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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十七章:進捗進まずとも世間は進む
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941:ガイド付き四十五層ツアー 3 村田爆発

 爆破ときたか。たしかにボムバルサミナとまで名付けられたモンスターだけあって、その習性通りの解りやすいスキルだ。しかし、ただ爆破と言われても何が爆破なのかはピンとこない。


 とりあえず全員に回して、どんなスキルが出たのかを各人に認識してもらう。その後、ここで覚えるかどうかも含めて相談しなければならないため、時間経過が起きないように保管庫に収納しておいた。保管庫にはちゃんと【爆破】のスキルオーブと表示されている。


「何をどう爆破される、またはするんだろう。うーん。サッパリ思いつかない」

「これは……覚えたら覚えたでついうっかり爆破しちゃいそうなシーンが思い浮かぶわね」

「特撮のお仕事受けたら儲かりそうですな」

「爆破かあ……爆破ねえ……」

「とりあえず、安村さんの知ってる範囲にもこの【爆破】は無いってことですよね」

「無いね。完全ご新規さんだね。非常に気になる所ではあるけど、この【爆破】の所有権は結衣さん達にあるからね」

「へ、安村さんはご興味が無いと? 」


 平田さんが意外そうに尋ねる。


「安村さんなら我先に覚えて爆破させまわってわはははーってやってる姿が思い浮かぶんやけど」

「俺を普段どんな目で見てるのかがよく解りましたが、興味があるか無いかで言えば当然あります。でも、今日はガイド役に徹することに決めましたし、俺はその気になれば一人で拾いに来て帰るだけの力がありますからそこまで執着心は無いんですよね。むしろそちらの誰かに覚えてもらって手数を増やす意味でも有用に扱ってもらうほうがいいと思います。あ、でもどんなスキルだったかのデータは欲しいですね。こんなスキルがあるそうです、と報告する必要はきっとあるでしょうから」


 しばらくその場で考え、公正なる抽選の結果村田さんが覚えることになった。村田さんにスキルオーブを渡すと、恐る恐るスキルオーブを受け取る。別にスキルオーブ自身が爆発するわけではないと思うよ。


「じゃあ覚えます……イエス」


 オーブが沈み込み村田さんが光り輝いていく。いつも通り一分ぐらい光ったあと、元に戻った。


「で、村田さん、どんな感じなの、なんか使い方とか頭に入り込んできた? 」


 結衣さんが興味深そうに尋ねる。やっぱり自分も覚えてみたかったんじゃないのか? とは思うが口に出さないでおく。


「そうですね……安村さん、ちょっと投げて良いものありますか? 安っぽいもので良いです。普段色々持ち歩いてますよね」

「じゃあ、これで」


 パチンコ玉を三発ほど渡す。村田さんはそこに念を込めると、少し離れた壁に向かってパチンコ玉を投げつける。すると、壁でパチンコ玉がいい音を立てて爆発した。


「……多分こんな感じです。念を込めて爆発しろ、と命じると爆弾? に変わるっぽいですね。念じなければ爆発はしないようですけど」

「ちょっと離れたところにパチンコ玉置くので、それが爆破できるかどうか試してもらっていいですか? 」

「良いですよ、お付き合いします」


 十メートルほど離れたところにパチンコ玉を二つ置く。離れた後、村田さんが念を込める。パチンコ玉は……何ともならなかった。


「何も起きないですね」

「拾って投げつけてみましょう」


 パチンコ玉を拾って、そのまま壁にぶつける。が、反応なし。


「どうやら直接触って念を込めないと……この場合魔力を込めてるのかな? そうしないと爆弾にはならないみたいですね」

「少しずつ解ってきましたね。後はこれをどうやって戦闘に応用するかですか」

「そのあたりでしょうね。ここまでに蓄積されたスキルの特性だと、スキルを発動させた本人にダメージが行くようなスキルは無かったはずなので、もしかしたら至近距離で爆発しても村田さん自身が傷つく可能性は非常に低いですが……どうします、ポーションがあるうちに試してみます? 」

「ここでやるのはちょっと。せめて四十二層に戻ってからのほうが安心できると思います」


 それもそうだった。敵のど真ん中で自爆して負傷するのは間抜けすぎる。俺もデータを取るのに夢中で気づかなかった。


 時計を見るとちょうどいい感じの時間になっている。そろそろ戻って早めの上がりにしても良い頃合いだろう。


「スキルオーブも出た事で、新しいスキルも覚えた事ですし、ちょうどいい時間になったので戻りますか。今から真っ直ぐ戻れば午後七時ぐらいには地上に戻れる計算になります」

「もうそんなになりまっか。時間が過ぎるのが早いですな」

「結構楽しんで探索が出来てたし、安村さんが居たおかげでスムーズに済んだというところかな? 今日はありがとう」

「お礼は無事に四十二層まで戻ってから承りますよ。それにお給料も貰う約束ですしね。さて帰りましょうか。四十二層に戻ったら実験の続きと……ついでにブートキャンプも挟んでおきますか」


 ◇◆◇◆◇◆◇


 その後は何事もなく、無事に四十二層へ帰ってきた。さて、お待ちかねのブートキャンプタイムだ。しかし、平田さんと多村さんにはやってもらうことが無いので、それぞれのサポーターを兼ねてもらうことにする。今回ブートキャンプするのは結衣さん、横田さん、そして村田さんだ。村田さんのサポートには俺がつく。


「それじゃあ各自、スキルをぶっ放して眩暈が来たらドライフルーツを食べる、という作業に徹しましょう。村田さんは【爆破】のデータどりやどこからどこまでが爆破と認識されるかのデータ取りもあるのでこっちは俺が請け負います」

「じゃ平田さん、私のほう手伝ってください。【水魔法】全力でいきますから」

「請け負いますわ。海に向かってぶっ放すんで目標物とか考えなくていいのが楽ですな」

「じゃ、僕はリーダーのサポートかな」

「私も二重化に負けないぐらいに頑張って出力を上げる実験をしたいので、気軽に倒れられるここは練習スペースとしても最適ね」


 そこから三十分、データ取りとスキル上げの時間が始まった。村田さんについてだが、現状だとパチンコ玉で十発ほどを同時に爆弾化させることが限界らしい。限界許容量が数なのか質量なのかはまだ解っていないが、それでもぶつけて中々のダメージを期待できそうではある。パチンコ玉だけだとアレなので、バードショット弾でも試してもらっていたが、数はやはり十発ほどが最大らしい。それでも壊れない岩相手に爆弾をぶつけ回って眩暈が来るとすぐにドライフルーツを渡し、口に入れてもらって回復したらすぐにまた爆弾化させて投げてもらう、を繰り返した。


 やっている途中、これモンスター相手に同じことできたら面白そうだな、なんてことを思いついた。一層に戻ったらそのタイミングで是非試してみてもらおう。


 全員がもうドライフルーツは食べられないという状態になったところで訓練終了。村田さんもやってる間に段々わかってきたのか、バードショット二十発ほどを放り投げて爆破することに成功している。ただ、現状の所ではこちらで矢玉を用意しなければ爆弾化できないのか、という疑問が残っている。


「さて、帰りますか。しっかり鍛えられたし稼げたし、スキルも拾えたしで良いことづくめでしたね」

「やっぱり安村さん、鬼……」


 何か聞こえたが無視。結衣さん達が持ってきていたリヤカーに成果物を乗せると、先に行って一層で待っててもらうことを頼み、こちらはこちらのリヤカーを動かし別のエレベーターで一層へ。


 待っててくれたみんなに事情を話す。


「村田さん、スライムを軽くつかんで、爆弾化できるかどうか試してもらっていいですか」

「モンスターをかい? 確かにそれが出来れば残弾の心配はしなくていいとは思うけど、手を溶かされたらその時はよろしくね」


 エレベーターの一番近くにいたスライムをひょいと持ち抱え、村田さんがもう慣れたという感じで念を込める。実際に込めているのは念じゃなくて魔力なんだろう。しばらくするとスライムから少し黒い粒子が上がり、スライムは完全に活動を止めたように見えた。


「それ、壁に向かって投げてもらっていいですか」

「よしきた、それ」


 人の居ない方向へ投げつけると、スライム「だったもの」は壁に激突し爆発した。


「これで弾の問題が解決しそうですね。その気になればモンスターも爆弾化できる、と? 」

「爆弾化した際のドロップがどうなるかが解らないから、この先は研究が必要なんだろうね。とりあえず今日は荷物もあるし、あんまりここでドッカンドッカンやってると苦情が飛んできそうだから今ので終わりにしましょう。是非今度結果を聞かせてもらいます」


 スライム程度のモンスターなら完全に爆弾化できる。ゴブリンやグレイウルフだと部分的に爆弾化するだけかもしれないが、その際は爆弾化した部分に向けて攻撃を仕向けることで爆発する可能性は高まった。村田さんもある意味これでレアスキルの所持者になったってことだな。


 外へ出て退ダン手続きにいくと、受付嬢に早速確認される。


「何かすごい音がしたらしいですが中で何かありましたか? もしご存じなら報告していただきたいのですけれど」

「あぁ、あれはスキルの試し打ちです。被害も無いと思いますので大丈夫だと思います」

「スキルの試し打ち、ですか。解りました。他の人にもそう説明して大丈夫ということですよね」

「えぇ、もし聞かれたらそう答えておいてください」


 確認作業を終えたところでお待ちかねの査定タイムだ。今日はいつもよりも人数が多いしダッシュ狩りをしていない分だけ一人当たりの収入は少ない。結衣さん達もちょっとばかし少ないかもしれないが、その分奥まで進めて見たことのないスキルも拾って帰ってこれたのだし、上々だろう。まず結衣さん達のリヤカーを査定してもらい、六等分してもらう。その後で俺のリヤカーのほうの査定を受ける。こっちは一人分。


 両方の査定の合計金額、今日のお賃金は二千六百三十五万八千三百円となった。細かい金額がでたのは久しぶりのような気がするな。


 結衣さん達の様子を見ても、普段このぐらい稼いでる、といった具合のようだ。どうやら今日はしっかり稼げた範囲に入るらしい。


「安村さん、今日はありがとう。おかげで一歩近づけた気がするわ」


 結衣さんからお礼の言葉をもらう。


「こちらこそ、たまには役に立つってことを見せておかないとね」

「安村さん、ありがとうございます。次会うまでにはもうちょっと使いこなしていい感じに戦えるようにしておきますよ」


 村田さんが直接感謝の言葉を伝えてくるのは珍しい。よほど攻撃スキルが拾えたのが嬉しいらしい。村田さんには新しいスキルの実験台兼使用感報告者として今後もお付き合い願いたいところだ。


 支払いカウンターで念のため、ギルマスが居るかどうか尋ねるが今日はもうお帰りになられたらしいので、報告は明日だな。もしくは数日待って村田さんの使用方法や応用法なんかを教えてもらってから改めて報告、という形にしておいたほうがより正確な情報が伝えられるだろう。


 芽生さんにレイン。「結衣さん達が新しいスキル拾った。【爆破】だってさ。どうやら物体を爆弾に変えて投げつけて爆破させることが出来るらしい。詳細はまだわかんない」


「じゃ、安村さんまたね。今日は御馳走様ー」


 多村さんが足早に帰っていく。今日は良いことがあったといった感じで気軽に帰って行った。明日も仕事をするかどうかは解らないが、村田さんは個人的に色々と気になる所はあるはずだ。明日休みでもこっそりダンジョンまで来て、【爆破】の実験したりしてるかもしれない。そう思うと若干ほほえましいな。


「それじゃ結衣さん、また」

「お疲れ様ー」


 結衣さんとも別れ、家に帰る。素直に別れるということは今日はお泊りの予定もないということだな。さて、真っ直ぐ帰って……夕食何食べようかな。せっかく昼食を低糖質低脂質で過ごしたんだから夕食も低脂質でいこうか。サラダチキンと生野菜サラダ、これだけあれば充分だろう。


 家の前のコンビニで朝と同じくご飯を買い求める。今日は収入は少なかったが幸せは手に入れることが出来た。そういう気分なのでついついビールにも手を伸ばしそうになるが、今日はグッと我慢だ。今日は今日、明日は明日。ちゃんと生活を重ねていこう。それはそれとして、ミルコ用の菓子は買っておく。渡してない物何があったかな。たまには板チョコそのものを紛れ込ませてみるか。もしかすると気に入るかもしれない。


 家に帰っていつもより少なめの夕食を取る。胃袋にはまだまだ余裕があるが今日はこれだけ食べれば大丈夫だろう。水分をちょっと吸い込ませて喉が渇いてしょうがない、ということにはならないようにしておいた。


 今日は片づけをするようなものもほとんどないので後は寝るだけだ。洗濯して風呂に入って、そしてゆっくりと寝る。調べ物はまた今度で良いだろう。あれ、何か調べるようなネタはあったかな……? 考え込んでいるうちに眠気が来たので眠気を優先させた。寝ている間に思い出すこともあるだろうし、調べ物は明日でもできるが、気持ちよく眠れるのは、今この時だ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
地上でどの程度使えるか次第で爆発物扱いされそうw ダンジョンの地面や壁にもできればトラップになりますね もし離れたところにもできたらリア充爆発しろ!!が再現できたところだったなw
遠隔で爆発物に変える力はなくてよかったですね。 リア充爆発しろとか念じてカップルが爆発(物理)したら大惨事になってたところでした。
メリケンの某ペケメンのキザなおじさんの能力みたいな感じですが、生物も爆弾に出来る→こちらのが上位互換ですな。
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