表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十七章:進捗進まずとも世間は進む
931/1206

931:新ダンジョンに期待されるもの

毎度の誤字報告助かっています。相変わらず多くてすいません……

「ただ、どこまで新しくダンジョンとして作るかにもよると思うんだよね。ただ配信できるようになったダンジョンなのか、それとも地形や出てくるモンスターやドロップ品にもそれぞれ違いを出すのか、それとも既存とは違うだけで結局既製品の詰め合わせになるのか。ダンジョンマスターの応用力が試されるね」


 多分聞いているであろう他のダンジョンマスターへも伝わるように少し大げさにアピールしてみる。何はどうあれ、ガンテツがテスト領域を作ってそこにアクセスできるようになって感想を事前に聞く機会を設けるのか、ある程度の階層まで出来たんで一斉公開します、となるのか。その辺もまだ解らない。もしかしたら新しいダンジョンが欲しいと盛り上がっているのは実際には俺だけで、面倒くさいと思いつつも付き合ってくれているのかもしれない。そこを深堀りしても誰も幸せにならないので横に置いておくことにした。


「安村さん的には、小西ダンジョンを踏破して新しくダンジョンが出来るって聞いたらそっちに移りますのん? 」


 平田さんがのんきだが大事な質問を投げかけてくる。


「清州より近くに新しいダンジョンが出来るってならそっちに行くかもしれないなあ。でも、小西ダンジョンがリニューアルオープンするって話ならそのリニューアルには是非立ち会いたいかな。なんだかんだここが拠点だし、河岸を変えながら儲けを出していくのが探索者だって言われたらそこまでになっちゃうんだけど、愛着はもう湧いちゃってるしね」

「せっかく保管庫も拾ったことやしここで体が動かんくなるまで探索を続けるってのも生き方としては有りですな。ただ、我々が思ったよりもダンジョンが浅く作られてるってのが今のところの問題ってとこでしょうな」

「今頃焦って続きを作ってるか、それともダンジョン庁にせっつかれてるのかはわからないけど、他所のダンジョンもそれなりに深くはあってほしいよね。そのほうが探索者人口が適度にばらけてくれるし、新型ダンジョンという新しいサンドボックスを作るにしても時間には余裕が有ったほうがいい」


 うんうん、と一同頷く。


「とりあえず俺としては芽生さんの試験や就職周りが一段落するまではこのマップでひたすらカニを集めたりスノーオウルの羽根を集めるってことで日々が過ごせそうだな。五十五層は手ごわいし、結衣さん達は四十五層のボスをどうするかは解らないし……ってそういえば、結衣さん達はエルダートレント撃破経験あるんだっけ?」

「それが、安村さんのおかげで早めにBランクになっていたおかげで倒さずに今の地位に居られるってとこですわ。どうも巷では、エルダートレントを最低限撃破してないと、B+のランク格上げ可能措置があった場合条件として求められそうっていう流れになっとるようで。その前にB+ランクになったウチらとしては有り難い話でもあり、倒せるなら倒してみたいなあという気持ちもあります。それに、四十五層にもおるんでしょう? どうやって倒すか計画を立てるのも含めてまだ見通しが立ってない所ですわ」

「僕らとしては収入の面では現状でも満足できちゃってるから、これ以上上を目指さなきゃいけない、という意思もないからね。精々今の内に稼がせてもらおう程度のつもりでいるんだけど、安村さんに追いつきたいなぁという気持ちはあります。肩を並べて最深層攻略ってのも楽しそうだしね」


 平田さん、多村さんが自分の感想を言い合う。これは多分、新浜パーティーとしての目標は自分達に追いつくことなんだろうな。なら猶更今急いで追いつかれまいと焦る必要もないわけだ。


「ところで、芽生ちゃんとは次いつ潜るわけ? 予定は立ててあるのよね」

「一応二日後って事になってる。明日一日休んでいろいろ細かくやることが出来たんでそれを済ませてゆっくり休んで……ってことになるかな。今の最深層なら頑張れば二人で二億……近くまでは稼げるようになったからそれを目標にしてのんびりやる予定」

「じゃあ、まだ五十七層はチラリとも見てないんだ」


 結衣さんが意外そうにしている。とりあえず次の階層を見るだけ見て戦うだけ戦って、その上で現状五十五層に甘んじている、と思っていたらしい。


「そうなる。潜りたくなった時のお楽しみだね。ただ、今までのダンジョン傾向から考えると五十五層のほうが五十七層よりも稼げるのは間違いないから、そこでどうやって違いを出していくかも必要だし、もしかしたら五十五層のドロップ品の査定可能になるのが思ったより早くなる可能性だってある。そうなった時、市場に必要とされてるドロップ品を多めに持ってくるようにお願いされる可能性だってあるから、五十五層だけに潜っていられるかどうかは難しい所だね」

「なら、ウチが潜ってるドウラクの身以外でも例えばワイバーン素材が欲しいとか、安村さんみたいに羽根が欲しいとかクエストの形で受注して納品する話も出てくるかもしれないってこと? 」

「あるかもしれないなあ。現状そういう発注を出すなら企業がギルドに話をつけて、ギルドからB+探索者に対して一定数の納品をお願いする、みたいな奴。なんかファンタジーっぽくていいよね、俺も数回ギルドからクエストではないけどお願い事の形で受注した経験はある」

「清州に居た時に何回か受けたのは覚えてるわ。アレも今思えば清州ダンジョンから探索者が離れないようにするための策だったのかもしれないわね」


 やはり、探索者を繋ぎとめる手段としても、うちでの実績がこれだけあるからと探索者がどこをメインに活動しているのかを可視化させる意味でも、探索者に直接お願いするという形でドロップ品の回収をお願いすることはあるらしい。


 流れからいえば俺にダーククロウの羽根の集めを頼んだりすることも可能だったのではないか、とふと疑問に思ったが、どこかに溜めこんでいる訳でもないし俺が布団屋に納品していることはギルドとしても既知の話になっていることもあるので深くは追及しないのだろう。もしくは、追及しないことでここに居続けてほしいというサインでもあるかもしれないな。


「さて……そろそろ休憩終わりにしようかな。午後もしっかり稼がないと」

「それ以上稼いでなんか使うあてでもありますのん? 安村さん相当稼いでらっしゃるはずですが」

「今のところ無いかな。ただ、あって困るものでもないし、お金があるからってそのまま何もせず日々を過ごすのも面白くないからね。せっかくなら自分を鍛えて行って、この歳で何処までいけるかを証明するのも面白そうだし、それに探索者は稼げる仕事だという証明をこっそりしておくのも大事ですからね」


 今年の目標は……百億稼ぐ。そのあたりを目標にしておくのが面白そうだ。今の貯金額からして、確実に達成できそうな額ではあるが、せめてこのぐらいはしなきゃいけないな、と思うところではある。


「大々的にやるつもりはないんでっか? 大昔の新聞に載るような納税額を誇るとか」

「あんまり大々的にやると、B+ランクだけずるいとか言われかねませんからね。それが原因で階層の開放やダンジョン庁への圧力につながるのは望んでませんから」

「難しいとこですな。こっちも精々安村さんに追いつけるように頑張りますわ」

「じゃ、お互い探索再開って事で」


 結構話し込んだな。おかげで時間が進むのが早かった。腹もこなれたし、午後からも頑張るか。今日も昨日ぐらいの稼ぎが出せれば充分だ、明日は休みだし、いつもよりちょっと頑張って働きに出るとするか。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 五時間半ほど頑張ってカニうまをした。時間的にギリギリにはなったが、いつもより張り切って動いた分、収入は多いだろう。もしかしたら億いったかもしれん。ドウラクの身も二百五十を超えて手元にあるのでそこから推測される収入も中々の物だろう。


 魔結晶もそうだがポーションもいつもより二本ほど多い。張り切ったつもりはなかったが、どうやら今日はドロップ運が少しばかり良いらしい。これは期待して良いな。


 一仕事終えて四十二層に戻る。どうやら結衣さん達は一足先に帰ったのか、あちらのリヤカーは無くなっていた。いつも通りリヤカーをエレベーターに引き込み移動中に荷物を載せていく。流石にそろそろリヤカーの荷重限界に来るかもしれない。この階層で一晩稼いで一回で査定に持っていくのは不可能だろうな。


 いつも通り七層で途中下車して茂君。今日もきっちり一キログラムを稼いで戻り、退ダン手続き。査定カウンターまで荷物を持っていき、査定開始。いつもとジャンルは変わらないが重さは増えているので査定するのも大変そう。がんばれー。


 五分ほどかかって査定結果、一億二百六万円。ギリギリまで時間を使えば一日で一億稼げることを立証できてしまった。ついにここまで来たか、という気持ちになる。一日一億。一人でも一億。ただ、今日は明日が休みだと解っているので多少の無理を利かせたような部分はある。毎日潜るのにこれを維持するのはちょっと体に無理をさせることになるだろう。こういうのは休みの前の一稼ぎという所だけで充分だ。


 保管庫からスマホを取り出すと、真中長官からの返信が来ていた。


「それは確かに問題になるかもしれないね。各ギルドに通達を出しておいたほうが良いかもしれない。外国人らしき探索者か海外製のBランク相当の探索者証を見せられた場合注意事項として伝えるように早急に手配するようにしてみるよ」


 どうやら対応はしてくれるらしい。海外から来て勝手に踏破してダンジョン閉じて勝手に帰っていく、なんてことが多発した場合今後のダンジョンの存続問題にもかかわってくる。国際問題になる前に着手しておいたほうがいいだろうと警告を送っておいたが、素直に受け取ってくれるようだ。


 さて、今日はしっかり動いて腹も減ったな……そういえば夕食は欠食児童たちに食べられてしまったんだったな。夕食どうするかな、コンビニ飯でも構いはしないがなんかそういう気分ではない。家に帰って何か作るか。動いたわりにいつも通りぐらいの腹具合だ、軽いものがいいな。うどんでいいか。


 家に帰り、早速うどんを茹でる。ちょっと固め位で茹で終えて、ネギとコンビニで買ってきたコロッケを添える。後は豚バラを少し一緒に茹でておこうかな。コロッケそばならぬコロッケうどんだ。


 料理とはとても呼べない手軽さと調理方法ではあるが、俺が料理だと思った以上料理だ。うどんとコロッケ、それにあらかじめ刻んで冷凍しておいたネギ。味付けはめんつゆ。そして豚バラ肉。たったこれだけだが、大事なのはそれで満足できるかどうかだ。早速カリッカリのコロッケをそのまま口に入れ、サクッという音と共にコンビニの揚げ物の特有の香りが鼻を抜けていく。うん、美味いとは言い切れないが、値段相応のいい味をしている。


 これなら卵を落として月見うどんにしても良かったな。麺類のレパートリーは少ないようで多い。これは人にお出しするようなレシピではないので、一人で食べるにはちょうど都合がいいメニューであっただろう。


 ズルズルっと麺を啜り、一緒に入ってくるネギの香りを鼻で感じつつ、麺つゆと共に口の中でしっかりと香りも味も楽しむ。もう一パックぐらい茹でても良かったかな。面倒くさいから追加が欲しくなったら茹でるんじゃなくて湯と一緒にレンジで温めて追加というズボラ路線で行こう。明日は休みなことだし、趣味も一時休みだ。今日はとにかく手抜きで行こう。


 腹を満たしたら次は片付け。いつもは片付けを先にするが、夕食がまだであることも考えてまず夕食、その後片づけという手順にした。におい管理はキッチリしていく。今日の汚れは今日の内に。食器洗いが終われば次は服。先日買った香り心持強めの洗剤でワイシャツと肌着類一切を洗い、スーツはファブってしっかりと乾燥させておく。乾燥が使えるのでやはり【生活魔法】は便利だな。乾燥した後匂いを嗅ぎ、ファブった時特有の薬品の香り以外に残ってないことを確認する。


 洗濯している間に風呂に入り、においの残りやすい所を念入りに洗い、全身ツルピカにした後ゆっくり湯船につかり、今日の仕事で絞り出しきれなかった汗を絞り出す。また今度サウナでもいこうかな。


 風呂から上がったら洗濯が終わった衣服を干し、においが残っていないことを確認。部屋干ししておく。もし部屋干しのにおいで臭いと感じるなら、その時は部屋ごと綺麗にしなければならなくなるが、今のところはそこまでしなくていいだろう。


 今日も中々に濃密な一日が終わる。明日は休みだが、予定は詰まっている。テーラー橘に行きもう二着スーツを注文して、それから鬼ころしへ行き足に合うブーツを購入する。


 それから時間がまだ空くだろうから調べもの。レアスキル所持を公開している探索者についての情報を探し出してどのように対応しているのかを学ぶ。……うん、どれ一つとってもダンジョン関係の用事しかないな。先日布団の山本に行かなかったら明日納品に行っていたであろうし、どうやら俺の日常はダンジョンで埋め尽くされているらしい。


 悪いことだとは思わないが、仕事人間であると言うことがこれでもかと強調されているような気がする。まぁ、自分が納得しているのだからそれでもいいだろう。肉体的に休める時間は必要だし、それは睡眠時以外でも芯の疲れを取るためには重要かもしれない。出来るだけ午前中に予定を詰めるだけ詰めて、午後からはゆっくり調べもの……という流れにしたいな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
俺の日常はダンジョンで~、自分でそうしてんのに白々しい
ダンジョンがリニューアルオープンかー そしたら再び攻略階層増やしてエレベーターの行ける範囲を伸ばしていく事になるんかな
12月の終わり頃から読み始めて、 やっと最新話まで追いつきました...! おじさん達の探索が大好きで、 欲をいうともっと沢山スキルを覚えて より楽に戦ってる姿をみてみたいです。 先のお話を楽しみにして…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ