表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十一章:進歩する周囲

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

742/1384

742:一人でもいけるもん 1/3

 今日もいつも通り晴れやかな天気。気温は昼間は上昇するらしい。昨日までは寒かったのに今日はほんのり暖かいという妙なお天気だ。天気担当は一体何をしているのか。夏なら夏、秋なら秋、冬なら冬とハッキリしてほしい。


 ダーククロウにお礼を言った後朝食を取り、ワイシャツにアイロンをかけて保管庫に放り込んだ後で昼食のウルフ肉の生姜焼きを作る。本当は鍋とかスープ物のほうがいいのだが、そこまで気合を入れて作っているとダンジョンの開場時間に間に合わない。たれを作って肉を薄く切って漬けて揉んで、保管庫百倍速度で一分漬け置きして取り出して焼く。これでしっかり味の染みた生姜焼きが作れる。朝食のついでに刻んでおいたキャベツと絡めてタッパー容器に入れて、パックライスをレンジで熱して飯の準備は充分。


 今日は芽生さんが本業の日なので一人でダンジョンに潜る。いつも通り茂君二回とトレントでも良いのだが、今回の探索はちょっとした冒険をしてみようと思う。一人で三十六層を抜けて三十七層へ行き、スノーオウルの羽根を集めてくるというミッションだ。


 芽生さんには事前に了解を取り、三十六層が無事に抜けられたならヨシ、道中で引っかかるような事が有れば大人しくトレントでもシバいていなさいと半分許しが出ての行動である。今日の行程は実質、三十六層のダンジョンウィーゼル三匹やワイバーン二匹の地帯を問題なく抜けられるかどうかにかかっている。多分後先考えずに全力を出せばどうにかなる、つまり射出を効率よく使っていけば問題ないと思う。


 万能熊手二つ、ヨシ!

 直刀、ヨシ!

 柄、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 インナースーツ、ヨシ!

 ワイシャツ、ヨシ! 予備もヨシ!

 サスペンダー、ペチン……ヨシ!

 チョッキ、ヨシ!

 特注スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 冷えた水、コーラ、その他飲料、ヨシ!

 嗜好品、ナシ! コンビニで調達して朝の内にミルコに納品!

 枕、お泊まりセット、ヨシ!

 ドローン、ヨシ!

 バッテリー類、ヨシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。今日も忘れず指さし確認。これをやらないと一日を始めた気にならないような気がしてくるが、よくよく考えてみると時々忘れている。指さし確認、ヨシ!を項目に増やすべきか真面目に検討するべきか。指さし確認のための指さし確認……これは無限地獄に陥る奴だ、考えずにおこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 家の前のコンビニで嗜好品を買いあさる。今日はビールのつまみシリーズを色々納品してみよう。ポップコーンとか柿の種とかナッツ盛りとかベーコンチーズ味のとても香辛料の効いたプレッツェルとかいろいろ買い込み、お会計。そういえば、ミルコに納品している分はなんならダンジョン庁で持とうか? という話が出ていた。そう言う話が出来るということはダンジョン庁はそれなりに儲けているという認識で良いんだろうか。


 ダンジョンでの査定結果を毎日現金でもらっている訳ではないので、振り込みで済ませている分確実に預金は増えているのだが、その預金のやり取りがコンピュータ上ですべて行われているので、紙幣という実体を持ったものでそれを表現する場合、一体どれだけの資産がダンジョンという鉱山で産み出されているのだろう。考え始めるとキリがない話だが、母体が日の丸親方である以上、足りない分は紙幣の増刷で補っているんだろうな、という気はする。信用経済とかそういうものの積み重ねで成り立っているということか。


 誰も見ていないうちにバッグ経由で保管庫に放り込むといつも通り電車とバスで小西ダンジョンへ。いつもの電車とバスに揺られてちょっといい気持ちになっている。暖房が稼働し始めたからか、しっかり眠っているはずなのにうとうとしそうになるのはなんか暖房がそういう空気を発生させているに違いない。特にバスの暖房は温かさがモロに来る。


 停留所で人が乗り降りするたびにヒヤッとした空気が入り込んでくるのでそれで毎回リセットされるのだが、やはり乗り物の暖房というのは何か人が気持ちよくなるような成分が含まれているのだろう。若干眠気に襲われそうだったので立って吊革に掴まることにする。ダンジョン入る前から寝ぼけていたら探索にならないな。


 そして【小西ダンジョン前】のバス停でどやどやと人が下りていく。俺ももちろん下りる。バス停前のコンビニには、バスを下りてそのまま向かう探索者もいる。便利な所に建てたものだと思うが、よくここの土地が空いてたな、とも思う。


 この辺一帯の地主である小西さんが買収しきれなかったのか、それともダンジョンバブルを見越して良い感じの値段で手放したのかは解らないが、ともかくコンビニ一店舗あるだけで利便性は格段に上昇した。今まではバスに乗り換える出発駅にすら何もなかったので、道中での買い物をするなら電車に乗る前か駅構内の販売所を利用するぐらいしかなかったからな。あとは近所にスーパーとホームセンターと探索者向けの専門店が出来ればダンジョン周辺はダンジョン再開発地区として確固たる地位と名声を手にする事だろう。


 この辺に引っ越してきた探索者も居るんだから、そういう人たちが便利になるようになにかしらの商売を始めたりするにはちょうどいいかもしれないし、流石にそこまでの需要はないと見越しているのかは解らない。現段階で新たに何か建物を作ろうという動きはバス停を下りてすぐ目に見える範囲には無い。もしかしたらもう少し離れたところに出来上がるのかもしれない。続報を待とう。


 コンビニでいつもの探索専門誌を見つけて買うと、他の探索者に少し遅れてダンジョンへ向かう。入ダンの並びの列で結衣さん達と出会う事になった。どうやら彼女たちも今から入るらしい。結衣さんが駆け寄ってくるとギュッとハグ。そしてひたすらスーハーしている。最近結衣さんは俺成分を補充するのが日課というか、会うたびにそうしてくるので俺も結衣さん成分を味わう事にしている。


「おはようございます」


 散々鼻呼吸して匂いを嗅ぎまわった後で挨拶が始まった。普通逆だろ。


「おはよう、元気出た? 」

「出た。今日も頑張れそう。今日は一人? 」


 芽生さんが待っていないかどうか確認しつつ尋ねてくる。


「今日は一人。ちょっと素材集めに深い所へ行こうかなって」

「大丈夫? 無理しない? ご飯ちゃんと持った? 」


 結衣さんがオカンみたいな確認を取っている。ふと視線を外すと、他のメンバーがこちらをニヤニヤとしながら見つめている。見せもんじゃねーぞこら。金取るぞ金、五百円ぐらい。


「今日はまあお試しだから。うまく行かなかったら諦めて帰ってくるさ」

「本当に大丈夫? 今日あってこれが最後、とかない? 」

「大丈夫、任せて。今日は出し惜しみなしで色々やってくる感じにするから」

「じゃあ、ちょっと安心かも。でも十分気を付けてね、今日は芽生ちゃんいないんだから」


 芽生さんに関しては結衣さんも太鼓判を押すほど戦力として計上されているらしい。二人で深くまで潜ってるんだから戦力は純粋に半減している、と考えているんだろう。でも今日は久々に射出有りで戦うから同時に来られても何とかなると思う。


「じゃあ行ってくるよ。と言うか途中までは一緒だな。そっちは二十八層でしょ? 」

「じゃあ相乗りさせてもらおうかな。でもリヤカーは引いてくの? それによって窮屈かどうかが変わると思うんだけど」


 リヤカーが有ると一緒に乗る人数が制限されるからな。どうするか。悩んだ結果リヤカーは引いていくことになり、エレベーターで一緒に乗っていくことは難しいということになった。結衣さん的にはもうちょっと一緒に居たかったのかもしれないが仕方ない。これも仕事だ。


 入ダン手続きをしてリヤカーを引いてエレベーターまで進み、そこから先は結衣さん達に先にエレベーターに乗ってもらう事になった。


「じゃ、無理しないでね。帰ってきたら片手が無かったとかスーツがボロボロとかは勘弁してね」

「さすがにそこまではならないと思うよ。今のところスーツの調子は上々だし、飛びつかれる前に何とかするさ」


 エレベーターが閉まり、結衣さん達を見送ると再び現れるエレベーターにこちらも乗り込む。相変わらずエレベーターらしくないエレベーターだが、利便性の点で言えば非常に優れた乗り物ではあるので文句は言わないでおこう。目標は三十五層、角を嵌めこんで燃料を入れてボタンを押したら三十分ほどこの箱の中で過ごすことになる。


 暇つぶしの雑誌はさっき買った。これでも読んで待つか、とリヤカーに腰かけて読書を始める。清州ダンジョンのエレベーター設置の件について大きく誌面を取られているが、そもそもダンジョンに設置されたエレベーターの不思議な稼働方法という記事のほうが目を引いた。


 エレベーターと言いつつ箱の数は一つではなく、仕組み的には箱型のエスカレーターというほうが表現として近いであろうことや、なぜ行ったことのある階層しか訪れることが出来ないのか、十四層までの探索者と二十一層までの探索者がのった場合は、二十一層へ行くランプが見えてこない等、分解したり解析したりしないギリギリのラインで独自の調査を進めているらしい。確かにそのぐらいなら怒られは発生しないだろうな。


 清州ダンジョンにエレベーターが出来たことで、先にエレベーターが出来た有壁ダンジョンに比べて東京大阪方面からのアクセスが格段にいいので人口密度は爆増したがそのせいでモンスターが枯れてしまって全く探索にならなくなった結果元に戻った経緯なども記されている。やはりバブルというものは早々と消滅し、いつも通りの結果に落ち着いたらしい。だがエレベーターが出来たことで各探索者の移動手段は確実に向上し、査定カウンターは倍ぐらい忙しくなったとか。


 今まで二、三日かけて潜り込んでいた深層探索者が日帰りでドロップ品を持ち帰ってくる。しかもそれなりに多く。査定カウンターを増設するかまではまだ考えていないが、今の状況が今後も続く場合はその限りではない、というギルドの公式返答まで載っていた。


 後、取材ついでに小西ダンジョンにも来たらしい。ダンジョンにエレベーターが出来てからどのように地上の様子が変化したかや、あおりを受けて探索者もちょっとは増えたらしい事やギルド職員への聞き取り調査で今やっている営業時間を引き延ばしてもっと早く、またはもっと遅くまで営業する可能性があるかどうか等を取材している。


 小西ダンジョン側の回答としては、今の段階で営業時間を変更する予定は無いが、今後さらなる黒字化が見込める際は伸ばす可能性があることを明言していた。これはおそらくBランク探索者がどれぐらい稼いで帰ってきてくれるか、という言葉を暗に含んでいるんだろう。


 記事は変わって料理欄。最近はオーク肉を取りに行ける探索者も増えたということで、オーク肉のレシピも増え始めている。キャンプで釣りして食べるようなものだな。オーク肉の油も利用したアヒージョ風の料理なんかが紹介されている。オリーブオイルにオーク肉の油がしっかり溶け込んで腹持ちのいいどっしりとした食事に仕上がるらしい。俺の胃袋にはそろそろ辛いかもしれないな。が、美味そうなのでレシピにチェックをつけておく。その内作りたいな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
他人の目を気にしてないのが探索者なのかな パーティーメンバーの文月さんと仲良くやっていて側から見ても付き合ってるのでは?と言った状況なのにパーティーメンバーがいない日にいきなり抱き付く新浜さんと安村…
[良い点] 他のメンバーがこちらをニヤニヤとしながら見つめている → 見世物ですね〜♪ (*´∀`) [気になる点] 「じゃ、無理しないでね。帰ってきたら片手が無かったとかスーツがボロボロとかは勘弁し…
[一言] > ダンジョンの開場時間に間に合わない」 高速アイロン掛けしてたか > パックライスをレンジで熱して」 そのうち雷魔法で温めできるようになるおじさん > 時々忘れている」 そうなんだ …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ