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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二章:出来ればおじさんは目立ちたくない

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90/1250

90:その頃三勢食品では

いいねありがとうございます。モチベがちょっと上がりました。

 

 side:三勢食品


「なんだこれは……」


 翌日の作業量を確認していた工場長である藤原は、突如発生した注文の嵐に恐れおののいていた。突然注文を切られて明日作るものがない、という事ではなく、真逆の事態が発生していた。


「どういうことなんだ、何時もの十倍以上の量の注文書が届いているんだが」

「こちらから卸させていただいている全店舗からの本日分だけの注文書なんですが」


 事務を担当している女の子はそう返答する。


「今日一日電話鳴りっぱなしでしたよ。営業も今日は全員が直帰だそうです」

「既に取引がある分だけで十倍か。しかもバニラ風味だけ」

「あ、ブルーベリー風味と青りんご風味もちょっと多めです」


 事務の子が訂正を入れる。それにしてもバニラ風味に偏り過ぎている。


「そこはあまり問題じゃないんだ。なんでバニラ風味だけこんなに大量に注文が届くんだ」

「さぁ……特に宣伝も何もしてなかったとは思うんですが」

「なにかあったかなぁ……そんなに美味しいとも言えん……いや、そこまでの物を作っていたのか? 」


 二人して考え込む。


「あ、それ多分ダンジョンのせいっス」


 注文書をのぞき込んでいた正社員でカロリーバー製造ラインの担当者である伊東が声を上げる。


「なんかスライムがこの商品食ってる間に倒すと、アイテムを必ず落とすらしいんス」

「どうして伊東君がそんなこと知ってるの? 」

「連れが探索者やってるんス。今日はスライムで大儲けしたから今から飲みに行かないかって誘われてて、理由を聞いたらウチの商品だって話だったんス」

「なんでうちの商品なんだ? 」

「さぁ? それはスライムに聞いてみてほしいっス」


 スライムに知能があるのか? 藤原は疑問に思ったが多分そういう意味ではないだろう。誰かに文句を言ってもその現象は起きる、という意味だろう。ならば明日からやることはだいたい決まった。


「伊東、明日から残業だぞ」

「ちゃんと残業代でるんスよね? 」

「当たり前だ、稼ぎ時だぞ。明日は青りんご一ライン、ブルーベリー一ライン、残りは全部バニラで回す。帰る前に気づけて良かった」

「ボーナス出ますかね? 」


 ボーナスが出るかどうかと言われたら多分出るだろう。この現象がいつまでも続くなら、だが。


「出るかどうかはこれからの注文製造量による。今から飲みに行くんだろ? いつまで続きそうかコッソリ聞いといてくれや、そしたらこっちも覚悟を決めなきゃならん」

「了解っス。じゃ、情報収集も兼ねてお先っス」


 伊東君は素直に帰っていく。彼の手によってラインは綺麗に掃除され、いつでも製造する準備は出来上がっていた。


「伊東君、そのまま帰らせて良いんですか? 今からでも残業して回さないととてもじゃないと作りきれる量じゃないですよこれ」

「今から作ったところでどうせ間に合わん。明日、既存の取引がある会社に全部連絡付けて、注文量減らすように頼んでくれるか」

「解りました。急ぎ予定表だけ作っておきますね」


 ささっと頭の中で明日の仕事の流れを組み立てつつ、事務の子に一言注意しておく。


「今日は残業はしないように。ささっと帰ってしまいなさい」

「いいんですか? 」

「今日ぐらい休んでおかないと、明日から休む暇がなくなりそうな気がするんだよな。だから今日のところは早めに帰ってしまっていいよ」


 事務の女の子を早々と帰らせると帰り支度を始めていた原料・資材発注担当を捕まえ、各原料の発注書を早急に作り、今すぐ連絡してなるべく早く納品してくれるよう頼んでほしいと指示した。


 藤原は明日からは戦場になるという覚悟を決めた。そして明日のスケジュールを確認すると、ライン作業に入る人員全てに連絡を入れ、明日から残業に入ることを伝達する。


 パート・正社員・外国人労働者に関係なく連絡を入れ、確認をし、そしてすべての連絡が終わると一息つく。定時はとうに過ぎていた。


「さて、これで営業が新規取ってきたら社長にライン増設を願い出なきゃいけないところだな。いつまで……か」


 藤原が入社して三十三年になる。五十代そこそこで工場長になって以来、初めて注文が捌けないという事態に陥ることになる。


 今までも、幾度か急に無茶な注文が入ることはあった。その度に藤原はスケジュールを調整し、無事間に合わせてきた実績がある。


 しかし、藤原は思った。これムリだわ、と。


 現状手持ちのラインの製造速度とライン数とラインの動く時間を計算する。仮に一日二十四時間稼働させたとして、これから営業が持ってくるであろう注文量を予測する。


 それから営業に電話で確認をし、新規営業でカロリーバーの受注を決めたかどうかを全員に確認する。


 営業全員が「任せてください! 」という返事をくれた。


 再び藤原は思った。これムチャだわ、と。


 しかし、藤原の心の内は折れたりはしていなかった。むしろこれから来るであろう悲鳴と歓声を予想しうち震えてすらいた。


 自分もとっとと帰るはずだった藤原は明日以降のシフトの仮置きを作り始め、最悪残業無しで長時間回すハメになっても良いように、いくつかのパターンを考え始めた。


 藤原自身がラインに入りたとえ多少単価が高くなろうと、注文を可能な限り回せるようにという事を念頭に置いていた。




 藤原はお祭りが大好きな男だった。




---【超高速】小西ダンジョンpart4【潮干狩り】---



483:名もなき探索者

人大杉


484:名もなき探索者

何だか午後から人急に増えたけど事故でもあった?


485:名もなき探索者

>>483-484

清州のスライム階層が人増えすぎて狩れなくなったやつが避難してきたと予想


486:名もなき探索者

>>485

正解、俺もそれ。スライム大杉でびっくりしたぐらいだけど、普段からあんなんなんなん?


487:名もなき探索者

普段はもっと人が少ないぞ。一層で人と出会えばすごいってぐらい


488:名もなき探索者

どんだけ過疎ってたんだよ小西ダンジョン


489:名もなき探索者

やっぱりスライムドロップ確定のせいだったか。査定嬢が真っ青な顔してたぞ


490:名もなき探索者

一日十人そこらで盛況なのが小西だからな。過疎ダンジョン在住者としてはびっくりだよ

なんせ一層回ってる間に五人も会った


491:名もなき探索者

母ちゃんの趣味が一つ減るんよ


492:名もなき探索者

母ちゃんもっと別の趣味持とうよ……


493:名もなき探索者

しかし、スライムドロップ確定見つけた奴はすげえな

何をどうしたら食事中に狩るなんてことを思いついたんだ

一体何を食ったらそんな発想に至れるんだよ


494:名もなき探索者

>>493

そりゃバニラバー食ってたんだろ


495:名もなき探索者

違いねえな


496:名もなき探索者

スライム一分に一匹狩って時給四千八百円だったか?

一分に二匹狩れば時給九千六百円だな

そりゃ小西くるわ、それどころじゃない数いるもん


497:名もなき探索者

明日はもっと増えるからな、お前ら覚悟しろよ


498:名もなき探索者

覚悟って何の覚悟だよ


499:名もなき探索者

>>498

挨拶の練習とか


500:名もなき探索者

人見知りにもほどがあるwww


501:名もなき探索者

お前ら普段からこんななの?

明日から小西行こうと思ってスレ開いてみたんだけど


502:名もなき探索者

>>501

やぁ、小西ダンジョンへようこそ

この熊手はサービスだからまず振って落ち着いて欲しい


503:名もなき探索者

なんで熊手サービスしてるんだよ


504:名もなき探索者

いやだって小西と言えば熊手だろ


505:名もなき探索者

スレタイにもなってしまっているしな


506:名もなき探索者

はやく次スレ行こうぜ


507:名もなき探索者

半年後までにはなんとか……


508:名もなき探索者

人増えてるしもっと早いんじゃね


509:名もなき探索者

スライム景気、いつまで続くんだろ


510:名もなき探索者

さぁ……スライムが居なくなるか、バニラバーが無くなるまでじゃね


511:名もなき探索者

俺売り切れで買えなかった組、涙目


512:名もなき探索者

地方限定商品なのにな


513:名もなき探索者

作ってる会社大丈夫かな


514:名もなき探索者

暫く家に帰れんぐらい残業やろうな



作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言]やーこれ読んでて面白いわー
これで需要と供給が完全に逆転してスライムゼリーと魔石が暴落しそうですね。 さらに価格が下がれば潮干狩りおじさんしかスライム狩らなくなる。。。。
この状況下でもスライムのドロップ品は買い取り停止にならないくらいの需要が有るのか 純粋な成分でドロップ確定なら、カロリーバーから更に成分を絞った製品が出るのは確定だな レシピは非公開だろうから他社のカ…
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