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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十七章:進捗進まずとも世間は進む
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940:ガイド付き四十五層ツアー 2

 一旦説明を打ち切って移動を開始すると、しばらくマリモが続く。せっかくなので残り一匹になるまで俺が処理して一匹に集中してもらう形で戦闘に慣れてもらうことにした。ちょっとずつ慣れてもらって、慣れたら二匹、三匹と徐々に相手にする数を増やしていってもらおう。最終的には六匹相手にする可能性があることだし、今一匹にてこずるようでは四十八層を潜り抜けるのは地図があっても難しいだろう。


 数回の戦闘が終わったところでもう一種類のモンスター、ホウセンカことバトルバルサミナと出会うことになった。相手はマリモが二匹、ホウセンカが一匹。


「あいつはこっちを認識すると、実を成らせ種を飛ばしてきます。その種に触れると爆発するので注意してください。ちなみに魔法耐性でかなり防げるようです」

「ウチらにはなかなか厳しい所でんな」

「コツはスケルトンネクロマンサーと同じで、実から種に変わって種が発射される前に倒す……つまり、こう! 」


 全力でダッシュしてホウセンカに近寄り、種が出来上がる前に根元を狙って左右に雷切を振り払い、ホウセンカを上下に分割する。根から切り離されたホウセンカはそれ以上の行動をとれずにそのまま黒い粒子に還っていく。残りのマリモは結衣さん達がそれぞれ応戦を始めた。


 戦闘が終わり次第、ホウセンカの感想について聞く。


「風魔法や水魔法は効果ないんですか? 」

「ありますし、雷魔法も充分効きます。マリモに関しても横田さんなら有効打を与えることはできると思います。結衣さんは……これまでの努力次第かな。ちょっとやって見てもらわないと解んない」

「二重化してるおかげで威力の算段がつけにくいってことね。次でちょっと試してみましょう」

「爆発する種って言いましたけど、実際喰らうとどんな感じになるんですか? 」

「爆風を受けるのは間違いないですが、それについてのダメージは……こっちは服も魔法耐性もそれなりのものを用意して挑んでますからね。今の装備でどうか、という問いに関しては喰らってみないと解らないとしか言えないですね。避けるのがベストだとは思いますが、背中の壁に当たって爆発という可能性もありますし、中々解説しづらいですね」


 ガイド役に快く応じてはいるものの、本当に役に立っているのかどうかは解らない。が、無理に突入して怪我して帰ってくるという可能性を十分に落としている分だけマシなことが出来ているとは思っている。


「次のホウセンカを探して、俺が試しに爆風を受けてみましょう。何度か喰らって服にも傷がつかないことは確認済みなので実地で見てこんな感じになるよ、という例はお見せできるとは思いますが」

「多分それやると芽生ちゃんが怒る奴なんじゃないの? 」


 おっしゃる通りでございます。でもまあ、怪我しないことは確認済みだし問題ないとは思っている。後悔はしていない。


「芽生さんには黙っていてもらうってことで。せっかく先に進もうとしてるのに実例を提示できないんじゃもったいないからね」

「じゃあ、次の戦闘は見なかったことにするということで」


 一同頷く。さて、次のホウセンカを探しに行くか。


 しばらくマリモを駆除するのを手伝いながら戦闘に慣れてもらっていく。平田さんと村田さんは【物理耐性】を持っていることもあってマリモの蔓攻撃にいち早く対処し、俺と同じようにわざと絡ませた後引っ張って一気に近寄らせてからの殴りつけ、もしくは斬りつけにシフトしていった。


 結衣さんは【風魔法】で蔓を切断しながら近づき槍で中心を突き刺すというオーソドックスではあるが危なげのない戦い方にまず慣れて、その後どうするかを思案するらしい。どうやらこの蔓、風魔法でもしっかりと密度を意識して放てば切断すること自体は出来るらしい。結衣さん相当頑張ってるな。


 次のホウセンカが出てきた。ここでマリモをさっさと雷撃で先に倒し、ホウセンカに全員の視線を集中させる。ホウセンカはこちらに近づきつつ実を成らせ種を生成し、種を発射する。


 種にわざと当たる俺、そして俺の前ではじける種。スーツのほうは……少し汚れがついたかな、程度。煙をパッパッと払って何事もないことをアピールすると、全力雷撃でホウセンカを弾き飛ばした。その後でドロップは回収する。


「あんな感じになります。これがどのくらいのダメージになるかは……ちょっと解りかねる」

「全員耐性両方つけてから潜るのでも問題ないような階層になってくるわね。しかし、魔法耐性も物理耐性もそれなりにお値段がするからなかなか難しい所だわ」

「頑張って拾うしかなさそうだね」

「種の発射速度的に、避けるのは難しいというほどでも無さそうだし、一発目を回避して二発目が装填される前に倒せるように心がけていくのが大事なのかな」


 それぞれ感想はあるが、ちょっと面倒ということには変わりないようだ。


「次はマリモは安村さんに任せてホウセンカと順次戦っていくってのを試してみても良いかな? 」

「そのためにガイドをしにきたようなものなので。任せてください」


 ホウセンカを含むパーティーが居たらマリモはこっちで処分してホウセンカの戦い方を学んでもらうことにする。とりあえず次へ行こう。


 と、早速次のパーティーもホウセンカを含むパーティーだったので、一緒についてきたマリモをすぐさま焼いて処理する。さあ、結衣さん達はどう動くかな。


 まず、平田さんが向かう、ということになったようだ。厳正なるじゃんけんの結果らしかったので仕方がない。平田さんが若干左右にぶれつつ、ホウセンカの種の発射を待ちながらダッシュで近寄っていく。


 ホウセンカはそのまま種を作り出し……発射。種の飛び出す間をうまく縫うように平田さんが体に似合わぬ軽快な動きで避ける。こっちに向かって真っすぐ飛んできていた種を雷撃で迎撃して、そのまま平田さんの様子を見る。


 平田さんは二発目が装填される前に無事とりつき、ホウセンカの頭? みたいな部分を殴ると、プチプチと花を潰して除草作業を始めた。他になんか手段思いつかんかったんかい。


 しばらくして違う花がしおれて実が成りだしたところで、実が完全に結実する前に握りつぶし、爆発しないように前処理の段階で終わらせた。そのまま除草作業を続けて根っこから完全に分断されたところでホウセンカは黒い粒子に還った。満足げにドロップを拾って帰ってくる平田さん。手には魔結晶とホウセンカの種。


「こんなもんでどうでっか」

「僕が植物だったら相当グロいシーンだったと思うよ。時間かかりすぎ」

「多村さんの言う通りです。もっとシンプルに行きましょう。二発目をうまくキャンセルできたから良いものの、三発目まで来るかもしれなかったんだし」

「でもおかげで、どういう動きで迫ってくるかは解ったんとちゃいますか? 」

「それは良いんだけどその種、爆発物だからね。昔の駄菓子屋で売ってたクラッカーみたいなもんだと言うか、ホウセンカの種そのものだから持ち歩きには向かないよ」


 指摘すると平田さんはぎょっとして種をじっくり眺めはじめた。


「これ、どないすればええんですの? 捨てたら爆発するんでっしゃろ」

「そのまま捨てて爆破処理するか、保管庫に入れておくかですかね。とりあえず預かっておきます。俺の保管庫にも大量に保管されてますし、保管庫の中なら爆発する可能性も無いでしょう」


 そのままドロップ品を受け取ると、次へ行きはじめた。平田さんはブツブツと「やっぱりシンプルに根っことその上を引きちぎるような形のほうが良かったんかな」等と言いながら後ろをついてくる。解ってるなら最初からそうしなさいよ。


 二番目、三番目と順番にホウセンカの相手をし始める新浜パーティー。一番シンプルに戦っていたのは横田さんだった。種が結実したところで相手が発射する前に種を水魔法のトンカチで殴り、暴発。ホウセンカがパニックを起こしているであろうその間に近づいて根切り。シンプルで被害も無く、スマートな倒し方だった。


 しばらくマリモとホウセンカ相手に戦っていると、壁が妙に焦げて擦れている跡を発見した。


「あ、これ近くにヒュージスライムいますね」

「ヒュージスライムというとさっき言ってたボスでっか」

「仮称ですが。これが通った跡になります。こっちからこうきてるはずだから……いない方向へ行きます? それとも見物していきますか? 」

「最悪戦闘になることも考えると見ないほうが……いやでも気にはなるかなあ」

「じゃあチラ見していくだけにとどめましょう。近づくのは無しということで」


 ヒュージスライムの通った方向を見ていく。ヒュージスライムがどっちから来てどっちへ行ったかは、道中のモンスターが居るかどうかで判別がつけられる。どうやらこのヒュージスライムは行く先に居たモンスターも溶かして吸収してしまう性質を持っていて、通った跡には何も残っていない。つまり索敵で見て何もいない方向にヒュージスライムが居る可能性が高まるということだ。


 しばらく何物にも出会わずに歩いていくと、しばらく先に半透明の物体が見えてきた。


「あれ、あれです。壁の花とモンスターを体内で咀嚼しながら移動してるのが見えると思います」

「次の標的はあれかあ。アレを倒せれば上級冒険者と認められてもおかしくないですよね? 」

「この階層に来てる時点で上級冒険者と呼べるような気はするけどね。他所のダンジョンだとこの階層が作ってなかったりするそうだし」

「じゃあ自分を誇っていいわけね。毎日カニと熊の相手だし安村さん達はどんどん先行っちゃうし、自信が無くなる所だったわ」

「問題はどうやってあのスライムの表面を削って核にダメージを与えるか、ですか」

「俺たちがやった時は保管庫でバシュっと射出してそのまま物理的にえぐって核にダメージを与えたんで参考にはならないとは思います。もしかしたら徐々にダメージを与えていくことで表面が削れていって、核が露出したところでダメージを与えて分裂……というのを繰り返すのが正攻法になるんですかね。最終的に百ちょいぐらいまで分裂した覚えがあるので結構難があるとおもいますよ」


 あの時は高橋さん達の協力もあったけど、結構な時間かかったからな。数時間費やしてやっと倒せるようなモンスターなのかもしれない。そういう意味ではエルダートレントも似たようなものか。


「じゃ、姿も見えたことだし戻りますよ。戻って……今この辺か。じゃあこっちに向かって進みましょう。徐々に任せる数を増やしていくんで、マリモとホウセンカ同時に相手する時の動きとか考えといてください」


 ヒュージスライムに別れを告げ、奴の進行方向とは別のほうへ向かう。時間はまだある。もう少し迷っていても問題はない。残り一時間ぐらいになったら声をかけて階段のほうへ戻ることにしよう。


 しばらくマリモとホウセンカを相手にし続ける。そういえばここのモンスターは一切スキルを落とさなかったな。やはり花園だから【木魔法】あたりが予想されるスキルオーブだろうか。他に関連しそうなものも思いつかないし、それ以外の各属性スキルと耐性スキルは落とすだろう。それ以外に思い浮かぶスキルは無い。


 その点で言えば、何かここらで面白いスキルが落ちても不思議はない。他のダンジョンでは基本的にドロップしない、深層でしか手に入らないスキルなんてものがあるなら是非拝んでみたいものだがさてどんなのがあるのかな。


 そんな事を考えていた矢先だった。


「安村さん、ホウセンカからなんか出ましたで」


 ホウセンカを真っ当な手段で根と茎部分を手動で引きちぎって黒い粒子に還していった平田さんから報告が飛ぶ。何か出た、と言われ意識をこっち側へ呼び戻される。見ると、光り輝く玉がドロップされていた。四十五層から四十八層にかけて一切出なかったスキルオーブのドロップが初めて四十五層で確認された。


 平田さんがスキルオーブを拾い上げて「ノー」と発言した後、こっちに向かって持ってくる。


「なんかえらい物騒なスキル出ましたけど、安村さんはこれ知ってはりまっか? 」


 物騒なスキルらしい。何々どれどれ……と持たされて確認する。いつもの音声さんがスキルの名前を告げてくれる。


「【爆破】を習得しますか? Y/N 残り二千八百七十九」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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