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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十四章:ダンジョンよもやま話
821/1206

821:安村は思う。故に安村あり

まだまだ更新頑張るヨ

 色々調べ物をしていたら時間が押して昼食の時間になってしまった。布団の山本には午後から行こう。あらかじめ作ってあったタンドリーチキンを食べる。最近は保管庫に何種類かの米を放り込んでおき、気が向いたときに炊飯器を使って米を炊くようになった。まとめて調理するならせめて米ぐらい炊いても手間にはならないだろう、という判断と、最近は調理に少し時間がかかるようになる料理を作るようになったためである。


 パン食である朝食はともかく、昼食や夕食は米を炊いた後保温容器に放り込んでおけば保管庫内で温かいまま量もそれなりに調節して食えるという事にも今更気が付いた。ダンジョン食とはいえ、やはりうまいコメを食うとやる気もそれなりに上がるもので、当社比で三%ぐらいの探索効率の上昇が見込まれる。


 一日三千万円稼ぐとしても九十万円ほど変わってくるのだ。当然ながら九十万円もするコメはない。一食分で千円も行くわけではないし、そんな安い金額でやる気が変わるのなら色々とそういう方向性にも目を向けてみるのも良いなと思った次第。芽生さんもパックライスに比べたら明らかに美味しいと太鼓判を押され、芽生さんのやる気も上がって更に儲けが増えて自分たちも強くなるという好循環を生み出している。


 この際だから朝食のパンもお高い奴にしてしまうか。どうせ数日で食べきるんだしと、一斤ではなく一本単位で食パンを買い求め、好きな厚みに切ってから保管庫に保存しておけばそれなりに長い時間食べ続けることが出来る。今後の朝食ライフを豊かにしていくためにもそのぐらいのご褒美を上げ続けても個人的には問題ないと考え始めている。金を使う手段を見つけ始めた。


 他に金を使う所と言えば卵も高いものに出来る。時々自分の味覚をチェックするために味噌汁も作るようになった。これは飲み物代わりに保温スープマグに入れて温まることもできるので、ちょっと余分目にいくつか入れ物を買い足した。これは本数があっても困るものではないので使いたいものが出来たところで順番に使っていくことにしている。


 その分保管庫の中身が増える事にはなるが、長持ちをしない食品についてはその日の夕飯に回したり次の日の朝食に一品足すなどをして順調に消化できているため、料理のほうも手間取らずに順調に毎日作り続けている。


 偶にサボりたくなる時もあるのでそういう時はコンビニ飯で済ませるようにしている。コンビニ飯にもそれらしく良い所もあり、明らかに手間のかかる料理……数時間煮込み続けたシチューや普段使わなかったりいつも行くスーパーに無い食材で作られる弁当や外国料理についてはやはりコンビニの大量生産による価格の安さに対抗する事は出来ず、費用対効果を考えてもそちらに軍配が上がることは多々ある。


 そういうエスニック料理に類するものや自分で作るにはちょっと手間が多すぎる料理……たとえばビリヤニやミーゴレンなんかがこれに該当する。これらを自分で一から作るコストを考えるとコンビニで手軽に調達できるメリットは馬鹿にできない。いくらダンジョンに潜ってない時間とはいえ、一日の内で仕事に割く以外の時間は決まっている。美味しく食べられてきちんと栄養バランスが取れるなら最悪毎食コンビニでも良いが、腕が鈍るのでほどほどにしておく。


 今日の夕食は時間がたっぷりあるのでしっかり煮込んだカレーでも作るか。一日家に居る予定だし、またドロップ品の物流状態や”ダンジョン食材 格安 食べ放題” 等の項目で検索して遊ぶ時間を作ることにしよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 さすがに格安食べ放題の店はそう多くはなかったが、ウルフ肉やボア肉をふんだんに使った料理というものはあるようで、いくつかレシピも公開されており動画配信者がウルフ肉のパックを開ける所から始まる料理動画などで再生数を稼いでいた。これは料理に応用できるなと色々動画を見ている間に少しカレーが焦げてしまっていた。まだ食える範囲の焦げで良かった、今後は料理しながら動画を見るときは料理の手元のスマホで見る程度にしておかないとな。


 完全に焦げてしまった所をはがし、勿体ないが捨て、まだ無事な所を確認する……よし、ここらは食える。残り多少焦げているがチーズを入れて焦がしチーズと思って食えばいけるはずだ。


 火を止めた後しっかりかき混ぜて蓋をしたまま保管庫で温めたままにしておく。常温放置は細菌増殖の原因になるからな。保管庫に入れておけば保温の意味でも増殖を防ぐ意味でも効果がある。はず。


 夕食の準備ができたところで布団の山本での仕事を終わらせることにした。いつも通りダーククロウの羽根十キログラムとスノーオウルの羽根二キログラムを準備しておく。スマホから連絡して車で三十分。今日も寒い中表を見つつこちらの到着を待ってくれていたらしい山本店長がいつもの笑顔で応対してくれる。


「お疲れ様です。どうですか御商売のほうは」

「おかげさまで儲けさせていただいております。いつも通りという事でよろしいでしょうか」

「はい、お願いします。それと、念のためにスノーオウルの羽根も用意しておきましたがそちらはどうしますか? 」

「そうですね……その辺も含めて少しお話合いの機会が作れればと思いますが」


 お、ということはスノーオウルの羽根についての調査が少し進んだ、という解釈で良いのかな。


「じゃあ、スノーオウルは相談次第という事でひとまずダーククロウの羽根のほうをお願いします」


 早速車の後部座席から運ばれていくダーククロウの羽根たち。新しい職場でも元気でやるんだぞ。


「まず、いつものダーククロウの分です。最近は新しく安村様みたいに自分から売り込んでくる探索者の方も居まして、そのおかげもあるのですが今のところお客様に素材不足を理由に多少のお時間を頂いてから作る、という状況が解消されております」

「それは良い事ですね。品質のほうはしっかりとしたものが納品されていますか? 」


 品質が良いものをそろえられるかが大事なはずだ。もし品質の悪いものばかり納品されているならペースを上げて納品する事も考えなくてはならない。


「どうやら安村様が良い品質のものを納品してくださっているという話が広まっているらしく、それに比べて品質はどうか、という事を気にする方は居ましたね。その方は安村様と比べると……いえ、あまり他者と比較してどうこういうのはあまりの行儀のいい行為ではありませんね。ただ、こちらが求めているレベルのものを持ってきてくれてはいますので正直助かっています。ただ、お値段のほうはその分ちょっと、と言ったところでしょうか」


 俺に比べてそこそこ安く買いたたいている、と解釈して良いのだろう。流石に商売人であることを確認させられる。


「そういえば、そろそろ価格改定の時期ですね」


 今回もこちらから切り出す。ただ、今回は値上げを頼むつもりはない。


「もう半年ですか。早いものですね。今回の動向はどのように見据えておられますか? 」


 山本さんもそう言われれば、という形で値上がり値下がりの状況を聞かれる。


「そうですね、こちらで扱う商品についてはダーククロウの羽根は値上がり、スノーオウルの羽根は値下がり傾向になるんじゃないかと思っています。特にスノーオウルは効力と入手希少性を考えても高すぎますからね」

「なるほど。では、価格のほうが確定してからスノーオウルの羽根のほうを取引に、という形でも構いませんか? 今買うよりもお安く取引できると思いますから」


 真正面から安く買わせてくれ、と言われるのは商売人として正しい姿勢だ。普通は取引先に向かって後で買い取る方が安くなりそうだからそれまで保留な、なんてことを言うことは信頼を損なう可能性がかなり高い一言だ。それでもそう言ってくるということは、それを理由に取引を切るような事態には無いだろう、とこちらをある種信頼してくれているということだ。


「解りました。金にならなくてちょっと残念ですが今回はスノーオウルのほうは無しという事で行きましょう」

「そのあたりは価格改定後に存分に取引させていただこうと思いますので、それまで少し待ち、という事でよろしくお願いします。それとスノーオウルの羽根の効能についてですが、ざっくりとした結果みたいなものが出ましたのでそれをお伝えしておこうかと思います」


 お、人体実験の研究結果が出たらしい。どんな研究の結果どんな成果が出たのか。スノーオウルの羽根の効果で人体に対してどのような効能があるのか。実はこっそり気になっていたんだよな。


「ざっくりと言ってしまうと、スノーオウルの羽根の効果は睡眠欲においてのみ作用する、という形のようです。多用しすぎると睡眠欲だけを取り去るため、体に無理をさせるということが解ってきています。睡眠中の消化器の様子や体の心拍や血中の成分などを分析してみましたが、睡眠前後での大きな変化は見られませんでした」

「と、いうことは悪いものは悪いままだった、ということですか」

「当社の店員で言えば、高血圧がマシになるとか中性脂肪値が低下するとか、そういう変化は見られなかったという事らしいです。後、寝てる間の脳波なども調べたらしいのですが、脳の動きに睡眠に対しての変化は極めて通常通りだったという結果を受けています。後、睡眠障害を患っている方にも被験者になってもらったらしいのですが、体感では睡眠不足の解消はされたらしいのですが、実際に睡眠不足からくる体調の変化にまでは影響がなく、そっちのほうはダーククロウの羽根のほうが効果があったらしいです」


 睡眠不足解消は睡眠時間が足りないだけではなく睡眠の長さと質も大事だということだろうか。ただ、体感で睡眠欲が失われるのは確かだから、本気で倒れるまで働く仕事や睡眠時間を削ってでも納期に間に合わせなければならない事態の場合、睡眠欲を解消するために使用するという当初の売り出し目的では何とか叶うという所か。


「そこでなのですが、ダーククロウの羽根とスノーオウルの羽根を混ぜ込んで比率を変えた枕をいくつか試作しまして、睡眠不足と睡眠欲に対する満足感を同時に解消できる枕、というものを作ってみました。こちらがサンプルになります。一度使ってみて感想を頂きたいところですが」


 そう言って枕を差し出してきた。おそらくだが、スノーオウルの羽根の成分を混ぜ込むことにより、朝がより快適に起きれる、もしくは睡眠時間が多少短くなるがいつも通り起きられる、そういう類の代物になるんだろう。


「解りました、実験体として協力させてもらいましょう。早速今夜から試してみます。体感した内容はレインのほうに送りますので、長期間の使用についての異常や不満点なんかも同じくそちらで、という形でよろしいですか」

「助かります。使うのが難しい、生活リズムに合わない、なんかの不満点が多少は出るとは思いますが、その場合は無理にモニターとして使っていただく必要はございませんので、その場合もレインのほうで伝えていただけると幸いです。ちなみにですが、スノーオウルの羽根が二割、ダーククロウの羽根が八割の混合率になっております。ご参考に」


 ということはこのサンプル枕一つで五万円ぐらい原価がかかっているという計算になるな。大事に使わせてもらおう。


「では、本日はこの辺で失礼します。今夜から早速効果のほどを試してみます」

「よろしくお願いします。では、お帰りもご安全に」


 そう言って送り出されてきた。今回は百万円の取引が無かったが、次回は……最悪八十万円かな。二割ダウンを見込んでおこう。それでも次回渡す分を合計すれば百万には手が届く。毎月三回ずつ納品するとして、布団だけの利益で年間三千万か。今年も順調に稼いでいけそうだな。


 家に帰ってから食べた焦げたカレーはやはり焦げたカレーだった。チーズを入れたら香ばしさでごまかせると思ったがそういう訳でもなかったらしい。焦がした部分は剥して抜き取ったはずだが、匂いまでごまかすことは出来なかった。


 やっぱり料理中の動画視聴はしない。そう固く決めた日であった。美味しく料理が食べられることのほうが大事であると再認識した。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
カレーを焦がした時は空いてる鍋に無事な部分を移してから焦げた部分は破棄すると良いよ 空き鍋に移す時は焦げた部分が混ざらないようにやさしく移すのがコツ 焦げの欠片が混ざるとそれはもう焦げたカレーでしかな…
[一言] 本当もう充分稼いだし階層更新を考えなかったら布団取引だけで老後までいけそう(;´∀`) まぁ探索者人口が増えれば納品も増えるから年々年収は下がるけど主人公からしたら楽な商売やなぁ〜
[一言] スノーオウルの羽根は隠し味くらいの用法用量じゃないと体に良くない結果がその内判明しかねませんねえ
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