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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第一章:四十代から入れるダンジョン

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77/1223

77:高額契約って手震えますよね

ユニークアクセス六十万人、PV数三百七十五万、誠にありがとうございます

 朝だ。今日は大事な取引がある。午前中は家でまったりしていよう。

 今日の朝食は豪華だ。ウルフ肉を焼肉のたれで焼き上げる。タレが飛んでコンロが大変なことになるが、これも美味い飯を食うためだ。必要経費として後できちんと掃除する。


 トーストをいつも通り準備し、焼肉を挟むだけの簡単だが朝から胃に来る料理で済ませる。

 昨日の帰りにスーパーでキャベツを一玉買っておいたので、いつも通りみじん切りにして肉にからめる。

 朝から肉は重たいだろうが、昨日から決めていたことだ。美味しくいただくことにしよう。


 さて、実食である。肉にあわせるために開発された焼肉のたれとウルフ肉。合わないわけはなく、濃厚なタレとウルフ肉のさっぱりさが上手くハーモニーを奏でている。


 あっという間に肉もトーストも無くなってしまった。米でも良かったかな。肉を食いつつ米をワシワシ食うのも俺は好みである。


 今日は大事な取引の日だ。通帳を準備し時間を見る。二時間ぐらいはボーっとしても大丈夫だろう。

 ネットを見る。主に六層以降の情報を集める。六、七、八層は五層と同じサバンナ型のマップらしい。ただ、七層にはセーフティエリアと呼ばれる安全地帯があり、そこにはなぜかすべてのモンスターが寄り付かないようだ。


 これもダンジョン二十四の不思議か。ダンジョン内で宿泊する場合そこを使うと良いと書かれている。

 どういう仕組みでセーフティエリアとなっているのかさっぱり解らない。周りにモンスターを寄せ付けないオブジェクトがあるとか、なんか儀式的な意味があるんだろうか。


 九層は打って変わってうっそうと茂る森が広がっているらしい。出てくるのはまず少数だがワイルドボアが出現する。森マップが起伏が激しく草が生い茂るため、発見が遅れやすい。


 ただしその分ワイルドボアも突進の威力が削がれるため、強敵にはなりにくいそうだ。


 それと巨大な蟻、通称ジャイアントアントだ。硬めの甲殻で覆われ、尻からギ酸を出してくるのと、強靭な顎で噛みついてくるのが主な攻撃手段らしい。昆虫が人類と同じ大きさになると人類は素手では勝てないって何かで読んだな。きっとそういうたぐいの物なんだろう。


 撃破パターンとしては、足の付け根を切り落として行き、体の節は殻に覆われていないためそこを狙うといいらしい。ドロップ品として魔結晶、鋭い牙を落とすようだ。


 また嵩張りそうなものをくれるようだが、鋭い牙なら武器に転用できそうだ。新しい候補として加えておこう。


 そういえば今日は午後の取引が終わったら一日暇だ。「鬼ころし」へ行って減ったパチンコ玉を補充しておかないとな。後は……文月さんも連れて行こう。新しい槍が欲しいかもって言ってたし、いいのがあるかもしれない。


 急に大金手に入ったからと爆買いに走らないように年長者として目を光らせておかないとな。


 さて、そろそろいい時間だ。出遅れるよりは早く出すぎてその辺で暇つぶしをしてるほうがマシだ。清州へ向かうとしますか。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 清州へ行く前に名古屋駅に着いたがまだ待ち合わせまで二時間ほどある。こいつぁ早く来すぎたな。

 と、レインが来た。

「早く来すぎた」あっちもか。

「今どこ、こっち名古屋駅」

「どの名古屋駅」

「とりあえず銀時計行く」お迎えに行くか。

 名古屋駅は複数ある。新宿駅出口が複数ある様に、名古屋駅も名鉄・近鉄・JRが二方向・さらに新幹線用の小さな出入り口と、複数あったはずだ。


 待ち合わせスポットとして有名な銀時計はJR名古屋駅太閤通り口にあたる。待ち合わせしまくるおかげで同じ場所にいても気づかなかったりするが、まぁそれは人が多い待ち合わせスポットなら似たようなものか。


「二時間はさすがに早すぎないか? 」


 どうやらこっちが先に見つけたらしく、声をかける。


「だって落ち着かなくて……あ、ツナギじゃない。なんか新鮮~」

「そりゃ、俺も私服ぐらいは持ってるぞ。普段着ないだけで」


 ダンジョンに潜る予定は無いのであくまで今日は取引のみ。清州の込み具合では潜っても稼ぎにならないしな。デニムのパンツにTシャツに薄手のジャケットを羽織っただけだ。

 ただ、久しぶりに袖を通したせいか、ダンジョン探索で身が引き締まったのか、前に着た時より少し余裕があるが。


 彼女のほうもダンジョンに潜りに来るようなパンツルックではなく、レトロスタイルのワンピースに黒タイツといった、軽い外出着みたいな感じの服装をしている。


 女性の服装はとりあえず褒めておこう。


「そっちこそ、普段見慣れない格好を目にすると新鮮だな。似合ってると思う」

「素直に受け取っておきましょう。で、どうします?二時間も」

「鬼ころしに行こうと思ったんだけど、場違いな服装になるな」

「まー、服装はおいといて私も鬼ころしに少々用事がありまして。奇遇ですね」

「そうだな、とりあえず何か胃に入れてから行きますか。空腹だと取引中に胃が痛くなるかもしれない」

「それもそうですねぇ。何食べます?」


 何でもいい、はNGワードだ。こちらから選択肢を提示して最終的に選ばせよう。


「肉は昨日食べたし、魚はどう。海鮮食堂みたいなところあったらそこがいいかもしれない」

「なら海鮮丼とかどうですか」

「いいね、そこにしよう。ゆっくり食事して清州について、まだ時間があったら鬼ころし、で」


 俺の記憶が古くなっていないことを祈りながら道を進むが、どうやらまだやっていたらしい。安心すると中に入る。

 ランチメニューがいろいろ並んでいたが、海鮮丼と決めた以上海鮮丼だ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 二人して満足すると、JRでそのまま清州へ。名鉄へ乗っても同じ方向だが若干位置がずれる。清州城へ行くときはJRに乗っていくほうが線路沿いを通過していくのでわかりやすいだろう。


 約束の時刻まであと三十分だ。さすがに今から鬼ころしへ向かうとあわただしいので、そのまま清州ダンジョンで時間が経つのを待つことにする。


「あぁ、どうしようまた動悸が」

「落ち着け。もうここまで来たら後は同じだ。ちゃんと通帳持ってきた? 」

「それは、昨日帰って、すぐに」

「なら、後は待つだけだ。落ち着いて待……あれ、ギルマスじゃないかな」

「そうみたいですね。結局みんな待ちきれなかったってことですか」


 ギルマスを見つけた。なんだか落ち着かないように見回している。ちゃんと来ているかどうか確認したかったのだろうか。


「ギルマス、こっちです」

「あぁよかった。思ったより早く来てくれて助かります」

「遅刻を気になされてたとか? 」

「それもありますが、取引相手が思ったより早く来ててですな。若干急かされていたのですよ」

「それは、まぁなんというか」


 十三時待ち合わせなので、少なくとも取引は十三時より後のはずだ。よっぽど待ちきれなかったのか、せっかちなのだろう。


「じゃぁ、取引もその分早く終わるってことで良いですかね」

「そういうことになります。お二人ともそれでよろしいですか」

「「構いません」」

「では、参りましょうか」


 三人揃って清州ダンジョンギルドの建物に入る。予約したという会議室に通されると、すでに人が待っていた。この人が取引相手らしい。


「お、来た来た。悪いねせかしちゃって」


 俺よりは年下……多分30前半ぐらいか、ダンジョン探索装備を体にまとった若者のようだ。


「いやぁ悪いね。一時間も前に取引って事になっちゃって」

「いえ、こちらも丁度時間を持て余してたらしくてですね。思ったより早く着いてくれましたよ」

「そりゃ何よりだ。じゃぁ、取引を始めようか。【火魔法】のスキルを見せてくれ」


 ギルマスがスキルオーブを取り出す。


 順番に、俺、文月さん、取引相手の順番にスキルオーブに触れ、本物かどうかを三者で確認した後、金銭のやり取りが行われる。その後、スキルオーブを使用するという流れである。


 更に別に立会人が一人いて、スキルオーブが公正に取引・使用されたかどうかを監視する役目だ。今回は立会人を清州のギルド職員が行う。


 取引相手がスキルオーブを確認した瞬間に使用し、オーブが無かったことにされる、という詐欺が過去に起きたため、ギルドの第三者視点として置かれることになったらしい。


 何にせよ、若干物々しい雰囲気ではある。

 俺がギルドオーブを調べる番になった。


「【火魔法】を習得しますか? Y/N 残り千三百五十八」

「間違いないです」


 続いて文月さんが手に取る。


「間違いないです」


 最後に取引相手が手に取る。


「間違いねえ、【火魔法】だ」

「では、振込手続きをお願いします」

「あいよ。……これでいいか」

「確認します……はい、結構です。では使用をお願いします」


 取引相手がスキルオーブを手に取ると、オーブが光り体内に沈み込んでいく。すると全身が発光し始めた。俺の時とおんなじだ。


「これで使えるようになったのかな。試しうちはダンジョンの中で、だよな?」

「えぇ、ここでやられると火災報知機とスプリンクラーが作動しますので」

「解った。じゃぁこれで商談は終了だ。おじさんたち、ありがとうな」


 取引相手は去っていった。


「【火魔法】って何に使えるんでしょうね」

「それは使ってみた本人しかわからないさ。追いかけて感想でも聞くか?」

「思ったのと違うから金返せって言われた場合困るので、このまま逃げたいと思います」


 確かに。一千万超払ってライター一つ分ぐらいの火しか出せないようなら詐欺も良いところだからな。


「賛成ですね。小西ギルドとしてもダンジョン税が取れなくなりますので」


 この人も思うところがあったようだ。


「では、続いて振込作業をお願いします。ダンジョン税を引いて残りを折半で指定された口座に振り込みますので」

「あ、はい、解りました」


 清州ダンジョンの職員に銀行口座を教える。これで四百九十五万円、振り込まれたはずだ。


「これでやっと一息吐けますね」


 ギルマスも肩の荷が下りたようだ。


「すいません、わざわざこの為にお呼びしてしまって」

「いいんですよどうせ暇……ゴホン、これも探索者への利益を守る事、立派な仕事です」

「は~、これで税込み五百万……五百万……」


 文月さんはまた自分の世界に旅立った。


「しかし、探索しながら一千万か……貯まるんだなぁそこまで」

「年収にすると千五百万超えてる事になりますね」


 あれ?ってことは俺も来年には買う側の人間になれるって事か?


「そのぐらい稼げる人にとっては一千万でも利益が出る宛てがあるって事か」

「なんにせよ、取引は終わりました。帰りましょうかみなさん」


 ギルマスが散会を提案する。三人で会議室を出ると、真っ直ぐギルド出入口まで着く。


「では、私は清州ダンジョンでダベってから帰りますので、お二人とはここまでですな」


 ついに隠さなくなったな。まぁいいけど。

 文月さんも現実に戻ってきた。よくあっちの世界に行く人だな。


「では、鬼ころしに向かいますか」

「そうするか」


取引は無事終わった。さて、使い道でも考えながら行くとしますかね……





作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
財布がゆるいのはお前じゃいっ
[一言] >急に大金手に入ったからと爆買いに走らないように年長者として目を光らせておかないとな。 何というおまいう案件()
[一言] 名古屋にうまいものはねぇと断固として譲らなかったタクシーの運ちゃんに会ったことがある ほんとのところどうなんですかね?
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