924:海外と国内
カクヨムでもこそこそと何かやってますが、こっちはこっちで通常通り運行中です。
あっちが忙しいからこっちの更新はしません、等ということはありませんので安心してください。履いてますよ。
今日はちょうどいい感じに起きれた。ありがとうダーククロウとスノーオウル。いつも快適な目覚めを提供してくれていることに感謝し、今日は枕カバーも洗濯しよう。枕カバーを変えると洗濯機へ寝間着と共に放り込んで洗濯。
昨日と一昨日は宣言通りスノーオウルの羽根集め。おかげでしばらく行かなくて済む程度の羽根を集めることに成功した。ダーククロウの羽根は日課として出入りのタイミングで毎回茂君に通うので一日にうまく行って二キログラムずつ。週に五日通うとして十キログラム。充分な量を集めていると言えるだろう。
その内三十八層まで他の探索者が到達するようになれば、本格的に集めるのが難しくなってくるだろうが……それまでに数を集めておいて他の探索者やギルド経由での入手に努めてもらうことになるだろう。俺の取り分はちょっとだけ減るが、俺以外にも羽根の供給元が増えることは悪いことじゃない。むしろどんどん集めていってほしいとすら思う。
Bランクへのダンジョン階層追加開放がされるのが楽しみだな。次は三十五層まで拡張されるのかな。どのダンジョンも最下層が三十八層あたりまでは最低限作られていることを考えると、Bランクでダンジョン最深層踏破という形になる可能性は低い。調べた範囲では最下層は最低でも三十八層までは存在するらしい。なぜ三十八層なのかは解らないが、とりあえず何処のダンジョンもそこまでは作ってあるようだ。それ以後はそれぞれのダンジョンマスターの頑張り具合で変わるらしい。
ミルコは働き者だな。ダンジョンの仕様がどこまでプリセットとして用意されているかまでは解らないが、途中から小西ダンジョンオリジナルの設計になるのか、それともミルコの作った階層を参考にしてプリセットを拡充していくのかまでは解らない。だが、少なくとも今頑張れば五十六層までは楽に作ることが出来ると知れば他のダンジョンマスターも気軽に最下層を作り込むようにしてくるのかもしれない。
ダンジョン関係の翻訳ニュースを見る。今日もまた一つダンジョンが踏破されたらしい。階層は四十三層。どうやら少しだけやる気を出したダンジョンマスターが居たらしい。そのまま四十二層でドウラクを楽しむということはしなかったようだ。
そういえば国際的にダンジョン探索者としてのランクを示すような取り組みってあるんだろうか。国際ライセンス的なアレ。海外に行くどころか小西ダンジョン以外に潜る気が無い俺だが、そういう仕組みがあるかどうかは気になる。ちょっと調べてみよう。
調べた結果、何処の国も探索者証は共通規格らしい。ということは世界に何個あるか解らないがダンジョンの数だけ探索者証発行機があり、探索者証の内容もそれぞれ同じものを発行できるらしい。ただ、どの国で発行されたかで潜れるダンジョンの階層には違いがあるらしく、海外の探索者証を使うとちょっとしたすれ違いが有ったりすることがあるようだ。
国内で言うと具体的にはBランクとB+ランクのような区分けがあったりなかったり、というあたりが主に違うらしい。海外のとある国ではB+ランクが存在せず、いわゆるBランク探索者証でどこまで奥に向かっても良い事になっている。その場合、海外産だから日本のダンジョンへ潜る際に探索者証を更新するか、黄色くなってからギルドに問い合わせて再発行、という流れになるようだ。
どうも海外から探索者が日本へやってくる、という流れがにわかに人気になっているというのも最近知った。最深層到達が日本から常に生み出されつつある……というより俺が最深層へ向かってるせいなのだが、ダンジョンの最深層を知りたければ日本の何処かにあるダンジョンへ潜りこんでいくのが先端探索者としては必要なのではないか、という意識の高い探索者が先頭に立って各地のダンジョンに潜り込んできているらしい。
小西ダンジョンでは今のところそれらしき人は見かけてないが、今後はそういう人たちも増えてくるのだろう。どうしよう、俺日本語と関西弁の二ヶ国語しか話せない。うっかり話しかけられてもこっちから話に応じる用意が出来ていない。芽生さんは英語大丈夫だったりするんだろうか。いざとなったら相棒の語学力に期待しよう。
さて、朝食のニュースは見終わったので昼食を作る準備。今日は手軽にサンドイッチ。揚げ物を使わずマヨネーズをベースにした自作のソースを塩胡椒の下味だけつけたウルフ焼き肉に塗り、キャベツをピーラーで細かくしたものと一緒に挟んで終わり。味見はちゃんとしたがよくできている。夕食は今は作らず帰ってきてから食べよう。
柄、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
スーツ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
飯の準備、ヨシ!
嗜好品、ナシ! 今日仕事終わったら買いに行こう。
酒、ナシ! これも仕事終わってからだな。
保管庫の中身、ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。さぁ、今日も張り切ってダンジョンに行くぞ。目指す金額は定めてはいないが、適当にいつも通りやってる金額をベースとすれば五時間も働けば充分のはずだ。
◇◆◇◆◇◆◇
ダンジョンにたどり着くとなんだか入ダン手続きが滞っているようで、行列が発生していた。この時間にしては珍しく混んでいる。なんぞあったのだろうか。
しばらく並んでようやく自分の番。団体さんで入場でもあったのだろうか。
「珍しく混んでましたね」
「ちょっと色々ありまして」
家を出る前のニュースでやってたさっきの今で海外探索者の話かもしれないな。フットワークが軽いパーティーも居るもんだな。それでどうして小西ダンジョンにたどり着いてここで探索をするという事になったのかまでは俺にはよく解らない。
まあお客さんいらっしゃいぐらいの気持ちで居ればいいだろう。多分出会う事は無い……いや、海外から最先端の探索者が、といったばかりなのだ、もしかしたらサクッと深層までたどり着くかもしれないな。
「その人たちの探索者ランクは……個人情報ですよね」
「ですね、まあ出会ったらなんとかボディランゲージでやり取りしてみてください」
まぁ、俺が行くのは深層だ。いくらなんでもバッタリ会う事も無いだろうし、彼らが仮にものすごい勢いでダンジョンを下ってきたとしても今日中に出会うなんて事はまず無いな。いきなり四十二層までガバッと下りてきたとしても、それなりに道中には時間がかかるんじゃないだろうか。そう考えると今日一日さえやり過ごしてしまえば何とかなりそうな予感がする。
いつも通りリヤカーを引っ張って行き茂君、そして四十二層。午前中の二時間をダッシュで済ませて昼食のサンドイッチを貪る。いつもの流れだ、悪くないぞ。腹が満たされたところで少し休憩をしてまたダッシュ。休憩を交えながら合計八時間ほど仕事をした。これだけ仕事をすればもう今日の収入は確定したようなもの。後は帰るだけだな。
ダッシュに費やした今日一日を労おうと少し休憩してから帰り支度を始めようと四十二層に戻ったところ、結衣さん達でも高橋さん達でも、そしてミルコでもない団体さんがそこに存在していた。どうやら件の海外の探索者さん達だ。本当に四十二層まで到達したらしい。
『おい、あそこに人がいるぞ』
『まさかダンジョンマスターか? 話しかけてみようぜ』
『ダンジョンマスターなら問題なく言葉が通じるはずだ。違ったら現地の探索者だ。確かめてみよう』
何か言っている。そしてこちらへ近づいてくる。どうしよう、何を言ってるか全然わからない。
『やあ、君はダンジョンマスターかい? それとも探索者かい? 』
「あう、あう、あう」
何言ってるか全然わからない。そういえばスマホに翻訳アプリが入れてあったな。ここは翻訳アプリに頼ってみよう。
「初めまして。海外の探索者さんですか」
画面を見せる。本当に翻訳が通じているのかどうかは解らない。もし彼らが他のダンジョンマスターとつながりがある場合、言葉が通じない都合で俺がダンジョンマスターじゃなくて探索者だと言うことは通じるはずだ。
『どうやら探索者みたいだぞ』
『何々……探索者の海外の人ですか、だそうだ』
『じゃあ普通の日本人か。現地の人とは仲良くしておかないとな』
『とりあえずお互い翻訳アプリでやり取りを深めたいな。ここのダンジョンマスターの姉さんからの言伝もあるし』
向こうは四人パーティー。女性は居ない。四人で少し相談をした後、向こうの翻訳アプリで返事を返してきた。
「ここのダンジョンマスターと話がしたいです。面識がありますか? 」
面識がある、と認めて良いものかどうか悩む。うーん……と悩んでいる間に、次の質問が飛んできた。
「日本では、三十一層以降に潜れる探索者はみんなダンジョンマスターを知っていると聞いた。あなたもそうか? 」
なるほど、ちゃんと情報は仕入れてきているということか。なら変に隠したりするよりも素直に白状したほうが良いだろう。
「確かにここのダンジョンマスターとは知人だ。彼に何か用事か? 場合によっては話を通すことはできると思う」
『会話が出来るようだぞ』
『わざわざ日本まで来た甲斐はあったってことだろう』
『早速呼び出してもらおうぜ』
再び彼らからの返事が来る。翻訳アプリ越しに会話というのは中々面倒くさいな。やはりミルコを呼び出して通訳をしてもらうほうが早いのかもしれない。
「ここのダンジョンマスターは確かミルコという名前だ。彼の姉からの言伝もある。その為に日本まで来た。半分は観光です」
観光ついでに来たというが、名所は無かったはずだ。つまり、彼らはダンジョン間のメッセンジャーということになるのだろう。ダンジョンマスター同士で通話はできるはずなんだが、わざわざ海を越えて伝えに来たと言うことはそれなりに理由があるんだろう。しかし、ミルコの姉か。姉が居たのか。ダンジョンマスターを姉弟でやっているということだろうか。それとも義理的な意味での姉弟なのだろうか。とにかく伝言があるというならミルコを呼ぶのがここでは正解なんだろうな。
手を二拍。そしてバッグ経由で冷えたコーラを取り出す。ミルコは来た。
「姉さんから言伝だと聞いてきたよ。わざわざ遠くからご苦労様だね」
『君がミルコか。リュドミーラからの言伝だ。大事な用事かもしれないんだからちゃんと通話に出ろってさ。後、ちゃんとそっちでやっているか心配もしていたぞ』
「まったく心配性なんだから。子供じゃないんだしほっといてくれても良かったんだけどね」
『姉から見た弟なんて世界に関わらずそういうもんだと思っておいたほうが良いぞ。俺にも姉が居るがこの歳になっても心配ばかりされている。探索者って仕事上心配されるのは仕方ないんだが、な』
「ともかく、伝言は受け取ったよ。で、その為だけにわざわざここまで来てくれたのかい? 何のおかまいも出来ないが精々稼いで帰って行ってくれ。それぐらいしかできないからね」
『あぁ、ありがとう。ところでミルコ、君を呼び出した彼はこのダンジョンでは有名なのかい? 』
「安村はこのダンジョンでも底のほうまで到達してる間違いなく上等な探索者だよ。君らよりも……多分強いね」
ミルコが何を言っているかは聞こえてくるので俺を褒めているのは解る。ただ、話している彼の言葉は解らない。英語なのかスペイン語なのかフランス語なのか。探索者になってまで語学に堪能でいる必要があるとは思わなかったな。使わないからと言って怠っていたのは今後必要になるかもしれない。駅前留学が流行っていたころに俺も留学しておくべきだったな。
「安村、彼はガルシア。僕の姉がダンジョンマスターをやっているダンジョンの専属探索者らしい。僕が姉からの連絡を一切受け付けないからわざわざここまで旅行してきて伝言を伝えに来てくれたらしい。ガルシア、彼は安村。このダンジョンの専属探索者で、僕によくおやつを持ってきてくれるとても良い探索者だ」
『ガルシアだ、よろしくな』
何か言い手を出してくる。多分、よろしくな、と言っているのだろう。がっしり握手をして交流を深めておこう。
作者からのお願い
皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。
続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。