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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十五章:ダンジョン踏破は他人の手で

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875:進捗どうですか 1/2

 朝、寝起きにちょっと蒸し暑いと感じる。昨日しっかり風呂で温まってそのまま布団に潜り込んだせいか、若干湿気が漂っている。これはいかんと布団から跳ね起きると布団干しに裏返してかけ、短時間だが除湿をかけておく。出かける前に除湿を切っておけば湿気対策は一息つくだろう。大事な布団だ、手入れもしないとな。


 いつもの朝食に昨日のアヒージョの残り油のペペロンチーノに使ったさらに残りの油を垂らして、朝食を若干イタリアンな雰囲気に変える。後は今日の昼食の炒め物用油に使い切ればちょうどいい感じか。


 今日のメニューは……カレーか。よし、肉を炒めるときに肉にたっぷりとまぶして野菜もその油でしっかり味をつけて……あれ、これカレーじゃなくてシチューにすればもう実質シュクメルリなのでは? そうするか。今日の昼食はカレーからシュクメルリに変更だ。具材はいつも通り時短レシピなのであまり形は残らないが、ニンニクの香りを存分に吸い取っている油に更にニンニクを追加し、ニンニク尽くしの空気にする。


 玉ねぎは入れない代わりに細かくした人参とジャガイモ、そしてウルフ肉を入れ、炒めたニンニクをたっぷりと入れると、そこにホワイトシチューのルーを入れて軽く煮込み、そしてこれでもかというぐらいにチーズを投入。予定よりも量が多くなったがそのぐらいは料理していればよくあること。気にしない気にしない。いざとなれば夕食にも回せるさ。


 これに炊きたてのコメが加わることで無限に食べ続けられる怪物料理の出来上がりだ。味見をしてみるが、鷹の爪の辛さはもう何処かへ飛んでしまったかの如くニンニクが自己主張し、チーズがそれを甘めに抑えるといった形のご様子。これ、私の好きな料理です。


 飯の準備が出来たところでコーラとビールを冷蔵庫から保冷庫に移して、保冷庫の中の保冷材も新しいものに入れ替える。これでまたしばらくは持つはずだ。料理も一通り放り込むと炊き立ての米をどんぶりに入れて蓋をして保管庫へ。シュクメルリ丼をわざわざダンジョンで楽しむのは俺ぐらいの物だろう。しかも炊きたてのお高いご飯だぞ。へへっ。


 万能熊手二つ、ヨシ!

 直刀、ヨシ!

 柄、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ヨシ!

 酒、ヨシ!

 保管庫の中身、ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。さあ今日もダーククロウの羽根と……今日はカニうまだな。明日はスノーオウルの羽根を取りに出かけよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 一人でダンジョンいつものダンジョン、ダンジョンダンジョン愉快なダンジョン。いつもより一本早いバスで到着したので開場まで休憩場所の冷たいお水をもらいながら少しエアコンの効いた建物内で待つ。建物内では朝礼が行われているらしく、受付嬢も査定嬢も支払い嬢も、そして裏方嬢もみんな集まって話し合いをしていた。


 ちょっと盗み聞きをすると、今は新人研修も佳境に入り始めたのかより長く一人で対応できるための環境を作っていくので頑張ってみてくださいとのこと。今日は実地テストみたいなものか。だが、余計なことはしないでおこう。こっちはいつも通りの手続き、いつも通りの査定、いつも通りの振り込みで問題ない。朝礼の内容は聞かなかったことにしておこう。


 開場五分前ぐらいで入ダンの列に並ぶ。先に並んでいる人がいるので開場数分遅れでダンジョンに入ることになるが気にせずにおく。数分の遅れはどうせエレベーター前でも出来る。ここで待つか、向こうで待つかの差だ。リヤカーを引いている以上、リヤカー無しで潜っていく探索者に優先して乗っていってもらうほうが気を使わなくてもいいだろうと毎回後から乗る。


 無事に入ダン処理が終わったところでリヤカーを引いていつもの七層へ。茂君に出会って……とおもったが、いつもより茂君が少ない。きっと帰る前に茂君を倒してから地上に戻った探索者が居るんだろう。予定の半分、五百グラムほどしか手に入らなかった。まあそういう日もある。俺が占有権を主張して憚らない訳ではない、誰でも狩ってもいいんだ。タイミングが悪かっただけと諦めるのが心の健康にいい。


 そのまま四十二層までエレベーターで降下。その間にやることが無かったので目をつぶって軽く仮眠。眠気はないが茂君で往復した分の少しの精神的徒労をいたわってやることにする。


 四十二層に着くと、まだ誰も居なかった。とりあえずノートを確認すると、結衣さん達の到着のお知らせが届いていた。どうやらここまでたどり着いたようだ。いらっしゃいと返事を書いておく。昨日居なかったことを考えると、今日は四十二層にたどり着いたことで一息つくために休みにしている可能性はある。


 今後四十二層はB+ランク探索者の寄り合い所として機能する可能性はあるな。芽生さんにも結衣さん達がたどり着いていた旨は伝えておこう。送信されるのはダンジョンを出た後になるが予約のつもりで送信ボタンだけは押しておく。


 さて、今日も元気にカニうま祭りだ。まずは一時間、慣らし運転で動いた後満足するまでシュクメルリを味わって、それからまた四時半ぐらいまでカニうまして茂君して、今日は終わり。とはいえ、毎回カニというのも飽きが来る。たまにはリザードマンとも戯れてみよう。きっと楽しいつつき合いになるはずだ。カニよりも歯ごたえがあって自分を鍛えるにはちょうどいいだろう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 四十三層に下り、島の中央部へ。早速現れるリザードマン達。一対三程度なら問題なく動けるようになったのを確認するため、ソードゴブリンとダッシュ大会しているときと同じようにリザードマンの槍をひょいひょいと避けながら顔に向かってアイアンクロー&雷撃の一発でリザードマンを黒い粒子に還していく。


 雷撃も中々に威力が上がってきた。出来ればもっと威力が欲しい。希望する範囲で言えばシャドウバイパーを二発で昇天させられるぐらいの威力が欲しい。その為には毎回全力で攻撃するのを繰り返し、力が尽きそうになったらドライフルーツで回復しながら行く。元々一撃で倒せる相手なのでどこまで威力が上がっているのか判別は出来ないが、とにかく戦い続けて威力アップのイメージを作り続けるぐらいしかないな。


 後は……トリプルスキルか。スキルオーブは何回まで重ねられるんだろうな。毎回一個でいいのかどうかも解らないが、また一つ何処かで手に入れて覚えられると良いんだが、ギルドで公募して返事を待つ。その手も一つ有りだな。時間はあるんだ、ちょっと買いに走って帰ってくる、なんてこともできなくはないし。もしスキルオーブ一個でだめでも二個ならいけるかもしれないし、そのために使う費用は精々今日一日分ぐらいの稼ぎで済む。そういう金の使い方も有りということだな。


 探索活動をしばらくお休みする間にあっちへこっちへダンジョンを巡るついでにスキルオーブを仕入れてくる。その手で行くか。戻ったら支払い嬢にどういう手続きが必要か聞いてみよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 軽く一時間流し、午前の部が終わったので休憩、四十二層へ戻って昼飯。今日の昼飯はニンニクマシマシチーズマシマシのシュクメルリだ。思う存分楽しむことにしよう。昨日買ってきた新しい机と椅子をわざわざ組み立てて、一人だが四人分のスペースを占拠してゆっくりと昼食を楽しむ。


 周りを見渡すが、誰かが居る雰囲気ではない。ミルコもガンテツも来そうな雰囲気はない。安心してシュクメルリを楽しむことが出来るな。ヨシ。


 早速ご飯にシュクメルリをかけて温かいうちにいただきます。……うん、ニンニクとチーズで口の中が一杯だ。もうそれだけでも満足できる。そこにしっかり火の通ったウルフ肉が更に味わいを深めている。ジャガイモを入れたおかげでトロミも更に増した。炭水化物と油とたんぱく質がそこそこのバランスで混在してくれているので、後はパックの野菜ジュースを飲んでおけば栄養バランスは完璧だな。


 満腹になるまで楽しんだが、まだシュクメルリは残っている。これは夕食もシュクメルリだな。夕食もシュクメルリとご飯の質は落ちるがパックライス、そして野菜ジュース。美味しいものは昼食べても夜食べてもいいのは俺の胃袋が一番よく分かっている。まだそれが原因で胃もたれを起こすほど内臓には来ていない。


 さて、忘れる前にいつものおそなえをしておくか。お菓子とコーラを机に乗せて、そして少し離して酒、つまみ。並べ終わるとパンパンと二拍。すると、まずお菓子とコーラが消え、その後数秒の間が空いた後、酒が消えた。ちゃんと意味を解って受け取ったのか、それともミルコがまとめて受け取ったのか。真実のほどはどうか解らないがとりあえず無事に受け渡しが出来たことに違いはない。感想は後日聞くことにしておこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 しばらく机に突っ伏して軽い仮眠を取っていると、人の声がした。結衣さん達が来るにしては時間が中途半端な時間だ。高橋さん達かな。そのまま突っ伏していると、声がひそひそと静まり始め、そーっと移動している。しばらくすると、ガンテツの大きな声が響き始めた。どうやら、山本さんが四十二層で下りて解析を始めたらしかった。


 いつまでも寝てるふりをしているのは悪いので、ガンテツの声のせいで目が覚めたことにしておこう。ゆっくり起き上がると伸びをし、たった今まで休んでましたよアピールを始める。


「あ、安村さん。すいません起こしちゃいましたかね」

「ガンテツの声が大きくて目が覚めましたよ」

「わはは、すまんな。研究を進められるのがうれしくてつい、な。許してくれい」


 許す。なので進捗のほうを聞いておきたいところだ。


「さて、どんな感じですか、順調ですか」

「周波数に関する論理は伝わった。山本が色々と道具を持ってきてくれたからな。一台はとりあえず分解に回してどういう機能が付いているかの確認と、どこから電波が発生させられているのか。そのあたりだな」

「ざっくり話しますと、特定の周波数についてだけ電波が異次元の壁を乗り越えて地上へ届くのか、というのを確かめるのが中間点の目標になります。電波を全て通すとなると非常に面倒な作業が必要らしいのですが、周波数を限定的に絞った範囲で通過させて、直接……例えば四十二層と地上の間にあの、つぷんっていう感覚の壁を通り抜ける作用のある魔術回路みたいなものを組み込めないか、という実験をやれればいいなあってところです」


 話を聞いているだけだと結構早く出来そうな気がするが、それは素人質問なのでやめておこう。本来なら異次元の壁を複数繋いでダンジョンを作るだけでも大変な労力なんだと怒られてしまいそうだ。イメージ的には、特定の階層と特定の階層を電波が通り抜けることが出来ればいい。それを各階層に数珠繋ぎにして地上まで電波を運んでいくというイメージがある。そうなると、途中の階層には電波を増幅させるブースターが必要になるんだろう。その研究をしてるというイメージで行こう。


「例えばなんだが、この四十二層を直接地上と接続させて電波だけ漏らす……みたいなことはできないのか? 」

「不可能かどうかで言えば可能に近い不可能だ。この階層の何処かに次元の穴をあけてそこから電波を飛ばせばかろうじて届けることは可能だろう。でも出来れば、穴をあけずに次元の壁にまとわりつく形で電波を回折させて表面に電波を滲み出させて繋がるようにする、という風な具合で出来ないか思案中だ。今話せるのはそんな所だな。異次元間の移動は楽なのに電波だけ通らないのは電波を通すという次元の跨ぎ方を考慮に入れなかったからだ。ただ、視覚的な電波……つまり可視光線領域の電波は通ってるんだから何とかなりそうな気がするんだよな。ほら、階段下りる時も足元や頭の上は見えてるし、次元の隙間から向こう側も目で見ることが出来てるだろ? つまり、一定以上の周波数の波長なら通過できてるって事になる。じゃあなんでそのスマホの……」

「オーケイ分かった。つまりとっかかりはあるってことでいいんだな。専門的な所までは解らないからそっちにパスするよ」

「そうか? ここからがなかなか面白い所なんだが……まぁ、期待して待っててくれ。形にはして見せるし、試験をする時は声をかけるようにするからよ」


 難しいし半分ぐらいしか理解できなかったが、何となく言いたいことは理解できた。何とかなるかもしれないという希望が持てただけでも充分だ。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
可視光線が通過するなら、普通にLi-Fi機器置けばいいんじゃね? もしくは、ダンジョンの入口と出口(ダンマスルーム?)を光学的に直線になるようにして、光ファイバーからのレーザー光線直結して出口で受け取…
まあ、自分らの世界になかったモノだし詳しい所はしっかり判明してないんやろなあ
> どんぶりに入れて蓋をして保管庫へ」 昼ご飯まで4時間として2.4分経過か。 丼だから良いけれど、ホカホカご飯への改善が望まれる > 愉快なダンジョン」 ンしか合ってねえ > 結衣さん達の到着の…
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