971:半休、家事、自宅にて
ダンジョンで潮干狩りを
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朝帰りである。昨日は一泊二日でスノーオウルの羽根をこれでもかと言わんばかりに取り尽くしてきた。モンスターは無限湧きするので本当に取り尽くす事はないが、納品数回分の羽根を確保することが出来た。一晩潜った分だけ収入のほうも確実に入り、さて、ひと眠りしてから午後の半休を楽しもう。
午後半休にするなら昨日潜らずに今日一日頑張って潜るということもできたのではないかと思わなくもない。だが、一日日帰りで仕事するよりも一泊して中で程よく仮眠を取りつつ潜りっぱなしにしたほうが稼げるのも事実。目的は一日の稼ぎを更新することではなく羽根をひたすら集める事だったので、これはこれで良かったんだと自分に言い聞かせる。
とりあえず、昼食何にしようかな。若干頭が鈍いので少し仮眠してから何か料理をする、という形にしようかな。スノーオウル枕で一眠りして眠気だけ飛ばしてしまうか。体を動かす予定はないし、今はまず仮眠を取って眠気だけ飛ばしておこう。
二時間ほど仮眠を取って睡眠欲だけを吹き飛ばした後、ようやく行動を始める。まずは保管庫の中身の片付けをしてから、その後家の中の掃除。家具を保管庫に片付けて、壁のシミや汚れに向けてウォッシュ。これでまた一つ家の中が綺麗になった。どんどん綺麗になるぞと調子に乗ってあちこちにウォッシュをかけていると地上でのスキル稼働限界が来たらしく、軽く眩暈を覚える。
魔力最大量が増えたからと言ってやはり限度はあるのだろう。ドライフルーツを一噛みして体調を戻した後、普通の掃除だけに切り替える。他の部分のしつこい汚れに対するウォッシュはまた後日やることにしよう。
家中の掃除が一通り終わった後で洗濯物をまとめて洗濯すると風呂場もついでに掃除する。見た目だけなら風呂掃除もウォッシュ一発で綺麗になるが、今のところかなりしつこい水垢までは落としきれないようだった。今後の生活魔法スキルの発展を願いつつ、今はしっかり擦って落としておく。
これもその内一発で浴室丸ごと綺麗にすることが出来るようになるだろう。家中を一発で綺麗にする方法とかあるのかな。生活魔法の多重化……そこに賭けてみるべきか。出た時に考えよう。
一時間ほどかけて一通りの掃除は終わった。ここで遅めの昼食をとることにする。手軽に食事をしたいのでシーズニングか生姜焼きか、どっちにしようか悩んだ末にまだ使ってないシーズニングの具合を確かめることになった。実験台はウルフ肉。これもそろそろ集めに行かないといけないな。一日フルに使う必要はないがちょっとした時間を作ってまたお肉を補充しに行こう。
一口大に切ったウルフ肉にみじん切りにしたタマネギと一緒に軽く焼いた後、トマトとシーズニングを入れて軽く煮込むだけ。蓋をして十分待てば完成だ。今日のお昼は久しぶりのパックライスだが、米が炊けるまで四十分も待ってられないというのが本音のほう。掃除を始める前に米を炊いておけばよかったという後悔が残った。
それ以外にはいつものキャベツの千切りを添えて出来上がり。皿に盛ると、シーズニングに混ぜ込まれているハーブの爽やかな香りが空腹感を誘う。早速頂きます。
うん、うん、いい。胃袋から食道を抜けて鼻に逆流してくるハーブがとてもよく香り、それが食欲を更に増進させる。パックライス一つと言わず二つでもいけそうなぐらいの美味さだ。サラダはともかくとして、まずそれぞれに偏りが出ないように順番に、交互に米と肉とサラダを胃袋に納めつつ舌を楽しませていく。
パックライスは比較的早めに無くなり、二つ目に入った。肉はまだまだ残っている。キャベツは先に食べきってしまったが、このトマト煮と形容すればいいらしいシーズニングの食事は中々の大当たりだ。だが、同時にこれはダンジョンで初回を食べてしまっていたらヤバかったかもしれないと慎重になる一品でもある。
コメに対してトマト煮の量が適切に計れない。明らかに米一合では足りなくなるこのボリューム感と襲い来る空腹との対比は今試しておいてよかったと言える。これをダンジョンで食べるときはコメを多めに炊いて用意しておく。ちゃんと料理メモに付け加えておこう。
パックライスを軽々と二つ空け、満腹になったところで遅い昼食を終わらせる。夕食もシーズニングで何か一品攻めてみようか。食べる時間になったらまた一品選んで作ることにしよう。今日はシーズニング祭りだ。肉はある、野菜もある。足りなければ買い出しに行けばいい。休日だし体をしっかり休めて明日に向けての気力を蓄えておくのは大事な作業と言える。
適当にニュースやスレッドを見て過ごす。先日のエルダートレント討伐はバッチリ見られていたらしく、スレッドで俺が倒したと報告がなされていた。小西ダンジョンでは、スーツで一人で活動する時点で俺にターゲットが絞られる。スーツを着た集団が来訪する可能性はあるが、ソロで三十層をうろつく理由があるのは俺ぐらいだろう。
主目的は馬肉だったのだが、ソロでのエルダートレント討伐という一つの目安をクリアできたことで自分の強さの再確認もできた。持久力ではなく瞬間火力という方面でも問題はないということが解った。次に力試しをするならやはりヒュージスライムになるのだろうか。
予定はないが、もし自分を顧みたくなるような心情になった場合にチャレンジしてみよう。と言ってもヒュージスライムを倒すのは短時間高火力よりも持続的にスライムを狩り続ける忍耐力のほうが大事のような気がする。その時になったら考えるか、嫌になったら放置して帰ればいいしな。
熊本第二ダンジョンの情報はまだ上がってこない。最終チェックにてこずっているのか、それともまだ奥まで作ろうとしているのか、それとも他の理由で少々遅れているのか、それともこっちで考える時間の長さとガンテツのいう所の時間の長さがそもそも違っている、という可能性だってあるな。
数千年という単位でダンジョンを経営する彼らの事だ、数分と数日がほぼ同じようなもんだと言われたらそうかもしれないな、と返すしかない。俺としてはみんなが動揺する様が見たいので早く出来てくれないかな、と考える所である。
ダンジョン関係のニュースとしては大きく報じられるようなものはない。しいて言えば高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンで活動しているパーティー『土竜』のインタビューが掲載されていた事であろうか。
インタビューによると、その段階では現在四十五層までは潜ってきているらしい。が、ボスで足止めを喰っているらしく、スキルの拾い集めや火力の集中などの構成を再確認して挑みなおして、攻略次第下層へ行くという形にするようだ。
ボスを倒さなければ下層へ行けないというわけではないのだが、道中のボスを倒してから更に奥へ向かうのが彼らなりの探索の仕方、ということらしい。律義だ。新藤竜也という彼の見た目や言動からはそういう物は感じ取れなかった。いや、冷静になって考えれば、ボスを倒して報酬を受け取るというほうを優先している、と考えればつじつまは合うのか。
ボス撃破の報酬で何を求めるかまでは解らないが、そこにちゃんと理由があるのが他のダンジョンでは普通のことであって、小西ダンジョンみたいに七層おきにプレゼント、みたいなことにはなっていないと考えるほうが自然なんじゃないか。だとすれば他のダンジョンは結構苦戦してるんだろうな。
もしかしたら四十五層のボスを撃破しないと四十九層含めてそこまでのエレベーターが通じていない、そういう可能性もあるのか。流石に他所のダンジョンではどう? ウチは七層おきにプレゼント貰ってるけど? みたいな聞き方はあおっていると感じ取られる可能性がある。彼らにはそのままボス初回撃破のために頑張ってもらおう。
次回は『猛寅会』のインタビューを予定しているらしい。東西でどれだけ難易度の差があり、ボスの強さに差があるのかもわからないがそっちのインタビューに期待しておこう。その内順番が巡り巡ってこっちにもお鉢が回ってくるかもしれない。そういえば、俺達にはパーティー名はないな。結衣さん達にもない。やはり地域性を前面に出した気の利いたパーティ名でも考えておくべきなんだろうか。
ネットの海に潜り込んでしばらくして、本格的にやることが無くなってきた。夕食の買い出しに……行くか。夕食はシーズニングのどれを作ってみようか。手持ちとネットの情報と見比べてみると、一品物のおかず向けのシーズニングもあるらしい。
これをちょっと買ってみて、その出力のほどを調べたくなってきた。早速売ってそうな店に向けて出発するか。と、出発する前にあらかじめコメは炊いておこう。コメに合う何かしらを見つけにさあ行くぞ。
車で二十分、いつもよりちょっと離れたいつもと違う系列のスーパーへ到着する。ここにはスパイスとかシーズニングとかそういう物を多く取り扱っていたはずだ。スマホで調べたシーズニングを……あった。これの中で食べそうな奴を一つずつ買ってみて、試しとしてみる。
その中でも今からでも食べてみたいと思った奴は二つ買っておこう。きっと家に帰ってもう一個買えばよかったと考えるはずだ。シーズニング一つのために車を出すのは地球環境に優しくない、ここは財布の中身が若干傷むほうを優先しよう。
米はある、パンはある、卵もある。トマトは今日使ったから補充かな。後はキャベツもまだある。明日の昼食の予定は……カレーか。カレー用の野菜も買って帰ろう。今日は仕事が無かったし時間も空くから事前に作って冷蔵庫で寝かせて朝になったら再度火にかけて一晩おいたカレーのコクをたっぷりと味わえるようにしておこう。
肉は何にしようかな。ワイバーンカレーは最近作ったから久々にオーク肉と行くか。レッドカウ肉もワイバーン肉も在庫はあるが気分で肉を選ぶのが我が家式のカレーだ。文句があるならよその子になるか自分で作ってきなさい、という所。
後はミルコ向けのお菓子と飲み物か。訳あり大袋せんべいとコーラ、それとこまごまとしたチョコレート菓子、ミントタブレットが底を突き始めているのでこれも箱で。なんだかんだで色々買ったな。
会計を済ませて家に帰り、芽生さんに明日はカレーですよと一報だけ打っておくと、早速シーズニングを使って調理を始める。まずはおかず兼調理用のおつまみに、キャベツにかけて混ぜるだけという非常に簡単な奴をチョイス。キャベツもせんぎりではなくちぎって食べやすい大きさにしたやつをごま油とシーズニングで和えて終わり。調理時間五分のお手軽おやつの完成だ。早速試しに味見。うん、美味しい。これは明日も作って持っていこう。
夕食にはガーリック入りシーズニングパウダーを使ったチャーハンにウルフ肉のサイコロステーキを添える。ウルフ肉を焼いた後の脂でチャーハンを炒める。炒めながら具材とシーズニングを混ぜ合わせてウルフ肉も含めてまとめて焼き終えて、カリッとした部分が出来上がり始めるあたりで火からおろす。
少し寂しい夕食になったが、チャーハンとおつまみキャベツの出来上がりだ。今日はこれでいい。明日たっぷり動くし食べる。今日の運動量を考えればこれだけあれば充分だろう。
味は良い。ニンニクの香りも食欲をそそる。ただ、量は……もうちょっとご飯が多くても良かったかな。味がかなり濃いめに出来てしまっている。その分ウルフ肉にもうちょっと味を染み込ませて、そう焼く前に振りかけておいても良かったぐらいだな。
おつまみキャベツもごまの香りとシーズニングが混ざっていい感じになっている。どちらも喉が渇く系の食材だ、食べ終わった後水分が欲しくなるだろうな。
ざっくりとご飯を食べ終えたところで片づけをして、明日用の食事の準備だ。カレーを作ろう。いつも通り具材を切って、最後に残っていたタマネギのチャツネペーストを使い、いきなりあめ色タマネギのカレーを肉と一緒に炒め始める。玉ねぎは追加でいくつか使い、食感が残るようにする。玉ねぎの二重使いのため、炒めたタマネギの甘い香りが徐々に空間に広がり始める。
タマネギを炒め終え、肉も焼けたところで他の具材も追加し強火で少し煮てアクを出してとる。その後で蓋をして弱火でコトコト煮込み始めたところでルゥを追加。しっかりかき混ぜた後、風呂を沸かして風呂が沸くまでひたすらカレーをかき混ぜながらとろみを出す作業に従事する。風呂が沸いたところで火を止めて氷水につけて一気に冷やす。しっかり冷やしたら容器を一旦移し替えて冷蔵庫に入れて一晩。明日の朝鍋で温めなおしてカレーをもっとコクを出すようにしよう。
カレーは中途半端な温度で放置するのが一番よくないと聞いた。ダンジョンで食中毒というのは避けたいからな、しっかり温度管理と菌管理をして安心して美味しいカレーを食べられるようにしよう。
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