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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十五章:ダンジョン踏破は他人の手で
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863:酔っ払いの末路

 二時間のカニうまダッシュを二本、途中休憩も挟みながらこなすことが出来た。二時間ぶっ続けで走り切れるようになったのは間違いなくステータスブーストのおかげだ。二本目の途中でステータスブーストの段階も一つ上がった。これでまた長時間早く強く激しく戦えるようになる。シャドウバイパーをまともに相手するなら後二段階ぐらいほしいところ。だが今日のところはここまでにしておこう。


 階段上がって四十二層。ガンテツは……まだ飲んでいる。


「ほどほどのところで帰るんじゃなかったのか? 」


 よく見ると、スピリタスをウィスキーで割って飲んでいる。そういう飲み方もあるのか。酒にも色んな飲み方があるんだな。よほど肝臓が強いか、ダンジョンマスターは飲んでも肝臓がやられない生体構造をしてるんだろう。もしかしたらデフォルトで【毒耐性】をもっているのかもしれない。それなら悪酔いもしないだろうし永遠に飲んで居られるのは解る。しかし、つまみも無しによく酒だけで持っているものだと感心すらする。


「近いうちにまた持ってきてくれるなら、そのあいだに飲み切ってしまってもいいと思ったのと、マズい酒は手元に置いておきたくないからな。今日は飲める分だけ飲んでしまう事にした」


 前にも似たようなことを言っていた先輩がいたが、その人は直後に急性アルコール中毒で病院に担ぎ込まれてその後酒が飲めない体になっていた。ダンジョンマスターは酒のほうもちょっと特殊らしい。


「なあ、何かつまみないか? あったらそれをもらって退散する」


 保管庫の中身を適当に探し、ミルコ用のお菓子の中から酒にあいそうなものをチョイスして渡しておく。今頃他のダンジョンマスターはガンテツに対してどういう感情を抱いているのか少し気になるな。またあの酒クズはしょうがねえことをしているとか、そんなふうに思っているかもしれない。俺含めて。


「それで帰るんだぞ。ほら、机も椅子も片付けたいし、移動準備、する」

「わーってるって。……ふぅ、久しぶりに気持ちよく酒が飲めた。何年ぶりかなここまで深酒するのは。いやあダンジョンマスターになった時は何とかして酒が飲めないか苦慮したもんだが、緒方って言ったか、あの探索者。結構気安い奴でな。冷えてないにせよそこそこ頑張って冷えた状態でビールやら何やらいろいろ都合してくれるからついつい甘えたくなってよ、ちょっと大事な話も漏らしたりはしてたりはするんだが。なかなか話せる奴だったぜ」


 ふむ……? つまり俺も長官も知らない話を知っている可能性があるって事か。一応注意喚起はしておいたほうが良いな。とはいえ俺より立場が格上のAランク。下手に探りを入れて痛い思いをする事だってある。長官には続報で何かしら情報を掴んでいるかもしれないと注意だけはしておこう。


「Aランク緒方パーティー。ダンジョンマスター経由で何か情報を知っている可能性あり。注意されたし」


 送信。これで二通。地上に戻れば自動発信されるはずだからそのままにしておこう。


「じゃー、わたくしは、おかえりになります。ほんじつはーおつかれさまでした」


 完全に出来上がっているガンテツがゴミとつまみと残った酒を抱えて転移していった。二日酔いは……あの調子だとなりそうにないな。また今日みたいに酒は無いのかと飛び出してくるのが目に見えている。今日買い出しは確実に行かなければいけないな。


 買い出しに行く分時間は必要だから帰りの茂君は無しだな。すまんなダーククロウ、また明日来るよ。


 エレベーターに荷物を全部載せてエレベーター内で仕分け、そして作業完了っと。さて、今日もちゃんと査定を受けられるか楽しみだ。一日二日で劇的に変わる事は無いだろうが、ちゃんと査定作業が様になっているかをチェックするが、口には出さないようにしないとな。人間は学ぶ生き物だから余計な口出しは無しにしておこう。


 一層に着くとそのまま邪魔なスライムを焼きながら進む。拾ったスライムゼリーと魔結晶は何処かのタイミングでまとめて出すか、エレベーターの燃料の端材にしてしまおう。七層までの魔結晶は茂君へたどり着くまでのワイルドボアの魔結晶とダーククロウの魔結晶で代替していることが多いが、運が悪いとほんの少しだけ足りない、というケースが出てくる。その為のクッション材としてはちょうどいい感じになる。毎回緑の魔結晶を使って余りを出すのはもったいないからな。ケチる所はケチる。それが金を溜めるコツだと誰かが言っていた。


 出入口から退ダン手続き。時間的に少し早く人が少ないからか、新人ちゃんが一人で対応している。いつもの受付嬢は休憩らしい。


「ただいま」

「おつかれさまです……えーと、朝九時ぐらいに来てましたよね」


 顔を少しは覚えたのか、九時から十時に該当するボックスの中から俺の探索者証を探し出し、間違ってないかどうか確認。確認できると返してくれた。


「今日もお疲れ様でした。また明日もご利用ください」


 明日来ることは確定になってしまったが、物事を手早く進めるためにはこれも必要な作業。ちゃんと明日来よう。スマホを保管庫からポケットの中に取り出して早速真中長官にレイン送信。さて、これで熊本第二ダンジョンのダンジョンマスターとも誼を通じたことは伝わったはずだ。後はこの情報をどう活かすかは真中長官次第だな。


 査定待ちは誰も居らずすんなりと査定カウンターに向かう事が出来た。やはり早目に帰ると何事もスムーズだな。今後は一人の時はそうするかな。


「しばらくお待ちくださいね」


 今日も新人ちゃんが担当。上手く出来ることを信じて査定の終わりを待つ。流石にドウラクの身が百六十個近くあるのは重かったらしく難儀しているが、それでも一つ一つ数を数えては管理用の箱に仕舞っていく様子が聞こえてくる。口に出す癖はなかなか直らないもんだな。今日は重量物だらけだからかなりの運動量になっているだろう。それでも十分ほど待って結果が返ってきた。


 今日のお賃金、七千二百四十六万二千六百円。うん、良い数字だ。リヤカーを返却してから支払いカウンターに向かってレシートを出す。


「えーと、安村さんでしたよね」


 新人支払い嬢はこっちの顔を覚えていたらしい。


「そうです。振り込みでお願いします」

「はい、かしこまりました。口座番号はこちらであってますか? 」


 念のための確認が入る。うん、確認は大事だな。


「はい、合ってます。そこによろしくお願いします」

「……出来ました。本日もお疲れ様でした」


 丁寧にお辞儀をされ、見送られる。こういうサービスは前は無かったな。と、レインにメールが。真中長官からだ。


「マジで! 牛の小便発言直で聞きたかった!! 後、情報ってどういうこと? 」


 どうやら牛の小便発言がお気に召したらしい。向こうで大興奮している様子が透けて見える。


「酒を賄賂にダンジョンについて色々聞きだしていた可能性が高いです。ダンジョンマスター酔い潰して聞き出してみました。該当のパーティーに問いただせば何か俺も知らない情報を持ってるかもしれません」


 送信。後は向こうで何とか対応をしてくれるだろう。俺にやれそうなことはこういう細々とした引っかかる話を長官に直接伝えるぐらいしかできない。というか、そのためにこのホットラインがあるのだから大いに使っていいはずだ。多分さっき渡した二つの情報も、先に送った牛の小便発言のほうが長官にとっては大事な発言だったのだろう。


 さて、今日の残り仕事を終わらせるためにもとっとと帰って車を出すか。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 そんなわけで二日連続で訪れた大手ショッピングモール。まずは中古品ショップへ行って、現行品で通信規格も現在の物に通じているスマホを三台購入する。中古とはいえスマホ、それなりのお値段はする。しかし、ゲームをやるわけでも無いので容量は大きくなくてもいいし、改造用なので白ロムの物で良い。後は持ち歩き用のリチウムイオンバッテリーを用意しておいた。主にダンジョンでの充電用だが、無いよりはましだと思い準備しておいた。


 通信テストがしたかったら俺のスマホを取り出して貸せばいいので、実験は俺が居ないとうまく動かないという事になるだろうが、ミルコとガンテツの魔法技術と解析力があれば多分それなりのものが出来上がるんじゃないだろうかと予想しておく。


 現物を手に入れたことで今日の仕事は半分終わった。後は買い出しだが昨日の今日でそうそう増えるわけではない。しいて言えば酒の種類を少し増やしておくことぐらいか。お菓子と酒のつまみも必要だろうからそれらを仕入れていくか。それ以外には……ノートとボールペンはそうだな、明日にでも各階層を見回って無くなりそうなら補充しておこう。その為の予備の予備を確保しておく。


 明日は茂君のついでに各階層によってノートの確認をしておこう。午前中は茂君して一通りセーフエリアを回るのと情報集め、そのあたりで時間がつぶれることになりそうだ。


 酒は……一本だけかなりお高い奴を混ぜ込んでおくか。後は今日も渡した普通のウィスキーの四リットルを買っておけばいいだろう。スピリタスは今回は無しでよし、と。代わりにブランデーでも仕込んで……さて、つまみとお菓子を更に選んで……これでよし。


 後は俺の飯だな。昨日は鮭弁当で和食分を補充した。なら今日は中華か洋食か……エスニック料理という手もあるな。さて……と周りを見回したところで、色々おかずが入っている中華弁当が目に入った。半分だが春巻きも入っている。鶏のから揚げ、丸一個。春雨、ヨシ。エビチリ、シュウマイ、そして味付きのチャーハン。中々の盛り具合だが空いた腹にはスッと入っていきそうだ。上げ底じゃない、ちゃんとした米の重さを感じる。これだ、これにしよう。サラダは家に帰って添えればヨシ。


 弁当一個とそれなりの量の酒と大量のおやつ兼つまみをもって会計に走る。このかごの中身を見たら一体どのような食生活をしているのかと傍から見れば不安にさせるかもしれないな。


 家に帰ってビールとコーラを冷やし、全て保管庫にしまい込むと早速レンチンして弁当を食べる。レンチン待ちの間にレタスと半切りトマトを添えて野菜も摂る。


 着替えが終わったら洗濯をしてる間に早速飯を食う。チャーハンはしっかりと味が回されて均等になっており、加減もちょうどいい。そしてそれぞれのおかずも手抜きが無いように見られる。半分しかない春巻だが中の具は豊富だ。筍のシャキシャキ感を余すことなく伝えてくれる。鶏のから揚げは一個じゃなく二個欲しかったかもしれない。そのぐらいにいい味を出している。たれが良く染み込んでとてもうまい。


 シュウマイもいい香りを漂わせているので冷蔵庫からチューブの練り辛子をちょこんと乗せて食べる。これもまたいい。エビチリもケチャップではない謎の味。それぞれチャーハンと交互に食べながらモリモリと胃袋に入っていく。気が付いたら無くなっていた、というほどにだ。


 今日も満足する飯を楽しむことが出来た。明日の昼食のメニューは……回鍋肉。明日の昼も中華が楽しめるぞ。自分で作るという部分は違うが、明日も中華が楽しめる。それだけで少しだけ幸せな気分になれる、そんな夕食だった。これが五百八十円で楽しめる。一品一品自分で作ることを考えれば、その値段でこれだけの種類の味わいを楽しめるのは市販弁当の強みだな。


 保管庫の時間がもし停止できるなら、この弁当もカビることがないまま複数個保管庫に放り込んだままにしておいていつでも食べられる。揚げたての唐揚げをいつでも好きな時に味わえるしコーラもビールもキンキンに冷えたのをお出しできる。


 それ以外にもカレーだって沸きたてをしまい込んでまだグツグツ言っている中で文字通りアツアツを食べられるしご飯もまとめて五合炊いて好きなだけ出せる。そうなっていないのは魔術的に難しいのか、それとも使用制限がかかっているか、俺の鍛え方がまだ足りないんだろうな。次の段階になるとすれば二百分の一であるとかそういう流れになりそうだ。


 次の保管庫のレベルアップは何時頃になるんだろうな。頻繁に使っているからそろそろナレーションなり時間経過変更ダイヤルのメモリが一個増えてるとか、そういう……うん、まだないな。今後もちょくちょく使っては確認していかないと、前にミルコに指摘されるまで気づかなかったように自然にスキルのグレードがアップしているなんてことは充分あり得る。気づけるところは自分で気づくようにしないとな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
通信のことは報告すべきですねー
まるでタレコミ屋ですね。
> スピリタスをウィスキーで割って」 ウイスキー掛けちゃった > なあ、何かつまみないか? 懐柔するのに心が痛まないタイプのクズ …っぽいダンマス > 俺含めて 一票入っちゃった > ダンジョン…
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