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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十五章:ダンジョン踏破は他人の手で
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860:魔よけとさけ

前話のカスハラかどうか微妙なラインは人それぞれですが、年齢差があるとこういうこともあるかもよと、いうあたりで一つお願いします。


後、飯テロ回です

「じゃあ私は明日は朝から講義なので今日はこの辺で」

「気を付けて帰ってね」

「洋一さんこそ、あんまりダンジョンばかりでなくてプライベートも充実させてくださいね」

「考えておくよ。次の予定は……また連絡して。五十二層探索なら夜に入って朝に出る形の探索でも時間は取れる。空いた時間を有効活用していこう」

「解りました。また連絡します」


 駅で芽生さんと別れる。明日は朝から講義らしい。次に揃ってダンジョンに入れるタイミングは芽生さん任せだ。こればかりはしょうがないのでそれまでは大人しくソロで潜ってダーククロウの羽根を集める作業に走ろうと思う。


 帰り道にコンビニに寄り、次回用のミルコのおやつと、そして魔よけのスピリタスを購入する。本当に他所のダンジョンマスターが現れた場合にこいつを飲ませてさっさと退場させるためのスピリタスだ。それ以外には……そうだな、あえておいしくない酒を用意しておいて、こいつは酒にあまり興味がないんだなと思わせることも必要だ。


 家に着くと車を出して、大手ショッピングモールへ急ぐ。ついでの買い物もあるしちょうどいい。夕食もこっちで確保してしまおう。疲れが残っているといけないので念のためドライフルーツを一つ噛み砕いて疲労を取っておく。これで安全に車を運転できるな。


 家から三十分、ショッピングモールに着いた。色々と関係ない店に立ち寄りながら夕食を優雅にキメたいところだが、腹のほうに余裕がない。今日は食料品コーナーだけに立ち寄ることにしておこう。他の用事は……思いつくことが無い。


 まず食料品の確保だ。パン専門店で一本単位でパンを購入する。保管庫に入れておけば数日しか持たないパンでも百日以上持つ。百日もパンを食べきらない可能性はないので、安心してお高いパンを購入する。デニッシュではない、お高いパンだ。時間的に残っていないことも多いが今日は運よく三本も残っていた。六枚切りにしてもらうことで家で切る手間も省ける。


 食パン一斤分あたりで八百円ほどするが、それぐらいの出費が気になるような厳しい生活をしている訳でもないので堂々と購入する。店員にはあまり日持ちしませんが大丈夫ですか? と問われたが、家族が多いので問題ないと返答しておく。家族が多い。これが結構クリティカルな返答として納得してもらえるらしく、それ以上追及されなかった。


 しばらくの朝食のタネを仕入れたところで、続いて他の食糧の購入。最近アヒージョを作ってキノコを食べつくしてしまったのでキノコを色々と適当にポンポン放り込む。後は忘れてはいけない卵とキャベツ。卵はお高い黄身にしっかりとオレンジ色のついている、一パック六個入りで千円ぐらいする奴だ。


 上を見ればもっと高いものはあるのだろうが、自分の行動範囲内で自分の納得できるもの、とするとこの価格帯になる。良い卵を手に入れるためだけに車を出して買い付けに出かけるのはそれはそれで非建設的であると言える。出来る範囲で贅沢をする。それを忘れてはいけない。


 さすがにキャベツは普通の奴だ。キャベツの種類まで細かく指定するとこれも別で買い出しに出かける必要が出てくるのでほどほどの物で妥協しておく。良いものを選ぶとはいえ妥協も大事。出来る範囲で贅沢を。


 後は、魔よけをもう一つ購入しておく。色んな酒クズからも酷評される話題の主である四リットル入りのどでかいペットボトルのウィスキーを用意する。酒の味の解らない奴でもまずいと評判なのに一向になくなる気配のないこの、ウィスキーに対する最大の冒涜とまで言われるこれを一本入れておく。この魔よけの二本立てで確実に他のダンジョンマスターの介入を防ぐ。興味さえなくさせてしまえばそれ以降干渉してくる事も無いだろう。


 後は、別の大手メーカーのペットボトルの酒も入れておく。こっちはちゃんと美味しい奴。もし話せるダンジョンマスターだった時のための予備だ。


 コーラも箱で買う。二リットルのを一箱、そして五百ミリリットルのも一箱。かなりの重量になったが車に積み込んでしまえば重さに問題はない。我慢するのは車に運ぶまでだけだ。


 後は今日の夕食だ。さて何弁当にしようかな……たまには和食も悪くないな。鮭弁にしよう、鮭弁。酒の話をしていたら鮭が食べたくなってきた。特に皮と身の隙間の脂のところが最高だ。鮭弁当はあるかな……よし、あったぞ。これで夕飯は確保できた。後は何食べようかな。和食っぽいつまみをいくつか買っていくか。量り売りのおかずを何品か見繕って……これでよし。


 他に買うものはあるかなっと。このスーパーでしか買えないお菓子というものも特には無かったはずだが、念のため一通り見回って二、三品見繕った。後は……んー、思いつかないと言うことは特に用事はないということだな。これでよし、会計を済ませよう。酒は交際費にはさすがにならんだろうな。まあそれほど金のかかる代物を買ったわけではない、細かいことは気にせずにいよう。モンスターほんの二匹分と考えればいい。その気になれば明日稼げる。


 買い物を終えて家へ帰り、着替えて洗濯機に放り込むとさっそく鮭弁当を食べる。鮭と大きく書いてあるものの、鮭以外の具もそれなりに豪華。鮭の身も大きく、その分皮も多い。ここは最後の最後に取っておこう。丁寧に脂の部分が皮に張り付いたまま取り外し、別の器に移す。さて、まずは一緒についてる煮物からだ。


 米と一緒に煮物を口に入れる。甘めに煮付けられたカボチャ、シイタケ、蓮根。甘いものを連続して食べた後に鮭を口に入れる。甘い後にほんのり塩じょっぱい鮭を口にすることで米がいくらでも食えそうな気配がやってくる。


 鮭自身もただ焼いただけではなく、味噌っぽい香りも漂ってくる。味噌漬けにしてから焼いたのだろうか。そのおかげか、水分が抜けきることなく内部にも油にも水分がバッチリ残っている。塩からすぎなく、それでいて塩気がきちんと味わえるのがとてもいい。もう鮭だけでも良いんじゃないかとすら思う。スーパーといえど流石業界大手、惣菜や弁当にも手を抜かないぞという姿勢が伝わってくる。


 そしてしっかり出汁のきいた卵焼き。こいつがまた美味しさを引き立ててくれる。卵焼きと鮭を交互に食ってもまた美味い。卵焼きをちろっとかじり、鮭をかじり、そして米。熱いお茶が欲しい所だな。


 弁当だけでは物足りないと思い買い足したひじきの煮物と高野豆腐の味染み煮込みも悪くない。甘さが良い感じに米とまじりあい、食欲を更にそそる。米をもう一つ別で買っておけばよかったな。もしくは今からパックライスという手もある。よし、食ってしまうか。パックライスを温めて米を足す。米に対しておかずの割合が少なくなり過ぎたように見えたが、しっかりと煮付けられているこれらの食事はうまいこと米の量を調節することに成功した。


 しっかりと全てを味わい切り、少しのご飯を残したところで最終兵器の鮭の皮。こいつをフライパンで少し焙ってやり、カリカリにしてから茶碗にご飯と共に移してわさびを乗せ、お茶をかける。そしてずぞぞぞっとすすってやるのだ。これが最高に美味い。金一両の価値はここにありといった感じだ。値段以上に楽しんだところで満腹にはならないものの、心は満腹、余は満足である。


 せっかく新しく淹れたから出がらしになるまで出し尽くそうと思う食後のお茶を飲みながら余韻を味わう。今日の弁当は当たりだった……次回はどんな美味しいご飯に巡り合う事が出来るだろうか。しばらく夕食は惣菜コーナーの弁当で色々攻めてみるという方針で行こうかな。きっとまだであったことのない未知の味わいの弁当はあるはずだ。次は違う角度を狙ってみよう。


 一服し落ち着いたところで風呂に入り、さっぱりしたところでいつものネットサーフィンとしゃれこむ。まだAランクフィーバーというものは続いているらしく、締め切りも販売日も少し遅めらしい月刊探索ライフでは、もうAランク探索者が出た、という記事が載っている。


 各パーティーメンバーの紹介や、聞ける範囲での役割、持っているスキルなどが公開されている。この辺は個人記者も質問してるだろうから、いろんなニュースサイトを見比べても同じだろうな。


 そして、今後どのように探索活動を行っていくかについて聞かれていた。しばらくは少し休憩期間と言うか長期休みをもらって、それから活動再開するとのこと。まあ、B+探索者ならよほど金遣いが荒くない限りはしっかりと稼いでいるはずだ。休憩してても経済的に問題はないんだろう。


 俺みたいにワーカーホリックではなく気分を晴らしたりスッキリできることがたくさんある人はいいな。俺も何かもっと色々と……前もこの問答やった気がするな。そして結局ダンジョンに関係ある範囲でないと俺は食指が動かないという結果になったはずだ。同じことを考えるのは止めよう、気が滅入る。


 彼らはパーティーでアウトドアとか色々やってるらしい。アウトドアもダンジョン内もやってることは同じ、ということは彼らもきっと俺と同じ問答をやった結果現状があるのかもしれないな。


 しかし、ダンジョン庁は彼らのようないわゆるダークホースにダンジョンを攻略されてしまったわけで、今後の対応を考えるための聞き取り調査こそ行ったものの、全体をまとめて、現在エレベーターが設置されているダンジョンや最深層が予想より進んでいる場所もあるだろう。この忙しいであろう時期に色々と対応に追われて大変そうだな。また真中長官の書類仕事も増えているんだろう。


 他のダンジョンの攻略が進んでいき、踏破していくダンジョンが増えれば増えるほど余っていくダンジョンマスターも増える。そうなると、暇なダンジョンマスター同士が集まって新しいダンジョンを作ろうとする試みが行われるだろう。そうなれば、今みたいに安心安全のダンジョン探索ではなく、ダンジョンからモンスターがあふれ出てくるために定期的な駆除が必要なダンジョンへと変化する可能性だってあるわけだ。


 新しい形式のダンジョン。それに興味があるかないかで言われれば結構興味ある。出現するモンスターの傾向はどんなものになるのか。階層はどのくらいまであるのか。セーフエリアとエレベーターは付属しているのか。


 その内ミルコから相談されたりもするんだろうか。その前に、ダンジョンマスターの定員があったりもするんだろうか。いや、定員はあるんだろう。定員が無いなら空いた場所にどんどん新しいダンジョンが出来続けているはずだ。新しいダンジョンが発見されたという話が国内では聞こえてこない所を見ると、世界全体でのダンジョン存在数はある程度決まっているものと考えていいな。


 だとすると、もう何カ所かのダンジョンが制覇された後で暇つぶしにダンジョンづくりのための法則を考え出すという手順になっていくのだろう。ダンジョンを作る側もそろそろ気づいているはずだ。全国画一のダンジョンでは取れ高が無いと。


 ダンジョンによって性質やマップの作り、地域に沿ったダンジョンづくりなどが求められてくるかもしれない。現状のダンジョンが変化する、という可能性は無くなるわけではないが、スライムだらけのダンジョンとかなら俺も喜んで駆け込むに違いない。また万能熊手片手に潮干狩りをしまくる光景が思いうかぶ。


 そうなると、現役探索者としてはこういうふうなダンジョンはどうだろう? と口を出したくなる場面も出てくるかもしれない。もしかしたら魔よけは必要なくなるかもしれないな。要らないと解った時点で多村さんにでも押し付けようかな。多村さんキレるだろうな。


 とりあえずしばらく身の回りでどうこう変化するのはダンジョンの営業時間の変更ぐらいなものだろうか。後は五十三層以降のマップがどんな形なのかを予想しておくぐらいのことしかできない。とりあえず灼熱のマップや極寒のマップが出てこないことを祈るとしよう。流石に人類が活動できないような環境を用意してくるとは思えないからな。これまででいうサバンナや高山、雪原マップぐらいが服の着替え無しで活動できるギリギリのラインだとは思う。その範囲で作ってくれていることに期待しよう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
むしろ持ってるから寄ってくるまでありそうw
 安酒を日々大量に呑むような人もマズいと言う大きなボトルの酒……。  自分が知ってるのは、直訳して1番の種類となる最大手大型スーパーのプライベートブランドの…………あ、いや。 多分違うよな。  うん。…
酒好きにもいろいろなタイプがあるし、どんなタイプのマスターが出てくるんかな?! どんな酒がが好きか?量がたくさん飲めればいいタイプか? 気になります!
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