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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二章:出来ればおじさんは目立ちたくない

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82:確定



 ステータスブーストを使い、熊手すら使わずに素手であっという間に百匹ほど殲滅させてもらったが、これまでに処理したスライム数はおよそ二百四十匹。


 ドロップはスライムゼリーが百十二個、魔結晶も五十二個ほど出た。消費したカロリーバーが百二十本で一本百円なのでざっと一万二千円。ドロップの売却額が七千七百円ほどなので赤字である。ダンジョン潜って装備整えた以来の赤字か。まぁ今日は以降の黒字の為にきたんだ。許容範囲の出費だろう。


 スライムを掃除し終わったのを確認すると、一層の反対側へ向かう。ここと同じ袋小路の小部屋があり、わざわざスライムを駆除することに執着するものでもない限りたどり着くことはない、というぐらいマニアックな場所だ。俺のお気に入りの場所でもある。


 この部屋に一人入り、見渡す限りのスライム達と「お話」をするのが一層での主な日課である。


 保管庫の中には、まだカロリーバーに若干の余裕がある。各味十本ずつほど自分が食べるように残しておいたものだ。これを五本ずつスライムに食べさせて、消化が終わってしあわせーな状態でヘブンへ行ってもらう。それでドロップに変化があるかを調べる。


 モルモットを実験動物にして研究を日々進めている医学薬学の人たちはどんな心境でこれに似たような作業を繰り返しているんだろうか。やはり申し訳ない気持ちや罪悪感を感じているんだろうか。


 少なくとも俺は彼らの存在の有り難さを支払いのたびにかみしめている。君らのおかげで俺は飯を食えているんだという気持ちはある。心配せずに遠慮なく黒い粒子になって消え去ってくれるといい。


 さぁ、始めるか。俺の目の前にウカツにも跳ねてくる一匹のスライムが居る。


 俺はカロリーバーバニラ風味を取り出すと、スライムに食わせる。


 スライムは俺より先にカロリーバーを見つけたんだ。これは私のものだ!と言わんばかりに飛びつき、シュワシュワと体内で溶かし始める。見ているととても和む。スライムへの餌付けは癒し効果もあるのか、これもレポートに書き記しておこう。


 やがて、スライムはカロリーバーをすべて溶かし終わって、動きが止まる。その瞬間を俺は見逃さない。ステータスブーストをかけると熊手をスライムの体内に手を入れ、スライム自身すら気づかぬ間に核を抜き去り、そのまま踏みしめ破壊する。

 スライムはあっという間に黒い粒子となって消え去る。後には何も残らなかった。


 何も残らなかった、ということはトリガーはやはり食事中ということになる。これが食事後まで残留し続けるならば、確定ドロップが出るはずだからだ。


 次の味、ブルーベリー風味で試してみよう。次に目を付けたスライムにブルーベリー味を上げてみる。スライムがカロリーバーを溶かし始める。溶かしきったら動きが止まる。その瞬間熊手で核を引き抜き、核を踏みつぶす。ドロップは無かった。


 次の味、青りんご風味で試してみよう。次に目を付けたスライムに青りんご風味を上げてみる。スライムが溶かし始める。溶かしきったら動きが止まる。その瞬間熊手で核を引き抜き、核を踏みつぶす。ドロップはスライムゼリーだった。


 青りんご風味はスライムゼリーではなく魔結晶が確定だったが、スライムゼリーが出た。つまりこれはランダム成分のドロップテーブルから引き寄せた、ということかな。


 他の三種類の味でも試してみたが、結果は同様にドロップ無しか、スライムゼリーか魔結晶がランダムで出る、という結果だった。


 これは「食事中」ということがトリガーで間違いないな。「カロリーバーバニラ風味」を「食事中」に倒すことでドロップが確定する。


 食事中という事は、カロリーバーを黒い粒子に変換している最中に〆ることで確率変動が止まって固定される、と考えていいのだろうか。


 他に検証する事と言えば、どこのメーカーのものでも同様の効果が表れるかどうかだ。だが、俺は何故かこのメーカー三勢食品の製造するカロリーバーじゃないといけないんじゃないか、という確信めいたものを持っていた。俺もここのカロリーバーが好きだからだ。カロリーバーの味の違いを理解できるなんて、スライムもなかなかの才能の持ち主だ。


 実際はもう少し違う理由で、単に最大手チェーンのOEMカロリーバーで同様の事を行った報告があったからだ。メーカーの違いによりモンスターに対する効果に差が出ている。何をもってして比較しているのかは解らないが、すくなくとも三勢食品製品ならばこの効果を発揮することが出来る。


 さて、手持ちのカロリーバーバニラ風味は五本ずつ。これを二分の一、四分の一、三分の一にそれぞれ分ける。残り二本。


 今度は量の検証だ。一本丸ごと必要なのかどうか。もしこれが半分で済むなら半分、三分の一で済むなら三分の一に割って与えることでより金銭的な効率を良くすることが出来る。


 半分だったら確定八十円。一時間に六十匹倒せば時給四千八百円だ。一日三万は手堅いな。二十四時間戦えるなら十一万五千二百円(税込み)になる。

 週四十時間労働でスライムと一年働けば九百九十八万円。今日までに俺が稼いだ額より多い。


 試しに、半分に割ったバニラ風味からだ。よーしよしよしよしよし今食べ物あげますからね~。


 スライムは半分のカロリーバーを美味しそうにほおばり始める。そして俺は熊手でササッと処理する。スライムはドロップを二個とも落とした。半分あればOKか。


 更に、三分の一にしたカロリーバーを食わせてみる。ふたたびモグモグしている最中に熊手で処理した。結果、ドロップは出なかった。五十パーセントぐらいが境目かな?内容量を見ると四十二グラムとなっている。


 う~ん、二十グラム以上あたりか? 境界線は。とりあえずメモっておく。さすがに完全に重さを測ってきっちり実験をすることはここではできない。


 とりあえず二分の一本、とだけ書き込んでおく。次、残った内三分の一のカロリーバーをスライムに食わせてみる。考えられた可能性として咀嚼した量、つまり体に取り込んだ量に対して変化するのか、スライムとして取り込まれた量に対して変化するかの違いである。


 さっきよりも長い時間咀嚼させて、全部消える前にスライムの核を刈り取る。が、ドロップは無し。


 どうやら、スライムが体内に取り込んだ量に対して判定が行われるようだ。


 食事中ならいつでもいい、という事まで検証できた。余ったカロリーバーは自分で食べた。やっぱりバニラだよな……


 保管庫には大量のカロリーバーの空袋がある。俺はこれをスライムに食わせてからドロップを判定したらどうなるのか、を検証しようと一瞬だけ思い立ったが、ゴミはゴミとしてちゃんと持ち帰って処分するべきだという常識のほうを優先した。


 さて、残ったスライム君たちには普通に相手してもらいましょうかね。俺は指をぽきぽきと鳴らしながらスライムたちににじり寄った。


『ステータスブースト』


 加速した俺の世界でスライムはほぼ動きを止めたように見えた。熊手を使うまでも無い。素手に持ち替えた俺は己の指でスライム達の核をつまみ上げると、そのまま指先で握りつぶす。スライムははらはらと黒い粒子になり舞い上がり、散っていく。それをひたすらに、ただひたすらに繰り返した。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 ざっと二百匹ぐらい処理したかな。時間を見るとそろそろお家へ帰る時間だ。保管庫の中ではまだ生暖かいカレーが俺を待っている。帰りにスーパーへ寄らなければいけないな。


 ここまでのドロップはスライムゼリーが百八十二個、魔結晶が七十個、そして有り難いことにヒールポーションが一本出た。良かった、今日は黒字で帰れるぞ。


 出口で退ダン手続きをし、査定カウンターで今日の分を提出する。


「またスライムばかりですね」

「まぁ、潜ったの午後からでしたし、深く潜るには時間的に……ねぇ」

「安村さんですし仕方ないですね。ちょっとお待ちください」


 スライム素材が多いとみんなの帰りが遅くなるそうだと前に聞いたな。今日はそんなに数を倒してはいないはずだぞ。まぁ、検証作業がメインだったという理由もあるが。


 レシートを受け取り、支払いカウンターで支払いを受け取る。二万ちょい。八千円の黒字だ。


 この二万円はもう使う先が決まっている。カロリーバー各味四十本と、バニラ風味をあるだけ買い占める作業を今のうちにしておかなければならない。


 三勢食品のこのカロリーバーは東海地方限定の特定スーパーにだけ商品を卸しているので、買い占めや箱買いにそうそう対応できる大きさの企業ではない。


 もしこのレポートの結果が広まれば他の探索者に買いあさられるのは目に見えている。なので全風味を今のうちに無理しない範囲でだけ買い占めておくのだ。


 もしかしたらこの情報は小西ダンジョン限定のものかもしれないが、それでも買い占めて清州で試すような人間はおそらく多いだろう。もし清州でも同じ現象が起きるならば全スーパーで欠品を起こすことは目に見えている。


 そうなったら俺がこのドロップ確定を利用できないだけではなく、俺のお気に入りのカロリーバーがしばらくの間手に入らなくなってしまう。俺はここの商品の風味が好きだからこの商品を利用しているのだ。このカロリーバーでないと力が出ない。よって、今直近のスーパーで買い占めを行う事は喫緊の課題なのだ。


 早速家に帰ると、家から一番近いスーパーに出かける。スーパーはまだ開いていた。早速カロリーバーのコーナーへ行くと、何と嬉しい事に特売で八十八円になっているではないか。

 これは買い占めねば。それぞれ三箱ずつカロリーバーをカートに入れると、バニラ風味をあるだけ買い占めた。バニラ風味だけ四百本ぐらいになったが、保管庫に入れておくので賞味期限もスペースも問題ないだろう。


 これでしばらく俺のダンジョンライフは保たれるな。安心した俺はついでに夕食の惣菜も買いそろえることにした。そういえば昼食も同じだったような? まぁいいか、ついでに次の日の朝食分も買っておこう。


 支払いは四万円を超えた。このスーパーでこんな高額の買い物したの初めてかも。当然ながら、買い物袋に入りきらなかったためカートのまま車まで運んで車に積み込んだふりをして保管庫に入れていく。当面の危機は去ったな。


作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
この話が表に出たら確実に趣味の検証勢かダンジョン研究者が詳細な成分を確定する そしてポーションドロップ確定の検証をし始めるのも確実 しばらく間はスライムはトレンドになりそうね
[一言] カロリーバーは経費で落ちるのだろうか… スライムに食わせましたで通るのか…秘密にするなら自分で食ったことにしないとw
[一言] 三勢食品と個人契約して、定期的に卸してもらうのでも良いかと。 ただし、探索者を本業にするならですがね。
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