。間違いなく恩恵を受けているし、そのおかげかもしれないが今のところダメージらしきダメージはそれほど受けていない」

「あぁ、すっかり忘れてましたがこれもそうでしたね。でも、稼ぐ金額に対してダンジョンの恩恵を受ける金額は随分少ない所へ来てしまいました」

「そのうちダンジョン産の甘味料か何かを使った食べ物が出てくると思うからそれに期待かな。後は……カニ食いに行く予定もないし、ワイバーン肉も自分で取れるし、となるとやっぱり思い浮かぶ物はないな。そろそろダンジョン素材も数が出始めれば製品としての武器防具小物なんかが開発され始めているころだから、それを確かめに鬼ころしに見に行くぐらいだな」


 装備品にしても、そろそろワイバーン素材の第一ロットぐらいは出てきてもいい頃合いであるが、ドロップ品が査定にかかる数が希少すぎて特注になっている可能性は高めだ。


 もっとワイバーン素材を供給してくれと各企業で競い合って素材を買い集めた結果、やたら値上がりした商品になっているから店に出せない物になっている。そんな感じかな。


 思えば一時期通っているとはいえ、ワイバーン素材だけを集めにうろうろする、といった行動はとった覚えがない。スノーオウルの羽根集めの往復のついでにワイバーンを狩ってはいるものの、俺一人がかき集めたところで量は知れている。やはりもっと探索者を根本的に増やして取りに行けるようにする工夫が必要なのではないかと思うことにした。


「ま、なるようにしかならん。他のダンジョンで素材を専属で集めるか、ダンジョン作戦群にお願いして素材を優先的に集めるようにギルドから働きかけるぐらいしか思いつかないからな。たとえばワイバーンは生息数は少ないにせよ素材ドロップ率自体はそれほど低くはないんだ、気合を入れて集めに回ればそのうち市場需要に対応していくようになるさ」

「ワイバーン素材もそうですが、インゴットで何が作れるようになるかも気になりますね。ここらで武器のほうも新調する段階に来たかもしれませんし、もしかしたらモデルケースとして最初の一振りを作ってもらえる機会に恵まれるかもしれません。前向きに行きましょう」


 前向きに進もうと思ったところで折り返しの時間になった。


「よし、帰って飯にするか。オーク肉カレーが保管庫で温かいまま待っている。ご飯も多めに用意したし、夕食は回鍋肉だ。カレーも残ってたらカレーも食べられるしとりあえずこの辺で一旦戻ろう」

「安村家のカレーは美味しいので楽しみです。一晩寝かせましたか」

「寝かせて朝しっかりを火を入れてきたから食中毒の心配はないはずだ。回鍋肉も今なら出来立てだが、そっちは夕食までのお楽しみということで」


 そのまま回廊の反対側へ道を突っ切り、モンスターの現れない安全圏まで抜けたところで階段へ戻って……ん?


「よく考えたらここは安全だと解っているんだから、階段まで戻る必要はないんじゃないか? 」

「そうですよ。ここで食べますか? 」


 ここでか。ここでキャンプ用の椅子と机を出すというのは若干風景がぼやけるな。せっかくならゴージャスなアンティークっぽい椅子と机で食べたかったな。


「雰囲気はぶち壊しになるがここで食べるか。出来るだけ端っこで食べよう。ど真ん中で食べて落ち着いていられるほど無神経でもない」

「じゃあここで食べてここで休憩して途中から探索スタートですね。そのほうが無駄が無くて良いと思います」


 五十七層でそのまま食事にすることになった。セーフエリアで食べるほうが絶対安全なのは間違いないが、ここで出てきても最悪スキルで対応できることを考えるとまあ次に安全であると太鼓判は押せる。


 回廊部分のちょっとした小部屋のようになっている三叉路のふくらみの端っこで食事をとることになった。充分な広さがあるのでちんまりして食べる必要もないが、もしリポップしてこっちに来た場合を考えると出来るだけ壁側……つまり小部屋や通路がない側に近寄ってゆっくり休みたいところ。


 索敵をガンガンに効かせたまま机と椅子を出し、米を炊飯器から深皿によそい、カレーをたっぷりとかけて食事に入る。今日のカレーはオーク肉。しっかり煮込まれたおかげで程よく中に溶け込んだオークの脂がまだ立ち上る湯気からほのかに漂う。うむぅ、腹がより減ってきた。


 さて、午後は余計な移動時間を少しばかりカットできたことになる。その分探索に当てられるとしたら、迷わない限りは今日中に五十八層の階段を見つけることは難しい話ではないだろう。


 後はポーションを何本拾って帰ることができるかだな。十本拾えれば充分と言ったところか。五十八層のモンスターの密度を予想するとそのぐらいは行けそうな気がする。この階層でも一時間に一本ほどが回収の目安になるのでより密度が高いであろう五十八層ならもう一声行けそうな気がする。


 毎回三匹セットで来るであろうモンスターとの戦い方を頭の中で組み上げながらカロリーを補充する。手が抜けないほどの密度になる可能性は低い。ただ、一回一回でちょっと油断はできないかもしれない、そのあたりがこの五十八階層での戦い方になりそうだ。


 となると五十九層ではさらに密度が高くなり、六十層では四体セットが標準になることが考えられる。そこまで来ると実際に戦ってみないとどう戦えばいいのか解らないな。先の先を考えながら、胃袋にカレーを納めた。残った分は家に帰ったら食べよう。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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ツッコミのキレが悪かったのでネタ帳から放出 非生物収納おじさん: ・ゴーレム等「生きていないもの」を稼働中にも関わらず収納できる可能性 ・レベル差等により相手が抵抗する事は可能 ・再起動の準備をせず…
安村さんたち、指輪の価値を低く見積もり過ぎじゃないかなぁという気はする。 消費期限アリで使い切りのオーブとちがって永続的な装備なので、 ・いつでも取引可能 ・どこへでも持って行ける ・誰でも使える と…
6以上どうなるんだろうなぁ遺伝子レベルでの治療とか若返りとか継続回復効果や予防とかどういった形になるのかは確かに気になる
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