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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十五章:ダンジョン踏破は他人の手で
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881:毒耐性、リトライ 1/3

 気持ちよく起きた朝はそのまま起き上がって全身を軽く振るうのが良い。体のだるさを完全になくして全身に血を巡らせ、そしてそのままぐにぐにと関節を解してやると、もう脳は完全に覚めている。ふー……っと深呼吸をして脳にも酸素を行きわたらせて、覚醒。今日も気持ちよかったよ。ただ夢見は悪かったけどな。


 今日の昼食は何らかのパスタ。保管庫と自宅の収納庫にはパスタソースが色々と並べられ、その日の気分でいくらでも食べられるようにはなっている。さて、今日は何のパスタにしようかな。湯を沸かしている間にパスタソースを全品取り出して、目をつぶって適当なものを選ぶ。よしこれだ。


 手に取られたパスタソースは濃厚チーズ仕立てのカルボナーラ。今日の昼食は芽生さんも食べるので二袋開ける。またパスタの時期が来たらブラインドで適当にソースを選ぼう。ソースは……色々ありすぎて大変なことになっているが、どれも二人前ずつ用意してある。もしかしたら最悪七人前用意する可能性もあるわけだが、さすがに同じ階層に居るからって毎回飯は奢らないことにしている。常態化すると癖になってしまうからね。


 パスタを茹でて、茹でたパスタにオリーブオイルを搦めてそこに混ぜ込むだけの簡単レシピ。味見もして、問題なし。一品だけだが充分に腹の膨れる品が出来上がった。後は何か……そうだ、先日の肉とチートマレタスの和えサラダ。これも早速小鉢に用意して野菜も摂っているんだぞという所を証明しておこう。


 あれから数日、五十二層には二回通ったが、今のところ毒耐性が出る事は無かった。まあ二回三回潜って階層がほぼ占拠出来てるとはいえ、早々にスキルオーブを手にすることが出来るわけじゃないと言うことは、自分たちが【物理耐性】を取得する時に散々通った道である。あの時は早い日で六日間通ったんだったかな。ゴーレムの出現量が少なかったとはいえ、結構手間がかかった。


 今回の【毒耐性】については既に俺が一個覚えていることも有り、一回で良いという気楽さはある。売値と買い戻しの費用差し引きでほぼ二千万の出費は痛いほどではないが、スキルオーブの大切さは身に染みた。今後は拘ったり悩んだりせずにどんどん使っていこう。今のところスキルを覚えておいて損をした、という事は無かった。


 昼食の用意が出来たところで今日もいつものダンジョンルック。今のところスーツにほつれや破れ、穴などは見られない。シャドウバイパーと戦うときはいまだにヒヤヒヤものだが、雷切で一気に倒すような形で戦う事にも慣れてきた。この調子ながら【毒耐性】が出たタイミングで五十二層から五十三層、それ以降まで一気に下りて進んでしまうのも有りかもしれないな。


 柄、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ヨシ!

 酒、ヨシ!

 保管庫の中身、ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。確認リストもだいぶすっきりした。今の通信の研究が終わればガンテツともサヨナラだ。そうなれば酒を確認しなくてもよくなるだろう。リストが減るのは少々寂しいがその分余計な支出も減るのでうれしいが、その出費も収入から比べたら微々たるもの。毎回ロマネコンティを所望されるとかそういうわけでもないし、こっちも次はどの酒をお勧めしてみようかという楽しみもある。もう少しだけ長くいてくれても問題はないかな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 芽生さんとはギルドで合流。いつも通り体に良さそうなよく冷えた水を飲んでスッキリしているとレンタルロッカーから芽生さんの姿が現れる。


「本当に四月から長くなるんですねえ。無事に問題なく稼働してくれればいいんですけど」

「見てる感じ問題ないんじゃないか? それより俺はここの労働環境が今まで超絶ブラックだったことのほうが問題だと思うね」

「私もダンジョン庁に就職したらこんな感じでブラックな作業に時間を費やすことになるんでしょうか」

「芽生さんの場合真中長官の覚えもめでたいし、ダンジョン庁所属探索者第一号としてもてはやされそうな気はしなくもない。若い女性がダンジョンで活躍。ダンジョンに潜れば君にも彼女が! そして彼女は高収入! これでよっしゃいっちょ引っ掛けてやろうと思うナンパ野郎はそう少なくないと思うね」


 話を聞いて芽生さんが胸元を抑えてNOの姿勢。


「私はもう洋一さんのものだからそういうのはだめです、ノーです。ん、私が洋一さんのもの? 洋一さんが私のもの? 」

「そこはお互いに主張し合うって事で良いんじゃないかな。大事なのは所有権よりも合意だから」

「じゃあそういうことで。で、【毒耐性】の試験のほうはどうなんです、順調ですか」


 そう、【毒耐性】を手に入れて以来、ちょくちょく飲酒をしてみて自分がどのくらい飲めるのか、という実験をしてみている。今のところ日本酒二合ぐらいなら自覚症状的に問題ない、という感覚を得る事が出来ている。これは徐々に毒耐性が成長しているのか、それとも元々毒耐性を所持した時点で大丈夫だったのかは判別が今のところつかない。だが、実際に大丈夫であることに間違いはないので……と、酒のみはみんな大丈夫って言い始めるんだよな。で、本人はフラフラだったりするんだ。


「自宅で飲んで朝変な形で目が覚めている、という事は無いのでそこそこいけるんじゃないかなと。ビール一本で爆睡できた前に比べればかなり強くなったと思うよ。今度飲みに行くか」


 入ダン手続きをしながら酒談義の続きをする。


「今度といわず今日明日でも良いですよ。時間は空いてるので」

「じゃあ今日飲みに行ってみるか。何処が良い? 適当に探すけど」

「そうですねえ、手近な所でいつもの中華屋さんでどうですか。帰り道も安全ですし、最悪洋一さんに倒れ掛かって自宅で介抱されても問題ないですし」

「じゃあそれでいくか。爺さんところにはビール以外に紹興酒もあったと思うし、焼酎も置いていたような気がする。あまり酒のラインナップがあるとは言い切れないが、ちゃんと帰れる場所で飲むってのは大事だからな」

「約束ですよー」


 リヤカーを引き一層から一気に四十九層まで下りる。最新号の探索・オブ・ザ・イヤーを読んで相場の確認。やはりというかなんというか、【雷魔法】は値上がりをしていた。より熟練していればケルピーを一発で倒せることも有り、順調に値上がりをしている。これはもう二声ぐらい値段を上げておかないと俺の出番はないかもしれないな。


「そういえば、お土産のチーズケーキ美味しかったですね、やはりフワフワチーズケーキは外せませんでしたか」

「それなりに並んだからね。並んでる間にこっちまで帰ってこれるんじゃないかと思ったぐらいだ。でも朝四時にたたき起こされて大阪まで日帰りした甲斐はあったよ」

「また何かスキルオーブをオファーして落札した際は連絡ください、お土産か同行か好きな方を選びます」

「連絡はするよ。講義でなければいいんだけどね」


 現在の【雷魔法】予測相場、五千万円。確実に手に入れるなら五千五百万ぐらいは用意しておきたいところ。金は充分にあるので余裕を持って取引が出来るな。


「後、四月になるし食事のローテーションを少し変化させてみたい。適当に雑誌見て何か気になるレシピが有ったら教えてほしい。自宅でやってみて再現して、ダンジョン内でも美味しく食べられそうならそれをリストに追加することにする」

「そうですねえ……これなんかどうですか。お手軽簡単チーズちくわの照り焼き風ホットドッグとか」

「この先潜って、充分に休憩するスペースは取れないけど食事はとりたい、という時には有りだな。候補に入れておこう。実食は俺が一人の時にやってみる」


 ちゃんと食べる側の意見も入れて行かないと俺が食いたいものだけを作るというレシピ構成になってしまうからな。貴重な意見として受け取っておこう。


 芽生さんがレシピについてあれこれ考えているうちに四十九層へ着いたので、一旦料理話はここでおしまい。リヤカーを所定の位置にセットして、ついでにすぐそこにあるノートも確認。


「五十層で【毒耐性】拾いました。スライムが出さないならしばらく打ち止めかと 高橋」


 D部隊、三人でも潜れているんだな。五十層なら何とかなるという事か。それとも、一人が欠けても戦力的に問題が無いように自分を鍛えなおしているのか。どちらにせよ、五十層で毒耐性が落ちるという可能性はこれで無くなった。やはりねらい目は五十一層だな。


「五十層、打ち止めだって。スライムが落とさないなら五十一層を目指すしかないな」

「じゃあ食事も五十一層で取ります? 若干甘そうな食事になりそうですけど」

「椅子と机は出せるし、料理も作ってある。後は食事中にモンスターが寄ってくるのかどうかだな。五十二層は確実に寄ってくるのでここでの休憩は取り辛い。今日の昼食はパスタなんだが……若干落ち着かない食事でも大丈夫かい? 」


 流石に五十一層や五十二層で飯を食うという想定はしてなかった。してたらホットドッグやタコスみたいな持ち歩き優先の食事にしているところだった。


「そういう事もあるだろうとは思ってますからね。確実に落ち着かない食事になるってわかってたら他のやり方もあったんでしょうが、とりあえず五十一層への階段へ向かってみて、階段を下りた先か階段の最中で食事としましょう。最悪階段の境界線ギリギリの位置へ移動させればご飯を奪われる心配はないと思います」


 方針が決まったところで早速五十層へ潜る。通り道はお小遣い稼ぎにしかならないのでそのまま倒してドロップを拾うだけにとどめる。頑張ってもスキルオーブが出ないと解ってる以上、油断しない範囲で適当に処理していく。


 日ごろのリザードマン爆破の影響か、全力雷撃二発でシャドウバイパーがスタンするようになった。これでもう一つ【雷魔法】が覚えられたら二発で叩き落せるようになる可能性は高い。期待が高まっていく。


 後は【毒耐性】を習得して以後、シャドウバタフライも近接で倒して問題なくなったことは【毒耐性】を買った直後の実地試験で既に証明済みであるので一番今自分が倒したい方法で倒すという形になった。


 芽生さんにはその実験戦闘が終わった後割ときつめのボディブローと共に「いくら毒耐性の試験とはいえいきなりやる人がありますか」と注意をもらったが、腹を抑えながら全然問題ない事をアピール。甘さ以外には問題がない事を伝え、ちゃんと毒耐性が機能していると説明。しばらく小言を言われ続けたが、これで【毒耐性】を拾うために潜り続ける意味が出来た事には違いない。


 シャドウバイパーの毒もこれで多少マシにはなっていくのだろう。ただ、【毒耐性】一つ覚えただけで噛まれても大丈夫かといわれると、実際に噛まれてみないと解らない、というのが正直なところ。もしかしたら噛まれた時の飲むポーションがランク3からランク1程度には落ち着いてくれるかもしれないが、ゼロになる事は無い気がする。


 しいて言うならランク3を飲まなくて済みそうなあたり財布に響かなくて済む、というところだろう。でも金銭効率で考えると金額程の効果は出ないのかな。キュアポーションのランク3換算で五十本分ほど。シャドウバタフライの鱗粉を浴びる換算なら四百五十本か。【毒耐性】を最初に拾った時に同じことを考えていたのを思い出した。


 噛まれても安上がりにするための保険の【毒耐性】なんだが、噛まれる前提で考えると割と気の遠くなるような話だ。生涯にわたるまでで元が取れると良いな。


「噛まれたり近寄らなければ【毒耐性】の意味があまりないのでは、と思い始めたんですが」

「今頭で計算してそう思ったが、毒性のガスが常に噴出してるマップなんかが出始めた時に急いで戻ってスキルオーブを手に入れに走るよりは、今このチャンスを逃す手はないと思うんだよ。まさかキュアポーションに浸したハンカチやガスマスクはめながら探索するって訳にもいかないだろうし」

「それもそうですね。まあ期待せず行きましょう、もうしばらく時間的猶予はあるでしょうし」


 五十層を難なく抜け、五十一層へ到達。周辺のモンスターは掃除し終わっているので綺麗。五十一層で少し戦ってそれから休憩コースかな。


「ここで昼食にするにはまだ早いな。少し五十一層へ潜ってそれからにしよう」

「逆に遅くしてゆっくり食べるでもいいですね。それほど運動してませんしまだ空腹を覚えるほどでは無いです。もう少し動きましょう」

「ちなみにお昼はチーズカルボナーラともう一品サラダだ。昼食が取れるところまで頑張ってうろうろしてスキルオーブ探すぞ」

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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あらー、他の所でちらほらスキルオーブ落ちてるんだなあ 負けじとこちらもなにかドロップしたいですね
麟粉にも効果あるんですね毒耐性。名前以上に便利スキルですなぁこれ?
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