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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十一章:進歩する周囲

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740:眠りやすい環境と質の良い睡眠

 昼食を存分に食べ、腹も満ちた。昼時は店員も食事をとりたいだろうから避けていくとして、その間にテントを立てた状態で保管庫に入れたり、机を組み立てたりした。後は現地で出すだけで済む。現地で組み立てるより家の中で組み立てて保管庫に放り込むほうがよほど楽だからな。


 一通りの作業が終わったところでもまだ昼過ぎというには時間が早いので少し横になる。昼寝という訳ではないが、今日はほぼ二十四時間かけて仕事をしてきたのだ。多少ゴロゴロしてても怒られる事はないだろう。


 ベッドに寝転ぶと本気で寝る可能性があるため床で寝転ぶことにした。その姿勢のまま考えるのは他の探索者の進捗についてや、ダンジョンの事だ。休憩中にまで仕事の事を考えているなんて仕事人間の鑑だな。


 結衣さん達は二十八層まで潜りこむ事は出来ている。追いつかれるのは時間の問題だろう。その間にこっちがどこまで深く潜れるかは解らないが、その前に色々調べておきたいものはある。


 二十七層までのスキルオーブドロップは大まかにだが判明している。しかし、二十九層のトレントや三十三層以降のワイバーンやダンジョンウィーゼル、スノーベアスノーオウル、そしてカニとリザードマン。これらがどういう方向性のスキルオーブをドロップするかは解っていない。


 先駆者としてはこの辺を調べておくのも必要だろう。今度高橋さんと出会った時にスキルオーブのドロップについて情報交換をしておくべきだろうな。もしかしたら俺の知らないスキルを体得している可能性だってある。もしかしたらこの先必要なスキルが埋もれているかもしれない。そう思うと何処かの階層に腰を落ち着けてスキルオーブが出るまで戦い続けるという選択肢は有りだ。


 後はそうだな。一層と七層を往復する為だけの魔結晶が枯渇しそうなのでダンジョンで交換してもらうなり、何らかの手段でお願いする必要が出て来るな。小寺さん達と出会った時に交渉すればよかった。二十層あたりを一人で潜って集めるのも手だが色々と細かいところでしなくちゃいけない物が溜まってきたな。金に物を言わせてというのはあまり好きじゃないが、エレベーターの前や査定カウンターのところで募集してみるか。


 流石にギルドに頼んで同重量の魔結晶と交換してもらう、というのは贔屓が過ぎる。上手い事……そうだな、田中君と組んで二十層探索、というのも悪くないな。計画として頭の中の予定表に加えておこう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 良い時間になったので布団の山本に電話をかけて、今から納品に行くと連絡をする。了解をもらえたので、早速ダーククロウの羽根十キログラムとスノーオウルの羽根二キログラムをエコバッグに詰め替え、早速車を出す。


 安全運転で三十分、予定通りに到着すると、早速荷物の運びだしが始まる。そして来る羊羹。十キロだと確定で羊羹が来るのは間違いないな。そして温かいお茶。最近寒くなってきたのでちょうどいい、体が温まる。スノーオウルの羽根の追加分は用意してはあるものの、まだ商談のテーブルには乗せないでおく。


 羽根の鑑定が終わりいつも通り二つの封筒を持ってきた店長と早速商談といこう。


「今回もありがとうございました。十キログラムありましたのでいつものようにこちらに」

「ありがとうございます。それで、調子のほうはどうですか、羽根は足りてますか」


 ダーククロウの羽根の売れ行きのほうを聞く。売れ行き好調ならこっちも取りに行くにも気合が入ろうというもの。


「おかげさまでボチボチと出て行っているところですね。本日の仕入れ分で予約待ちが全部解消できる程度ではありますが、何とかやりくりしております」

「それは何よりですね。取りに行く甲斐があるってものです」


 ふむ……ということはここでプラマイゼロということか。来週にはまた新しい予約が舞い込んでいる事だろう。もうしばらく茂君通いは続けるべきだな。


「ところで、以前お預かりさせていただいた別の素材の件なんですが、進展があったということを報告させていただきます」


 お、早速試作品が出来たのかな? 楽しみだな。


「はい、アレのほうの進捗はどうですか、何か面白い発見ですとか特徴とかが見つかりましたか」

「ざっくり申し上げますと、短時間で高効率な睡眠を得られる事が解りました。作成していた職人が試しに枕を作って眠って試してみた所、いつもよりも短い睡眠時間にもかかわらず体調のほうが改善されたとかで。普段は六時間ほど眠る日課を送っているらしいのですが、一時間半ほどで目が覚めても体調のほうに変化が無かったという報告を受けております」

「と、いうことは通常の睡眠に比べて時間的計算で四倍ほど質の良い眠りを提供してくれる、ということになりますか」

「現状十分なサンプルが得られている訳ではないのではっきりとは申し上げることが出来ませんが、少なくとも当店の従業員をあえて疲れさせてから試してみた所、皆同じように短時間の睡眠でも充分に眠ったという体感を得られているようです」


 予想していた効果だが大体わかった。ダーククロウは寝つき、寝起きを良くして、スノーオウルは短時間で高効率の睡眠を提供してくれる、ということか。


「両者住み分けが出来そうな感じですね。ちなみに枕一つに何グラムほど羽根を使用しましたか? 」

「原料換算で言うと四百グラムという所でしょうか。布団にすれば一キロからもう少し多めの羽根が必要になるとは思います」

「これはあくまで提案の一つなんですが、キャンプ用品を扱っている会社に伝手などがあれば、そちらと共同開発ということでシュラフを作ってみる、というのも有りかもしれませんよ」

「なるほど、探索者らしい着眼点ですね。仮眠が短時間で済むならその分仕事に当てられる時間も長くなる、ということですか」


 今後ダンジョンの途中で仮眠をとる可能性だってあるし、昨日ももしかしたら途中で疲れて休憩する事になっていたかもしれない。そう言う場合にお互いが短時間睡眠で疲れをとることが出来るならこれに越した事はない。


 宿泊の際は仮眠を四時間取るのをベースにしているが、これが一時間で済む。つまり三時間余分に働ける。その三時間で自分たちがいくら稼げるかを考えたら、これはもうサンプル品とはいえ現状で作ってもらうのがベストだろう。


「では、現状のサンプルとして枕を二つほど作ってもらっても良いですか。羽根の追加が必要でしたら、今日も二キログラムほど材料を積んできてあります。これは探索者にとってはマストアイテムになる可能性を秘めていますから、多少お値段のほうが高くても需要はあると思います」

「解りました。引き続き研究のほうを進めさせていただきます。羽根のほうはこちらでお預かりしてもよろしゅうございますか。何かの機会で他のメーカーさんとの打ち合わせ時に更にサンプルとしてお分けする事も出来ると思います。まずはいろんな業界にサンプルをばらまいてその特性を理解してもらう段階だと思っておりますので、サンプルは多いほど助かります」


 早速車へ戻り、スノーオウルの羽根を持ってきて店長に渡す。店長は笑顔で羽根を受け取った。


「ちなみに、ですがこのサンプル、今日までにお渡しした分でギルドの買い取り価格が、ベースがこのぐらいで、お渡しした量がこのぐらいなので、大体これぐらいかかってます」


 スマホの電卓をたたき、渡したサンプルの見込み原価を耳打ちしておく。


「お渡しした分はそちらで研究開発を行ってもらってる分の投資ということで問題ないのですが、商品化する際には一度ご相談くださると助かります。元値が高いものを最初だからと安く卸してしまっては、多分お店へのダメージもあると思いますので」

「えぇ、これそんなに高いんですか……」


 どうやらスノーオウルの羽根の値段がダーククロウに比べて格段に高いということを今理解したらしく、目が点になっている。渡した量は今日までに四キログラム、総額時価二百万円である。四百グラム使ったということは、サンプルで従業員が使いまわした枕に二十万円かかっているということになる。それに気づいて驚いたという所だろう。


「しかし、これだけの費用を投資してもリターンが得られると考えていらっしゃるのですね」

「一回使い捨て、という訳ではないですからね。例えば百回使ったとして、一回使うたびに二万円分余分に稼ぐことが出来るならそれでペイ出来ちゃうことになりますから」

「なるほど……そういう考え方が出来ますか。探索者ならでは、というよりこれ、もしかして値段の割りにはかなりのヒット商品になるのでは? 」

「一時間にウン十万と稼ぐ人にとっては短時間で眠れて効果がある分更に働けるような研究職や重役にも需要はあるかもしれません。なかなか面白い商品だと思いますよ」


 実際探索者でなくとも、自分の手足で稼いでいる高給取りで二十四時間働くような職業の人なら快眠を提供できるグッズには需要が一定数ある。これをこの布団の山本でこれから開発していくとなれば爆発的ヒットになる可能性だってある。


 そもそも睡眠に悩む人間は少なくない。ダーククロウの布団で入眠起床して、枕の効果で短時間で質の良い眠りを提供する、という欲張りバリューセットだって選択できるのだ。これはもしかすると相当売れるぞ。大きなシノギの匂いがする。


「中々楽しみな話になって参りましたね。そうなるとかなり高額でも会社に一つ、とか福利厚生品として支給されるという需要もあるかもしれません。持ち込んでいただく素材の量にもよりますが、まずはサンプルとしてお願いされました二つに加えて展示用を作りまして、そこから徐々に需要を開拓していくという形にはなると思います。値段設定とどのぐらいの長さでその効果が続くのか等、確かめることも色々ありますね。まだしばらくは試行錯誤が続くと思いますが、サンプルのほうは早めにお手元に届くようにしようと思います」

「良いサンプルを作ってもらえばその分経験になるでしょうから、気長に待ちますよ。今すぐほしいという訳でもありませんから」

「そう言っていただけるとよりやる気が出ますね。頑張らさせていただきます」


 そう言って山本店長が頭を下げて来た。発想と着眼点が繋がって商売のタネの先行きが見え始めて来た、という所だろうか。何にせよせっかく手に入れた羽根を有効活用できるのは良い事だ。


「しかし、このサンプルの羽根ですが、こちらの業界のほうで話を集めてみた所見かけたという例が無いようでして。一体これはどのくらい収拾難易度の高いものなのでしょうか? 」

「まぁ、現状ですとそれなりに難しいというより、ほぼ不可能、という表現のほうが正しいと思います。なのであまり大声で素材について叫ぶと思わぬところから横やりが入るかもしれません。なるべく耳を大きく口を小さくしておくのが良いと思いますね」

「左様ですか。では出来るだけ口のほうは開かないように努めましょう」


 それだけ言うと店長もお茶に手を付け、静かに飲む。今のところ話す内容はこのぐらいだろうか。


「とりあえずサンプルのほうが出来上がったらいつも通りスマホのほうに連絡をください。出来るだけ早く取りに来るよう計らいます」

「解りました。では、しばしの間お待ちくださいませ。良いものを作って見せます」

「では、私は探索の準備が色々とありますのでこの辺で失礼されていただきます」

「かしこまりました。またの来店をお待ち申し上げております」


 布団の山本を出て家路につく。しかし、睡眠時間を短時間化できる効果か。普段用には使えないな。睡眠をとって体が万全頭が万全になったとして、仮に眠ったという確かな満足があったとしても俺はダーククロウの布団と枕を使用するだろう。


 睡眠という行為には時間そのものが大切だ。ただの休憩と割り切れる人にはかなりのスペックを誇る品物だろうが、時間を使って眠る、という行為に気持ちよさを感じる俺にとってはダンジョンでの仮眠時間短縮以外にはあまり魅かれないという所だろう。


 使ってみて芽生さんと詰めてみる必要もあるが、ダンジョンで使って普段使いにはしない、ということで保管庫に放り込んでおく選択肢は有りだろう。そう思ったので布団の山本ではサンプルをくれと言っておいた。とりあえず使ってみてその味わいとデメリットなんかをきっちり調査する必要があるだろうな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
ダーククロウ寝具+スノーオウル枕で短時間で睡眠を取り、小休止の代わりに干しトレントの実をかじる。 高級社畜の完成だw
[一言] 1日4時間活動時間が増えるということはだ 1年で1460時間もの寿命が増えてるに等しい こうかくとヤバさが認識しやすいよね
[一言] 航空会社とコラボして、 ファーストクラス限定の枕のサービスもいいかもね!
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