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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十六章:底は見えず
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919:手数色々

 戦闘のバリエーションを増やすため、芽生さんと二人イメージングをしながらいろんな形でそれぞれの魔法の形を作ってはぶつけてその成果について話し合う。その上で、威力や効果が確実に見込めるものをいくつか採用しながら目の前のかなりの数まだまだ見えているアルファ型とベータ型に対して試験で撃ちこんでいく。


 とりあえず午前中はスキルをあれこれいじくり回すのが主眼だな。稼ぐのは午後からにしよう。しかし、新技候補か……この放射状に雷撃を撃ち出すのは、範囲内に細かいモンスターが多く存在するような場合は多用するだろう。


 全力で撃てばアルファ型は倒すことが出来、ベータ型は動きを鈍らせるところまで消耗させることは解った。アルファ型は単体で言うなら全力雷撃で倒すほど魔力を消費しなくても倒せるが、常に相手にするのが一匹とは限らないので両方使っていくことが気楽だろう。これは新技として加えてしまってもいいだろう。この五十五層を金稼ぎの場として最大限の効率を叩きだすには効果的だろう。


 後は竜の形を模して雷のイメージを突きだす、というものも用意してみたが、見た目がかっこいいと芽生さんからの評価を得た。後は竜が消えるまでの間通り抜けていくモンスター全てにダメージを与えることが出来るため、マップ兵器としてもそこそこの性能を見せている。


 デメリットとしてイメージを作るための時間がかかることと、雷魔法のメリットの一つである着弾までの速度、これを殺してしまうことになる。素早いモンスター相手には効果が薄いだろう。


 午前中の戦闘を問題なくこなし、お互い思いつく範囲の魔法の種類を出し終えて、五十六層へ戻って食事をしながら感想戦に入る。


「うん、やはり雷竜は見せ物以外の意味合いは薄いな。この技は……飲み会の一芸としては悪くないかもしれん。威力をうんと落として壁に当たったら弾けて無くなる程度の出力で出せればうけるだろうな」

「実用面では難あり……でも十層あたりでワラワラ群がってくるのをまとめて倒したりするのには有用では? 」

「それなら水平投網……何て名前にしようねえ。ウェーブサンダーとでも名付けておくか。こっちのほうがまだ当たり判定も範囲も指定しやすくて威力も中々だし、ここでも充分に使える。ここで使えるならこの先でもまだまだ出番はありそうだな」


 サンドイッチをぱくつきながら水分を補給して、しっかり動いた後のメンテナンスを行う。水分が体にしみ渡っていきとても気持ちいい。


「後は、地面に【水魔法】で水分をばらまいてその後【雷魔法】で一気に地面から感電させる方法も試しましたが、時間的に余裕がある時には充分使えそうですね」

「素早く地面にまき散らすというか、対象に対して水魔法を付与させるだけのスピードがネックかな。水さえ通ってしまえば後は雷がほぼノータイムで攻撃を加えることが出来るし、雷単体で撃ちこむよりも威力は上がりそうだ。そうなればもう一つコンビネーションプレイが出来ることになる」

「私たち自身に水がかからないように素早く水分をまき散らすってイメージですね。……できると思います。水をピャッと出せばいいんですね、ピャッと。食事が終わったらさっそく試してみますか」

「一グループに対して使うにはちょっと出力過多かもしれんが、やるだけやっておくか。後、昼からはひたすら金稼ぎに興じよう。ここは美味しい。モンスターの密度も量も、そして強さもそこそこ。一撃で倒せる相手でここまで稼げる相手は今のところないし、今日はたっぷり稼いで帰るぞ」

「強くなって稼げてしかも楽。一泊せずとも一億稼いで帰れるかもしれません。楽しみですねえ」


 さっさとサンドイッチを食べ終わると、すぐにでも稼ぎに出そうな芽生さんを少し制して、ちゃんと休みを取らせる。午前中で二時間、三十分休憩。その間に稼いだ金額は……ざっと五千万。稼ぐことに集中して午後からちょこちょこと、午前中のスキルの見せあいの復習をしつつモンスター退治に集中すれば、六時間ほど仕事をする時間がある。ギリギリまで徹すればさらに三十分ほど時間が取れる。モンスター密度も濃いことだし、少し早めに切り上げても充分一億に届く可能性はあるな……と。


「何計算してるんです? 」


 メモ帳に数字を走らせているのを見て芽生さんが確認しにくる。


「今日の予定収入かな。午前中よりも効率的に動けばこのぐらいの稼ぎにはなるかな……という予定リストだ。本来ならこの階層のドロップ品も査定してもらって収入として計上するべきなんだろうが、まだまだ時間はかかりそうだし、そこを抜いてもほれ、このぐらいは」


 時間そこそこまで戦い続けたと仮定した場合の金額を見せると、芽生さんがぱあっと笑顔になる。


「一泊せずにこの金額ですか。中々に美味しい階層ですね。しばらくここで生活するだけでもうこの人生二度と仕事をせずに済むかもしれませんね」

「人生は意外と長いぞ。趣味が無ければ何もない時間をひたすら消化するだけになってしまう。それに、ただ減っていくだけの口座を眺めるのは精神に悪いと言っていたのは芽生さんじゃなかったっけ? 」

「その時はそれはそれ、投資でもしてゆっくり資金が増えていくのを眺めることにしますよ。自分の金で他人が働いてくれるのを眺めるのも悪くないですよ? 」

「探索者が出来なくなったら考えることにしよう。それまではじっくり稼ぐさ。それにまだダンジョンの底を見てないからな。このまま何層まで続くかまでは解らんが、出来る所まで潜って、ダンジョンコアを見て、それから……それからもう一度考えても悪くないな」

「ここまでミルコ君と付き合いがあるのも無下にできないでしょうしね。限界まで働け、なんて言いませんけど付き合えるところまで付き合いましょう。その後は……その後考えても悪くないと思いますよ」


 他愛もない話をして休憩を取った後、再び五十五層へ戻ってさっきの感想戦の続きと成果を確認する。どうやらお互い新技というか、確実に敵を葬れる手段を一つか二つ手に入れたので後は体にイメージをなじませつつ、より素早くより強力に戦える手段として構築していった。


 一時間おきに水分補給を細かく取り、常に消耗しない状態でアルファ型とベータ型を消し飛ばしていく。試しに五十四層への階段まで往復してみたが、来る時にかかった二時間は一時間半から一時間十五分ほどに短縮して移動することが出来た。単純に殲滅速度が速くなったことも原因にあるが、最初から道が解っているというのも大きいだろう。


 ちょっと階段まで往復して帰ってくるだけで当初の予定よりも多く稼ぐことも出来た。やはり階段の往復をするとモンスターの活動範囲に入る数が増えるのでその分だけ実入りも多くなった。


 良い感じに六時間稼いで現在時刻は午後七時。頑張ればもうちょっといけるところだが、そこまで細かくこだわる必要は無さそうだな。今日の収入としては充分だ。


「撤収するか」

「そうですね、お腹もすいてきましたし、ご飯食べてから帰りましょう。一食浮きますし、洋一さんの事ですから夕食、用意してくれてるんでしょう? 」

「まあな。今日の夕食は野菜のトマト煮だ。肉っ気はないが栄養は取れると思うぞ」

「自分一人で鍋はあんまりしませんからね。楽しみです」


 五十六層に戻り赤砂の砂漠の中で鍋。違和感があるのは解っているが、そもそも四層ごとに表情が変わるダンジョンの中で違和感も何もない。よって、鍋でもヨシ。ちょっと温めなおしてアツアツを頂こう。


 ふむ……少々塩胡椒が足りないかな。自分で足していると、芽生さんも欲しいらしく渡す。やはりコンソメをもう少し足してコクを出しておくべきだったか。トマトの味はしっかりとしみているが、確かに物足りない。次回に活かそう。メモメモ。


「今日の稼ぎはいくらぐらいになりましたか。充分満足できる金額ですか」

「普段十分すぎるぐらい稼いでいると思うんだが……まぁこんな所かな」


 スマホでポチポチと入力して計算結果を出して見せる。おおよそズレてはいないはずだ。


「それだけあれば充分ですね。今日も頑張りました」


 財布もお腹も満足そうな芽生さんにこちらも少しほおが緩む。食べ終わると食休みの時間はエレベーターで戻る間にとることにした。


 早速荷物を取りまとめてリヤカーをエレベーターの中へ保管庫経由で移動させると一路一層へ。リヤカーにひたすらポーションと魔結晶を積み込み始める。魔結晶は中々の量になった。


「魔結晶は次の階層あたりで小さくなるかもしれんな。そろそろ大きくなってきたし持ち運びに問題が出てくる量だろう」

「と、するとやはり青色ですかね。既に出ている色でもありますし、エルダートレントの魔結晶の大きさから考えてもその方がしっくりきますが」

「かもしれん。まあしばらくは出会う事は無いだろう。ここでしっかり稼ぎつつ強くなって、何かしら社会的な問題が発生したとか……たとえば他のダンジョンで五十六層まで到達したことが発表されたとか、そういう話になってきたらまた歩みを進めるとするか」

「のんびり行きましょうのんびり。精々視聴者を楽しませる範囲で、そんでもって……新しいダンジョンが出来たらそこも楽しみに行くぐらいのつもりで行きましょう」

「新しいダンジョンか。もう二つ三つダンジョンが攻略される必要があるだろうな。そのぐらいダンジョンが攻略されて、ダンジョンマスターが暇になってきたあたりで相談に来るだろうから、その後でも問題なさそうだ」

「どう新しいダンジョンが出来上がるかどうかも含めてまだまだ楽しみはあるって事ですね。ドロップ品なんかも変わってくるんでしょうか」

「さてな。そこまでは解らんがまあ楽しみにしておこうじゃないの。何処まで知恵を絞って新しいダンジョンを作ってくれるか」


 一層にエレベーターが着く。早速山盛りの魔結晶とポーションを手土産に退ダン手続きをして査定カウンターへ。流石に量が量だと思ったのか、バックヤードからヘルプが入った。ちゃんと連携が取れてて良いと思う。


 しばらくかかって結果が返ってきた。きょうのおちんぎん、一億二千七百万八千円。一億を超えたのは久しぶりかな。記録だったかどうかはさすがにメモしてないから解らないや。でも充分稼げたのは間違いない。今までで一番か二番か。まあどちらでもいい、宿泊で帰ってきたらそれ以上の金額を持ち帰ってくることになる。


「やりましたね、過去一ですよ過去一。時給で言えば一千万円ぐらいですよ」

「通勤時間も含めればそのぐらいになるか。頑張った甲斐も有ったという所だな」


 支払いカウンターで振り込み。さあ今日も一日の仕事が終わった、帰って片付けして眠ることにしよう。休憩所でいつもの冷たい水をもらいつつ、周りに誰も居ないのを確認してから事後の相談。


「しばらくはあの階層に通うってことでいいんですかね」

「あそこに来てからまだステータスブーストアップもしてないからな。また三段階ぐらい鍛えておきたいし、資金を貯めるにもいい場所だし、なによりインゴットはこれから需要が伸びそうな素材だからな」

「その間に他のドロップ品も値段がついてくれればいいんですが。今種とか牙とか鱗粉とか、どのぐらい溜まってるんですか? 」


 芽生さんはさすがに保管庫の中身まで把握はしてないので直接聞いてくる。ちょいちょいとウィンドウを動かして確認する。


「えーと、マリモの種がざっと千。牙も鱗粉も六百五十ぐらい、インゴットは二百四十ってところだな。後は引き取り手のないホウセンカの種も四百五十ほど入ってる」

「結構溜まってますね。全部五万円査定と考えても一億五千万円ほどになりますか」

「さすがに全部五万円査定と言うことは無いだろうが、そこそこの金額まだ未換金だというのは覚えておこう。引き取り可能になったらギルマスから何かしら連絡はあるだろうし、その後で二人で潜った時にまとめて引き取ってもらう形で良いよね」

「そうですね。取り急ぎお金が必要という事もありませんし、去年稼いだお金もほとんど手を付けてませんから、税金の納付申請が届いてからゆっくり動いても悪くはないと思ってます」

「今年から自宅に直接届く形になるのか。いくらになるのか見るのが怖いが……まあ少なくとも今年に入ってから稼いだ金額のほうが去年の総合計よりも多いから大丈夫だろ」


 ちょこちょこ買い物に行くたびに通帳に記入するようにはしているが、次に頭を悩ませるのは、多分もう一桁増えた時だろうな。そう遠くない未来だ、覚悟はしておかないと。おそらくだが、今年中には行きそうな気がする。この調子で潜ってたら確実に行くことは目に見えている。稼ぐのも大事だが、探索以外に目を向けることも考えていこうかな。しいて言うなら新車かな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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コンソメでふと思ったんですがローテーション肉じゃがの時にジャーマンポテト差し込んでも良さそう。
おお、大きくお金を使えそうな新車ですか でも安村さんが高級車を乗り回すイメージがまるで浮かばねえw
一定回数自動攻撃サンダー・ウォーターボールとかつくれたら休憩時や多数戦闘するときとか楽そう
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