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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二章:出来ればおじさんは目立ちたくない

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95:爆走の六層



 五層に降りた。相変わらず太陽も無いのに青空が広がっている。本当にどういう仕組みなんだろう。


「ほれ、あそこに見えてるのが六層行きの階段ですわ」

「あ、ほんとだ近い。近すぎちゃって困るぐらい近いね」

「なんで五層はあんまり人気が無いんですわ」

「これもダンジョンごとの違いかぁ」

「奥のほういけばそれなりに数は居るんですが、目印が少のうて迷いやすいんですわ」


 遠くのほうを見つめると、豆粒みたいな一団が見える。多分五層で狩りしてるパーティーなんだろう。ギリギリ階段を見失わない距離で戦闘を続けてるって事かな。


「十五分も歩けば六階層に着けますかね」

「そんなもんですな。迷わないダンジョンというのもある意味味気ないですな」

「迷って出られないよりはマシですけどね」


 違いない、とうなずきあいながら六層への階段へ向かう。距離が短いからか、それだけ死角が少ないからか、ワイルドボアに一回襲われただけで済んだ。肉は平田さんが持って行った。


 無事六階層に着く。さすがに次も近いというわけにはいかず、見渡す限りに見えるのは木が一本だけである。ここまで視界の開けたサバンナエリアは初めてだ。


「木しかないですね」

「木しかないんですわ」

「……やっぱりあの木が目印で? 」

「です。あの木にたどり着いたらまた言いますわ」


 一本だけ生えた木を目指しひたすらに歩く。

 ワイルドボアは横サイドから時々襲ってくる。左右に分かれて同時に来ることもあるが、基本的に前からは来ない。視界がしっかりとられているという事か。


 しかしワイルドボアの突進を拳で往なしてる平田さん、手首頑丈すぎでは……?


「頑丈な手首してますね」

「そちらも、良く突進避けれますな」

「ギリギリを攻めてるつもりではあるんですが」

「しっかり手首を固めて、足首も地面に固定して、全身を岩みたいなイメージにしてガッチリぶつかり合えばこのぐらいならなんとかなるんですわ」


 ほんとか? 今度安全なところでやってみよう。手四つで組み合うのは前にやった気がするな、なんとかなるかもしれない。


「ここはダーククロウが少ないんですかね。頭の上飛んでないんですけど」

「出てくるのはあの木の向こう側が多いんですわ。木に止まってる事もあって、ウカツに近づくと一斉にフンまみれにされたりで」

「うわぁ……あんまり木に近づきたくなくなってきた」

「まぁ、避けるルートもあるっちゃあるんですが四十分ぐらい遠回りになるんで皆諦めて戦うほうが多いんですわ」


 バードショット弾使わずに落とすのは根気が要りそうだ。


「一発殴ればそれで終わりなんで楽っちゃ楽なんですが数が居ると面倒ですなぁ」

「先に行った人たちが数を減らしてくれてるのを祈りますか」

「そうしますか」


 色々と諦めることにした。


 そうして十五分ほど速足で抜けていく。その間に俺もボア肉を手に入れた。キャンプ地での飯がちょっとだけ豪華になったな。


 さて問題の木に近づいたが……


「二十羽ぐらいですかね。このまま刺激せず撤退します? 」

「できればそうしたいですわな。ここからだと次の階段がほれ、あそこに」

「あ、ほんとだ。岩めっけ」


 この位置は木まで近寄らないと確かに見つけづらいな。ただでさえ広いサバンナエリアで目印無しに動くのは危険だ。


「このまま後ろへ探しつつ階段のほうへ行きましょう」

「そうしますか。せっかく運んできた荷物をフン濡れにしとうないですわ」


 どうやらダーククロウも警戒はしているものの、迎撃には来ないらしい。さっきまではざわざわしてたと思うんだが、ある一定距離に近づくとピタッと鳴き声が止まる。縄張り意識があるのか。


「どうやら、これ以上近づくと襲ってくるようだな」

「警戒範囲って奴ですわ」

「つまりその外側なら安全圏ですね。今ワイルドボアが襲ってこないことを祈りましょう」


 岩を目指しつつ木を避けていく。止まっているダーククロウを全部撃墜したら気持ちいいだろうが、今の目的はそれじゃない。まず七層だ。後のことは後で考えよう。さすがに距離が開いたのか、ダーククロウはまたギャーギャー騒ぎ始めた。これで航空事情は一安心だな。


「さぁ、七層は目の前ですわ。後は気楽に行きましょう」

「ですね」


 ワイルドボアの足音が聞こえてくる。後ろからだ。木から視線を外したことで周辺リポップ範囲として認識されたんだろう。


「後ろ、数二」

「一ずつで」

「あいよ」


 振り返ってグラディウスをしっかりと握る。ん、今なら安全だな。全力で突進を迎えうち、グラディウスをワイルドボアの頭部に突き刺す。すっぽりと頭の中に差し込まれたグラディウスはワイルドボアの脳を破壊する。


「ワイルドボアの頭はそれなりに硬いんやけど……見た目より力ありますな」

「平田さん見てたらなんかできそうな気がしてきて」

「ようやりますわ。私も初めて試した時は心臓バックバクでしたのに」

「なんとかなるもんですね」


 ドロップの魔結晶を回収しつつ、グラディウスが曲がってたりしないかどうかを確認する。うん、大丈夫そう。これから毎回試してみよう。


 やがて階段が見えてくる。階段の前で待っている集団が居た。


「あれ多分ウチのパーティーメンバーですわ」

「へー」


 四人ほどだろうか。こっちに向かって手を振っている。平田さんも手を振り返すと、より激しくブンブン手を振り回している。


 仲良さそうなパーティーだな、今度は手を回し始めた。なんだろう。ん、後ろ?

 後ろを振り返ると、ワイルドボアの群れが追いかけて来ていた。しまった、あれは注意喚起か!


「平田さん後ろ! 」

「ん? 後……おあああああ一杯来とる! 」

「前へダッシュしましょう。パーティーメンバーなら手伝ってもらえるんじゃ! 」

「そうするしかなさそうな量やね! 」


 明らかに二桁のワイルドボアがこちらへ向かってきている。手を振っていたメンバーもこっちが後ろを振り向いてダッシュし始めた時に、気づいてくれたのか応戦の為にこちらへ走りかけてきている。


 間に合うか、間に合わないか微妙なラインだ。どっちにしろ迎撃準備だけは整えないとな。


 後ろを確認しながら俺たち二人も、平田さんのパーティーメンバーも、そしてワイルドボアの群れもそれぞれが距離を詰め合う。対衝撃耐性を考えて、そろそろ距離を詰められるギリギリのラインを見極める。


 ……ここまでかな。


 俺は後ろを振り向き足を止めた。平田さんが言った通り、足首や全身の関節を固定する。グラディウスを握った手は離さない。まず一匹確実に止める。


 先頭のワイルドボアが俺にぶつかる。ドン! という強い衝撃が来たが、まだ体に余裕がある。正面からだけなら行けるな。


 続いて二匹目のワイルドボアが俺にぶつかろうとしてくる。これはジャンプで回避する。その間に合計四匹やり過ごす。ジャンプ中に次にぶつかりそうな相手を見極める。そこに向けて体勢を整えると再び体を固めグラディウスをむける。


 再びドン!という衝撃が来た。ミチッという音が聞こえたが、体に問題はなさそうだ。ただもう一発来るとちょっと辛いかな。


 まだ二匹を天に還しただけだ。グラディウスを持つ手首は連戦に耐えうるだろうか。一匹を体を掠めるように回避しながら切り刻む。これで三つ目。


 後ろでは戦闘が始まったらしい。うまくやってくれることを祈ろう。


 身体を固めて三度迎撃の準備をしている間に次が来そうだ。これは逆に力を逃がさないとまずいな。脳のスイッチを入れてステータスブーストの状態にすると、体の力の抜き加減を最短時間で調節する。


 三度目の体当たりを一旦受け、それを斜めに受け流そう。小盾を持つ腕と、その逆の足にだけ力を籠め側面を滑らせるように受け止める。うまくいった。


 次に向かって斜め方向から突っ込んでくる奴に対応。これは前にジャンプして軸をずらしてやり過ごす。ジャンプ先にちょうど次のターゲットが走りこんできている。あれは先制攻撃でやってしまうか。


 着地地点に刃を突き立てる。ちょうど飛び込んできたワイルドボアにジャストヒットした。これで四つ目。


 走り抜けていったワイルドボアは平田さんたちが処理してくれたらしい。後は前に居る六匹だけだ。合流して体勢を立て直す。


「また無茶をする! 」

「無理はしてないからセーフで」

「後五匹、一人一殺で」

「おけ」


 ゆっくり人の動きをみる余裕があるので人の戦い方を学ぶ事にしよう。四度、ワイルドボアとがっぷり手四つの態勢を取る。


 ガントレットで正面から殴り合う平田さんはともかくとして、飛び越えて勢いを逃す人、ギリギリを避ける人、相手の勢いをそのまま活かして串刺しにする人、戦い方はいろいろあるもんだな。基本は相手の勢いを往なす事が大事だという事は伝わった。今後に生かそう。


「先にドロップ拾いますか。挨拶はその後改めて、で」

「そうしましょう」


いそいそと散らばったドロップを拾いに行く一同。俺の取り分は肉二つ、魔結晶一つのようだ。むこうは革もドロップしたのか少し残念そうにしている。肉は食べて消費できるけど革、食べられないもんね。


「改めて紹介しますわ、私のパーティーメンバーです」

「どうも初めまして、安村と言います。ここまでご一緒してきました」

「もしかして潮干狩りおじさんでは? 」


何処まで広がってるんだ潮干狩りおじさん。


「そう呼ばれることもあります」

「おー、動いてるのを初めてみました。パーティーリーダーやってる新浜(にいはま)といいます」

「私は多村です」

「横田です」

「村田です」

「平田です」

「いや平田さんは知ってます」

「ここは改めて自己紹介が必要かなと」


ボケる所を忘れないなこの人は。


「積もる話は七層へ降りてからにしませんか。ここだとまた来るかもしれないので」

「そうしましょうか。七層はこちらですよ」

「安村さんは七層お初らしいんですわ」

「それはそれは。ちょっとびっくりするかもしれませんね」


なんだろう、俄然楽しみになってきたぞ。一体何が待ち受けているんだ七層。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めて見る動く潮干狩りおじさん
[一言] 野良パーティーで良い人たちに当たると嬉しいですよね。
2022/10/04 12:03 退会済み
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