表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十七章:進捗進まずとも世間は進む
948/1207

948:新ダンジョン会議 2/4 食品

突然ですが。活動報告のほうにも書きましたが。

本日より「ダンジョンで潮干狩りを」第一巻分がRenta!にて配信開始となっております。

画面の下のほうに画像とリンクが飛ぶようになっているのでそちらからもよろしくお願いします。


昨日、「明日から配信開始するね! 」と言われて特急で用意いたしました。

「今より目を楽しませるようなもの、というものは無いかもしれないが飽きられるよりは遥かにマシ、というあたりが今の落としどころになるのかな」

「大体そういう感じだ。どこか景勝地みたいなものをモデルにしてそれを再現する、ってならもうちょい簡単になるが……安村、そういう所は探して見つかるものなのか? 」

「まあ、比較的簡単には。前からやってる電波通信の応用でこのパソコンを通せばある限りの情報はいくらでも探し出すことはできる。前もってどういう情景やどういうイメージの風景が欲しいか、なんてリクエストがあれば調べて持ってくることはできるよ」

「便利過ぎるなこっちの文明は。行ったことが無い所でも瞬時に風景を見られるってか。まあ、そういうのを含めて構築していくのも有りって事だな。せっかくのセーフエリアだ、風光明媚な場所にしてみても面白かろう。そういう先行きを含めてここまでで何か質問はあるか。無いなら次へ行くが」


 一旦ガンテツの演説が終わる。早速ミルコが手を挙げている。


「じゃあミルコ」

「階層を圧縮して半分にするってことは、今までの階層より短いダンジョンになるってことにもなるんだけどそれは良いのかい? また新しいダンジョンが出来てもすぐに踏破されるんじゃ意味が薄いと思うんだけど」

「そこは次に説明する場所にもかかってくるが、回答としてはそうだな。ダンジョン踏破よりも魅力的な商品が有ればみんなそっちに食いつくんじゃないか、という見込みを立てている。その為の新しいドロップ品を、というより新しいドロップ品で埋め尽くそうと思う。そこで安村にいろんなサンプルを持ってきてもらえるように言ったんだが」


 俺にお鉢が回ってきた。こっちがプレゼンを始めるターンになったらしい。


「その辺で買える一通りは色々と見繕ってきた。ドロップ品を決めるのはガンテツやミルコだが、参考資料として色々見たり聞いたり食べたりできるように、こっちで一般的に消費されている食料品を色々と持って来た。重さや価値についても値段調査してきたからそれぞれいくらぐらいで引き取られるか、その辺に関しては流通にもかかわってくるが……何より味だな。美味しければダンジョン産の食料品はそれだけの値打ちがあると理解されてその分需要も増えて供給するための探索者も増える。何より、今のダンジョンと比べて見た目でも変化があって動きやすく戦いやすく、ドロップ品も持ち帰りやすい。ここまでそろえば魅力として評価されることにはなるんじゃないかと思う。次の話に入るなら早速色々取り出すが、いいのか? 」

「そうだな、出してもらおうと思う。出来ればある程度系統をそろえて並べてくれるとありがたい」


 夜遅くまで頑張った成果をここで発表する時が来た。期待もそれなりに大きいようだ。早速パソコンと、保管庫から穀類を取り出した。


「まず、穀物、主食だ。それぞれ米、麦、ジャガイモ。日本人……つまりこの国の人だな、この国の人は大体この三つの中から食べる物を決めて食べている。特に米だな。日本人の九割は毎日米を食べていると言っても過言ではない。そして国土のあちこちでそれぞれ違った種類の米を食べている。一口に米と言っても味わい、甘さ、コクなんかの違いで好き好きもある。ここに何種類か用意してみた。サンプルとして接収してくれ。食べ方は……主に炊飯だな。米と水を一緒に炊いてふっくらさせて食べることが主だ」

「コメか。確かそれらはドロップ品として考えられたリストにはあったように記憶しているが、それなら麦のほうが食われている範囲が広くて種類が多いとなってドロップさせるなら麦、そして麦より肉、という話でまとまった経緯があったと思うが……ミルコ覚えてるか? 」

「おおむねそれで合ってると思うよ。麦の形でドロップするのか粉の形にするのか、意外と粘ってたように記憶しているね」


 やはりブランドや種類で折り合いがつかなかったのか。その点肉は……いや、肉にしてもある程度のブランドというものがあるのだからそっちでも盛大にやり合っていたはずだ。何処までのクオリティを求めるかで落としどころに悩んだんだろうな。


「とにかくこの国では米、麦、それから俺の個人的な好みとしてジャガイモ。この三つが主な穀物だと言っていい……が、まあジャガイモはいろんな料理に使われるからってのも理由にあるんだが、米と麦は外せないと思っている。低階層でドロップするように調節するならこの辺は是非とも入れておいてくれると面白い。後は予備案として豆をドロップするというのもある。日本人は豆を発酵させたものを好むが、その割に自分の国ではあまり作らずに輸入に頼っている部分が大きい。食糧自給率を上げる意味でも面白そうな試みではある。後はトウモロコシと言ってこのようなものがある」


トウモロコシの実物を出してみて反応を見る。が、それほど興味をそそられるものではないらしい。取れたての生のトウモロコシは最高に美味いんだけどな。


「説明を受ける感じ、主食という意味では米と麦はアリだろうな。ダンジョン産の食糧として新しいブランドとして認められて、それがうまく世の中に広まれば迂闊にダンジョンも踏破できなくなる。そして新しい階層を作るだけの時間が取れる。そういう流れか? 」

「そうなればいい、程度の意見ではあるけどね。ダンジョン産肉も市場では一つのブランドだという形で成り立ってき始めた訳だし、次は野菜や穀物、果物なんかにリソースを割き始めても良いはずだ、と俺は思うね」

「主食というからにはそれだけの重さがある。この出してくれた袋単位でドロップするとして、どのくらいの階層で出現することを見越してるんだ? 」


 一袋一キログラムの米と小麦粉たちを横目に、これらの市場価格について算出しなければならない。あまりに安値でダンジョン産が出回っても無駄に周りを刺激することになりかねないし、深く潜らなくなる可能性だってある。慎重に選ばなければいけない所だろうな。


「麦に関しては粉まで精製した状態で出すとしても、単価が安い。これはかなり低い一層や二層でドロップしてしまっても悪くないと思う。米は麦に比べてちょっとお高いので、もう少し深くてもおかしくはないかな。ちなみに大雑把に麦の粉製品については三種類ある。強力粉、中力粉、薄力粉だ。薄力粉は菓子の材料、中力粉はこれを水で練って鍛えて麺にする。強力粉はパンの材料、とそれぞれ用途が違ってくる。どれがドロップするか解らないがそれぞれ使い道はあるから運任せになるかもしれないがどれも需要は高い」

「なるほど、そこで三種類に分かれるわけか……麦については理解した。米のほうは種類が有ったりするのか? 」

「大きくは二つ、うるち米ともち米だな。もち米は名前の通り、餅にするための米だ。うるち米のほうが普段俺も食べてる炊飯用の米だ。ドロップするならうるち米だろうと思う」

「そこは統一させてしまってもいいわけか。参考になるな」

「ちなみにだが、麦はこういう感じ、米はこういう感じで育てられて収穫されていく畑の作物だ。サンプルとして動画を用意した。参考にしてほしい」


 みんなして顔を突き合わせてパソコンの画面に一時見入る。米作りの様子の動画と麦畑の動画をそれぞれ用意し、眺める。短時間の動画が終わり、自分の席に戻るとお茶を飲んで渇きを潤す。


「なるほど、畑……とはまた違うが、地面に生えてるものとしては同じか。ところで米は粉にしないんだな? 」

「最近は米の粉を使ったパンなんてのも流行っているが、基本的には精米、つまり収穫して乾燥させた後表面を削ってすぐに料理に入れる状態で売っているものがほとんどだ。わざわざもみ殻付きや玄米、つまり収穫したままの状態でダンジョンから産出する理由はないと思う」

「そこは手間がかからなくていい所かもな。含まれている栄養素なんかは分析に回してそれに近いものを魔素から作り上げるようなシステムを作るから問題ない。トレントの実と違ってきちんと栄養が摂取できるものを生産……とこの場合呼ぶかどうかは解らないが、作り出すことはできる。麦三種類に米一種類まではいいな。後は味の好みなんかが有ればいいんだが」

「基本的には甘味と旨味だな。後コクがあるとよりいい。米にはうるさい国民だから一概にこれ、と大絶賛する米というのは選択しづらいのが現状だが、この二点さえ押さえていれば大丈夫だろう」


 米の味……最近になって気にはし始めたが、銘柄と産地でコメの味が変わるのは本当だ。なのでどの米が一番美味いなどと決めるのは俺の舌ではちょい余る。俺の舌はそこまで繊細に出来ていない。本気でコメの味について語るならば米の味を評価する専門家の手を入れる必要があるだろう。


「とりあえず、米と麦三種類、この二つについては候補に入れておこう。後は野菜なんかもあればいいって言ってたな? 」

「野菜は時期物とそうでないものがあるが、時期に限らず収穫、つまりドロップできるというのは強みにもなる。本来なら野菜が高いか、時期から外れすぎてて食べられないものがダンジョン産の野菜によって補える、というのは流通の面で強みになる。味も形も価格も安定しているとなれば大きな企業……商会が取り扱うことにもなるだろうよ」


 次は野菜の番、となった。ここまででも結構時間を使っての説明と検分となっている。


「ちなみにだが、何処の産地のどの小麦か、までかは把握してないが麦をパンにしたものがこれ、米を炊飯して調理したものがこれだ。試しに食ってみるといい」


 食パンをコンロで焼いてトーストし、コメを炊いて来ていた容器から少しずつ二人に分けて味見。


「なるほど。コメってのはなかなか面白い味だな。結構甘味が強い。これを毎食食べてるのか」

「毎食とは言わないが、一日一食は大体の人が食ってると考えて良いと思う」

「こっちのトーストも中々の味だね。これは一応高級品にはいる部類なのかな? 」

「最高級とまではいかないが、気軽に手に入る範囲で高級なのは確かだ」

「なるほどね……やはりこちらでは食に対する執念が違うね」


 それぞれ味見と感想を聞き終わったところで、会議中のおやつタイム終了。再び会議に入る。


「さて野菜だが、こっちにも似た野菜があると思うので一つ一つ見て回ろうと思う。とりあえず全部出してもらって、似た野菜があるかどうか、似ている場合どのような特徴を持っていたか、味はどうか、料理用途は、そういう所を攻めてみようと思う」

「ところでなんだが、新しいダンジョンでは肉はドロップするのか? 」

「一応その予定ではある。一部のモンスターについては共通化させてしまうから……例えばオークとレッドカウについてはこちらのダンジョンでも出てきてもらう予定だから、それぞれオーク肉とレッドカウ肉をドロップしてもらう予定だ」


 なるほどね。つまり今までのダンジョンに比べてゴブリンソードなんかのハズレが発生しにくくなるわけか。一層はどうせスライムなんだろうが、二層からどうなるかが見ものだな。


 保管庫から昨日あらかじめ購入しておいた野菜類を取り出し、それぞれの上に参考価格を数字で乗せる。ガンテツは数字については問題なく読めるそうだから、価格について参考にしつつ、質問が有ったら聞く、という形で話し合いを進めていく。


「このニンニクはこっちにもあったな……滋養があって胃の中にずっと香りが残る、そんな食いもんだ」

「その点はこっちも似たようなもんだな。以前ミルコと食事をした際には牛の乳やその発酵品なんかもそっちにはあったと記憶してるが」

「確かにあった。そして……ニンニクはそこそこの価格だな。これはかなり安いほうの金額になるんじゃないか? 」

「激安スーパーで買ったからな。ブランド品になるともっとこう、価格は上がっていく。大体安く買えるブランド品だと……このぐらいかな」


 値段を書きこんでは確かめ合っていく。やってることが競り市みたいになってきたぞ。


「なるほど、ここにブランドと大きさの統一と香りや効能なんかが加わってくるわけか。この大きさとその標準価格なら差別化できそうだな。で、これの消費頻度は? 」

「そこまで高くは無いな。どっちかというとこっちのキャベツやレタスのほうが消費の機会も産地も種類も多いと思う。ニンニクは匂いが残るから客商売やこれから人と会うって時には摂取しづらい。その点こちらは解りやすい。葉が強く、シャキッとした感覚が残っていて丸みを帯びていてそれなりの大きさであれば評判にはなると思う」

「だが、重みがあるぞ。持ち運びの点では少し不利じゃないか? 」

「それもそうだが、高級品になると同じ重さで米より高くなるからブランド品としては充分だぞ。まだ食べたことが無いから味についての評価はできないが、甘くて美味しいらしい」

「安村の国の人って、なんでも甘くしようとしてないかい? 」

「言われればそうかもしれないな。キャベツでもそこの人参でも、甘い奴のほうが良く売れて評判になる。やはり甘味中毒なのかな我々は」


 そういえば何でも甘いほうが美味しいと思ってるのか日本人は、みたいな海外の掲示板の話を目にした覚えがある。確か生クリーム食パンが流行ってた頃だったか。ただ、甘くて栄養があるというのは間違いないであろうから方向性としては間違ってないとは思うんだが、なかなか難しい所だな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
食料確保の難しい地域だと革命が起きそうですよね。個人的には、宝石類(それも現実には存在しない系)が産出すると楽しいですが…
一見蔦だけど茹でるとパスタになる とかあったら面白そうw
書籍おめでとうございます! ドロップとは少し違いますが、セーフエリアに給水ポイント(魔石を投入すると水が出てくる)があると面白いかなって思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ