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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十六章:底は見えず
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907:赤砂の砂漠 3/6

 ドローンで居場所を確認する。どうやら西の一軒家の北側あたりを通行していることになるようだ。が、ここから見えるギリギリの北側に階段らしき大岩を見つけることができた。


「どうやらこっちで当たりみたいだぞ。北側に大岩が見える」


 手元に芽生さんも引き寄せ、ドローンからの映像を確認する。


「むむ……さすがにこの距離では階段かどうかまでは解りませんが大きさ的には怪しいですね」

「もしこの大岩が外れでも、そこから北西の場所へたどり着くことも出来そうだ。ここは北側に舵を切ってみよう。もし迷っても真南に行けば、今は目測では見えないけど当初目標にしてた一軒家にたどり着ける。このまま北西に向かうよりも北側に向かうほうが近そうだし、そもそもの目的は階段のある大岩なのだからそれっぽいものが目視出来てるならそっちに行く方が合理的ではないかい? 」

「お任せします。私はドローン操縦が上手くないですし、二択や三択になった時に出番があるものだと心得ているので、この場合は大岩に近寄る一択でしょう」


 二人の意見があったところで、ここで針路を北へ無理やり曲げる。北西まで行ってそこから更に階段を探すよりも建設的であろう判断を二人共が下した、ということになる。これで外れの大岩だったらミルコに当たり散らすところだが、過去これまでで階段っぽいけど階段じゃないものというオブジェクトの偽物は見たことが無いので、やはり階段である可能性は非常に高い。ここはミルコを信じよう。


 真っ直ぐ北に向かって歩く。道中のモンスターの対応はベータ型はさておき、アルファ型は充分に余裕を持って戦う事が出来ている。まだ数が少ないと思われるから、という注釈は付くが、五十三層で苦戦する事は無いだろう。


「やっぱり階層を下りたらモンスターの一グループあたりの数も増えるのかな」

「もしくはモンスターの発生自体が増えるかもしれません。覚悟はしておきましょう」


 しばらく歩いてドローン、歩いて戦ってドローン、こまめにドローンを使って距離と、大岩が階段かどうかを確認しながら向かう。大岩が段々確実に見えてきて、どうやら階段だぞと目視できる距離まで来た。


 大岩を発見してから三十分、階段から階段の直線距離で言えば五十分ぐらいで済むだろう距離に階段はあった。


「これでもう一歩次へ踏み出せたな」

「階段が見つからないというのは結構なストレスだと前にも言ったような気がしますが、これで肩の荷が一つ減りましたね」

「さぁ、次は五十四層から五十五層にかけてだな。モンスターの密度も気になるが、素直に通してくれるかどうかも大事だ」

「その前に、階段までに居るモンスターを掃除してからですね」


 確かに。目視距離でもモンスターが一つ、二つ、……それなりのグループが居る。それぞれで戦闘していたら各一分ぐらいは時間を取られるだろう。後ろを振り返ってみたが、まだモンスターは湧き直していない。やはりここはモンスターの湧き方も低いのか。


 なんか五層を思い出すな。五層と思い出すと、六層の爆走っぷりも同時に思い出す訳だが、流石に下に降りたらモンスターがリンクして襲ってくる……そんな可能性は無いと思いたい。


 階段までの間のモンスターを確実な手段で倒して階段へ無事たどり着き、地図を描き終える。帰りの道が真っ直ぐではないことが少し気がかりだが、ここは時間を基準にした三角関数的なもので考えて時間的距離を出す。ここより下がよほど大変な地域だった場合、帰り道はこのショートカットを使う必要が出てくる。


 とりあえず、片道一時間ほどでここまで来ることが出来た。時間的余裕は思ったよりもある。この調子で五十六層まで行くことが出来れば、一晩と言わず今日中に帰ることも可能だろう。


 階段を下りる前に一休憩。気をそれなりに張っていたおかげで気づかなかったが喉が渇いている。水分をきっちり補給してから行こう。


「この調子で簡単に見つかると良いんですが、難しいでしょうかねえ? 」

「ふぅ、どうかな。少なくともここがサバンナみたいに何もないマップだった場合、やっぱり目印基準で移動するしかなくなるだろうし……そういえば、サバンナと同じようなマップ構成だった場合、エレベーターは上下どっちかの階段に寄せて設置してもらう必要が出てくるんだよな。どうするかな……また自転車で行き来することになるのかな」

「この砂の上で自転車で走るのは難しいと思いますよ。そこは諦めて歩きましょう。しいて言うなら下りの階段側に設置するべきでしょうね。下に向かうという意味ではそのほうが解りやすいと思いますし、奥へ奥へ行こうという気分が出て良いと思いますよ」

「先の先の話だが、そういう事にしておくか。まずは五十四層、ここをぬけていかないとな」


 休憩を終えて階段を下りる。階段を下りた先は何もない風景に階段があるわけではなく、また少しの建物がある場所へ出た。索敵を即座に最大限仕掛けてあたりを警戒するが、索敵範囲内にモンスターは無し。ここは階段すぐには湧かないマップなのかもしれないな。


 小高い丘も無く、ただ数軒の家と井戸があるのみ。やはり飲み水は貴重、ということだろう。


「周辺オーケー。敵影無し」

「敵影は……目視ではいますがあの距離ではさすがにこっちまでは来ないですね」


 家から……少なくとも百メートル以上離れたところにモンスターが確認できる。試しに手を振ってみるが反応はないので、あちらさんはそんなに目がよろしくないのだろう。周囲に危険が無いのを確認したところでドローンを飛ばす。


 ドローンから見えた景色はあちこちに木が……そう、葉は生えてないようだがフォーク状に枝が伸びている、前はちゃんと葉はあったんですけど砂漠化して無くなってしまいました、とばかりに枯死したのかと思うような木々がいくらか立っている。


 その木々のさらに奥の方に、白く輝く大地を目にすることが出来た。目標はあっちだな。木々は点々と立っており、目印と呼べるほどはっきりとした区別がつけられるほどのグループ分けが出来るほどでもない。これはもう、白く輝く大地のほうへ行くしかないだろうな。


「東のほうになんか真っ白な地面がある。そっちへ行ってみよう。そっちへ行って、ダメなら戻ってくる感じで」

「真っ白な地面ですか。何かが露出してるんでしょうかねえ? 塩でしょうか、それともなんかの金属でしょうか」

「さすがにそこまでは解らん。解らんからこそ見に行く価値はある」

「そうですね、なんだか探索っぽさが急に出てきた気がします」


 東へ真っ直ぐ、謎の白い地面を目指しながら行動を開始する。道中には当然のようにモンスターがお目見えしているが、アルファ型もベータ型もあまり目は良くないらしく、こちらを見ているようにも見えるが見えていない可能性がある。もしかしたら熱探知とか振動探知で把握しているのかもしれないな。


 一応接敵距離を測るためにこちらからは何もせずに近づいていくと、百メートルほどの距離に来てようやく行動を開始した。相手はベータ型二匹、アルファ型二匹だ。この距離で全部を同時に相手するのは辛いため、ここはマップ兵器でもある所の極太雷撃で一気に始末にかかる。数秒の照射でモンスターは消えていき、後にはドロップ品が残った。


「百メートルぐらいは大丈夫……と。地道に相手の戦力情報を溜めていこう。こっちから先に攻撃できるのが解っただけでも攻略法は数パターン増やせるぞ」

「【隠蔽】の効果が無ければ二百メートル先からでも襲ってくるんじゃないですかね。そうなると五十二層みたいにダラダラと戦い続けてた可能性もあります」

「それもそうだな。じゃあ二百メートルと記録しておくか。俺達は大丈夫でも他の人に情報が伝わった場合情報伝達ミスで怪我をさせてしまうかもしれない」


 百メートルは【隠蔽】スキル所持時、所持していない場合二倍ほどに伸びる可能性がある……と。


「しかし、ベータ型が二匹来た場合一対一で戦えるならまだいいが、オプションのアルファ型が何匹ついてくるかは問題だな。やはり軽く極太雷撃で焼きながら行くのが安全か」

「今のところはそうかもしれません。ドライフルーツの在庫は万全ですか」

「出来るだけ食べなくて済むように燃費を考えながら行くことにする」


 二匹三匹なら問題にならんが、最大四匹となるとちょっと火力の調節が必要だ。どのくらい焼けば実質行動不可能にできるのか。何秒当てればスタン状態にできるのか。それを見極めていこう。


 次に出てきたのはベータ型二体。芽生さんと俺と二人とも、スキルで対処。頭部を直接狙う形で全力雷撃三発、芽生さんもスプラッシュハンマー二発。二匹相手で近接しないならこれが一番楽な選択肢となる。歩いてる間にも魔力は回復していくので出来るだけ少ない消耗で進むことが出来る。


 ベータ型二匹アルファ型一匹の場合、アルファ型をスタンさせてベータ型に近接込みの戦闘を行い、割と首の皮一枚で避けつつ戦うが、腕を突き刺すでも斬るでもなく薙ぎ払いの動作をされると吹き飛ばされることも解った。やはり体格差がある分運動エネルギーも相当の物らしい。ダメージは無かったので再近接し、頭を焼いて終わらせた。アルファ型は最後に残される。


 アルファ型三匹ベータ型一匹の時は、アルファ型三匹を極太雷撃で数秒焼き上げて近づかれるまでに退治し終わった後、後からやってきたベータ型を二人で処理。スピード差があるので比較的楽な対処が出来ることも解った。


 ベータ型二匹アルファ型二匹の時は仕分けが大変で戦うのも大変なので、極太雷撃で一気に焼きつつ、極太雷撃の範囲から漏れたモンスターを芽生さんにスキルで倒してもらう形で今のところは何とかなっている。


 それぞれの現れるパターンごとに手順を変えてみた結果、こういう形が今一番楽が出来る、という結論に至った。


 白く光る地面に到着するまでに念のためとして二枚ずつドライフルーツを口にした。極太雷撃は打ち終わりで結構急に眩暈が来るので極太雷撃中にフラッとくるとリカバーしてもらうのが大変なのであくまで念のためだ。


 到着した白い地面は一面の塩らしきものだった。念のために軽く殴ってみると、ぽろっと落ちたので保管庫で鑑定すると砂漠の塩と答えが返ってきた。塩であることは間違いないらしい。おそらくここは世界で最も遠い場所にある岩塩採掘場か。昔は海がここにあったという事なんだろう。塩分を留めるような山脈があるようには見えないが、きっと向こうの文明にも大プレートの移動というものがあり、山脈隆起があり、そしてその隆起によって閉じ込められた水分が蒸発して塩が残った、ということだろうな。


「舐めても害はないんでしょうかね? 」

「解らんがとりあえずお土産だな。風景も撮って……採取した岩塩も撮って……これでスーパーで買ってきたとは言えなくなるだろうな。なにかこちらの世界にはない成分が含まれているかもしれんな」

「魔素で出来た塩、という可能性は? 」

「魔素で限りなく塩に似せている可能性は高いかな。向こうの世界から直接持って来たわけでもないだろうし、オブジェクトはすべて魔素で出来ていると考えても良いとは思う。だとすると舐めて本当に塩分が摂取できるかどうかは解らんぞ」

「じゃーやめときます。成分分析にかけてもらってからということで」


 チャック袋目いっぱいに岩塩を採取したところでちょっと休憩。塩分の話も出たのでちゃんと塩分も摂れるようにスポーツドリンクを飲んでおく。こんな事も有ろうかと、水に溶かすために粉の五百ミリリットル用を用意しておいたのだ。水筒を開けて、粉を入れて、振る。バーテンダーさんのようにカッコよくかどうかは解らないが、蓋を抑えて軌道が弧を描くようにシェイク。シェイクした後ゆっくりと蓋を開けて飲む。


 スポーツドリンクが美味しく感じるときは体が確実に水分を欲しているときだったような気がする。経口補水液だったかな? どっちにしろ、ちょうど体がミネラルを欲していたのは間違いないようだ。喉からごくごくと体に水分がしみわたっていく。やはりこの環境だと知らない間にどんどん水分が搾り取られていく場所らしい。ここで長時間活動するのは少しばかり不向きかもしれないな。


 とりあえずこの岩塩地帯の外側をぐるりと一周しながらドローンで周りを見回して、階段のありそうな方向を探っていこう。岩塩地帯の中にもモンスターは居る。休憩は取りつつも、さて岩塩地帯をどの方向に向かえば正解の道があるのだろうか。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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ダンジョン塩、もし体に塩分として吸収されないなら、お年寄りや生活習慣病患者等の塩分制限されている人にとても需要がありそう。
> 試しに手を振ってみる」 ①反応はない ②気付いて向かってくる ③手を振り返される > 白く輝く大地」 誘引されるおじさん > 極太雷撃で一気に始末」 バケモノおじさん > 二百メートル」 結…
魔素なら魔素で塩分過多の人にはよさそうですね 魔素の吸収も進んでお得
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