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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十七章:進捗進まずとも世間は進む
953/1208

953:経費

今回でまた一区切り。ですが明日からまた新しい物語が始まります。つまりいつも通りってことです。


ダンジョンで潮干狩りを

Renta!発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 おはようございます。今日はおめめぱっちり安村です。夕飯に満足したこともあって早めに寝たのがきいたらしい。


 あの後税理士の佐藤さんに連絡をすると、ちょっとだけ時間外になるが無事につながり、今日午前中は空いてるとの話を取り付けたので、経費になるかどうかの相談などをしに行く。その足で布団の山本に行き、納品と振込先の変更を伝える。よし、忘れてないぞ。


 いつもの朝食を作って食べる。朝食は価格帯が上がってもメニューは変えない。毎朝同じものを食べて同じだけ出す。この出し入れのタイミングを間違えないようにすることで、戦闘中にお腹がゴロっと来ないようにである。いつもの朝食を食べていれば胃が働きだした頃に同じく腸のほうも動き出して、朝一番の成果を出してくれる。このタイミングが重要だ。


 昼食は時間的に外で食べることになるだろう。夕食は……夕食はまた考えよう。そういえば今日はいつもの雑誌の発売日。最新号を買いにいかねばならん。何をするでもなく真っ先にコンビニへ行こう。


 コンビニで雑誌を早速買い求め、最新号があるのを確認、さっそく確保。ついでにコーラとお菓子を少しだけ購入。家に帰って時間まで読みふけることにする。


 探索・オブ・ザ・イヤーも月刊探索ライフも先月号のダンジョンマスターの話がまだ後を引いているような文面だった。それに加えて白馬神城ダンジョンの踏破について、ダンジョン庁の公式会見の様子から見られるダンジョン庁の方針や自称ダンジョン研究家の意見などが取り上げられている。


 熊本第二ダンジョンのその後、という記事が目を引いた。今後ダンジョン跡地周辺がどのように変化していくのかを定点観測していくらしい。これは新しい連載物だ、毎月忘れずに買って現地での様子を報告してもらうようにしよう。


 時間が近づいてきたので早速移動準備だ。助手席にスノーオウルの羽根四キログラム、後部座席にダーククロウの羽根を十キログラムを乗せ、そのまま一路佐藤会計事務所へ。


 しばらく車を運転して無事に到着したのでそのことを伝える意味でも電話で連絡。すぐに出てくれたので到着したことを確認。すぐさま中へ通してくれた。


「どうも、御無沙汰です」

「便りが無い間にどのくらい経費が溜まったかにもよりますが、喜んでやらせてもらいますよ。で、どのくらいになりました? 」


 話が早い佐藤さんに経費と現状解ってる範囲のレシートを渡して計算してもらう。


「えっと……うん、とりあえず経費についてはここまでは問題ないですね。後は経費かどうか迷ってるレシートとかあります? 例えば交際費とか」

「交際費か……最近飯に行ったりもしないし、大体自炊しちゃってるから無いですね。そういうのも交際費に入るんですか? 」

「えっとですね。ほぼ確定事項として業界ではみられてますが、今年から探索者は個人事業者としてみなされる法案が通るようなんですよ。その際は自分以外の個人事業主や企業との食事になりますが、一回一万円までの食事代金、合計八百万円まで、それらは交際費として認められる可能性が非常に高いんです。なのでそういうレシートが有れば損金として処理できるんでこれも節税になります。無いですか? 」


 あったかなあ……そもそも外食してもほとんど一人で食べてるような。


「うーん……うーん……あ、一枚だけあった。これいけますかね」


 中華屋のレシートを掘りだしてきた。二か月前の……あぁ、芽生さんと酒飲んで真中長官からダンジョンマスターの存在が明かされたって電話が来た時の奴か。取っててよかったレシート。


「どれどれ……うん、いけるね。じゃあこれだけの金額は利益から差っ引かれるのでその分節税になった、ということになります」

「数千円ですが大事ですね」

「大事ですとも。その大事のために高いお金を払って私と契約してもらってるんですから。その点は任せてください」


 佐藤さんは力説する。大事らしい。数千円でも百回飯食えば数十万だ。その分の税金が安くなるとして六割引きしたとしても、後から税金払ってませんねと言われるよりはちゃんと税理士通して計算してます、と提示できるほうがいいだろう。


「で、収入のほうはどうなってます? 」

「ギルドからの支払いは来年の頭にまとめてってほうがいいですか? それとも現段階までのレシートが全部とってあるんでそれ合計します? 」

「そうですね……念のため出してもらっていいですか? 」


 ドサドサっとギルドからのレシート、その後で布団の山本からの取引レシートを出す。


「これはまた……多いですね」

「えぇ、ですので出すのをためらったんですけど」

「まあこれも仕事ですからね。ちょいちょいと計算してしまうんで待っててくださいね」


 レシートを積み上げ、どんどんパソコンに金額を放り込んで表計算ソフトに入力していく。新しいファイルで作って名前を付けて保存しているので俺用のファイルを今作った、と考えてもいいんだろう。


「計算……終わりっと。今日までの収入を合計すると……可処分所得、つまり実際に使えるお金は二十九億円ほどになるね」


 計算式を見せてもらった。今日までの収入から経費を引いた金額、七十四億二千四百五十二万八千九百五十五円。


 そこから個人事業税、所得税、住民税の推定額を引くとそれだけ残るらしい。


「稼いだ割にガッツリ取られるなあ」

「昔はもっと税金高かったんだよ? 七割所得税にとられて可処分所得が五%ぐらいしかなかった時代に比べれば、四割ほど残る現代のほうがよほどいい制度にはなったと思うね」

「なるほど……とりあえず去年の分を除くと……三十五億ぐらいは自由に使えるってわけですね」

「安村さんの場合はえっと……そうだね、そうなるね。もうそろそろ所得税納付書が届くはずだから、覚悟はしておいてね。といっても安村さんの場合お金使い果たして支払う分が無いです、ということにはなってなさそうだから私としては安心してるところだけど。投資も投機もしてなさそうですからね。銀行に溜めっぱなしってところだと推測しますが」


 良いところを突いてくるな。税理士になるとそういう目も養われていくのか。


「おっしゃる通りで。先日普通預金口座から全額金額が保証される口座に移してくれって要請が来たばっかりで」

「あはは、そりゃ銀行側も数十億放っておく人がいるってのも怖いでしょうからね。良い判断だと思いますよ」

「そんなわけで、またこれからも地道に稼いで行こうと思いますので今後ともよろしくお願いします」

「地道がえらく空高く飛んでる気がしますが、承ります。では、また支払いの時にでもご相談ください。基本的には口座から直接支払いって形で納付されることになると思いますが、詳しいことはこっちでも聞けますし、税務署に直接連絡をすればきちんと対応はしてくれると思います。悩んだら相談ってことでまたよろしく」


 佐藤さんとの相談は終わった。次の仕事へ行こう。お礼を言い会計事務所を後にする。そのまま車に戻り布団の山本に連絡。納品に行こうと思いますと連絡すると、解りましたとの返事。いつも通りダーククロウの羽根十キログラムとスノーオウルの羽根四キログラムで良いですか? と確認。そのまま了解されたので荷物をそのままに布団の山本へ車を回す。


 たどり着いた布団の山本。いつも通り入口で声をかけて、従業員の人たちに運び出してもらう。車から次々出してもらっている間に、テーブルには既に冷たそうな麦茶が用意されていた。もうそんな時期か。


「どうも、毎回お世話になっております」


 いつもの鑑定と検品を従業員に任せて山本店長が出てくる。


「最近はどうですか、順調ですか」

「おかげさまで。去年よりも宣伝効果が出てるのか、ぽつぽつと良い感じのペースでお客様がお買い上げになってくれていますね。そろそろ夏用布団の発注が来るんじゃないかと予想しているところですね。夏用布団のほうが同じ材料からでも枚数が出るので、利益率も良い感じに上げさせてもらっていますがそれでも……というリピーターのお客様がいらっしゃいます。安村様にお買い上げいただいた布団のほうはどうですか、打ち直しの必要などは今のところ出て来てはいませんか」


 どうやら、効果期間のほうが気になるらしい。一年で効果が薄れちゃいました、ではコスパの悪さが出てしまうのではないか、ということを心配しているのだろう。


「まだ冬用布団ですが、今のところちゃんと眠れていますよ。ただ、枕が比較的新しいスノーオウルとダーククロウの混合枕なので、そっちのほうに引っ張られている可能性は否定できないですね。枕も以前のものに変えて試すということも出来なくは無いですが、今更枕が変わるのはちょっと腰が引ける所でもあります」

「なるほど、まだ大丈夫そう、ということで理解しておきます。ダンジョンのほうは色々と変化があって大変そうですね。他の納入者さんからも色々聞きますが」

「あぁそうだ、忘れる前に手続きをお願いします。最近お金のやり取りをする口座を変更しまして、今後はそちらの方に振り込みをお願いしたいんですよ。振込先の変更、お願いできますか? 」

「おっと、それは大事ですね。先にやってしまいましょう。口座番号をお願いします」


 口座番号の書かれた通帳を渡し、こちらへお願いしますと伝えると、いったん奥のパソコンの方へ行き、何やら入力している。きっと、取引先の口座番号変更の手続きでもしているのだろう。麦茶といつもの羊羹を頂いている間に口座変更が完了し、ついでに検品も終わったようでパタパタと戻ってきた。


「お待たせ致しました。今回の分の受領書とお預かりした通帳です。今回も間違いなく十キログラムと四キログラム、確認できました。ありがとうございます」

「最近はゆっくりしたもんで、毎日順調に集めることが出来ています。ダーククロウの羽根商売の引退はもう少し先になりそうですね」

「それは有り難いことです。当店も取扱量こそ増えては来たものの、まだまだ潜在需要は高いとみていますからね。打ち直しの機会も出て来るでしょうし、いくらあっても困らない、というレベルの素材となっていますよ」


 どうやら俺以外からの買い付けも積極的に行っているらしいな。急ぎで集める必要はないが、いつものペースで充分だ、ということだろう。一日二キログラム、このペースを緩める必要は無さそうだな。


「さて、今日のところは失礼しますよ。予定がある訳じゃないんですがせっかく休みを取ろうとしたんで家でゆっくりしようかと思います」

「左様でございますか。どうぞご無理をなさらないよう」


 早めに会話を切り上げて布団の山本を出る。本当に予定はない。時間的に昼食を食べに行く……というところだが、せっかくなら経費で落とせるように山本店長を誘うという手もあったのかな? まあそれはいいだろう。また機会はいくらでもあることだろうし今度でもいける。


 さて、昼食だ。何処へ行って、何処で食べよう。条件は並ばなくても入れる所でひたすら食欲を満たせる場所……開店直後の回転寿司なんかを久しぶりに摘まむのもいいかもな。まだ開店までには色々選択できる。自由の半休だ。何なら明日も休みにしても良いぐらいだが、それは多分俺の気分が許さないだろう。


 だとすると今日一日を動きたいように動いて楽しむ。とりあえず寿司と思いついたので寿司を食いに行こう。カウンターの回らない寿司でも回る寿司でも良いが、今日の気分は回る寿司だ。近くの店を調べて早めに乗り込み、ちょっと開店を待って一番で食べにでよう。


 車を近くのチェーン店に回し、まだ他の車がまばらなうちに停めてしまい、他の客が車から出てくるのを待つ。他の客が出始めたのを見て並び始め、開店とほぼ同時に店へ突入、席を確保。


 今月のおすすめや何かを注文する前に、ミニパフェを真っ先に注文。回転寿司に来たらやっぱりパフェだろう。そしてパフェが来るまでの間に貝類を攻める。レーンにはほとんど寿司が回っていない現状なので注文してシュパッと到着するのを待つことにする。つぶ貝、ほたて、あわびと来たところで一旦お茶を飲み舌をリセット。このタイミングで来たミニパフェに集中する。


 ミニとは言えパフェ。甘さをしっかり堪能した後フライドポテトと吸い物を注文。その間にまた寿司へ移る。あぁ、自由に注文出来て自由に食べられて好きな時に帰れる。なんとも楽し気な時間だ。


 腹いっぱいまで寿司を楽しみゴキゲンで家に帰る。夕食は何にしようかな。また腹が減った時に考えることにしようか。昼からはボーっとニュースを見たり、寝足りなかったら惰眠を貪るでも良い。急いでやることが無いというこの奇跡的時間を大切に、そして贅沢に過ごすぞ。無駄こそ人生の楽しみだ。


 いつもなら昼からやることも無いのでダンジョンに潜ろうかという所だが、今日はそういう気分じゃない。そうだな、こういう時間が空いたときに家の掃除でもするか。普段やらない所の掃除をやってしまえばいい運動になって腹も減る。腹が減ったらまた食事を楽しめばいい。今日はそういう日にしよう。


 芽生さんの試験が終わって学業が一息ついたら今度こそ五十七層以降へ行こう。せっかく作ってもらっているもの、活用せずに終わらせるのは惜しい。その頃には高橋さん達も合流するだろう。また六十三層到着レースを始めるのも悪くないし、六十層にはボスも居る。小西ダンジョンはまだまだ楽しめる。


 新ダンジョンは新ダンジョンで楽しみだが今のダンジョンの次も楽しみだ。今は少し待てをされている状態だが、その間に実力を蓄えておこう。





 まだまだダンジョンには新しい楽しみがある。それが解ってるだけでも充分俺の心は刺激される。ダンジョンを楽しむのはまだこの先もしばらく続くな。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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