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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十四章:ダンジョンよもやま話
839/1207

839:イベント最終日 1/2

8000万PV越えました!毎日アリガトウゴザイマス!!

 暖かい朝だ。目覚めもバッチリ、おなかもスッキリと空いている。昨日のご飯が残る事も無く、早く朝食にしろと胃もささやき始めている。がばっと起き上がると、今日の目覚めについてのほうこくをレインで布団の山本に送信。今日も調子はいいぞ、という事を伝えておく。


 いつもの朝食の後、今日はカレーを作るが超時短レシピで挑むことにした。煮込むのに時間がかかる具材はいちど電子レンジで温めた後、そうでない具材はみじん切りにし、まとめて一旦炒めて水と共にミキサーで完全に細かくしてしまう。肉は肉の食感を残したいのでぶつ切りにしてそこそこの大きさで焼き、鍋に脂が残って表面に焼き色が付いた辺りで一旦鍋からどけて、そこにミキサーにかけた野菜をドバっと入れてブイヨンとカレールーで煮込む。


 肉も入れて二十分ほど煮込んだところで、製氷庫からありったけの氷を取り出し、鍋ごと一気に冷やす形にするとそのまま保管庫へ。保管庫で三分放置した後取り出すと、一晩寝かせたかのようなとろみを伴った冷えたカレーが出てくるのでそれを再度火にかけ、とろみを更に引き出す。


 これで超時短でも野菜もちゃんと入ったお肉ゴロゴロカレーの出来上がりだ。コツはちゃんと玉ねぎを炒めておく事と、ミキサーにかける際に水を足すこと、そして保管庫での急速冷却かな。


 まず味見をしてみるが、この段階ではいつものよりも少し物足りないという感じはする。普段はもうちょっと味付けを変えているからだろう。足りないなーと思う味を少し足すと、もう一度鍋をかき混ぜて調味料をいきわたらせてもう一度味見。よし、これでいいだろう。


 ご飯は炊けているのでいつも通り少しだけ多めにタッパー容器に詰め込んで持ち運ぶ。カレーは鍋ごと。これで昼食の用意、ヨシ。


 万能熊手二つ、ヨシ!

 直刀、ヨシ!

 柄、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、今から買いに行く、ヨシ!

 保管庫の中身、ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 今日はダーククロウとカニうま大乱闘の予定だ。家近くのコンビニでお菓子を買いに行くことも忘れない。必須商品であるコーラとタブレット菓子はちゃんと保管庫に入っているので、それ以外。今日はおつまみ系をもっと攻めてみよう。豆菓子を中心に組み合わせてみた。


 柿ピーにグリーンピースの揚げた奴にプレッツェル。どう見てもビールのあてだが、酒を好むかどうかは分からないし、ミルコの見た目的に酒を飲ませて良いものかどうか悩ましい。それに、酒が欲しいならそうミルコの側から要求があっても良いので、あまり酒を好まないダンジョンマスターなのかもしれない。酒を好むダンジョンマスターであったとしても俺は一緒に飲んでやれないからちょうどいいのかもな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 いつものダンジョン、いつもの入ダン、いつもの七層、そして茂君。今日は倒した先からどんどん湧いてきたのでいつもよりもすこしだけダーククロウの羽根の収納が多い。それでも相手をし続けるとキリがないので、適当な所で切り上げて四十二層へ下りた。帰りも似たようなことになりそうだな。


 まず一周、慣らし運転代わりに全力で回り切るまで先日と同じくカニを全力で平らげ始める。このイベントももう終わってしまうのかと思うと寂しいが、その分の楽しさは充分享受できたと思うので楽しいイベントだったことに違いはない。


 まず一周一時間半かかる道のりを一時間で走り回る。階段に戻ってきたところで呼吸を整えてもう一周。都合二周したところで腹が空腹を覚え始めた。やはりステータスブーストを全力で行使すると胃がカロリーを欲しがるな。昼も過ぎたし、ちょうどいいだろう。四十二層に上がって昼食にする。


 昼食を食べ始める前にミルコにお供え物をすると、今日もミルコは現れた。忙しいのか、それとも暇なのか。どちらにせよ、お菓子を受け取りに来たことに違いはない。


「おはよう安村。今日でイベントは最後にするよ。お疲れ様だったね」


 お、やっと終わるのか。中々に稼げるイベントだっただけにちょっと切なさは残る。だが、これでもう一段階奥に行く覚悟が出来たことを考えると悪くないイベントだったと言える。


「まずはいつもの物を。うん、ありがとう。……で、今日の君のご飯はなんだい? 」


 お菓子を抱えて転移すると、すぐに転移して戻ってきた。どうやら俺の昼食が気になるらしい。


「今日はカレーだ。食べるか? 」

「ちょっともらおうかな」


 一緒にカレーを食う事になった。多めにカレーを作ってきたため夕食もカレーにするつもりだったが、ミルコに食わせるなら夕食は別で考える必要があるな。どうやら今日はコンビニ飯になりそうだ。


「イベントの切り替えって具体的に何をどう弄るんだ? 」

「リポップ頻度の数字をいじったり、視界に入っててもリポップするかどうかの項目のON/OFFぐらいだね。そう手間がかかる事じゃないよ。各階層ごとに設定しなくちゃいけないから、その分だけ手間はあるけど大きくイベントのために仕事をしなきゃいけない、というほどではないかな」


 ミルコはあっさりと白状する。いつもの見えないコンソールで色々パラメータをいじるが、それほど細かい作業が必要という事では無いらしい。これならどこのダンジョンでもよほどの面倒くさがりじゃない限りは誰でもイベント開催が出来るって事か。


「ダンジョンを作ることのほうがよほど工数がかかるってところかな? 」

「そうだね。コーラもう一本……ありがとう。まずはダンジョンの外景を選択するだろ? その後に移動可能なように道を設置して、非破壊オブジェクトを設置して、それから階段を移動可能な所に置く。階段を置いたら階段がちゃんとつながってるか確認して、その後で目印や雰囲気オブジェクトを設置して、それから出現するモンスターを置いて……と、階層を作るだけでも中々に手間だね。モンスターが何を落とすかや、モンスターの行動の如何はあらかじめ作られているからそこまで手間じゃないけど、モンスター密度なんかはこっちで再設定してやる必要があるかな」


 ミルコにダンジョンの作り方を聞きながらこっそりメモを取る。ダンジョンマスターになるつもりも予定もないが、どのようにダンジョンが出来ていくかの情報は貴重だ。しっかりと吸い上げていこう。


「こう、いつも君らが不思議そうに見ているパネル……君が保管庫の中身を確認してる時に見えるようなアレ。ダンジョンマスター用のアレには色々機能が付いていてね。そのパネルでダンジョン全体の管理や操作をしていくんだ。カメラの位置や座標なんかも指定できるし、探索者を基準にしてその視野を見ることも出来る。結構高性能だろ? 」

「探索者目線での観察も出来るのか。人によっては中々スリリングな見世物だろうな」

「君が全力出して戦ってたさっきのカニ……ドウラクって名前つけたんだっけ? それとの戦いも中々に視聴率が高いよ。四層を巡っていた時にも中々人気だったかな。スピーディーで取りこぼしなくドロップを拾っていく有様はとても見てて気持ちがよかったねえ」


 対ドウラク全力戦闘は人気コンテンツらしい。今後も一人で潜る時はできるだけやるようにしよう。そのほうがミルコも良い探索者を子飼いにしていて鼻が高いのだろうな。


「今日でイベントは終わりって言ってたが、具体的に何時に終わらせる予定なんだ? 」

「君らの時間で言う午前0時だね。一斉に切り替わるようにタイマーを組み込んでおいた。後は自動でやってくれるはずだよ」

「タイマー設定もできるのか。それなら朝はモンスターを少なめにして夜になったら多くする、なんてことも出来そうだな」

「面倒だからやらないけどね。もしかしたら、新しいダンジョンが作られるなんてケースが出来た場合には参考にしておくけど」

「そういえば、あれ以来ダンジョン踏破の話はないのか? まだ違う国で一つだけしか踏破されてないんだが、踏破はされてるけど消滅させてないだけ、なんてパターンもあり得るだろ? 」


 ふと気になったことを聞いてみる。表向きは絶賛攻略中となっているけれど実は最下層まではたどり着いていて、ダンジョンを消滅させないことで利益を得ているダンジョンはあるかもしれない。


「そこまではちょっと解らないかな。僕らが認知できるのは自分のダンジョンの様子と、他のダンジョンが踏破されてダンジョンが消滅したタイミングぐらいだからね。踏破させないことで現地の関係者と合意を得たんだよ、とわざわざ語りに来ない限りは知る機会は無いね。だからこの間消滅したダンジョンも消滅して初めて僕らも知った、というところだね」


 ということは可能性として黙っているけど相当奥まで潜りこんでいるパーティーも居るってことか。エレベーターが公開されているダンジョンだけが進んでいるとは限らないわけだな。もしかしたらこっちより早く踏破するかもしれないのか。ある日突然消滅して、実はエレベーターも作ってました、こっそり潜らせてましたーとなるのか。ギルマス会議で怒られるのを見越してそれをやったなら、初踏破の功績と相殺してどうなるかってところだな。


「もしかして安村はアレかい、一番最初にダンジョンを攻略することになにかしらの焦りみたいなものを感じているのかい? 」

「それは違うかな。どっちかというと焦りを感じているのは他のダンジョンだろうし、ここみたいに僻地に出来ている訳ではないダンジョンとしては、とっとと踏破してもらって消滅させたいところはいくつもあるだろうからな。ただその攻略がどう進んでいるかが共有されてない可能性があるかもしれないってところに疑問を感じただけだ」

「つまり、こっそり潜ってきてこっそり最下層までたどり着いて、いきなり消滅させてクリアできた! っていきなり発表されるかもしれないってことかい? 」

「その可能性はあるなーってことだな。よほど人口密集地のダンジョンでも、ダンジョン情報専門で追いかけてる人ってのはそう多い人数じゃないからな。それに何層まで潜ったかを一々報告するかどうかは探索者によって変わってくる。エレベーターにしてもそうだし、俺が最初考えてたみたいに自分だけでこっそり使うつもりで場所を指定したのもそういうつもりだった……すぐ方針転換したけどな」


 俺と同じようにこっそり使おうと考えてるなら、ギルドに報告されていないエレベーターってのもいくつか存在する可能性は高いと考えておいていいな。ならそろそろ浅い階層までしか作られていないダンジョンが踏破されていても不思議はない。驚く準備だけはしておくか。何処のどのダンジョンかも解らないが、そろそろ踏破されるダンジョンは出てくる。そういうことにしておこう。


「お代わりいいかい? 」

「カレーしかないが……少し待ってくれればパックライスも温めるが」

「じゃあ少し待つことにするよ」


 ミルコ用のお代わりを温め、器に盛りなおすと食事を再開する。


「ふむ……僕で良ければその辺の情報、集めておこうか? 」

「うーん、情報はあるに越した事は無いけど、集めてもらったところで何かが出来る、というわけじゃないんだよね。だから大人しく他のダンジョンの情報は表向きに出てきた情報をそのまま信用する事にしようかなと。わざわざ集めてもらっても活かしようがないのが実情だ」

「なるほど、じゃあやめておくよ。使いようがない情報を集めても仕方ないし、変な情報は仕入れないほうがスムーズに物事は進むだろうからね」


 少し考える。ダンジョンが先にクリアされたからと言って別に俺に不利益がある訳じゃないんだ。他人の利益が自分の不利益になる可能性は今のところ極めて低い。うちはうち、よそはよそ。よその探索者にはよそなりの頑張りをしてくれればそれでいい。細かいことは考えずに居よう。


「そうだな……そうだ。俺は別に誰よりも早くダンジョンをクリアしたい男の子という訳ではないんだ。名誉もいらん、今ので充分だ。後はミルコがどこまでダンジョンを作ってどこまで楽しませてくれるか、それに期待して待つことにするよ」

「これは責任重大だね。じゃあ今日も頑張ってダンジョン作りに勤しむとしようかな。お菓子も一杯貰ったし頑張れそうだよ」


 毎回結構な量を渡してはいるが、ミルコの体型に変化は見られない。やはりダンジョンマスターは太らないのか、それとも自分の好きな形を維持できる不定形生物なのか。食べ過ぎで文句を言われた時に食事制限を始めればそれで十分だろう。


 今度はコス〇コのミックスナッツの大瓶でも持ってきてやるか。あれは大きさといい彩りといい、男の子の心にグッと刺さるおやつだからな。きっと気に入るだろう。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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8000万PVおめでとうございます! 日々の楽しみですわー! ミルコとのお供え物や食事しながらの話も結構馬鹿にならないくらい色々と情報仕入れられてますよねー 付き合いが長くなったからってのもあるでし…
おめでとうございます(*´∀`*)
ミルコは果たして性別あるんかな?とか思いつつこうミルコと二人でわいわいしてるのなんか着やすくて良い関係でいいですよねぇ和む 安村は好奇心でちょっと気になる程度で固執するほどではないからまぁいっかって感…
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