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最近視界範囲内で読者の感想もっとくださいとか、書くの辞めた後で言えなかったけど応援してましたとかそういう話をちらほら聞くのですが。
私個人としては無言の感想がいいね! だと思ってますので感想が口に出して言えなかったり微妙な内容だけど何かしら言いたいけど言葉がまとまらないという際には下のほうにいいね! ボタンが付いてるのでそいつを押してやってください。
時間が来たので撤収し、七層へ戻る。なんだかんだでリポップがかなり早かったおかげで四キログラムほどのダーククロウの羽根を確保することが出来た。午前中だけで考えてもかなりの出来高だ。帰りは寄らなくても良いぐらいだな。
七層へ戻るとそのまま三十五層へ。今日の昼食は三十五層で取ろう。結衣さん達居るかな? 俺が来てあれなんで来たの? とか言われそうではある。まあちょっと覚悟はしておこう。
期待をしつつ三十五層のエレベーターを降りると、ソースの焼けた香りとわいわい騒ぐ声が聞こえてくる。
「やっぱり居たか」
「あれ、なんで来たの? 四十二層じゃないの? 」
鍋を振っている結衣さんが意外そうにこちらを向く。予想通りの反応で嬉しい。
「ちょっと思うところあって、午前中はずっと六層にいた。おかげでなかなか稼げたよ」
「六層に……あ、もしかしてずっと湧き続けるから羽根集めが捗ったとか? 」
「おおよそそんな感じ。リポップの瞬間とかどういうふうに動いてあの茂り具合が形成されていくとか、いろいろ見所があって面白かったよ」
話ながら椅子と机を取り出し、自分の昼食であるレモン風味の鶏肉炒めと千切りキャベツとお高いご飯を取り出す。今日は一人飯なので試しに作って持ってきたが、こうやって複数人で食べることになるならもうちょっと量を持ってきたり食材を増やしてしまった方がよかったかな。
「安村さんソースある? 濃い口」
「あるよ、はい」
保管庫からソースを取り出して渡す。受け取った結衣さんはそのまま焼きそばにかけ始めた。味が違ったりしないかな、大丈夫かな。
「ありがとう」
帰ってきたソースは結構な量減っていた。やはり体を動かす分濃いめの味付けらしい。
「で、三十五層に来たって事は三十七層のほうへ行くわけ? 」
「スノーオウル……ここより先に出てくるフクロウだけど、それのリポップが木の中で行われるのか、どこかから飛んできて木に飛び乗るのか気になってきたんでそれの調査かな。こんな機会でもないとなかなか見ないだろうし、のんびりやろうと思うよ」
話しつつ、向こうは向こうの、こっちはこっちの食事を楽しむ。今日の料理も中々成功だな。爽やかなレモンの香りがキャベツにも移って爽やかな昼食を演じてくれている。隣から漂うソースの香りが無かったら爽やかさはこの階層の雰囲気も相まってより美味しいものになった可能性はある。ソースの香りが漂ってというイメージならば、ここよりも四十二層のほうが海の家感がでてより面白い事になっていただろう。
「あ、なんかお高いご飯食べてる。最近自分で炊くようになったのよね? 」
「わかる? やっぱりツヤとか一粒の大きさとか味とか違うんだよね」
結衣さんが自分の分をよそいつつこっちのテーブルにやってきた。
「せっかく自由に使えるお金にめどがついたんで、まずは身の回りで金をかけてリターンが確実に来る、お手軽で効果的な話って言ったらまずは美味しいご飯だからな。パックライスも残ってはいるけどお高いコメとお高い卵、お高い食パンから始めた」
「堅実なのか貧乏性なのか解らないけど、ちゃんとお金を使おうという意思は感じるわ」
鶏肉一欠片頂戴とせがまれたので一つ焼きそばに乗せる。食べた感想は美味しいとのこと。この美味しさは俺じゃなくて企業努力の結果なので、褒められたのも俺じゃなくて企業のほうだろう。揉みこんで焼くだけのシーズニングは偉大である。
そのまま食事を終えて一休み。保温ポットからコーヒーを出してゆっくりと飲む。
「あ、そういえば。【生活魔法】出たんで覚えたよ」
「そういえば、で片付けてしまうあたり安村さんらしいけど、おめでとう。使い勝手はどんな感じ? 」
「中々面白いかな。まだ応用編にまではたどり着いていないけど、自分を綺麗にしたりスーツを綺麗にしたり、一般社会生活にも問題なく使えるようだからスーツの寿命がちょっと延びたかな」
「そういえばウォッシュだっけ? かけてみて。ちょうどいい感じに汗かいてきたから是非試してみてほしいかも」
結衣さんにウォッシュをせがまれる。タイミング的に休憩するにも良い感じだろうからかけてみる。すると、全身を軽く震わせながら結衣さんが綺麗になっていく。ついでに服もウォッシュすると、さっきの料理で跳ねたらしいシミも綺麗になっていく。
「なんか全身まさぐられたような感じがする。セクハラ」
「今更セクハラはないだろ。ついでに服に付いてたソース跳ねも綺麗にしといたぞ」
「それは便利ね。【生活魔法】ウチもほしいわね。何処から出たの? 」
「七層のノートには書置きしておいたけど、六層のダーククロウ」
「諦めたわ」
判断が早い。確かに、ここまで潜ってきてるのに六層まで戻る理由も無いだろう。
「小西ダンジョンだとオークからのドロップ記録はあったかな。属性魔法と生活魔法は何処でも落ちるみたいだから今のイベント時期を逃さず狩ってれば出るかもしれんぞ。俺達もこの辺の階層ではスキルオーブのドロップは……あぁ、三十八層のスノーオウルから【隠蔽】が出たな」
「【隠蔽】って具体的にどうなるの? 前に拾った時にはどうなるか解らなかったんだよね? 」
「多村さんなら解ると思うけど、レーダーに引っかかりにくくなる。後、モンスターの反応距離が半分ぐらいになったかな」
多村さんを呼んで【隠蔽】のON/OFFを確認してもらう。
「うん。確かに安村さんの反応が弱くなってるね。モンスターの反応が鈍くなるのはこっちから仕掛けるのに便利そうだけど……一人だけ短くなってもあんまり変わらないんじゃない? という感想かな」
「でも、反応が鈍くなるなら奇襲のやりがいがあるんじゃないかな。そっちに気が回らないうちに後ろから回って……みたいな。こっちは二人とも覚えちゃったからあんまり応用が思いつかないんだよね」
「芽生ちゃん、ますます高い女になっていくわね。スキルだけでいくらかかってるのかしら」
「【索敵】も値上がりしたからなあ……三億ぐらい? でも三億なら数回潜ったらそれで元が取れちゃうからな。やっぱりスキルオーブは価格以上の価値はまだあると思うよ」
「【生活魔法】でも同じかしら? ダンジョンの中で小綺麗にできるのはお金では体験できないことだけど、その為に五千万円出すのはちょっと厳しいんじゃないかしら」
「有ったらいいよねぐらいの部分だし、値段ほど活躍はしないぞ? と気づいたら値下がりしていくんじゃないかなあ」
適度に食後の会話を終えたところでみんな胃袋が落ち着く。さて、そろそろ本腰入れて稼ぎに行くか。とりあえず全員にウォッシュを二回ずつかけて、服と体の汚れを落としていく。セクハラを訴えてきたのは多村さんだけだった。
「じゃ、俺スノーオウル観察に行ってくるから。今日は日帰りでーす」
「私たちも日帰りでーす。じゃあまたね」
お互い逆方向へいく。結衣さん達は三十四層、俺は三十七層を目指して歩いていく。三十七層では二時間ほど滞在する予定だ。
三十六層を何事もなく通り抜けたが途中でワイバーンのリポップに遭遇するチャンスを得た。ワイバーンは空中でリポップするらしい事が確認できた。どうやらあいつは常に浮いていて、攻撃してくるときだけ地上に下りてくるらしい。
ずっと飛んでて疲れないのかな。なにかしら反重力的な作用が働いているか、飛行のスキルを持っているかどちらかだろう。おそらく後者だな、そのほうがダンジョンの理屈に適う。そうなると、空飛ぶスキルがあると仮定した場合はワイバーンが落とす可能性は非常に高い。が、同時にレアスキルになりそうな気配もある。
空を飛びたいという人類の夢はダンジョンの発生によって叶うことになる。ただ同時に、ダンジョン外で飛行スキルを使い続けて眩暈がして墜落していたら目も当てられない。それにダンジョンには見えない天井がある。自由に、と言っても限度はあるんだろうな。
三十七層に到着し、手ごろな近めの木を連続で攻撃し、スノーオウルを呼びつけ最大出力の雷撃で焼いて処理する。しばらくスノーベアの相手をしながら木を気にしてしばらく遊んでいると、木に直接モンスターマーカーが出た。どうやらスノーオウルは飛んでくるわけじゃなく、木に直接リポップするタイプらしい。今思い起こせば、三十八層でスノーオウルの羽根を集めにうろついている間にその湧いた瞬間を目撃していても不思議はないんだ、それが無かったという事は木に直接リポップすると決定づけていても良かったな。
まあ、これで確定したと言える。満足したのでスノーオウルの羽根を補充しつつ二時間きっちり仕事して三十六層に戻り、またワイバーンのリポップを目撃しながら戻る。
三十五層にたどり着くと、結衣さん達は居なかった。こっちのほうが早く帰ってきてしまったかな? まあ、同時に帰る約束をしたわけではないし、もしかしたら先に戻っているかもしれない。ここは待ったりせずに戻ってしまおう。もし向こうが後から来たとしても、リヤカーが無いから先に戻った、と伝えられることになるはずだ。
エレベーターの中で荷物整理を終えて一層に戻ると、やはりスライムもいつもより多い。スライムを焼きながら進むが、スライムが邪魔をしてなかなか進めない。いつもより時間をかけつつ出入口に行き退ダン手続き。
「大丈夫でしたか? 一昨日からモンスターが増えてて大変なことになってると思いますが」
「とりあえず自分が居た場所は大丈夫でしたよ。今日はそんなに深く潜ってないので」
査定カウンターに戻ると大賑わいだった。みんないつもより儲けが多くてホクホクらしい。イベントとしては成功しているように思える。早めに帰ってきて正解だったな。ギリギリだったらギルドに負荷をかけていたかもしれん。
「みんながホクホクで帰ってくる割りに今日は少なめですねー」
「午前中はのんびりしてたせいですかね。まあ予定通りの金額だとは思いますよ」
サクサクッと査定が終わっていつもより早い査定時間だった。どうやら、また二人ほど補充要員が出来たらしい。パートでも雇ったのかな。本日の査定金額、二千百三十六万六千円。いつもより少なめなのは午前中ダーククロウの羽根を集めるのに集中していたからなので、こんなもんである。少なめだが満足はしている。
休憩所で温まっていると結衣さん達も帰ってきた。リヤカーを引っ張ってきているので十分な戦果はあったのだろう。こちらに気が付くと手を振っているので振り返しておく。
査定、振り込みを終えた結衣さんがこちらに向かってくる。
「今日は大儲けだったわ」
「それは何より。しばらく続くだろうから儲けどころだな」
「その分先に進みづらくなるのはちょっと考えもののような気がするのよね」
「無理せず探索するほうが大事だからな。怪我する結衣さんを見たくはないし」
ちなみにリヤカーだが、地上配備用以外に俺専用含めて六台のリヤカーが新たに設置され、以前言っていた探索者証とリヤカーの使用権限をセットにして、ちゃんと持ち帰ってきたかを確認して返却する、という流れはちゃんとできているらしい。小西ダンジョンは治安も良くていい事だ。地上部分で出入口前後で利用するリヤカーの数も増えている。
今のところ好評のようで、朝一で借りに来ないと使用権が使えないほどには繁盛しているらしい。これは今年も小西ダンジョンは黒字を確実視しているな。その内何割が俺の稼ぎなのかはさておき、ちゃんと稼げているのは良い事だ。
「どうする? ついでに送っていこうか? 」
結衣さんから送迎の申し出があった。
「ちょっと寄り道あるけどいい? 主に食料品と昼間使った濃い口ソースの補充だけど」
「私も同じ予定あるからついでに行きましょう」
車があるとこういう時は便利だな、とは思う。ただ、ダンジョンへ行くなら車より電車とバスと決めてしまった方が経費計上が楽になる。家事案分……これはこの間教えてもらったのだが、それを計算しなくて済むし、書類も減るしレシートも減る。
「そういえば、見たいものは見れたの? スノーオウルのリポップが見たいって言ってたけど」
「見れたというか、感じ取れたというか。実際にリポップした瞬間は見えなかったけど湧き方は解った、ってところかな」
「なるほど、木に直接湧くのね。そこはダーククロウとは違うの? 」
「ダーククロウはまず空中に湧いてそれから木に止まる事が解った。それが分かっただけでも儲けものかな」
ダンジョンモンスターの生態、みたいな話でネタを一本書けそうだが、三十一層以降のデータを持ち出していいのかどうかは今のところ解らないから、読者投稿としてネタを提供するのは後日になりそうだな。
そのまま買い物をして結衣さんに家まで送ってもらった。そして、そのまま結衣さんも泊まっていった。明日は我が家から通勤するそうだ。本人がそれで良いと思ってるならそれでいいか。
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