912:ダンジョン攻略方法
おりんぎんぎんぎんの表記の問題ですが、今後も前のままで維持していこうと思います。ご協力ありがとうございした。
あと
いいね、お前消えるのか……
エルダートレントの攻略法を書き終えたところで風呂が沸いたので風呂に入る。芽生さんと洗いっこして二人でゆっくり入ると、寝間着に着替えて続きを書き始める。芽生さんは例によって俺シャツである。テーラー橘で見繕った方ではない、もっとお安いワイシャツだ。さすがにちょっと寒くはないのかとは思うんだが、本人が気に入ってるならまぁいいか。
高山帯の情報はもうすでに入っているものとして、報告の形で求められているのは花の迷宮マップから先の情報だろう。だが、ちゃんとカニうま島とツンドラマップの情報も提供しなくてはな。現状ダンジョン最下層であるダンジョンコアの設置されている手前のマップである確率が高めのツンドラマップだ、おそらくダンジョンコア破壊待ちのいくつかのダンジョンではツンドラマップこそ最下層だと思われている可能性はある。
まずはツンドラマップの解説からしていくか。スマホに保存してある画像と映像を取り込んで、それを交えつつ情報を書きこんでいく。文体はできるだけここまでの情報をまとめてあるものに近い形で、同じ人が作ったようにまとめていけばいいだろう。
まず、気温や室温、体感温度から始めて、出てくるモンスターがどういう形態で存在し、どこに現れるか。スノーベアの雪まんじゅうっぷりやスノーオウルが木に巣を作ってじっと留まっていること、ドロップ品のおおよその割合、ドロップする魔結晶の大きさや報告時点でのおおよその価格など、解る範囲で記入していく。
地図については省略する。主な戦い方、向こうの攻撃方法、攻撃パターン、覚えている限りを書きこむ。主に雷撃を使っていたので俺だけの攻撃パターンでは情報が少なすぎるので、芽生さんが口頭で読み上げた戦いのパターンも併記していく。
カタカタカタ……とキーボードをたたく音と、コーヒーを飲む音、それから口頭で相談する声以外は何も耳に入らない。集中して仕事が出来ているな、という気がする。
ツンドラマップについてはこれでヨシ、と。次はカニうま島マップだ。
カニうま島マップ……とはさすがに書けないので、孤島マップとしておく。カニうまと呼ぶのは俺の心の中だけだ。カニの何がウマいのかを説明すると蛇足になるし、ほとんどの探索者にとってはドウラクの身は重さのわりに収入が少ないと苦情が飛ぶところであろうからそこは省略しておく。
特徴、海であろう場所の水の味、出てくるモンスター、落とすドロップ品、階段の出現しやすい傾向の場所等を確認していく。
ドウラクが【水魔法】らしき方法で泡を飛ばしてくることも表記。リザードマンは偶に自分の持ってない武器をくれる等、その辺も欠かさず書いていく。
「そういえば、ドウラクは【水魔法】みたいなもので泡を飛ばしてくるけど同じことできそう? 」
ふと疑問に思ったことを芽生さんに尋ねておく。
「どうですかねえ。泡ですか。気体を水で包み込んでそれをショットガンみたいに発射するってイメージでなら何とかなるかもしれません。今度実演してみますか」
現在【水魔法】三段階目の泡のショットガン、喰らったら上層のモンスターなら消し飛ぶような威力になるだろうが、どのくらいの効果があるかはちょっと気になるし、もしかしたら【水魔法】以外の固有スキルかもしれない。
リザードマンについては身体能力の高い人間に近い身体組織をしたモンスターとして明記しておく。槍の腕はそこそこ素人に近く、芽生さんからいえばもしかすると槍よりも剣を持っていた方が厄介だったかもしれない、という話らしい。
ドロップ品のトライデントの写真も添付し、かなり低い確率でこれをドロップすることを確認。手持ちに写真が無かったので部屋の中で物が映らないようにして撮影したが、まあ細かいことは問題にされないだろう。
次は花の迷宮マップ。出てくるダンジョンタンブルウィードとボムバルサミナ、ダンジョンマスキプラの戦闘情報を記入していく。ドロップ品についてはそれぞれ撮影はしてあるものの、ボムバルサミナのドロップ品については危険物であり、持ち出しにはあまり向かない、持ち歩いている間に爆発する危険性が考えられるなどを記録。ダンジョンタンブルウィードの種はまだ結果が出ていないらしいので効能などは不明であることも触れておく。
それぞれのモンスターの攻撃方法やボムバルサミナの爆発する種は魔法攻撃扱いであることを記入する。それが解ってるだけでも防衛のしようがあるからな。【魔法耐性】も金額なりの効果があるということを明記しておく。
ダンジョンマスキプラの葉の特徴、スキルを吸収することは大事なのでちょっと強調文字で書きこんでおこう。ドロップするポーションはヒールポーションのランク5であることも明記するが、かなりドロップ率が低いとしっかり書いておく。
マップの構造は基本的に十三層から十六層の迷宮マップと同じこと、四十八層には二十四層の頭上に居る巨大な蜘蛛が存在するように、巨大な花のオブジェクトが添えられていることも記述。
「後忘れてるような事ないかい? 」
「肝心のボスを忘れてますよ」
「おっと、そうだった。意外とあっさり倒せたから忘れてた」
ボスであるヒュージスライム(仮称)について書きこむ。基本的には一体だが、核を狙ってダメージを与えていくとある一定のダメージを受けたところで分裂し、より細かくなる。更にダメージを加えることでどんどん分裂して行き、最小単位になったスライムを一つ一つ潰していくことで倒すことが出来、最後の一つを潰した段階で討伐成功となること。
ドロップ品であるヒュージスライムのゼリーはサッパリどうなるのか見当がつかないこと、それからキュアポーションが落ちたこと、エルダートレントの魔結晶と同じ大きさの魔結晶が三つ落ちたこと。リポップするまでには二週間ほどかかること。
倒すかどうかはさておき、ヒュージスライムが存在すると道を完全にふさがれるので袋小路に追い詰められたら倒す以外方法は無さそうであること、倒していく行程において、自分たちが倒した際にはヒュージスライムの攻撃してくる手段は判明しなかったこと等、不確定だが必要な情報を埋めていく。
ヒュージスライムの段階で二週間リポップにかかったことを考えると、次の六十層のボスも三週間おきなのか、それとも一ヶ月おきなのか。もうすぐ向かう事になるだろうし、どんなモンスターがボスとしてお目見えするのか、またフィールドエンカウントなのか、それともボス部屋が用意されてるのか。色々知りたいことはまだまだあるな。
だが、最先端探索者として残しておくべき情報はすべて残しておくべきだろう。ダンジョンによって難易度に差があるとしても、傾向は同じのはず。こっちで出てくるモンスターがあっちでは出現しない等といったことは少ないと思われる。
「後は……そうですねえ。ドロップアイテムがどこでどうなって素材として生まれていくのかは気になる所ですね。一度ダンジョン庁とすり合わせをして、解る範囲の情報としてこっちに卸してくれると助かるんですが」
「ワイバーン素材から先、だな。熊胆が漢方薬として流通するのは確かだし、スノーオウルの羽根が睡眠欲だけを効率的に解消する寝具アイテムとして現在密かに流通している、ぐらいの情報は書きこんでおいていいな。実際自分が流通させてるって話だが、それでもはっきりと文面で残しておくことは必要だろう」
各マップごとに新規ファイルとして一旦保存。ドロップ品についても同じく、マップごとのドロップ品として別ファイルに新規保存していこう。一つのファイルに長々と作る理由はないし、マップごとに分かれている方が情報を参照しやすい。
「ふー、やっぱり芽生さんが居てくれて正解だったな。俺一人の視点だとどうしても情報が偏ってしまう。横から口出ししてくれると書きこむ情報量がとても増える。余計な情報を精査するのはこっちじゃなくて向こうに任せるとして、報告の形でまとめられるのは助かるよ」
「似たようなことを今してるおかげですね。卒論のついでみたいなもんですから頭はしっかり回ってますよ」
卒論か……どういう内容書いてあるんだろう。実地の情報として自分の探索の階層と階層に対するドロップ品の収入金額、モンスターの数なんかをまとめて、階層あたりの儲けやダンジョンに関することで埋まってたりするんだろうか。まあ、いい。俺が口を出す事ではない。順調に書き進められていると言うことは課題としては問題ないということだろうしな。
「後は四十九層から五十六層にかけて、か。最近通った所だからここはまだ書きやすいな」
「もうちょっとですから頑張ってくださいね。牛乳貰います」
芽生さんはいったん離れると冷蔵庫から牛乳を取り出し飲み始める。そろそろあれも賞味期限だな、何か……たまにはパンケーキでも焼いて朝食に出すか。珍しいと言われそうだがお高いバターとメイプルシロップでごまかしておけば、若い子は甘いもので釣れるだろう。
四十九層から五十二層にかけては紫色の照明に彩られた霧の鍾乳洞マップだ。地面から逆さに生えている逆さつららこと石筍、天井の影から確認できるつららを目印にして歩くことになる。出てくるモンスターはシャドウバイパー(仮称)、シャドウバタフライ(仮称)、シャドウスライム(仮称)。ここから先は仮称だらけになるな。
それぞれの特徴と毒をもつこと、シャドウバタフライの鱗粉はマヒ毒を有しているが、定期的にキュアポーションを摂取することで解毒が可能。ある程度以上体内に溜まると動きが鈍くなっていくことを注意事項として明記しておく。
ドロップ品はそれぞれ牙と鱗粉。鱗粉については毒性は無く、砂糖の数百万倍の甘さの甘味料として期待がされているらしい、と「らしい」を強調しておく。シャドウスライムはキュアポーションのランク2かランク3を落とすこと、シャドウバイパーは牙を落とすが用途に関しては現状不明であることを書き足しておく。
あー、報告書ってのはやはりテンプレートがある程度あると楽だな。すでに出来上がっている文章の単語を並べ替えるだけで形に出来る。
残りは五十三層から五十六層。赤砂の砂漠エリア。歩きにくいことをまず書いたうえで、乾燥しており水分不足になることが考えられるので充分な水分を持ち歩いて行動することが必要であることを説いておく。
出てくるモンスターはアルファ型(仮称)とベータ型(仮称)。どちらも近接攻撃しかしてこないが、それなりに素早いことを書いておく。もしかしたらこっちのステータスが高すぎて遅く見えているだけかもしれない。比較対象が居ないのはこの際記述するのに不便だな。ドロップ品は謎のインゴット。おそらく鋳造や鍛造時に合金として使用することで装備や工作機械に応用できるんじゃないかと私見を加味しておく。
「ふぅ……ざっとこんなものかな。とりあえずここまでの形で提出しておいて、細かいところについて聞かれたら随時答える形にしていこう」
「お疲れ様です。慣れないことはあまりするもんじゃないですねえ」
「全くだ。今後も深く潜ったらまた同じ形で報告書を書くことになるんだろうけど、その時はその時でまた書き足していこう。さて、新しい情報をUSBメモリに放り込んで、ヨシ。後はこれを提出して、五十六層まで到着したことを報告すれば終わりだな。明日のギルマスの出社時間までは解らないが、午前中はゆっくりして午後から探索に行くことにするかな」
「本来なら明日の朝ダンジョンから出る所でしたからねえ。さて、一仕事終わったところで、何かしますか、それともナニかしますか」
とりあえず下ネタをスルーして、今日やるべきだったことを一つ寝る前に終わらせておこうと思う。
「昨日国内のダンジョンが一つ踏破し終わったところで騒いでるだろうからな。海外ではどうなってるのか知りたいところ。パソコンを変えて調べものと行こう。海外ではどのくらいのペースでダンジョンが踏破されて行っているのか、後は解る範囲で海外ではどこまで深く探索されているのか。その辺だな」
「国内では昨日でまだ二つ目でしたっけ。たしか、話によると過去も含めて四つほど、ダンジョンコアまでたどり着いた形跡のあるダンジョンがあるって話ですが」
「残り二つは地域的に必要だと判断されたのか、それとも別の理由で攻略を遅らせているのか、まだはっきりはしないが、海外ではその辺どうなってるんだろう? というのを調べるつもりでいる」
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