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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第一章:四十代から入れるダンジョン

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72/1243

72:はじめてのごそう

三百三十万PV、ユニーク五十万人ありがとうございます。

 

 五層についた。階段を下りた先は巨大な岩で、岩の中を歩くように階段を下りてきたようだ。大岩がちょこんと存在する。不思議な岩だ。大きさは六メートル四方ぐらいあるだろうか。その岩の中に階段が埋まっている。そしてそこに階段が通じていた。天井がなくなり一面の青空が広がる。

「変な天井だよなぁ。ちょっと試してみるか」


 俺は保管庫からゴブリンソードを抜き身にするとある程度の速さで射出する。

 剣はほどなくして何かにぶつかったような感じで突然止まり、俺の目の前にドスッと落ちてくる。


「うおおおおあぶねえええええ」

「なにやってるんですか。手の込んだ自殺ですか」

「試しに思い切り上へ向かって投げたらどうなるかとおもって」

「どうなったんですか?」

「何かにぶつかって落ちてきた。天井が無いように見えて、一定以上の高さへは行けないようになっているみたいだな」


 見渡す限りの青空……と思ったら鳥が飛んでいる。


「鳥が飛んでる。アレがモンスターなの?」

「ダーククロウってモンスターですね。急降下してくちばしや爪での攻撃、後フンを落としてくる」

「フンを浴びるとなんか効果あるの?」

「ストレスがマッハ」


 なるほど、確かに。


「倒す方法……パチンコ玉で落ちるかな。それとも剣を投げてみるか」

「当たるまでやってみます?出費のほうが大きそうですけど」

「ああいう倒し難そうなのが貴重なアイテムドロップしたり……ってのがゲームやアニメの法則だけど」

「ドロップの羽毛を枕にするとよく眠れるらしいですよ」

「睡眠導入剤代わりか。需要はありそうだけど無理して狙うものでも無さそうだ、どうする? 」

「基本無視しましょう無視。近くに来たら爆撃を察知して避けるんです」

「首が痛くなりそうだ。近寄ってきた奴だけ狙う事にしよ」

「そうしますか」


 見渡す限りの平原と言いたいところだが、所々背の低めの草が生えていて完全に向こうが見渡せるという場所ではない。

 足元にわずかに生える草を千切ろうとしてみる。千切れた。


「あれ、ダンジョンオブジェクトって破壊不可能なんじゃ」

「持ち帰れるダンジョンオブジェクトもあるんですね」

「じゃぁ、この草根元から……抜けないぞ」

「根元はダンジョンオブジェクトとして認識されてるみたいですね」


 基準が解らぬ。多分上のほうの草だけ持って帰ることは出来るんだろうが、根から引っこ抜くことは不可能という設定なんだろう。そうする理由は……あれか。


「……収穫はできるけど、株の持ち出しはできない? 」

「えっと、話が見えないのですが」

「たとえばそうだな、リンゴの木が生えてたとするだろ? 」

「あぁ、果実は収穫できても木ごと持って帰ることは出来ないと」

「多分そう、ダンジョン産の農作物があったら、の話だけど」


 ダンジョン産の農作物が実る場所か。さぞ壮観な景色なんだろう。茶畑とかミカン畑みたいなものが頭をよぎる。


「もっとも、サバンナにそんなもんあるとは思え……今あの草むら動いたか? 」

「あ、おいでなすったかもしれませんね」

「モンスターか」

「五層名物ワイルドボアです。突進と噛みつきで攻撃してきます」


 草むらからイノシシにしてはちょっと大きめかな?とおもえるぐらいのものが現れる。牙が短いからメスかな。おっと、目が合ったぞ。


「来ますよ。どうします? 」

「とりあえず……投げてみる」


 パチンコ玉発射!イノシシに命中。お、効いてるな。ワイルドボアはスピードを落としてこっちへ向かってくる。どうやらパチンコ玉で十分ダメージになるらしい。


 そのまま二、三発目を当ててみる。その中の一発をまともに眉間に食らったイノシシはよろけてその場で黒い粒子に変わった。当たり所が良ければかなり効果ありか。


 と、違う方向から足音が聞こえた。そっちを見ると、そちらからもワイルドボアがこちらに走りこんでくる。こっちを先に処理するべきか。


「体当たりまともに食らったら吹き飛ばされますよ! 」

「大丈夫、原付にひかれたことはある! 」

「説得力が有るようで無い! 」


 ここはステータスブーストで取っ組み合いだ。あいつも牙が短い、きっとメスだろう。

 力対力でワイルドボアと正面からぶつかり合う。姿勢を十分低くし、地面と体を一体化させるような姿勢でがっぷりとワイルドボアとぶつかり合う。


 ズシン、と重さが腰に響くが、思ったほどの衝撃じゃない。これならイケるぜ……そのままワイルドボアを持ち上げると、パワーボムを食らわせる。


 立ち上がろうとするイノシシだが、脳が揺れているのかフラフラだ。その間に背中に一筋、尻尾まで剣を這わせ、肉を斬る。まず一匹。


 先にパチンコ玉を食らわせたワイルドボアは文月さんがドロップを拾ってくれていたようだ。


 後には魔結晶と……肉だ! これは幸先がいいぞ。


「相変わらず無茶な戦闘力の測り方しますね。怪我したらどうすんですか」

「そのためのポーションだろ? それに相手の力は大体わかった。後は倒すためのパターン作りが大事だな」

「はぁ……もういいや、いつか本当に怪我しますからね、知りませんからね」

「で、これが極上のチャーシューの素か」

「見るからに脂がのってますね」


 相変わらず真空パックであることにはもうお互い突っ込まない。そういうことなんだな、という同意がダンジョンと俺たちの間に勝手に結ばれている。


「パックの量がウルフより多い気がする」

「何グラムあるんでしょう?」

「これって一個単位で重さ決まってるのかな」

「数グラムの誤差はあるかもしれませんが、買い取りはパック単位ですからね」

「まぁ重いってことはウルフ以上にはあるってことだ。お値段もそれなりだろう」

「ラーメン屋でボア肉のチャーシュー切らしたら、暴動が起きそうになったってニュースありましたよね」

「それ俺も読んだ。中毒性があるのかもしれない」

「だったら流通できないと思うんですが」


 さて、次の獲物を探そう……と、広すぎてどこにいるかすらも見えないな。

 上空は……降りてくる気配はなさそうだ。試しに挑発してみるか。


「ちょっとあのダーククロウを釣ってみる」


 パチンコ玉を上空をゆっくり飛んでいるカラスに向けて打ち込む。うまく当たったのか、カラスはそのまま急降下して落ちてきた。


「あれ?ヘイト取るだけのつもりだったのに、耐久力はほぼ無しと見ていいのかな」

「言っときますけど、それショットガンでバードショット打ち込むより凶悪ですからね」

「そうなの?」

「ショットガンの初速って四百メートル毎秒なんですよ。で、安村さんのそれ、音速一歩手前ぐらいの速度ですよね。そんな速度でスラッグ弾と同じ質量が飛んで来たら、普通どんな鳥も落ちます」

「そっかー、ってことはこれ拳銃と同じかそれ以上の威力あるんか」

「至近距離で打たれたら人体も貫通すると思います」

「詳しいね」

「褒めても愚痴しか出ませんよ」


 ダーククロウは何も落とさずそのまま消滅した。


「バードショット用に小粒弾丸をたくさん用意してばらまくのもありか。また保管庫の在庫が増えるな」

「五、六、八層ぐらいでは有用なんじゃないですかね」

「またホームセンターで鉄球買い込んでおくか」


 上空の敵がそれほど敵じゃないことを確認できた。くちばしで突っつかれたり頭の上でバサバサされるのは気を散らされて迷惑だろうが、こっちの攻撃がどこかに当たれば倒せる、というのはある意味スライムよりも楽かもしれない。俺の場合スライムのほうが圧倒的に楽だが。数居るし。


 階段の生えている岩を見失わない程度に歩き回る。下草のある所をサクサクと歩きながら、ワイルドボアが潜んでいないかどうかを確認する。


 もしかして、エンカウント率は思ったより低いのだろうか。だとしたらゴブリンほどおいしくないかもしれないな。


 そう考えていると遠くから足音が聞こえてくる。これは一匹じゃないな。振り返ると、後ろから三頭ほどワイルドボアが走りこんでくるのが見えた。


「後ろ三頭、一匹はやり過ごそう」

「了解。今度は受け止めないでくださいね」

「毎回受け止めてたら手、痛いし」


 二人の間に少し距離を取る。ワイルドボアも一対二に分かれる。こっちに二だ。レディファーストがちゃんとわかってる紳士なウリ坊さんだ。今度のは牙が大きい。アレに刺さったらさすがに痛そうなので、相手が来るギリギリまでその場に踏みとどまって、横跳びして回避する。


 すると、ワイルドボアも俺に追随する形で曲がって向かってきたではないか。やべ、このままぶつかられる。とっさにその場で前に向けてジャンプ。ワイルドボアを跳び越す形になった。


 そのまま走り抜けると振り向いて迎撃態勢を取る。ワイルドボアも自分の勢いを殺すのが上手いのか、もう一度こっちへ走りこもうと駆けこんでいた。今度はすれ違いざまに一発当てるか。


 グラディウスを握りしめ相手の頭の高さスレスレにジャンプすると、背中を両断する形でワイルドボアとすれ違う。すれ違って飛び降りた先にちょうどもう一体のワイルドボアが駆け込んでくる形になった。二段ジャンプ……はさすがにできないか。これはちょっと危ないかも。


 足首をくじく覚悟で着地するとそのままもう一回ジャンプする。飛び上がった俺を一瞬見上げるワイルドボア。攻撃チャンスが生まれた。地面に着地すると同時にワイルドボアの頭部にグラディウスの切っ先を向けるとそのまま横に斬る。そして構えなおすと、一気に目に向けて突き刺す。


 グラディウスの剣先が脳まで達したのか、ワイルドボアはそのまま消滅した。もう一匹のほうを見てみるともういなかった。さっきのが止めになりえたらしい。


 文月さんは若干苦戦している。タイミングがうまくつかめない様で、攻撃するチャンスをお互いが狙いあってるようだ。


 パチンコ玉を一発飛ばしてワイルドボアの胴体に当てる。


 ワイルドボアの速度が落ち意識が一気にこちらに向く。そのスキを突いたのか前に駆け出すと槍を勢いよく相手の胴に差し込んだ。貫通こそしなかったものの、内臓まで達した攻撃はワイルドボアを沈黙させるに十分なダメージだったんだろう。ワイルドボアは消滅した。


 今回は魔結晶一個と肉一個だった。


「結構ドロップするな」

「助かりました。肉はドロップ率高いみたいですよ」

「しかし、これだけ重さがあると普通の探索者は持ち帰るのも一苦労だな」

「普通じゃない探索者にとっては重さはあってないもんですからね」

「保管庫様様だな。普通なら四層でソードゴブリン狩ってる段階で持ち物が一杯になりそうなもんだが」

「使えるものは使えるうちに使いましょう。お水頂戴。あと粉ジュースも」

「はいはい」


 ここで小休止だ。まだまだ戦えるが、ちょっと手の空いた時にこそ休憩は大事だ。うっかり連戦になって疲労困憊になる事だってある。


 文月さんは紙コップに二種類適当に粉を入れた後水を注いで味わっている。


「ここはドリンクバーじゃないんだけどな」

「まぁまぁ、大事なのは疲労回復なんでそのためには多少の魔改造ドリンクも必要だって」


 俺もコーラ味を飲もうとする。ふと思い立って、量が減っているペットボトルの水から直接流しこもうと試みる。


 指先から出る水。これは本格的にマジシャンを目指すのもありだな。


「なにそれ、保管庫から直接水だけ出してるの?」

「やってみようと思ったらできた。これでやると多分、水の一滴も残らずペットボトルから絞り出せる」

「それに何の意味が?」

「イメージトレーニングと……ゴミの圧縮かな」


 ペットボトルを空にしても結局洗ってペットボトルゴミとして出さなきゃいけないので、水のペットボトルでは無意味だが、これがコーラや他の飲料だと洗ってから出さないといけない。この技で、今後洗う手間が省けるな。


「直接触ってたりしない?」

「よく見ると指から少し離れたところから出てる」

「ほんとだ。魔法みたい」

「そういえば魔法のスキルオーブもあるんだったな」

「見たことないし、魔法っていまいちイメージつかめないけどね。覚えたらイメージが流れ込んできたりするのかな。保管庫取った時はどうだったの」

「保管庫って名前なんだから何か収納できるんだろうという漠然としたイメージはあったような気がする。で、適当に部屋にあった物を出し入れしてた」


 水を飲み、固形物を腹に入れ、休憩しながらも周りへの気配りは忘れない。特に音だ。ワイルドボアが突っ込んでくるときは足音が聞こえる。その足音さえ気を配れば今のところは大丈夫なはずだった。


「わっ、なにこれ、最悪~」


 文月さんが爆撃を食らったらしい。爆撃したダーククロウはあざ笑うかのように再び上空へ舞い上がる。

 とりあえずパチンコ玉で迎撃をする。当たった。落ちた。


 タオルを取り出すと水で濡らし、文月さんに渡す。


「運が付いたね」

「そんな運要らないよ」


 後ろを向く。女性が身だしなみを整えているのにガン見するのはマナー違反だ。


「もういいよ、ありがとう」


 タオルを渡されるのでそのまま保管庫に入れる。


 タオル(水濡れ・フン濡れ) x一


 ……


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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ばっちいぜー
[一言] 72:はじめてのごそう 護送じゃなくてごちそう(ご馳走)ですよね
[気になる点] どうでもいい考察はよくするけど保管庫の検証足らなくない?ハイスペックなのに宝の持ち腐れ
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