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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二章:出来ればおじさんは目立ちたくない

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87:お肉♪お肉♪

 



 一休憩入れたのでついでに食事もとった。食事と言ってもいつものカロリーバーかカロリーゼリーと粉ジュースではある。

 ダンジョンの真ん中でBBQを開くわけにもいかないのでしょうがないところではあるが。


 さぁこれからどうしようか?という所である。時刻は大体十二時。


「予定ではここから五層へ潜る予定だけれどどうする? 」

「五層でお肉ですか。それとも眠れる枕ですか」


 お肉とはワイルドボア、眠れる枕とはダーククロウ。どちらも第五層から出現する新キャラだ。


「できれば両方かなぁ。枕のほうは枕一個分ぐらい集めて、本当に眠れるかどうか確かめてみたくある」

「不眠でお悩みですか? 」

「お悩みではないけど、より気持ちよく眠れるならそれに越したことはないなって」

「快眠向け商品としては需要高いんでしょうねぇ。何よりあいつら空飛んでますし」


 そうなんだよなぁ。普通空中に居る的に当てようと思ったら範囲攻撃しかない。ショットガンのバードショット弾でも持ってこない限りは直接ダメージを与えることは難しい。


「降りて来た時に撃ち落としてたまに出るかどうかってあたりなんだ、布団業界の人たちにとっては喉から手が出るほど欲しいはずだ」

「この間みたいに木に止まってるのを狙いますか」

「そうだな。狙えるなら狙うか。同時攻撃目標がどこまでやれるかも試してみたいし」

「なんか、ますます私要らない子になってません? 」


 文月さんが拗ねる。前も言ったような気がするがそんなことはない。


「いや、全然。俺一人で考え事してるより、こうして二人で相談していないと思いつかない事だってある」

「なら良いんですけど……おんぶにだっこされてる感が拭えなくて」

「気にすることはない。無理に頑張ろうとして怪我するのもよくないし、ぜひ今のままちょっとずつ成長していってくれ」


 至って本心である。お互い同じ目標が持てるなら相互に鍛え合っていきたいし、足りないところは補い合えばいい。あまりそう深く考えなくていいんだよ。


「実際の話、四層みたいに数で押されるとソロ活動では限界があるからな。ソロよりペア、ペアよりトリオのほうが、連携が取れるならそのほうがより効率的にダンジョンを探索できる」

「じゃぁ、そろそろ新キャラ加入の当てでもあるんですか? 」

「ない。なのでしばらくはペアかな。背中はよろしくな、相棒」

「あいあいさー」


 五層への階段へ向かう。道中の敵は問題なく処理されて行く。時々パチンコ玉でソードゴブリンの眉間を狙って吹き飛ばしたりもしているが、かねがね順調である。


 三層から四層を渡ってる間にヒールポーションも無事手に入れているし、もしもの時の用意も万全だ。


 五層の階段へ恙なく行軍を終了し、いざ進めや五層。目指すはお肉、ワイルドボアの突撃を躱しぐにぐにと踏みつぶしに参ろう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 五層に入るとひたすらに遠くまで広がる青空と、おそらくダーククロウであろう黒い点。


 目を凝らせばそれっぽく見えなくもないワイルドボアが地面にうつむいて何かを掘り出しているようなそぶりを見せる。


 実際にはダンジョンの床は非破壊オブジェクトなので地面を掘ることは不可能なはずだが、もし地面を掘った跡があるならそいつは多分何らかのスキルを持ったワイルドボアだろう。


 さすがにあの距離ではパチンコ玉も当たらないだろうな……というぐらい遠くだ。三百メートルは超えているんじゃないか。多分向こうからはこっちは見えていないんだろうなぁ。見えていたらこっちに向かって走りこんできているはずだ。


 それより近くに……タイミング悪く近くにいないな。


「歩くか」

「歩くしかないですね」


 とりあえず目に見えて前に居るワイルドボアに向かってとぼとぼと歩き始める。もう一つ下の階層に行くとこれがわらわらと居るらしいんだが、本当だろうか。


 やがて、ワイルドボアの視界に我々が入ったのか、足で地面を漕いで突進の準備を始めている。


「あれ、足で地面を擦らせる意味あるのかな」

「フレーバーじゃないですかねぇ。ほら、来ましたよ突進」

「落ち着いてるねぇ」


 俺も初めて突進を見るわけではないので、ある距離まで来たところでパチンコ玉を飛ばす。パチンコ玉はそのまま真っ直ぐ飛び、ワイルドボアの視界をふさぎ突進の軸をずらす。


 ワイルドボアは俺たちの手前でドリフトを決めるように逸れていった。


「さて、サクッと倒れてもらいますか」


 文月さんはワイルドボアを追いかけるように近づくと、後ろから前まで貫くように槍を突き刺した。じたばたともがいた後、やがて力尽きたワイルドボアは黒い粒子となって消えゆく。


 後には真空パックされた肉が落ちている。


「さっそくお肉と遭遇ですね。これは良い出だしですよ」

「次のお肉は……先に頭の上のを落とすか」


 頭の上を見ると、黒いカラスが旋回しながらこちらに近づいてくるのが見える。ダーククロウだ。

 放っておいてフンを落とされて、またタオルをフン濡れにされても困る。早めに落としてしまおう。


 パチンコ玉より一回り小さい弾をこの為に用意していたのだ。ダーククロウの耐久力はグレイウルフ以下だ。とりあえず三発ほど射出して狙ってみる。


 ……うまく当たらないな。やはり旋回を終えてこっちに直接攻撃してくる時を狙うか。


 暫く泳がせておこう。


「上空は警戒してるんで次のワイルドボア探しよろしく」

「任された」


 もっと近づいてこないかな。それともワイルドボアとの戦闘中に襲ってくる気か。相手の目標がこちらに向いているのはなんとなくわかる。後はタイミングだ。


「次のお肉が近づいてきましたよ」

「カラス野郎のほうもだな」

「モンスターにも連携ってあるんですね」

「そうらしいな」


 そう言っている間に、ダーククロウは急降下をし始める。これなら当てるには問題なさそうだ。

 もう一度、小さい弾をダーククロウに向けて射出する。


 今度は当たったのか、ダーククロウは真っ直ぐ落ちてきた。とどめは必要がなさそうだな、動く気配はない。今はそれよりワイルドボアのほうだ。


 文月さんが再びワイルドボアと対決する。この間新調した槍を試したいのだろう。ワイルドボアと一対一で向き合う。


 突進してくるワイルドボアの横っ面を思い切り槍ではたく。新しい槍は確かな剛性を持っているらしい。ワイルドボアの突進を無理やり曲げきるほどには。


 そのまま吹き飛ばされたワイルドボアに再び槍を構え、今度は文月さんが突進を行う。胴を貫いた槍は確実にワイルドボアの急所を狙う。ワイルドボアは再び消滅した。


「どうよ」

「さすが相棒」

「へっへー、新武器の調子も良いしこれで五層六層では活躍できそう」

「期待してる」


 俺はその間にさっき叩き落したダーククロウを〆る。残念ながら安眠枕の材料は出なかった。


「ふむ……やはりそう簡単にはドロップしてくれそうにないな」

「まぁ三匹ですからね。もっと多そうなところをさがすか、六層に降りてみましょう」

「フン対策に傘でも持ってくればよかったかな」

「手荷物だけ邪魔じゃないですかねえ。三度笠みたいなものでも良かったかも」

「たしかに、ここなら頭を狙われる可能性も少ないか」


 五層から六層の階段は真っ直ぐ見ることは出来ないが、木を経由していく事で見えてくるらしい。この広大らしきマップだ。そこへ行くまでに時間がかかる。帰りまでの道を考えるとあまり時間を掛けてはいられないな。


「マラソンするか。一気に駆けてしまおう」

「了解、じゃぁステータスブーストで素早く移動ですね」

「そうだな。道中の木にだけ注意して、ダーククロウがいたらそれを狙撃していく形で行こう」

「時間は?」


 時計を見ながら少し考える。


「帰り道の時間を考えると六層に居られるのは三十分ぐらいかなぁ」

「じゃぁ急いで行ってできるだけ長く居られるように努めますか」

「それで行こう」


 二人でダッシュする。道中の景色が流れていく。途中ワイルドボアとダーククロウとの出会いはあったが、難なく仕留められるぐらいにはなっている。


 しかし、五層は何もないな。所々に生えている短い草はどうやら刈り取ることは出来るらしいが、しばらく経つとリポップしているらしい。


 どこまでダメージを与えるとリポップするのかは検証してみる余地はある。だが、地面そのものは非破壊オブジェクトとして存在しているので、草を引き抜くことは不可能だった。


 が、伸びている草を刈ったりすることは出来るらしい。この辺研究している人は居るんだろうな。そういうネタを今度探してみよう。


 走る事三十分、二人ともスタミナは尽きることは無く、ステータスブーストをお互いに使えるおかげで素早い集団行動が出来ている。移動時間はいわば無駄な時間だ。短いに限る。


 やがて、下りてきた階段と同じぐらいの岩が見えてきた。あれが六層への階段らしい。大岩の中に階段が埋まっているという表現が近いだろうか。


 いつ見ても不思議な光景だが、そういうダンジョンなんだと諦めることにした。しかし、何もない荒野に忽然と置かれている大岩はいつ見ても不思議でいっぱいだ。


 ここまでにワイルドボアを十匹ほど処理し、肉を四つ、魔結晶を二つ入手出来ていた。広さに比べてモンスターのポップ数が少ないのか、それとも見えている範囲にポップしていないのかは解らない。


 ダーククロウは空を飛んでいるとき以外は木に止まって休んでいる。まとめて二十羽ほど止まっているところを見つけたので、小さい弾、俺命名バードショット弾をばらまき可能な限り数を減らしていく。


 もしかして、ワイルドボアよりダーククロウのほうが数が多いのか? それとも著しく偏っているのか? 何にせよ、美味しくいただくことにする。


 ダーククロウの羽根はどうやら量についてはランダムでドロップするらしく決まった数を落とすということはないらしい。これはダンジョンでは初めて見る現象だ。そしてバラバラに落ちるので拾うのが少々面倒くさい。

 ダーククロウの魔結晶は五個拾うことが出来た。う~ん、やはりゴブリンを倒してるほうが稼ぎになるのか?いや、七層のセーフエリアを利用しながらまとめて狩るほうが効率が良さそうだな。


 だが、今日は受付でダンジョン内で宿泊する事を伝えていないので、心配させるかもしれない。今回は諦めて次回ぐらいに、文月さんとダンジョン泊を試してみようと思う。


 せっかくキャンプ用品も買ったし、使わないのは宝の持ち腐れである。


「今度は泊まりで来ようか」

「キャンプ用品が必要ですね」

「実はもう、一通りそろえてある」

「楽しそう……でも、七層のセーフエリア、昼しかないから眠るのに鬱陶しいらしいですよ」

「アイマスクが必要だな」


 やはり、二人で話すと必要なものが解ってくる。連れてきてよかった。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
今頃気付いたんですが、5層までの道のりが山道のように起伏が激しくなければ誰でも自転車で行けるのでは? 自転車放置1分で直ぐにスライムに集られるわけでもないだろうから、戦闘前だけ乗り捨てて移動は自転車の…
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