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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十四章:ダンジョンよもやま話
825/1207

825:イベント 1/3

「そういえばダンジョン外のことなんだろうけど、限定イベントって何のことか解るかい? 」


 ミルコを餌付けしているときにふとそんなことを聞かれた。


「限定イベント……心当たりは色々あるが、もう少し前後の内容を付加してくれるとありがたいんだが」


 限定イベントと言われても心当たりが多すぎる。新装開店祝いだって限定イベントと言えばその範疇に入ってしまう。おそらくゲームか何かの話なんだろうが……そこで齟齬が発生するとろくなことにならないからな。ちゃんと話を聞こう。


 とりあえず話題の共有をするのに時間がかかるだろうと思ったため、椅子と机を出して和やか会話ムードになった。これは今日のカニうま祭りは抑え気味だな。いつもより少ない収入を覚悟しておこう。


「これは他の探索者を見てる時に聞こえてきたんだけどね。今日の稼ぎが上手く入ったら限定イベントガチャで推しを引くとかなんとか……内容がさっぱりわからなくてさ。安村なら意味が解るかな? と思って聞いてみたんだけど」


 なるほど。ゲームの限定イベントの話か。それなら雑感でしかないが教えることはできるぞ。


「まず、このスマホにはいろんな機能が付いている。ダンジョンの中だと電波が届かなくてほとんどの操作は出来ないんだけど……その中にゲームというか、どう伝えたらいいかな。例えばだが、自分が物語の主人公としてダンジョンに入るとする。その物語の中では色んな仲間やアイテムをそろえるためにガチャ……つまりスキルオーブをドロップするような確率でしか手に入らない仲間やアイテムがあるんだ。それを手に入れるために金を払って手に入れるんだが」

「なるほど……確かに仲間と契約するために金が一定数必要なのは当然だね。金のやり取りが無い仲間なんてよほど昔からの付き合いか、何かの同じ大きな目標や試練があってその為に共闘ぐらいしかないよね。」


 既にかなりずれてきているが、大筋では合っているといえる。しかし、このまま話題がずれたままで良いのだろうか。


「うーん、意味合いで言うと違うんだがそんな感じでいいや。それで、季節の時節によって攻略できるダンジョンと攻略できないダンジョンがあると思ってくれ」

「ふむ……冬の間は雪深すぎて入れないとかそういう意味かな? 」

「大分近づいてきたな。で、ダンジョンを倒す仲間を募集する際にガチャという抽選システムがある。金を払って抽選することで仲間をランダムに決めることが出来るんだ」

「と言うことは選ばれないかわいそうな仲間もいるってことかい? それはなんだかかわいそうだ。でもそうだね、挑むダンジョンがこっちの世界みたいな規格化されたダンジョンじゃなくて、ダンジョンごとに難易度や出てくるモンスターが違うようなダンジョンならそういった厳選も必要だろうね」

「うんうん、そんな感じだ。で、このスマホの中に入っている遊びの中では実際のお金を使ってそのガチャを回す……つまり抽選回数を増やすことが出来る。抽選回数が多ければ多いほど強い仲間が手に入るって形になる」


 話が大分通じてきた。この調子ならうまく説明できそうだな。


「ところで、選ばれなかった仲間はその間何をしてるんだい? それぞれの仕事を請け負ったりするのかな? 」

「えーと、それぞれ何かやってるんじゃないかな。そこに視点が当たらないから何をしてるかまではよく解らないんだ」

「それも不思議な話だね。力になれないならその間に実力をつけるために訓練したり修行したり色々できるのに」


 やばいぞ、話が脱線気味だ。何とか本筋に戻していかないと。


「まぁ、選ばれなかった奴は次回以降にまた機会を設けるとしてだ。その限定ダンジョンを攻略するのが得意なキャラやそれに応じたアイテムなんかをさっき言ったガチャシステムで手に入れることが出来るという流れなんだが」

「金持ちの道楽みたいなダンジョン攻略だね。少ない手数でどこまで攻略するかを吟味するのもダンジョン攻略の醍醐味だとは思うんだけどね」


 こいつ……内容を知らないくせに痛い所を突きやがったな。


「……というか、そっちの世界には難易度が違うダンジョンが複数あるんだな」

「そうなんだよ。こっちの世界のダンジョンとはまた違うんだ。やってることは大きくは違わないんだけどね」


 これは真中長官が聞いて喜ぶ系統の話だな。メモ帳にさらさらっと大筋を書いておいて後でまとめて真中長官に報告しよう、きっと仕事の疲れを癒す一助になるに違いない。


「あっちのダンジョンは誰が作ってるか解らないんだけど、消滅と出現を繰り返して、そのたびに中身や出てくるモンスターの種類、落とすアイテムなんかがダンジョンごとに違うんだ。そこまで再現する事が出来なかったのでこっちで作ったダンジョンは作りやすいように規格化してあるが……そういうダンジョンに興味はあるのかい? 」

「有るかないかと言われれば有るな。ゴブリンの亜種しか出てこないダンジョンとか、物理攻撃が通じにくいモンスターばかり出てくるダンジョンとかあるってことか」

「まぁおおむねそういう事だね。スライムしか出てこないダンジョンなんてのもあるよ。安村は好きだろう? スライム」


 ミルコにまで俺がスライム大好きおじさんだと思われている。そろそろそういうイメージは卒業したい年ごろなんだが、まだそういうわけにもいかないらしい。イメージの刷新を図っていくべきだな。


「そういえば、安村の頭に手をかざして直接イメージを流し込んでもらった方が早かったかな。そうしてもらえると助かるんだけどいいかい? 」

「ここまでのやりとり、全部無駄になったな」


 まあ、向こうの世界のダンジョン事情を知れたという事でヨシにしておくか。ダンジョンマスターから向こうの世界とこっちの世界についてお互いに話し合ってコミュニケーションを取ることは俺の仕事のようなものだ。


 ミルコに手を頭に当ててもらう。ゲーム、限定イベント、ガチャ……俺がやったことがあるゲームを基準にしてしまう事になるが、おおよその話はこれで伝わっただろうと思う。


「なるほど……科学とやらが発達した世界は凄いね。僕らの世界みたいなもののシミュレーションまでその小さな機械で行ってしまえるってことか。科学と言えば、前に真中だったかな? 君たちの上司に渡した発電とやらの情報はうまく活用できたのかな」

「それなら絶賛稼働中だ。おかげで……二百世帯分ぐらいかな。試験施設でそのぐらいの電力を発生させることには成功しているよ。今後はもっと大きい設備を作っていくことになる。流石に時間はかかるが、魔結晶の使い道が増えて良いことづくめだよ」

「それは何よりだね。僕らの世界で同じことをするには、【雷魔法】のスキルを使えるものが常に魔法を使い続けていないと維持できないシステムで魔法使いはコストが高い。高級なシステムとして扱われてはいたんだが、その分をそちらの学問で解決できるならそれに越した事は無いね。これが異文化交流って奴なのかな」


 異文化交流というより異次元交流というほうが本来正しいんだろうが、まあ似たようなものか。


「うん……うん……なるほど、限定イベントか。面白いね。そうやって射幸心をあおって更に金をかき集めるための作成者の狙い、ということだね」

「ダンジョンでもイベントみたいなものはやらないのか? ドロップ率があがるとか」


 試しに聞いてみる。聞いて損は無いだろうし得になったら、ドウラクの身が確定ドロップ! なんてことになって今日はカニうま祭りは最高潮に盛り上がるだろう。


「さすがにそれは出来ないかなー。出来るのはモンスターの出現率ぐらいだよ。そうだね、出現モンスターを増やしてみる、というのも面白そうではあるな。最近探索者も結構な数が常に入り込んでいるし、視線を切らなくてもモンスターが自然発生する形にして結果的にモンスターの出現数を増やす、このあたりかな。早速やってみよう。思い立ったがなんとやら、という言葉がそっちにはあるようだしね」


 早速何やら虚空に向かって何かを入力しているミルコの姿。これはダンジョンについて何かしらの調整をしているときのポーズだ。コーヒーを飲みながらその姿をじっと見守ることにした。さて、どんなネタを仕込んでくれるのやら。俺には関わりが無さそうなので見守ることにするか。


 ◇◆◇◆◇◆◇


---【通常】小西ダンジョンpart11【進行】---


328:名もなき探索者

なんか今日モンスター多くなかったか?


329:名もなき探索者

目の前でモンスターがリポップする現象は時々目撃されるとは聞いていたが

まさか俺の目の前で起きるとは思わなかった。何が起こったんだろう


330:名もなき探索者

今戻った。トレントわっさわさで今日の収入もウハウハだったわ

いつもよりモンスターが多かったが、ダンジョンあふれの予兆かなんかか?


331:名もなき探索者

一層のスライムがやたら増えてたが、また誰かいたずらしたのか?

第二次スライム大増殖でも起きたのか


332:名もなき探索者

どうやら全階層で同じ現象が起きてるらしかった

査定終わって休憩場所でちょっと会話してたんだが、ダンジョンで何かあったのは間違いないらしい


333:名もなき探索者

小西ダンジョンに一体何が起きているんだ


334:名もなき探索者

二十九層近辺で時々見れるスライムの集団の行軍、普段の倍ぐらいいたぞ

ついつい潮干狩りじゃないけど全部倒してしまった

おかげでロイヤルゼリーでちょっとした小遣い稼ぎになった


335:名もなき探索者

人が増えた分モンスターも増えた……にしては時期が微妙だよな

それに、視界内でリポップしたという報告が多いのが気になる

時期限定イベントかなんかか?


336:名もなき探索者

そういえばもうすぐバレンタインだったな

ダンジョンからのプレゼントチョコの代わりなんだろうか


337:名もなき探索者

何にせよみんな儲けて帰れたのは間違いない

下手にモンスターが増えたおかげで負傷したという報告も出てないようだし


338:名もなき探索者

後ろでダンジョンスパイダーが湧いて簀巻きにされるところだったぞ

被害らしい被害は出てないが、他のダンジョンではどうなんだろう?


339:名もなき探索者

>>338

ちょっと調べてみるわ


340:名もなき探索者

モンスターが視界内でも湧く

スライムでは確認されてたけど他の階層でもその現象が起きるとは思わなかったな


341:名もなき探索者

二十層が偉い騒ぎになってたぞ

後ろにも湧く、前にも湧く、で【索敵】争奪戦が激化してた

一か月前に【索敵】出た情報があるから例の法則が確かなら今は出ない時期のはずなんだけどな


342:名もなき探索者

ここを全員が見てるわけじゃないしな

小西ダンジョンとは言えノートに書かれてなければ情報を仕入れてない探索者も居るんだろうよ


343:名もなき探索者

うーん、原因がさっぱり思いつかない

ダンジョンあふれについて調べてみたが、そもそもダンジョンあふれを起こしたダンジョンの前例が無い

おまけに今回みたいな突然モンスターがリポップし続けるという事態もない

本当に何だろうな


344:名もなき探索者

儲かった、怪我もほぼ無かった、その二点で喜ぶところじゃないだろうか


345:名もなき探索者

明日も同じ現象起きるのかな。もしそうなら稼ぎ時かもしれん


346:名もなき探索者

朝一死ぬほど湧いてたらどうしよう? さすがに一パーティーで対応したりできる量だとは考えられないんだが


347:名もなき探索者

偶には複数パーティー合同でわちゃわちゃやるのも楽しいかもな

もしまた爆湧きしてたらその場でレイド募ってみんなで儲ける方向性で行こうかな


348:名もなき探索者

くそう……うちのパーティー今日休みだった

明日もやってくれないかなこのボーナスタイム


349:名もなき探索者

本当にボーナスならスキルオーブもドロップしてくれると嬉しいんだが

数が出る分ガチャも回しやすいしねらい目ではあるのか?


350:名もなき探索者

まだスキルオーブが出てない階層調べないとな


351:名もなき探索者

そういえば七層のノートに六層で【生活魔法】出ましたって書いてあったな。

六層で出たって事はおじさんかな


352:名もなき探索者

それについては目撃情報が出てる

ウキウキしながら何やら書き込みをしてたからおじさんじゃないかと思われてる


353:名もなき探索者

おじさんそういうところもちゃんと見られてるって考えてるのかな

隠してるようで隠しきれてないのが何ともおじさんらしいが


354:339

ざっくり調べてきたが、他のダンジョンで似たようなケースは報告されてないな

小西ダンジョン固有のバグ? 仕様? 状態異常? らしい

他のダンジョンからはモンスターが余ってて羨ましいと言われたよ

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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[良い点] ミルコさん素直でかわいい スレのみんなも楽しそうで何より
[一言] 久々おじさん・ミルコのやらかしww スライム行列ならどれだけ増えても喜ばれそう
[一言] ミルコは好奇心旺盛よねー まさかダンジョンにイベントが試験的に導入されるとは まあ、告知も何もあったもんじゃない完全なゲリラ開催ですがw
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