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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十五章:ダンジョン踏破は他人の手で
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858:五十二層ぶらり旅 3/3

誤字が減らないよう

「今日の目的はこれで達成、と。ウォッシュ」


 階層を一つ制覇したところでウォッシュ。身綺麗にしておく。時間は……まだまだあるな。一旦戻りの階段まで戻って、逆順で正しく階段まで戻れるかを試して、それからもう一回来て……それでもまだ時間がある。


「時間が予定より余ったので五十二層へ行こうと思う。シャドウバイパー四匹編成が出てこない限りは戦えると思うので、それは出るかどうかの調査だけしておきたい」

「出てきた場合はどうします? 退却ですか? それとも戦い方を考えるためにしばらく戦ってみますか? 」

「そうだな……明らかに手に余る場合や対応しきれないと自覚出来たら大人しく戻って、五十一層か五十層で毒耐性を拾いに行く作戦に切り替えよう。もしかしたらシャドウバイパーは三匹ワンセットが上限かもしれないし」

「判断は任せます。出来るだけ安全にが第一ですからね」


 五十二層への階段を下りる。下りた先はやはり同じ紫の鍾乳洞マップ。ここでいきなり変なマップに遭遇したりとかそういうことは経験上ないのでそこは心配なしと。そして早速索敵。シャドウバイパーが一匹、シャドウバタフライが二匹、シャドウスライムが一匹、近くにいるという事までは解る。


「少ないな。もっとわんさか湧くようなイメージだったがそういう訳じゃないらしいな」

「なんか変ですね。もっとこう、このマップ最深層でございます! みたいなわさっとした感じが無いですね」

「ともかく攻撃を仕掛けていくか。戦ってるうちに解ることもあるだろう」


 手近なシャドウバイパーがこっちを見つけて襲ってくるのでさっくり全力雷撃で仕留めようとすると、シャドウバイパーを攻撃したタイミングでその近くに居たシャドウバタフライがリンク、こちらに近づいてくる。


「連戦、シャドウバタフライ二」

「任されました」


 シャドウバタフライの対応を芽生さんに任せつつシャドウバイパーを確実に対処すると、後ろから芽生さんに援護射撃……と、その間に更にシャドウスライムが一匹こちらににじり寄ってくるのが感じ取れる。リンクしすぎではないだろうか。


 そのまま数回リンクするモンスターを倒し、密度こそ薄いものの比較的長時間ぶっ続けで戦闘を行うという形になった。落ち着いたのは五分後。


「芽生さん、気づいてる? 」

「変ですね。モンスターにまとまりがありません。一匹一匹が独立してる感じがします。しかも、モンスター同士がリンクして戦いに挑んでくる形にも見えます。ここまでの戦いではない戦い方……しいて言えば、六層のワイルドボアに近いような感じかもしれません」


 これまでのモンスターは一グループがまとめて襲ってくる、という形での戦闘が主であり、一匹ずつ出てくるモンスターも居たものの、基本的にはよくあるロールプレイングゲームというならばこう。


 〇〇が二匹現れた! ××が三匹現れた! コマンド?


 このようなケースでの戦闘がほとんどであった。だが、この階層はそういう空気ではない。シームレスに、索敵範囲内で戦闘態勢に入ったモンスターがまたその近くにいるモンスターに声をかけて呼び寄せるように自動的に攻撃態勢に入りそのまま戦闘に踊り込んでくるようなそんな雰囲気だ。


「ここから先はこういう形での戦闘が増えてきますよ、という前触れみたいなものなのか、それともこの階層だけなのか。とりあえず一回の戦闘時間が長い分持久力を削りに来てるのは間違いないな。瞬間火力だけに賭けていると躓くエリアかもしれん」

「どうします? 帰ります? 」

「ダラダラと戦い続けるのも悪くはないがメリハリがないので集中力が切れそうになるな。でも、体験しておかないと近いうちにここも通り抜けることになるんだからな。もう少し……せめて壁か他のオブジェクトに突き当たるまで、もしくは時間まで、さらに言えば疲れを感じたらドライフルーツかじって撤退。そんなところだろう」

「じゃあ、このままダラダラと戦い続ける羽目になるんですね……気が抜けないのは何処も同じですが一層気が抜けない気がします。ここは向かって右方向から来たら私が、左方向から来たら洋一さんが対応しましょう。手が空いてたらお互い補助って事で」

「それで問題なさそうだ。とりあえず……天井の影を参考にあっちへ向かってみよう。方向は北西だな」


 ダラダラ戦い続ける長時間耐久マッチのような戦いが始まった。なんだろう。ひたすらモンスターが湧き続けている訳ではないが、戦闘回数を考えるとモンスター密度としてはかなり多めだ。それが進行方向上に探知範囲内に入り次第一匹ずつないし二匹ずつこちらに向かってくるので随時対応する、という形になる。


 これならまだ上の階層のほうが戦いやすかったな。モンスターがある程度密集してリポップするのがこれまでの戦い方。フィールド上にランダムに湧くのを近づいては毎回戦っていくがその上でリンクする今の戦い方。これはこれで面白みはあるが、どんどん戦線拡大していく戦いにくさと一息入れるタイミングが難しいのが困りものだ。


「これは、歩くペースを間違えると途端にモンスターに囲まれる奴かな。索敵範囲がもっと広くないと役に立たないかもしれない」

「後ろから来ないと解ってるのが唯一の安全地帯みたいなものですか。場合によってはダッシュで下がって安全距離を取ってから遠距離で削りに行く……みたいなスタイルになるかもしれませんね」

「それが一番安全ではあるんだが、三歩進んで二歩下がるのは明らかに進捗が悪いからな。もっとこうガッといってサッと倒してシュッとドロップ拾って次々に行ける分、前の階層のほうが戦いやすいというか慣れてるというか、楽なのは確かだ」


 今も一匹ずつか二匹ずつ、戦闘範囲に徐々に近づきつつあるモンスターを索敵経由で視認している。視界外含めて結構な広さにぽつぽつと索敵できているモンスターは全部戦う必要がある、ぐらいのイメージで行かないとな。


 ドロップが美味しいから良いものの、これでまだ最上位ポーションが査定できません、というのであればまた違った理由で五十二層を進む理由にはならないんだが……と、よそ事を考える余裕程度はまだあるらしい。戦闘に集中することも大事だが精神的な余裕を持てていることは安全率の内に入るわけだな。


 大きいつららの足元まで来た。念のため、戦いながらぐるっと回りを見回すが階段らしいものは無い。ここのつららは外れ……と。方角と距離だけ記録しておく。


「さて、一旦階段まで戻るか。戻って……だらだら戦っているおかげでかなり時間がたってるな。早いけどここで手じまいにするか」

「もうそんな時間ですか。ずっと戦ってるので実感がわきませんでした」

「帰り道真っ直ぐ帰れるかどうかを確かめる時間が必要だ。それを確認する意味でもここで一度戻っておくほうが良い」

「そうですね。とりあえずドライフルーツください。戦闘続きで回復が追いついていない可能性があります」


 俺も一枚口に含んでおくか。ついでにウォッシュ四回。流石にちょっと鱗粉の蓄積が多くなってきた。ここからスッキリして帰ることにしよう。


 時々後ろを振り返りながら移動をしていた……というより戦闘の都合上後ろを振り返ったりする回数が普段より多いため、帰り道の目印はおおよそ把握している。とはいえ、戦闘中にチラ見した程度の小さい石筍だと見逃している可能性もある。戦闘が一段落するたびに地図を取り出しては描き込むのを繰り返してはいたが、多少の抜けはあるかもしれない。それでも帰り道の方角が南東方向ということは解っているのでそちらへ向けてまただらだらと前進を続ける。


 流石に一度倒しきっているからか、帰り道のモンスターは少なめ。それでもやはりこの階層のモンスターには固定ポップという概念が薄いんだろう。フラフラとあっちへこっちへ移動してはこちらを認知し襲い掛かってくる。この階層でバニラバーの儀式をするのは無理だろう。するなら五十層だな。


 バニラバーの儀式を意識しすぎたせいで戦闘のテンポが狂ってモンスターに囲まれるという可能性は高いのでここはハッキリ切って捨てる。ここでは考えない。よし、頭を切り替えた。


 結局、先ほど見つけた大きな影にたどり着くまでに三十分ほどかけていたらしい。これはかなりの耐久レースになりそうな予感がする。まともに探索するためには戦闘が一段落したタイミングで休憩を入れながら進まないとまともな進捗を得るのは難しそうだ。


 まあ、その分ドロップ品は非常に美味しい事になっているし、ここでは上の層みたいにシャドウバイパーが三匹同時に襲ってくる、という火力ギリギリの戦闘を迫られる事は無い。どっちを向いても美味しい、と言える場所ではないが、少なくとも収入面で不満が出ることはなさそうだ。


 無事に階段までたどり着くと一休憩。流石に鱗粉で喉がやられてきた。水分を補給するが、鱗粉が鼻についてるおかげで普通のミネラルウォーターすら甘く感じる。五十層に戻ったらキュアポーションを補充しておこう。後はソロで巡る時に一度九層あたりをうろついてキュアポーションのランク1を補充することも考えておかないとな。


 五十一層に戻ると、さっき判明した進路沿いに真っ直ぐ戻る。ここからはエンカウント式の戦闘の切れ目がきっちりした戦いに戻る。瞬間火力が必要になってくる。シャドウバイパー三匹という組み合わせ以外はそれほど圧迫感は無いのだが、一度噛まれて痛い目を見ている分だけ嫌な気配として身体が感じ取っているのかもしれない。


 新しい手袋はここを何度か通り抜けることを見越して複数枚準備はしているが、これもステータスが上がれば手袋だけの被害で済むようになるのか、それとも手袋ごと防御されるのか。そこはまだちょっと判断がつかないが、とにかく苦手意識がまだ抜けていない。


 そんな事を考えていると早速シャドウバイパーが三匹現れたのでまとめて極太雷撃で処理する。が、一匹がギリギリ範囲から逸れる。


「芽生さんお願い」

「任された」


 外れた一匹を芽生さんに任せ、残りをきっちり蛇の丸焼きに仕上げる。芽生さんも最近お気に入りの新技でどういうふうな角度で当てれば誰にも被害を出さずに範囲攻撃を上手く当てられるかを研究しているようで、毎回反省点と見た目の角度からスプラッシュするタイミングやウォーターカッターの射出される部分などを解析しては毎回いい感じに更新を続けている。後は二発出せるようになれば新戦法として大いに活躍してくれることだろう。


 シャドウバタフライ四匹はまとめてチェインライトニングで痺れさせてその間に芽生さんの巨大化させたウォーターカッターで一気にまとめて断ち切ることで楽が出来ている。最近出番が無かったチェインライトニングだが、久しぶりに最大出力で打ち込むと中々の威力を発揮してくれた。


 そして久しぶりにステータスブーストの段階も上がった。今回は芽生さんだけだが、その内俺も上がるだろう。俺はソロでカニうまダッシュをしているぶんだけ数回分芽生さんよりも先にステータスブーストの段階が上がっているので芽生さんの上がり具合が少し気にはなっていたが、ここの戦闘は中々に経験値が美味しいらしい。


 シャドウバイパー三匹編成だけに注意を払いつつ、帰り道も五十層まで戻ることが出来た。五十二層はまだまだ探索が必要だがとりあえずこの調子で進んでいけば問題なく進めることも解った。


 五十層への階段に着く。時間はまだある。これは五十層でゆったり時間をかけて狩りをして今日の稼ぎを得ておくべきだな。


「体の痺れとか大丈夫? ろれつが回らなかったりしない? 」

「今のところ大丈夫ですね。五十層で活動する範囲でしたら問題なく」

「これ、仕事上がりにのむキュアポーション、ランク1をきっちり飲むのとランク2を飲むの、どっちが効率いいと思う? 」

「ランク1のほうがお金はかからないとは思いますが、この場で取れることを考えるとランク2で完全に効果を取り去ることはできそうですし、わざわざランク1を取りに行くことを差し引いてもそのほうが無駄がないと思います」

「ふむ……やっぱりそうか。キュアポーション取るためだけに九層あたりを一人で巡ってみようかとも考えたんだが」

「時間の無駄ですね。一人で九層ってことはキュアポーションの代金を査定にかけないとしても時給十万少々でしょう? ここでちょっと頑張ってキュアポーションのランク2を拾うように動いた方が建設的だと思いますし、受付や査定で何でこんな浅い階層に? って言われなくて済みますよ」

「そうなるか。じゃあ大人しくこの階層でいつもより頑張って収入増やしてその分でキュアポーションのランク2を飲むことにしよう」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
> 五十二層」 鍾乳洞最下層はリンク階層ですか。隠蔽が無かったらきつかったやつ > 今回は芽生さんだけだが」 若干パワーレベリング気味についてくる芽生さん > わざわざランク1を取りに行く」 > …
厄介な敵に加えてエンカウントまで厄介になってきましたか ダラダラと戦ってたら収拾がつかなくなりそうだなー
よりダンジョンらしくなってきましたね 儀式を見てるとちょっと前のボススライムにやってみたくなる
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