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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十五章:ダンジョン踏破は他人の手で
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874:毒耐性を今更求めて 3/3 粘り負け

 四十九層に戻った。ここからはまたお仕事のお時間だ。今後しばらくの目的である【毒耐性】スキルオーブのドロップを狙っていく。五十層ではすでにシャドウバタフライからスキルオーブのドロップ報告を受けているのでちと効率が悪い。


 そこで、五十一層でのドロップをまず狙っていくことに決めた。午前中は五十層、午後は五十一層。こんな感じで二人での探索を進めていくことになる。


「さて、何日かかりますかねえ。物理耐性を拾うときのことを思い出しますねえ」

「同じだけかかると考えたら純日数で十六日ってところだが、毒耐性を持つモンスターが二種類いることを考えると半分の八日。潜るペースを考えると二ヶ月ぐらいを見込んでいくか」

「気長な話ですね。その間に私は公務員試験の日程になりそうですね」


 そうか、そんな時期になるのか。ちゃんと勉強のほうにも熱が入ってくれていると良いのだが。


「勉強は捗ってる? 」

「おかげさまで。こうして気晴らしも出来てますし、頭はここの所スッキリな状態で勉強に入れてますね」

「それは何より。ダンジョンに集中しすぎて勉強に集中できないのでは意味がないからな」

「その辺はきちんと切り分けが出来ているので大丈夫ですよ。しいて言うならダンジョン外でももう少し構ってもらっても良いかなーとは思ってますが」


 芽生さんがウリウリと肘でつついてくる。


「うーん、特にここに行きたいとかいう旅行熱はないからな。その辺は芽生さんのリクエストにお応えするとするよ」

「じゃあ楽しみにしているとしましょうかね」


 五十層に下りて五十一層へ向かう。ここからは真面目に戦闘モード、油断をすると毒とダメージが待っているので二人とも真剣にモンスターと向き合う。


 とはいえ、三匹以上出てくる事は無いのでお互い身振り手振りで合図を送り合い出会うモンスターを順番に倒していく。相変わらずシャドウバイパーだけは危うい所があるが、こいつもスキルオーブをまだ落としていないモンスターなので、慎重に物欲センサーを働かせつつ倒す。倒し方によって泥プが変わるような事は無いようなので一番安全な方法で確実に葬っていく。


「お、お、来ましたねえ。一段階アップですねえ」

「おめでとう」


 ここで、芽生さんステータスブースト一段階アップ。動きが更に滑らかになっていく。流石に日々潜っている俺のほうが段階はいくつか上だが、ベースとなる地上での戦いの動きに差があるので芽生さんと同じぐらい、という感じになっている気がする。やはりブーストする前のステータスに差があるとブースト度合いも変わってくるという事か。


「そろそろ私も前衛に出てシャドウバイパーと戦ってみたいですね」

「危険なことはしないんじゃなかったんか? スキルだけで倒せるなら今のところ問題はないだろうに」

「強くなると気が大きくなるのは誰もが陥る罠ではないでしょうか? 」

「自覚してる分たちが悪い、という奴だな。バックアップはするから気を付けて。あと、多分スーツにも穴開くだろうから買いなおしの予定は入れておかないとな」

「どうせ就活用にもう一セット作ってもらう予定ですから問題ないです。なんなら今日の帰りにでも注文しに行こうかと考えています」


 スーツに穴をあける覚悟はできているらしい。キュアポーションの在庫もあるし、最悪治療して引き返すという手もある。余裕がある時にこういう所に気を回しておくのは大事かもしれないな。


「じゃ、次出てきたらやっておいで。危なくなりそうな時点で横から止めるから」


 しばらく歩くとシャドウバイパーが出てきたので一匹をすぐに全力雷撃で潰して、芽生さんと一対一の状態に持っていく。芽生さんは槍を両手持ちにし、穂先をちらちらと回しながら距離を徐々に詰めていく。やがて、相手の射程内に入ったのか、シャドウバイパーがグンと伸びをして噛みつきにいく。


 そのまま噛みつく予定だった場所から一歩離れると、水魔法の刃を纏わせた槍で口の横から一気に裂き、そのまま二枚に下ろしていく。シャドウバイパーの二枚おろしが出来上がったところで黒い粒子に還り、魔結晶と牙を落としていった。


「この戦い方なら近接でもいけますね。一つ学びました」

「二枚下ろしは有効か。絞め殺しに来た場合どうするかだな。それもおいおいやっていこう」


 五十一層に到着し、念のためウォッシュ。痺れも違和感もないので、どうやら体内に鱗粉はそれほど溜まっていないらしい。これなら五十一層で戦い続ける間ぐらいは持つかな。


 五十一層では五十層より密度濃くモンスターが現れるのでそれだけスキルオーブのドロップにも期待できる。さぁ、頑張って数を減らしていこう。その分収入にもなるしな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 三時間ほど戦ってスキルオーブ成果はゼロ。まあ、そんなに簡単にスキルオーブが出るなら今頃この階層までには売るほどスキルオーブが出てきていることになるので当然といえば当然。今日のところは顔見せ程度だ。次回次々回に期待して頑張っていこう。もし今日出てたらここしばらくの運を使い切ってしまいそうなところだった。


 戦闘のほうは順調そのもので、シャドウバイパーにも二人共が近接対応できるようになってきたので、三匹出た場合二匹を必ず雷撃で焼くという必要性が薄まってきた。その分戦いやすくなり、テンポも上がれば回収するドロップ品も増える。今のところまだ金にはならないが、シャドウバイパーの牙とシャドウバタフライの鱗粉、そして金になる大量の魔結晶。良い感じに盛り上がってきたが、タイムアップだ。


「今日はこの辺までかな。昼に四十二層に移動した分時間を食ってしまった。次回はそうならないように努力するよ」

「早めに帰って次回の準備ってとこですか。焦って攻略する必要も無いですし、たまにはいいかもしれません。少なくとも勉強の合間の運動にはちょうどいい感じでした」


 五十層に戻り、四十九層に向かいながら今日の反省会をする。


「もう二段階、もう二段階上がればシャドウバイパーもヒラヒラ躱せるようになると思うんだよな」

「一ヶ月ぐらいかかりそうですね。大分上がるスピードも緩やかになってきましたし、そうホイホイとレベルアップは見込めないという所でしょう」

「しかし鱗粉対策は何とかならないものかな。ガスマスクつけながら戦うってのも有りだが、完全に防ごうとしたら防護服レベルの品が必要になるだろうしキュアポーションを片手に彷徨うのが最適解かね」

「その間にスキルオーブをとっとと出してしまいましょう。この後も毒を持ったモンスターは必ず出るでしょうし、今回取らなかったとしても次回はまたやっぱり持っておけばよかったと後悔し始めると思います。なので今確実に取れる形で取っていく方が建設的ですね」

「高橋さん達に相談して、もし出たら都合してもらえないか確認を取ってみるのも有りだが……彼らも彼らで使うだろうから難しいところだ」

「D部隊が取ったスキルオーブを競売に出された場合、振込先は何処になるんでしょうね。やはり防衛省なんでしょうか」


 気楽な帰り道なので思考が横道にも逸れる。逸れつつも目の前のモンスターは確実に処理出来ているので、五十層で今後苦戦する可能性は非常に低いと見積もれるな。


「五十層はもう余裕だな。あとは五十一層と、五十二層のあのダラダラとした戦いをどれだけ続けられるか、かな」

「五十二層はどうですかね。今のところ何とも。まだ長時間というほど潜り込んでない訳ですし、ドライフルーツも念のためしゃぶっておいた程度ですし、階段が見つかるまでには何とかなるんじゃないでしょうかね」


 会話を交わしつつ、出てくるシャドウバイパーに対してスキルオーブ出ろと毎回念じながら雷撃を仕掛けるが、今日の一念は中々ダンジョンには届かないらしい。五十層でもスキルオーブにはお目にかかれなかった。


 四十九層に着いた。いつも通りウォッシュをかけて身綺麗にし、お互い匂いを確認。両者とも鼻の奥まで鱗粉が詰まってて参考にならないことを確認するとエレベーターへ。エレベーターの中で今日の収入の仕訳を行って、次の潜る日付と時間、宿泊か否かを確認。


「そういえば四月から前後に営業時間が延びることになるんだが、朝の集合時間も営業時間に合わせるか? それとも帰りだけ遅く帰ることにするか? 」

「遅く帰るだけで良いんじゃないですかね。宿泊時に朝早く帰れるぐらいの気持ちで行けばいいと思いますよ」


 なるほど。しかし、午後九時まで働くとなるとお腹がすくな。小腹を満たせる何かを作っておいて片手で持ち歩いて食べれる何かを用意することにしよう。具体的にはバゲットやクラッカーに具をのせたディップ形式のものであるとか、そういうものだ。冷めても美味しい奴ならなおのこと良いな。


 一層に戻って出入口から退ダン手続き。今日も遅滞なく終わり、そのまま査定カウンターへ。今回はポーションも一種類だけだしポーションと魔結晶だけの査定なので手早く終わるだろう。予想通り重さを計ってポーションの個数と色を確認して終わりになった。


 本日の収入、四千五百七十三万八千円。まあ一日一億というところ。ここのところあまり伸びが無いのはやはり魔結晶とポーション以外のドロップ品が無い事にも問題の一端はあるという事だろう。


 着替え終わって帰ってきた芽生さんにレシートを渡し、支払いカウンターで振り込み。今日も一日が終わ……ってないな。メモを見返す。机と椅子のそこそこいい感じの奴を買いに行くんだった。そのまま家で適当な夕食を食べてゆっくりするコースに入る所だった。


「じゃ、俺は適当な椅子と机をまた見繕っておくよ。四十二層のあれは……もう海の家感覚で好きに使ってもらっていい奴として割り切っておこう」

「その分儲けてますしケチケチする必要はないと思うので余計なことは言わないでおきます。でも、自分たちで使うんですから座り心地とか良い奴をお願いします」

「俺の尻が尺度になるがそこそこお高い奴にしてくるさ。机も大きめの奴を用意して良いしな」


 バスの時間がいい具合だったのでそのまま帰り道に就き、家に帰るといつものホームセンターへ。今日はゆっくりと椅子と机を見回る日だ。いつもの店員に目ざとく見つけられても問題はない。さぁ、来るが良い。お前のお薦めをたんと聞かせてもらおうじゃないか。


 ……


 …………


 今日は休みなのかな。いつもの店員は来ない。ここでいつもの長々とした説明と押しの強さで良い感じのものを見繕ってもらう予定だったのだが。居ないなら仕方がないか。適当に並べられているものに腰かけ、高さの合う机を探し、自分で色々調べることになった。


 折り畳み椅子と机のセットで良さそうなのを選び、それにする。机の面積はそれなりに欲しくなってきたとこだったんだ、コンロを二つ広げる余裕があっていい感じの四人用を選んだ。


 他に何か買うものは……コンロの燃料も現地で煮炊きしない分使わなくなったからな。補充はまた今度だ。後は特にないな。コーラも箱で買ったのがまだ残っているので補充はいいだろう。


 ついでに隣のスーパーにより、ミルコ用のお菓子とそこそこのお値段の酒を購入。今回は量より質で攻めようと思う。どっちにしろ大量に飲ませるなら高いものを一度飲んでみてもらっても面白い。後は日本酒でこの地方でポピュラーなものを一つ。せっかくなら日本酒を味わってみてほしいという気持ちはある。好みのほどは解らないが、とりあえず甘い香りがするという評判の奴を入れておこう。一升瓶でポン。好みじゃないと突き返されたら料理酒の代わりに使っていくからいいや。


 後は……夕食。夕食を考えてなかったな。今日はアヒージョに使った油も残ってることだし、そのまま茹でたパスタを放り込んで手軽にペペロンチーノと行こう。乾麺の在庫は……うん、あるな。今日使う分はともかく次回分としていくらか手元に残しておく必要はあるので念のため買っておく。野菜は……いいか。脂質は昼にたっぷりとった。野菜ジュースでも飲んで調節しておこう。


 次回こそは毒耐性を拾えると良いんだが。もしくは誰かが拾って受け取るのにオークション申請をするか、だな。金はあるんだ、どこかから買い取るという事も視野に入れておこう。急ぎではないのでそう高額で引き取る必要もないが、仕組みとして使える物は使っておきたいところ。焦らず行こう。


 買い物を済ませてATMコーナーで通帳に記帳。表示された残高でまた頭を悩ませて帰ることになったのは寝て忘れようと思う。とりあえず帰ったら机と椅子を梱包から外してゴミを片付けて……細かい作業はいくつかあるが今日中に済ませてしまおう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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いつもの店員がいない!
ちょっといいお酒はお気に召すかなー 今回はスーパーですけどいい酒を求めるならやっぱ酒屋とかの方がええんやろか
鱗粉、風魔法があったら追い風みたく背後から吹かせて気流を作ったりして、此方に来ないように出来たりしないかな? 今度風魔法が手に入ったら試して欲しいかも? 日本酒か~。兵庫県の灘、京都府の伏見、広島県…
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