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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十七章:進捗進まずとも世間は進む

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947:新ダンジョン会議 1/4 寝不足で会議するのはよくある

そこはダンジョン庁に丸投げしろ、という意見はごもっともです。

でも、それ以上に新しいダンジョンに一枚噛んで、他の探索者がどう反応するのかを楽しみにしているのが安村という男なので、彼の悪い癖が全力で出ていると認識してください。

 おはようございます、安村です、正直に言えばまだ眠いです。昨夜は資料作成にかなりの時間を使ったため、睡眠時間がかなり短い。流石のダーククロウ&スノーオウル枕でもすべての眠たさを吸い取り切ることは出来なかったらしい。


 しかし体調のほうは問題ないようなので眠い頭をぬるい手洗いの水ですべて流すと、パンパンと両頬を張って目を覚ます。ついでに化粧水でシミ対策もしておく。割とサボりがちだからあまり効果はないかもしれないがしないよりはする努力。覚えてる時は確実にやっていくことにしよう。


 いつもの朝食にちょっとだけ贅沢。昨日購入しておいた食材の中からいちごとブルーベリーをトッピングし、朝食のワンプレートの価格帯を上げておく。ビタミンCも摂取できてお肌にもよろしい。


 昼食は時短カレー。長期戦になることも考えて多めに作る。まだ作り置きがあったチャツネタマネギを冷凍庫から取り出し、他の材料も……サンプルとして持って行く分があるから使い切らないようにしないとな。一つずつは残しておいて現物として見せる必要がある。こうやって使う、と料理の一品として使われているものというサンプルの料理としてカレーは充分な価値を見出せるだろう。ついでに米も提供できるし問題は無さそうだ。さあ米を炊いて料理の開始と行こう。


 肉は……今日は鶏肉のカレーにしよう。鶏むね肉を一口大にして先にチャツネタマネギと共にショウガと少量のニンニクと共に炒めてきっちり肉に焼き色がつくまで焼く。焼いたらここで軽くウスターソースとケチャップをほんの少し入れて味に複雑さを出す。先日読んだレシピ本にこのほうがよりおいしくなると書いてあったので試してみる。これも日々精進だな。


 残りの野菜を放り込んで強火で煮て、アクが出たら取る。しばらく煮込んでほどほどに熱が通ったところで弱火に回してルゥを投入、コトコトと煮てコクを出す時間だ。米が炊けるのを待って今日は炊飯器ごと保管庫に入れる。しゃもじは忘れないようにしないと。


 カレー以外にサラダもつけよう。これも食事サンプルとしての一食だな。ミニトマトとレタス、千切りキャベツに、細切り肉にした後レンジで蒸したウルフ肉を添える。彩りはもうちょいあってもいいな。昨日買ったパプリカを小口切りにして散らしておくか。後は調味料として韓国風にごま油メインの少し辛めの調味料で整えて味見……ヨシ。


 後はギリギリまでカレーを煮込んでから出立だ。着替えて装備を用意して……っと、準備が全部できたところで火を落として良くかき混ぜ、焦げ付きが無いことを確認すると保管庫へ放り込む。冷蔵庫で冷やしておいたサラダも同じく、だ。今日の昼食はカレーと野菜サラダ。今日も飯はヨシ。後は会議中の胃袋を満たすためにおやつもいくつか用意してある。


 柄、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ヨシ!

 酒、ヨシ!

 食品のサンプル、ヨシ!

 会議用のデータ一式、ヨシ!

 保管庫の中身、ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は今日は特に大事である。保管庫に入っていることを確認した後、念のためもう一度取り出して確認するぐらい丁寧な指さし確認をしている。飯は最悪作ればなんとかなる。しかし、話し合いのデータは忘れて取りに戻ると往復三時間のロスだ。それは避けたい。


 印刷できるものは印刷しておき、今すぐ思ったことを書き記せるようにノートとボールペンも余分に用意した。お互いが筆談できるとは思わないが、少なくとも数字に関してだけは共通のものを扱えるようになったのは進歩だろう。


 さて、今日は会議だ。前の会社でも会議に相当するものはあったが、下っ端作業員は立ちっぱなしで会話にも参加せず、ただガヤガヤと話しているのを盗み聞きして自分の仕事にどう影響してくるのかを予想して組み立てていくぐらいのものしかなかった。


 今回は俺も主役であり、現在この地球上……いやそれは言い過ぎだな。この国ではポピュラーである食糧や野菜についての知識を提供して、少なくとも需要はありそうということを伝えて採用されるかどうかはともかく、出来るだけ偏らなくて美味しくて栄養のある食べ物。そういう路線でプレゼンを行ってみよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 電車とバスで軽く寝そうになっていたものの、ダンジョンまで来たらほぼ眠気は解消した。座ってバスに乗っている間に揺れが良い感じに眠気を解消してくれたらしい。安全運転のおかげだな。バスを降りて軽く伸びをし、今日は体を動かさない脳みそメインの仕事であることに思い至り、話し合いあの間に眠ってしまわないようにコンビニでカフェインドリンクを一本購入して体に入れておく。


 普段から常飲しているコーヒーのおかげでカフェインはあまり効かない体質になっている上に、もしかしたら【毒耐性】がカフェインを毒と判断して分解している可能性もある。以前ほどコーヒーのキリッとした感触を楽しめない、というのは残念でもあるな。


 入ダン手続きを終えていつも通りリヤカーを……今日必要あるかな? いやでも念のためにってこともある。無いよりはあったほうがいつも通りさを演出できるからそのほうがいいだろうな。今から新しいダンジョンを作るための話し合いをしている、なんてことになればダンジョン庁も交えて公的な話し合いとして参加してみたい、と言い出しかねない。今の状態でそれはちょっと難しい。本当に新しいダンジョンが出来る、となった時に改めて説明をするという作業が必要になるだろう。


 今日そういう話し合いの場を設けた、ということにするよりも雑談の中でそういう話が出たので参考がてら説明してみた、という流れのほうが計画性の点から見てもこっちのやりたいように引っ張って行きやすい。あくまで個人的な探索者の思ったところを述べただけでこんな大事になるとは思わなかった、で通すことにしよう。


 リヤカーを引いて朝の茂君だけは確実に終えていく。いざとなったら三十分だけでも仕事をして、午後の茂君を止めてでも収入は確保しておこうかな。リヤカー引っ張っておいてこれだけか、と思われる気もない。


 四十二層に到着し、机と椅子を出してこれから始める話し合いの準備をする。パソコンを取り出し、印刷した紙とノートとペンを並べてそれぞれにペットボトルのお茶を配備。紙皿にお茶請けのお菓子を用意すると準備は万端。後はみんなが来るまでじっと待つことにした。


 しばらくするとガンテツとミルコが転移してきた。


「朝の運動はいいのかい? てっきりお昼を食べてから仕事を始めるのかと思っていたけれど」

「それでもよかったんだけどな。話し合いは早めに終わることに尽きる。が、今回はじっくり話し合う必要がありそうだからどれだけ時間がかかるかが解らない。だから話すことは早めにした方がいいと思ってな」

「ま、話が早いに越したことは無いからな。せっかく用意を一通りしてもらったことだし早速始めようじゃねえか。新しいダンジョンの在り方についてよ」


 新しいダンジョンの在り方、か。そもそもダンジョンの在り方すら定まってすらいないとは思うんだが、そこに突っ込みだすとキリがない、ここはスルーしておこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


「まず、既存のダンジョンの最大の問題について改めて再認識しよう。現状この星の全ヶ所に設置されているダンジョンは全て同じ法則同じ構造同じテンプレートに基づいて作成されている。また、ダンジョンマスターによっては三十八層……これは元々作る予定が五十層ほどだったが、途中でサボったダンジョンマスターが相当数いた。ここまでで踏破されているダンジョンは全てサボりのダンジョンマスターだと考えてくれていい」

「つまりガンテツもサボり仲間ってことかな。階層を掘り進めて作ってる分僕のほうがその点は問題ないとは思うね。地道に作ってるダンジョンマスターはちゃんと居ることも忘れないで欲しい。少なくともこの国……安村が住んでいる国にとっては後一か所を除いては順調にダンジョンが拡張されていっているようだし、その点は問題ないと言える」

「確かにその点は認めるが、ワシの場合早期に踏破してもらうのを目標にしてたからな。ダンジョンを作った後、新しい仕組みのダンジョンを作るほうに当初から重点を置いていた、とみてほしい。元々一種類だけのダンジョンを数百作るような話は反対だったんだ。ただ、次元の暴走を早期に処理するために魔素の拡散を優先して少々行き急いでいたのも事実。だからこれはもう、過ぎてしまったこととして横に置いておこうと思う」


 ガンテツは自分のことはさておき、今日はこれからのことを話すんだからそこは流していこう、というペースで進めるらしい。まだ若干外野の俺は下手に口を挟まず静観しておく。決して寝そうとかそういうわけじゃない。


「で、新しいダンジョンの話だが、これは探索者側の意見を……具体的に言うなら、時々ダンジョン内からの声を拾ってみたり直接安村から話を聞いたことなんかを総合すると、何処も同じダンジョン同じドロップ品同じ構成で見てて飽きる。いくら金が稼げるとは言え何処のダンジョンも同じようなセッティングや加工では面白みがないという、いわゆるユーザー側の意見を参考に取り入れていこうと思う。具体的には二つ。マップの法則の変化、ドロップ品の変化だ。四階層も同じマップを挟んでの行動をすることは、作る側の意見としては非常に作りやすいし解りやすいが、探索者する側としては同じマップが続いて見飽きるという話が出ている。ここをまずなんとかしたい。毎階層違うマップ、というのも考えたが、それでは手持ちのマップ形態が早々に尽きてしまう。ここは何とかしなくちゃいけない所だ」


 たしかに、四階層ずっと砂漠とかサバンナとか、精神的にはちょっと来るものがある。迷路もそうだ。四階層も迷路が続いては頭が疲れてくる。


「そこで、今回は試験的に二階層おきにダンジョンのマップを変更する案で行こうと思う。四階層おきでは飽きるでも二階層おきならまあなんとか……と納得してもらえる可能性は高まる。そして、セーフエリアの風景はすべての階層で共通にしていきたいと考えている。セーフエリアは今まで通り七階層おきに設置し、エレベーターも事前に設置しておく」

「それは、今の小西ダンジョンの作りで言う所の洞窟・洞窟・サバンナ・サバンナ・森・森・セーフエリア・迷宮・迷宮・草原・草原・廃墟・廃墟・セーフエリア……と言った感じになるということか? 」


 セーフエリアが共通独自エリアだとすると、今言った形になると思うのだが合ってるのだろうか。


「そうなる。セーフエリアについては居住性が高く広く移動しやすいをメインに考えて、それとどこが階段でどこがエレベーターか、等を解りやすいように装飾なんかを工夫していきたい。例えば明らかに人工的な装飾を各所に入れる所で安らぎやなんかを与えるようにはしたいし、各セーフエリアは共通の素材で出来ているとしても、例えば二十四層と四十八層にあるような見た目だけオブジェクトを変更することでここがどの階層のセーフエリアなのかがバッチリわかるようにする……みたいなものだな」


 現状のリソースはリソースとして応用できる範囲で、それぞれ何か違いを見せて行きたいし階層ごとのマップ作成の手間を考えても、マップを移動する間に出てくるモンスターも二階層おきになるって考えればいいのか、それとも各階層で完全に変わってくるのか。その辺の説明はもう少し後になりそうだな。


 パソコンに会議の内容を入力していく。音声で録音できれば、この間ミルコが出してくれた翻訳フィールドみたいなものがあればそれが一番なんだが、どうやらあれはコンピュータに対しては効力が無いらしいから残念ながら今回は議事録は手打ちだ。


「そして、階段は階段だけではなくスロープ付きの緩やかな階段にすることで、荷物を引くリヤカー……この小西ダンジョンではよく用いられているが、移動させやすくすることでより荷物を効率的に搬送させていけるようにする仕組みを推したい。今までより設置する階段の大きさに変更が入ってそれだけ大きな階段を設置する必要があるが、その分階段がここにあるぞと目立つ建築物として用意することが出来るのでダンジョン施設の視認性も上がることになる。ダンジョンの攻略を難しくすることはこちら側の視点としては考えてないからな。移動し易ければそのほうがより良いものが出来る、と考えている」

「今更なんだが、なぜ次元を跨ぐ処理が階段だったんだ? 最初からスロープでも良かったし荷物運びの点でも荷車が通るぐらいの大きさを見越して作ってあっても良かったんじゃないのか」


 疑問点はちょくちょく挟むようにしている。このままだとガンテツの演説だけで話が終わってしまう。


「それも考えてる暇が無かった、というのも言い訳の内だが、階段なら階段から何段目までが今の層で何段目以降が次の層、という区分けがやりやすかった、そのほうが次元連結が楽にできた、というのが理由だな。もうちょっと頭をひねれば出る発想だったとは思うんだが当時はそこまで気が回らなかった、というのが主な原因だ」


 なるほど、常に最良最速で物事を進められていたわけでは無かったということらしい。事前打ち合わせが充分では無かった、という奴だな。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
> 丸投げしろ」 むしろどちらかというともうダンマスサイドである。 おじさんの考えた最強のダンジョンであり、 たった一つのやさいたやり方であり 男のマロンである。 強いて言えば野菜代はダンジョン庁(長…
>まえがき 安村さんの気質としては年齢相応の落ち着きの無いイタズラおじさんな所もありますからね、人に目立たずに面白そうな事に首突っ込めるってなったらついはしゃいじゃうというのもさもありなんとは。 と言…
安村さんは最初から愉快犯だからなーw スライムバー騒動とか引き起こしてニヤニヤしてた人だから納得しかないんw ガンテツのでは使わないだろうけど戦闘苦手な人向けに探索採取オンリー戦闘なしのダンジョンと…
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