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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十六章:底は見えず
918/1206

918:三重化スキルの本領発揮

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 今年は去年ほど気温の急上昇は無いらしい。暑いかと思ったらそこそこ涼しくていい感じに起きることが出来た。そろそろ夏布団を出さないといけない時期かと覚悟はしていたが、そこまでの物でもないらしい。何とも奇妙な気温の上下をしているが、ソメイヨシノも無事葉桜になり、そういえばお花見なんてしなかったな、なんてことを思う。


 せっかく酒が飲めるようになったのだから一人寂しく公園のベンチで桜を見ながら缶ビールをあおるなんてことも出来たのはちょっともったいなかったかな。


 まあ、一人寂しく花見するよりは知り合い誘って盛大にやりたい気もするし、今年の花見の時期はもう過ぎてしまったから今から騒ぐということでもない。テレビで散り際の桜を片手に朝食を食べるということで今年の花見は終わらせた。


 五十六層に潜ってスキルを三重に覚えてから数日経ち、ソロでは充分すぎるほどの成果を得る事が出来た。これ以上の効率を求めるなら、ベースの自分の足の速さとモンスター湧きの早さにかかってくるのでこれ以上の効率化は現状では少し難しいことも解った。後は今日、芽生さんと五十六層まで潜って、五十五層の中々の密度のモンスター相手にどれくらい戦えるかの実証実験で結果を出そうと思う。


 さて、今日も念のため昼食と夕食を作ってから出かける。昼食はサンドイッチ、夕食はいつものごった煮。トマト煮にしようかな、そろそろ消費してしまっても良い頃合いだ。トマトを切り刻んで潰して煮込んでトマト煮を作り、その間に材料を切って米を炊いて……と準備をしていく。


 キャベツは……入れると巻かないロールキャベツになってしまうがこの際入れてしまおう。人参大根キャベツにミンチ肉。ミンチは市販のものだ。今度、ミンチメーカーでまとめて肉を色々ミンチ化して冷凍して、用途によって使い分けられるようにしておくのも有りだな。今度の休日、羽根納品のついでに家での作業でやってしまう事にするか。メモっておこう。


 サンドイッチの具は卵とツナとサラダ、それに馬肉を純粋に焼いたもの。胃に入れることが出来て手軽に食事出来て場所も時間も取らないもの、としてチョイス。おそらく、五十五層の何処かで休憩して食べるか五十六層で食べることになるだろうから、あまり休憩時間を取らなくても済むように軽めのものにした。


 茹で卵を手軽に作るとマヨネーズと合わせてグニグニと潰してサンド。ツナは油をよく切って、これもマヨと合わせてサンド。サラダはさっきのトマトの残りとレタスとチーズ。オーソドックスな四種類を用意した。これで準備はヨシ。炊けた米を容器に移して用意は完了。


 柄、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、今日はナシ!

 酒、今日はナシ!

 保管庫の中身、ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。今日はひたすら五十五層で自分たちの耐久テストと三重化させたスキルがどこまで通用するかの試験を行う。現状一番強いと目される相手にどこまで戦えるか、いや、何処まで楽に稼がせてもらえるかを試しに行く。望むべくは歩きながらひたすらスキルを行使するだけでモンスターたちが倒れていく光景だが、それを見ることが出来るかどうか。さぁ、試験の時だ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 時間通りにダンジョンについたので、コンビニに立ち寄りいつもの雑誌の最新号を二冊、買う。これで帰り道でも暇つぶしが出来るぞ。


 雑誌と言えば、芽生さんもそろそろ新しい雑誌を入れたいのではないだろうか。後で聞いておこう。ギルドに到着すると中で着替えて待ってた芽生さんと合流。何を一番に話すという訳ではなく、淡々と入ダン手続きを終わらせて、リヤカーを引いてエレベーターに乗る。


 五十六層までのボタンを押すと、扉が閉まり、いつもの作戦タイム。


「今日はひたすら五十五層で戦おう。昼食は軽めのものを用意したから胃が気持ち悪くて動けない、という状況はないと思う。念のため夕食は用意してきたが、一泊するかどうかはちょっと悩みどころだな。あと、男性もので悪いが化粧水も入れてきた。顔が乾いてしょうがないときは塗って誤魔化そう」

「乾燥するマップですから無いよりはあったほうが良いですね。でも、洋一さん向けの化粧水って事はシミ抜きとかそういう感じの化粧水じゃないですかね」

「確かにそうだな。やっぱり女性向けとは違うもんなのか」

「違いますね。今度サンプルを持ってきますから保管庫に入れといてください。試しに使ってみても良いです。お肌のケアは大事ですからね」


 そろそろシミやあばたが気になるお年頃。俺もちゃんとした奴を買って備えるべきなんだろう。高級な奴でも良いので一本入れておくか。


「そういえば、最近雑誌の更新をしてないけど何か新しいものを仕入れておく必要ある? 」

「今日の帰りにでもコンビニで探しますかね。それを入れてもらっておくということで。古いのは処分してもらっても構いませんよ」

「解った。覚えておいて雑誌回収の日にでも出すわ」


 それからしばらく最新号の探索雑誌を読みふけり、スキルオーブについて色々意見を出し合う。今後値上がっていくであろうスキルオーブと手持ちのスキルオーブ、それから何か面白い、新しいスキルオーブが市場に流れてないかを確認。


「スキルオーブのインフレが激しいですねえ。多重化スキルの話がにわかに広がっているのではないか、ということでしょうかねえ」

「【毒耐性】がじわじわ上がってるのは俺が購入した影響かもしれん。B+ランクの探索する場所でも、購入してまで入り込まなきゃいけない場所があると口コミで広がったのかも。口止めできるようなものでもないし、そうやって相場が出来ていくものだからどうしようもないのも確かだが、一攫千金の夢が詰まってるのもまた悪くない、と言ったところかな」

「取引の際には探索者証を見せ合う必要がありますからね。どのランクの探索者が買い求めていくのかという点で言えば、噂が広がるのは仕方ないのかもしれません」


 難しいもんだな。俺が最深層まで潜っていてそこで必要になった、とは一言も伝えていないが、態度からして必要になるんだという印象を残してしまったのは仕方がないとして、あの時取引した探索者が【毒耐性】について周りにこれは金になるかもしれないと広めていたらどうしようもない。


 流石にスレを全部巡って毒耐性のすばらしさについて広めたり噂を抑制したりするわけにもいかないからな。値上がりして今更困るようなものでもないし、広まる噂はそのまま広まってしまうままになるしかないか。


 スキルオーブの話を後にして、今後各ダンジョンがどのぐらいのペースで踏破されていくのか、何年後にダンジョンが全て無くなることになるのか、そうなった場合探索者という職業は……というようなコラムを目にしていくと、ダンジョンマスターがダンジョンが踏破された段階でどうなるか、という所に対して、想像を軸にして半分ほどを妄想に包み込んだ話をしている。よくこれで記事に出来るって編集が許可出したな。


 それによると、踏破されたダンジョンのダンジョンマスター、この際ダンマスと略すが、ダンマスはダンジョンと共に消滅し、ダンジョンを消滅させるためのエネルギー源として作用しているのではないだろうか。その為、新しいダンマスが向こう側から供給され続ける限りダンジョンはまた新規に生まれるであろう。


 今後もまたどこかにダンジョンを作り上げられる可能性もあるが、現在三年ほどかけて三十八層から四十層あたりに最下層があるという現状を考えると、新しいダンジョンを踏破していくのもそれほど難しい話ではない。短時間で作られたダンジョンはまた短時間で踏破できる。そうなれば、後はモグラたたき方式でダンジョンを踏破していくことにより、国内からダンジョンというものを締め出すことは難しくないのではないか、という話だった。


「ダンジョンって、入口作ってからその後で追加する物でしたっけ? 」

「俺が聞いた範囲だと、ダンジョンと地上の接続口は次元を直接接続させるだけで済むからダンジョンをあらかじめある程度作っておいてから繋げば問題ない、という話だったような? 移動させることが出来るか質問した時にそんな回答をもらった気がする」

「じゃあ、かなりの的外れの意見になりますね。ガンテツさんも消えてませんし、あくまで妄想でしかないということですね」

「読み物としては面白いな。探索者が消える日、みたいな。じっさいは数千年……いや、エレベーターのおかげで短くなったはずだ。数百年ぐらいで終わるかもしれない。その間にいくら稼げるかを考えておけば良いな」

「魔結晶が手に入れられなくなったらその時はまた化石燃料に逆戻りするんですかね? 」

「さすがにそれはないんじゃないかな。その頃にはクリーンなエネルギーとしての代替できるだけの発電方式が研究されて実用化されていると思うよ。何か一つの形態に頼った形で、発電という大事な事業を行うのは危険でしかないからな。ただでさえ仕組みや情報がまだ開示されてないダンジョン物資なんだから、核融合なりなんなりの発電システムの研究が進むことに期待しよう」


 五十六層に着いてリヤカーを下ろす。と、リヤカーの車輪が砂に埋まって早速スタックした。力づくで無理やり脱出させるものの、やはりこのマップではただのリヤカーでも移動するには不便であることが解った。とりあえずここに放置してはおく。ただ、荷物を積み込んだらまたエレベーター前でスタックするのが目に見えている。


 リヤカーには申し訳ないが、今後はリヤカーは保管庫に入れておくか、保管庫に一旦入れてエレベーターの中で出して、積み込みは全部エレベーターの中で、ということになるだろう。


「ここにきて物理的原因でリヤカーが使いにくくなるのは想定外だったな」

「まあ、保管庫のおかげで解決できるんだから良しとしましょう。実際に他人が使ってみてそこで問題になる、ということはもうしばらく先の話になるでしょうし」


 今のところは何もなかったことにしよう。とりあえず今到着してその辺で狩りをしているぞ、という目印代わりに置いているリヤカーは今日もその目印の役割を、誰にも発見されないまま主張し続けてくれることになるだろう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 五十五層に上がって早速モンスターが襲ってくる。ベータ型二匹、アルファ型三匹。アルファ型のほうが先にこちらへ向かってくるのは体験上ほぼ確定した動きなのでまずはアルファ型に全力雷撃一発。アルファ型はその一発で黒い粒子に還る。調子は悪くない。一発で倒せるのは想定済みだ。そのまま連続、全力雷撃でアルファ型を二体とも黒い粒子に還す。残りは芽生さん任せにしてみる。


 ベータ型に全力雷撃一発。すると、ベータ型も一撃で黒い粒子に還すことが出来た。全力雷撃三発で確定収入二十八万。うん、コスパは悪くない。むしろ優秀な部類に入る。


 芽生さんもワンテンポ遅れてベータ型の始末に入る。ベータ型の頭部に向けて水鉄砲をイメージしたのか、太めの一筋が走っていく。水の一筋はそのままベータ型の頭部を貫通し、通り抜けていった。ベータ型の頭部の大事な所を射抜かれたのか、そのままベータ型はゆっくりと黒い粒子へ還っていった。


「おぉ、中々の高威力。ウォーターショットってとこ? 」

「水だけじゃないですよ。水の中に細かくした魔法矢を混ぜ込んで更に回転をかけて威力を高めるイメージを作ってみました。新技のお披露目って奴ですね。技としては地味ですが、今のは確実に新しい攻撃方法として優秀だというのが解りましたし、他でも何か使えるかどうか考えながら行きましょう」


 あれで混合魔法らしい。そういえば新技のお披露目会をしようって言ってたな、すっかり忘れていた。ソロでカニうまダッシュしている間のアレは新技になるんだろうか。


「威力が高いことを保証はしないけど何種類か雷のイメージを変化することは出来たからな。新技という割に威力はそうでもないのが多いな。なんか派手なのいってみるか。どれにするかな……色々試してはいくか」


 良さそうなパターンを引けたら試そう。これで俺も芽生さんもここのモンスターは一撃で倒せる保証みたいなものを確実に目にすることが出来た。後は繰り返しやっていけるかと、どれだけ長い時間それらを使いこなすことが出来るかだな。


 次に出てきたアルファ型三体に対して投網を水平化させたような形で放射状に雷撃を放ち、三匹まとめて黒い粒子に還すことは出来た。多分コスト的には全力雷撃一発のほうがまだイメージの固定化が出来ている分だけ確実に倒すことが出来る。慣れないイメージを具現化させるとその分魔力も使ってしまうようだ。次はもうちょっとうまくやろう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
攻撃に使える魔法を複数持っているとそういうのもできるんだなあ なんかカッコイイですよねえ混合とか合体とかって あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします。
( ◠‿◠ )
新技考えながらやるのはいい気分転換と楽しみになってよさそうですね 生活魔法複数ゲットしたらどうなるんだろうなぁ あけおめことよろです
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