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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十八章:新式ダンジョンの芽吹き
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960:あさー、あさだよー

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!で発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 きもちのいい夜を味わい朝まで頑張った。徹夜だ。体力勝負は早朝にまでもつれ込んだが、かろうじて俺の勝利。勝利報酬として俺が満足するまで相手してもらった。


 最後は虫の息ギリギリまで追いつめたかったが、本当にヘロヘロになる手前ぐらいでやめた。四十代とは言え、現役探索者の体力をなめてもらっては困る。こちとら毎日八時間ダッシュで持久力は鍛えてるんだ、そうそう早く沈没してしまうようなヤワな体はしていないってことを見せつけることが出来た。


 芽生さんは眠っている。もしかしたら気絶寸前だったかもしれないが、本人もお楽しみのようだったので問題ないだろう。こっちの相性も悪くない、のかもしれない。もしかしたら俺が一方的に気持ちよくて実は……という可能性もあるので、今後末永くお付き合いしていく間にその辺のすり合わせも行っていくことにしよう。


 窓のカーテンを開けてレースだけの状態にする。朝の陽ざしが気持ちいい。少々黄色く見える太陽だが、これもまた一仕事終わったようにさえ見えるのが誇らしい。


 ついでに言っておけば、俺の息子は元気である。まだまだいける。今日予定が無ければそのまま昼まで勝負を挑んでいたかもしれないが、芽生さんが完全にダメになってしまうことも考えるとそこまで無茶はさせられない。こういう無茶が出来るのも若い間だけだ、というのを今の内に知っておくのも大事だろう。よし、今日は大事な気付きをお互い得られたということで納得しておこう。


 気分が高ぶってくれているおかげで眠気がさっぱり来ない。多分気分が高揚してそれどころではない、という感じだ。ただ、そのままダンジョンに挑むのは危険なのでスノーオウルの枕で軽く眠って、確実に眠気だけは吹き飛ばしておく事にする。


 芽生さんはベッドから崩れ落ちて床で少しばかり荒い息でぐったりして眠っている。ちょっとやりすぎたか? でもまあ、勝負を挑んできて返り討ちにあったのは自分なのでそのぐらいの気持ちは味わってもらおう。


 ウォッシュでベッドを綺麗にして、自分を綺麗にする。先っぽまで綺麗になったことを確認すると、続いて芽生さんにもウォッシュ。ぁぁん、と艶めかしい嗚咽を漏らしつつも綺麗になっていく芽生さんの身体。ぱっと見汗も汁も拭き取り切って綺麗になったその身体をベッドに横たえなおすと、隣でスノーオウルの枕で寝る。もうちっとだけ眠って睡眠欲を取り払って、それから朝食、出勤だ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 ひと眠りし終わった後幸せそうに眠る芽生さんを揺り動かし、まだ眠そうな頭に朝食を詰め込ませる。しっかり体力を使ったのは間違いないからな、その分のカロリー補給はしないといけない。今日の朝食は食パンにチーズとケチャップといくらかの野菜を乗せてレンジのオーブン機能で焼き、なんちゃってピザトースト風にしてみた。


「くやしいなー、もうちょっとだったのに」

「どの辺がもうちょっとだったのかはさておき、まだまだだな。精進するがよい」

「十年内にはリベンジを果たします。それまで元気でいてください」


 長いリベンジ期間だな、よほど悔しかったと見える。これは後十年現役でいるしかあるまい。朝食を食べつつする話題でもないような気がするが、昨日の今日でお互い満足しあったようなのでまあ幸せな話し合いであるとは言えるだろう。


「さて、今日の予定は午後講義? 」

「です。なのでちょっと駆け足になりますがご飯食べたら帰りますね。用意を色々としなければなりません。本来ならもうちょっと早く帰る予定だったのですが力尽きてそれどころじゃなかったですから」


 現在時刻は午前八時。いつものタイムスケジュールなら指さし確認を終えて出勤している時間ではあるし、芽生さんも化粧するなり予習するなり準備に時間がかかる所だろう。


「本業は大事にしないといけないからな。しっかり頑張ってくれたまえ」

「合格してたらその時は盛大にお祝いしてもらいますかねえ。どんなのがいいですかねえ。でもお願いするにしても自分で好きなことをやるにしても、財力はありますから大概どんな願いでも叶うような気がしないでもないです」


 たしかに。思い出に残るお祝いというほうが大事だろうな。どんなのがいいだろうか。


「芸者総あげみたいに、ホストクラブ貸し切りにして盛大に騒いでみるのも経験としては面白いかもしれんな」


 確か、ちょっと前の総理に就任した記念に芸者総揚げして遊んだという話を聞いた覚えがある。さすがにその人よりもお金は持ってるだろうからそうお金がかかる事はないだろう。


「その時こそ純也さんの名刺の出番ですか。それも楽しいかもしれませんね。候補として考えておきましょう」


 あの名刺はまだどこかに仕舞ってあったな。話の種になるとは思わなかったが、クラブ貸し切り……いくらかかるか解らんが、少なくとも支払いが出来なくてそのままずるずるなんてことにはならないのはお互いの収入事情から分かっている。ハマるかどうかはさておき、今回に限っては支払いは俺がやるし、そのぐらいの蓄えはある。一夜の夢を楽しんでそれでおしまい、と切り替えてくれるなら体験しておくのも人生経験としてはアリだろう。


「その時は俺も付き合うぞ。男でもホストクラブが楽しめるかどうか知りたいし、酒もせっかく呑めるようになったことだし楽しくお話が出来るかもしれん」

「お金には困ってないですからね。なんか色々考えておいてください。私から是非これがしたい、というのがあれば私の方から言いますから」

「解った、考えておく。にしても、落ちることは考えてないんだな」

「まあ、自信はありますから。結果を期待していてください」


 本人は自信満々である。まあ、落ちることを願うなんてことは間違ってもしないので、その自信を強く持ったまま発表日時を待つことにしよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 食事を終えて片付け。今日の昼食はコンビニ飯ってところかな。今から作って向かっていたのではさすがに時間がかかりすぎる。手軽におにぎりと何品か見繕ってギルマスに相談に行き、時間が時間だったらそのままギルマスと食事しながら会談、という形に持ち込もう。


 いつもと違って今日は朝も遅かったし朝食も遅めだ。普段に比べて緩やかな時間の流れが過ぎ去っている。今日のところはまぁ、午前半休ぐらいに考えていくことにしよう。


 柄、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ナシ!

 嗜好品、ヨシ!

 酒、ヨシ!

 保管庫の中身、ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。今日は午前中相談午後出来れば茂君とカニうま。いつもの流れだ。収入も今家を出る時間を考えたら大体予想は付く。今日も順調に稼いで行こう。


 家を出る際も芽生さんと同時。戸締りして玄関を出て一言。


「いってきます」

「いってらっしゃい」


 帰ってきた時と同じようなやり取りをして、駅まで一緒。そこから先で別れる。飯はダンジョン前のコンビニで何か買うことにした。バスと電車のダイヤ的にも家近くのコンビニでゆっくり品定めをするよりもダンジョン前までは急いで行って、それからゆっくり飯を選ぼう。


 バスのダイヤにバッチリ間に合って一時間一本のバスでダンジョンへ。他に乗客は四人。やはりこの時間は少ない。少ないだけにこの時間帯にまでダイヤを拡張しなかったのはちゃんと客層を見ているんだなというバス会社の経営方針に少しだけ安心する。もしかしたら運転手を確保できなかっただけなのかもしれないけどな。


 バスに揺られて外の風景を見る。駅前から田んぼが続き、そしてダンジョンへ行くにしたがってぽつぽつと新しめの建物が増えていく。探索者は歩くことに慣れているのでバス一駅二駅ぐらいなら問題なく歩き、この辺に居を構えた探索者も居るんだろうな。


 ダンジョン周りに近づくにあたって新築のアパートやマンションが若干増えていき、つい最近まであった、長い事外されることのなかった貸し家ありますの看板が取り外され、築五十年ほどに関わらず新しめの家具なんかがチラッと見えている家もある。きっとある程度経済的に余裕が出てきたところで改めて大家と交渉を行い、土地ごと買い取って自宅にするなど交渉をしていくのだろう。


 そして、それ以上古かった建物は壊され更地になっている。これもまた住宅になるのか、それとも広い土地を買い集めて何らかの商売をするのか。また新しい店が増えるとなるとどんな店が出来るのか気になるな。


 やがてバスは【小西ダンジョン前】バス停に到着。乗客も全員下りる。ここから先は多分、折り返して戻ってくるか再び駅にたどり着くまで空荷輸送になってしまうのだろう。バスとしては寂しい所だろうが、ちょっと前まではこれが日常だったんだろう。誰も乗っていないバス運転手の心中というものはいかなるものなのだろう。モンスターも相棒も居ない何もない荒野を歩くがごとし、だろうか。


 バスを降りてまずはコンビニ、腹ごしらえの準備だ。今日は何を食べようかなっと。シンプルにおにぎりを数個買ってそれで終わりにするかな。お高いおにぎりをいくつかと飲み物をいくつか買ってそれで終わりにしよう。後は向こうのコンビニに無くてまだミルコに持って行っていないお菓子をチョイス。夕も朝もそこそこなものを食べたし、このぐらいで良いだろう。


 買い物を済ませ両手に買ったものをぶら下げたままギルドの内部へ。支払いカウンターでおっすと手刀で挨拶すると、向こうもこっちに気づいてぺこりとお辞儀で返してくれた。


「居る? 」

「居ますよ、どうぞ」


 もうそれだけで通じた。ツーカーとはこの事か。大事な報告なのできちんとしておく。階段を上がり応接室へ入り、誰も居なかったのでそのままギルマスルームへ。ノックをして中に入る。


「居ますよー」


 ギルマスはパソコンにカタタタっと何やら入力中。いつもの会議が近いのだろうか。


「会議前の報告書作りですか? お忙しそうですが」

「まあそんなとこ。会議のネタになりそうな話はあるかい? あるなら是非とも盛り込んでおきたいところだけど」

「そうなるかまでは解りませんが、報告をいくつか持ってきましたよ」

「と言うことは昨日の今日の話ということかな。じっくり聞こうか」


 パソコンから目を離し、視線がこちらを見据える。これは真面目なご報告時間だな。こっちも真面目に報告しよう。


「とりあえず、昨日の午後だけですが五十七層に潜って、とああそうだ、芽生さんのスマホで録画した分をこっちに送ってもらうのを忘れてました。まだ間に合うはずなんで急いで請求しときます……と、それはさておき、見た目はこんな感じになります」


 五十七層の様子を動画で見せる。興味深そうに動画を閲覧した後、後でパソコンにデータを共有させてほしいとの意見に応じる。芽生さんの分も届き次第渡そう。


「中々凄い感じだね。ぱっと見ダンジョンも広そうだ。時間がかかりそうかね? 」


 奥行の広さを見通し、中々の広さと構造を確認したのであろう、予想される各階層の広さについて疑問を持たれる。


「そうですね、今のところ五十八層への階段は見つけてないのでまだちょっと捜索に時間はかかりそうな気がします。出てくるモンスターの強さについては警戒するほどでは無かった、というよりも五十五層で散々強くならせてもらった分楽をさせてもらっている、というほうが正しいでしょう。出てくるモンスターの動画がこんな感じで、石像とか鎧とかそういう感じのモンスターで構成されているようでした。現状確認されているのは二種類ですけど、三種類目が出てくる可能性は高いですね」

「この動く鎧……仮称はなんだい? 色んな名前が連想させるモンスターだけど」


 戦闘中の動画に移行し相手をしている様子を見ながら、保管庫内のアイテム名は決まってない間は仮称で呼ばれるという事を思い出したのか、ギルマスは質問してきた。


「そのまんまリビングアーマーという事にしました。後で芽生さんから動画が来ますが、もう一種類、石像のモンスターが居たんですがそっちはガーゴイルという仮称にしました。解りやすさのほうが大事ですし、正式名称が決まったらまた教えてください。後、アルファ型とベータ型の正式名称も決まったらまたお願いします」

「あれねえ。なんかもめてるらしくてまだ決まらないみたいなんだ。また決まったら確実に伝えるようにするよ」


 まだもめてんのか。日本産のネーミングモンスターばかりでは他の国が面白くないとかそういう流れとかがあったりするんだろうか。そのために色々な国が意見を出し合っているからなかなか決まらない。そんな感じだろうか。


「三ヶ月ももめてるなんて何事でしょうね。インスピレーションでババッと決めてくれていいですのに」

「全くだ。何処も口だけはいっちょ前に出したいそうだからね。まあ、その辺はもうしばらく待っててもらおうかな。それほど大事な話って程でも無さそうだしね」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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