表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十六章:底は見えず
893/1208

893:アルファがベータをカッパらったらイプシロンした

 撮影は問題なく終わり、次はベータ型だ。アルファとベータが一匹ずつ居るのがベストパターンだが、そういう訳にもいかないらしい。次に出てきたのは最初と同じでベータが一体のアルファが二体だ。


 アルファ型を二体全力雷撃で葬ってその間にベータ型と対峙する、というのがベストな方針だろうか。


「さて、どうやって攻めようねえ」

「ベータ型の動きを見る限りだと、アルファ型より威力は上ですが若干のろまなイメージですねえ」


 とりあえずアルファ型を全力で焼くのでその間だけ芽生さんに引き付けてもらい、アルファ型を倒し次第スイッチしてこっちが前衛に出て、芽生さんに撮影してもらうという流れになった。これで体が大きくて素早さがアルファ型並みだったら相当苦労させられる相手だったんだが、そうはならなかった。むしろ素早くなく動きが大ぶりな分だけ逆に戦いやすくもあった。しいて言うなら頭部が遠くて倒すのに多少時間がかかるという程度だろうか。


 これで大きい緑の魔結晶をくれるのは正直嬉しい。また、今回は魔結晶だけではなく謎の黒いインゴットをくれた。これは……なんだ?


「このインゴットは何だろうね、芽生さんや」

「なんでしょうねえ洋一さんや。何かの金属かそれに準ずる物ってところでしょうか」


 重さは一キログラムほどなんだろうが、鉄のインゴットはもっと大きいイメージがある。より密度が高いという事だろう。小さくて重い。軽ければ悪いドロップ品ではないのだろうけど、少なくともドウラクの身よりは持ち運びしやすいのは確かだ。


「もしかしたらモンスターの素材? あいつらの外装甲で出来ているのかもしれないな」

「なるほど。でも何でインゴットなんでしょうね」

「インゴットになると言うことは何かしらに加工してくれ、というダンジョン側からの要望なのかもしれないな。もしかしたら未知の元素かもしれないし、既存の合金なのかもしれない。ただダンジョンでわざわざ出たということはそれに意味があるんじゃないかとは思うんだが」


 この世界の元素配列上には存在しない未知の素材、もしくは元素配列そのものが確認できないかもしれない謎の物質。いわゆるミスリルとかアダマンタイトとかヒヒイロカネとかそういう類の物質である可能性もある。なんという名称がつくかも含めてこれは色々と議論の渦中に放り込まれる物質ではあるのだろう。


 ただ、ヒヒイロカネは緋いという付帯条件があるし、ミスリルも銀色に近い物質だというファンタジーの御都合に漏れないのならば、アダマンタイトに近い物質ではあるんだろうな。


 しかし、雷切で斬り落とすことが出来る程度の物質とも言える。更に既存の物質との合金ともなれば色々と応用が効くようになるかもしれない。夢が広がるな。その物質が今俺の手元にだけある。


「これはしっかりと戦っていかないといけないな。多分一個だけ提出して後よろしく、で済まない気がする」

「そうですねえ。色んな研究機関に回されるでしょうから複数個同時に出さないといけないでしょうねえ。その分きっちり後で費用を回収しないといけないですが」

「そうとなれば狩りまくろう。残り時間は……だいたい二時間か。その間にできるだけ倒していっぱい持って帰ることにしよう」

「階段探しはついでというところですか。目的はここに来る事でしたからまた次回でも問題は無いですが。とりあえずモンスター慣れと密度をそこそこ知っておいて戦果を持って帰ることにしますか」


 モンスター密度が薄いので二時間でどれだけ戦えるかは解らないが、目印を順番にたどりつつ地図を描きながら探索、ということになった。歩く時間のほうが戦闘時間よりも長くなってしまうのはマップの都合上仕方ない所ではあるが、それでも戦闘中のピリッとした空気とちゃんと区別が出来る分五十二層よりも随分歩きやすい。


 最初の階段から見て西方向にぽつんとある一軒家まで進み、そこにも何もないことを確認。更にドローンを飛ばして北西方向と南西方向にも何かがあることを確認したが、少なくとも階段ではないことは解った。ここは大人しく戻るか、それともモンスターにつられて適当な地域を歩いてみるか。どっちでもまだ時間的余裕はあるな。


「うむ……こちら側に階段があるかどうかはちょっと怪しくなってきたが、とりあえず北西と南西どちらにいこうね? 」

「じゃあ南西に行きましょう。何も無ければ真っ直ぐ東北東に進路を取って階段まで戻って、時間を見てそれで上に戻るかどうか判断しましょう」

「そうするか。なんかマップも草原を思い出すよなあ、このオブジェクト間隔。間のモンスターがあっちより少ないのが少し気にはなるけどきっちり倒していけるならそのほうが気楽だし、なによりここは体が甘くならないから精神的なムカつきが無い分戦いやすいかな」

「五十四階層五十五階層と進んでいけばもうちょっとモンスターとの戦闘を楽しめるでしょうしそれまで我慢でしょうね」


 広い赤砂の砂漠を歩く。モンスターはポツンポツンとまばらだ。五層六層を除けば一番モンスターの生息数が少ないんじゃないかと思えるほどに少ない。そういえば砂漠の砂の色も金属の含有量で決まるのかな。だとすると、あのモンスターの装甲と同じ物質がこの砂に含まれている可能性もあるのかな。一つまみ持って帰るのも一興か。


 モンスターは少ないが、傾向としてはアルファ型三体の組み合わせが最も多い。ベータ型一体アルファ二体がその次。ベータ型二体の組み合わせはまだ見たことが無いので下層に行けば出てくるのだろう。一対一ならまだ戦いようがある。


 頭の中では俺も芽生さんも見たという映画のシリーズ物のテーマ曲が鳴り響いている。しかし、あの映画ではもっと大量、それこそ数えきれないような数のモンスターが襲ってきてそれに立ち向かい、あるいは逃げ惑うという内容だった。それに比べたら数が明らかに少なすぎる。頭の中のテーマ曲もなんだかふにゃふにゃとした内容になってしまっている。


「しかし、これだけ少ないと逆に不安になるな。突然砂の中から大量に現れたりするイベントが発生したりしないだろうか。映画みたいに」

「それだと索敵がアラームを鳴らし始めるでしょうし、いきなり砂の中にリポップしたら気づくと思うんですけどね」


 それもそうだな。残念ながらこのマップでそういうイベントに出くわす事は無いらしい。スノーベアみたいに地面に潜りつつ近づいたら一気に襲ってくるような可能性はゼロではないが、そもそもこの階層に来る前に【索敵】は覚えてきているはずなので、そういった奇襲は効果がないだろう。


「やっぱり映画みたいに……というか向こうの文明に映画は無いか。そういう風にモンスター側の見せ場みたいなものを提供してもらうのは考えない方が良さそうだな」

「地道に一つずつ潰していきましょう。さあ次のモンスターですよ」


 近づいてきたアルファ型をスパスパっと雷切で切り飛ばし、さっさと黒い粒子になってもらう。相手の行動があまり種類が無いのでこっちも同じ形で突っ込むことが出来ると面白いように倒されて行ってくれる。アルファ型は、腕での突き刺し攻撃を行う際力溜めのような動作を行うためか、一瞬動きが止まる。その間に頭部を破壊してしまえばノーダメージで攻略できるって寸法だ。


 本来ならこっちが防御するための準備時間に当てられるのだろうが、こっちは防御はある程度捨ててはいるしその分機動力に重点を置いている。溜め時間はスキである。その間に雷撃でも良いし雷切でも良い、頭部にダメージが行けば相手はその分よたついて少しだけこちらに時間をくれる。もうちょっと頭のいいモンスターだと苦戦しただろうが、そこまで賢いモンスターでは無いようだ。賢くなくて簡単に倒せて報酬も美味しい。割と稼ぎには向いているマップだと言える。後はどんなスキルオーブをくれるかだな。


 階段から向かって西の一軒家から更に経由して南西のオブジェクトにたどり着いた。ここには二軒の家がある。井戸は無かったが、水を汲みに行く際はあそこまで歩いて水を汲みに行く形になるんだろうか。離れて家を建てた理由についてはよく解らないが、土地の権利的なものなのであろうか。便利に生活するなら井戸を囲むようにして家を建てるのが効率的だとは思うんだが。


 ともかく、目標物まではたどり着いた。さて、ここからドローンで……あ、ダメだ。視認できる範囲に目標物が無い。こっちは外れか。まあ初手からあたり階段を引くという可能性は非常に低いので仕方ないだろう。次回に回そう、次回に。帰ればまた来られるんだから焦って次を見に行く必要もない。


 ここのモンスターにはアルファ型とベータ型と仮に名付けたが、下の階層へ向かうと同時にモンスターの種類が増えたらやはりガンマ型、デルタ型と増えていくことになるのだろうが、後二階層で二種類もモンスターが出てくるとは考えにくい。ここのところの傾向を考えると、このマップの最終階層である五十五層にガンマ型が出てくるのかどうかあたりだなあ、というのがゲーマー感覚での予想である。五十六層はセーフエリアであるはずなのでモンスターは出てこないだろう。


「ガンマ型、が出てきたらやはり遠距離攻撃とかしてくるのかな」

「遠距離攻撃ですか。あのインゴットの銃弾みたいなやつを打ち込んでくるんですかね」

「銃撃か砲撃か、解らないがその可能性はある。矢かもしれないしな」

「返しがついてると抜くの痛そうですね。そろそろ通常のポーションも仕入れておくべきでしょうかね」


 軽い怪我へのポーションか。一応在庫にはあるが、何本持っていてもこの手の物は困らないからな。ランク2を含めて入手を考えておくべきか。


「ランク1でいいなら四層で一日グルグルダッシュして集めることにするよ。他に誰も人が居なければだけど」

「他の人の会話を盗み聞きした感じだと、四層を全力でダッシュして戦い続けるというのは実力テストみたいなものになってるそうですよ。自分一人で一時間でどれだけ走りまわって倒せるか。ベストスコアラーは一時間にヒールポーションを十本手に入れられたらしいです」

「それは凄いな、中々運に味方されている。俺がやる時は平均で七本ぐらいだぞ」


 一時間に十本か……十万、税抜きで九万だが、本数で区別されるとなんだか今の自分の本気を出して何本落としてくれるか、何匹相手に出来そうかにチャレンジしたくなってくる。モンスターに出会う回数も多いことだし、カニうまダッシュより人気が出そうなコンテンツにはなりそうではあるが今更ゴブリン? という気がしないでもないな。


「とりあえずここでランク1程度の怪我をするかどうか試してみないとどうにもならんが、あの鋭い手足は俺の本能みたいなものが危ないと教えてくれてる。多分スーツごと貫通して穴開く奴だからランク3あたりが必要になるだろうな」

「3ですか。ちなみに在庫のほどは? 」

「今のところ八本かな。もしランク4のほうがいいならスノーオウルの羽根を取りに行くときに道中で数本でるからちまちま溜めることはできるが、ランク4ともなると何か余計なものまで直してくれそうな気がするからちょっと使うのに躊躇しそうだ」

「ランク4、一応一本二百万円ですからね。そこまでの怪我をしないというならランク3……えっと、二十二層から二十四層ですか。そのあたりをぶらぶらしながら集めるしかなさそうですね」

「よし、怪我をしてから決めよう。怪我をすればするほど耐性スキルも強くなるという訳でも無さそうだし、怪我した場合は現有のポーションで回復を図ることにしよう」


 東北東へ進路を取り、何もない砂漠をただひたすら歩く。道中何回かモンスターと出会うので確実に処理し、インゴットとポーションも集めつつだ。インゴットは雑感で三割ぐらい。ポーションはとりあえず一本は確保した。モンスターの出現数から考えるとシャドウシリーズよりは出やすいのかもしれないな、という程度だ。ただ、モンスター数が明らかに少ないので稼ぎの効率としてはこの階層はあまりお勧めできないかもしれない。


「次回来る時は朝の内にここまで来て、ここでゆっくり昼食をとるって方がいいかもな。モンスター少ないし、視界内にリポップすることはなさそうだし」

「そうですねえ。時間を無駄にしないスムーズな移動という点ではそのほうが良いかもしれません。しかし、今日の内に階段を見つけておきたかったですねえ。そうすれば次回で五十六層まで一気に行ける可能性も高まったでしょうに」

「そうならなかったのが今の結果だ。甘んじて受け止めよう。さあ、階段まで戻ったらいい時間なので早めの夕食にして、それから真っ直ぐ戻ろう。そうすれば午後八時半ぐらいには戻れる計算だ」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
上位層探索者に四層を無駄に荒らされるくらいなら、市場価格で等価になるように上位ポーション1個と下位ポーション数個を交換したほうがお互い幸せになれるかと(´・ω・`)
映画みたいな対応されたら死ねるからこの程度なんでしょうけどねぇ あの10層の蟻の巣レベルでこいつらわいたら大変そうよ?w稼げるからある程度慣れてからそういうマップに変わるならともかく初期にでたらさぁw…
( ˙꒳˙ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ