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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十章 ギルド外でもお仕事はする

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690/1249

690:ご到着

 今日も気持ちのいい目覚めだが、少し肌寒い布団から出る。睡眠はバッチリとれたのでダーククロウありがとう。夕べはしっかりと煮込んだオーク肉と大根の煮物。寝る前に上下ひっくり返して一晩冷蔵庫で放置したおかげで、良い感じに味沁みになっているはずだ。朝食ついでにちょっと味見もしておこう。


 いつものゴキゲンな朝食に加えて、温めなおした大根とオーク肉を一つまみずつ。大根はしっかりと形を残したまま箸が通り、オーク肉は簡単に箸でほぐれる。理想的な煮物が出来上がった。ここに彩りとして人参やスナップエンドウなどを加えても良かったな。次回に活かそう。


 味のほうはしっかり沁みている。これは汁だけでもご飯が進むやつだ。今日の昼食は期待できるぞ。しっかりと温めた煮物をタッパー容器に移し、パックライスも温め保管庫にイン。冷えたコーラと水分の用意も出来た。熱い煮物と冷たい飲料で腹を冷やさないように、常温の緑茶もそろえてある。これも保管庫のおかげだ。体を動かしてる間に中身が偏ったり、パックライスが冷めないのも、温かいままの煮物をそのまま口に出来るのも。今できる最大限の感謝をしておこう。


 さて、今日は出勤日だ。一日かけて二十九層をうろうろして、トレントの実を……あ、しまった。昨日取ってきた分をドライフルーツにするのを忘れていた。これは今すぐスライスしてドライフルーツにして、ダンジョンで活動をしている間にドライフルーツ化するのが問題が少なくて済むな。ダンジョン入場が少し遅れるかもしれないが、ドライフルーツ作りはしばらく続けなければいけない作業だ。面倒くさがらず、昨日の分は昨日の分、今日の分は今日の分としてちゃんと手入れをしておこう。


 手早くスライサーでガシガシとトレントの実をスライスし、皿に並べて保管庫にしまい込んでいく。ちょうど家に帰るころには良い感じに出来上がっていてくれる事だろう。


 一時間ほどかけてドライフルーツの仕込みを済ませると、いつもより三十分遅れぐらいになってしまった。まあこのぐらい誤差だろう。最悪バスを待たずに自転車でダンジョンにたどり着くこともできる。落ち着いて行動をしていこう。


 万能熊手二つ、ヨシ!

 直刀、ヨシ!

 柄、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 インナースーツ、ヨシ!

 ツナギ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 冷えた水、コーラ、その他飲料、ヨシ!

 嗜好品、今日はナシ!

 枕、お泊まりセット、ヨシ!

 ドローン、ヨシ!

 バッテリー類、ヨシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。今日もいつも通りの装備をチェック。ルーティンは完璧だ。今日もザクザクとモンスターを狩りに行こう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 ダンジョンにたどり着くと、いつも通り冷たい水を飲んで爽やかな気分になった後で入ダン手続きに入る。列に並んでいると、見慣れたマッチョを見かける事になった。向こうもこっちに気づくと、軽く会釈してくれた。チームTWYSの小西ダンジョンご到着である。


 お互い入ダン手続きを済ませた後、俺はリヤカーを引いて合流してエレベーターへ向かう。


「お久しぶりです安村さん。ご壮健そうで何よりです」

「そちらも、無事お勤めが済んだようで」

「耳が早いですね。そういうわけで今日から小西ダンジョン付きとなります。先輩、ここは一つよろしくお願いします」


 真面目な顔でではなく、にこやかに語りかけて来た。これはあれだな、真面目な意味ではなく軽口でということだろう。


「高橋さん達ならすぐに追いついてきますよ。こっちはようやくゆっくり探索に戻れそうですね」

「おや、安村さんは先陣を切ることにあまり興味がおありではない様ですね」


 エレベーターにたどり着き、角を高橋さん達が嵌めるが、魔結晶はこっちで入れる。


「狭くてすいませんね。今だけちょっと隠しておきますか」


 保管庫にリヤカーを放り込む。これでマッチョが四人居てもお互い窮屈しないスペースが出来た。


「十五層までですよね。俺は七層でちょっと寄り道をしていくので燃料費の余りは引っ越し祝いということで」

「ゴチになります。で、どうでしたか最深層は」

「一から鍛えなおすことになりそうで難儀ですね。ワイバーン三体を相手にしてるほうがまだマシな気がしてきました」

「そこまでのモンスターが出てきますか。これは三十七層から先は遠そうですね」

「かなり難敵というか相性が悪いのかもしれませんね。出てくるモンスターの情報、聞きます? 」


 事前情報が必要かどうか、判断は向こうに委ねる、といった具合だ。


「そうですね……今日明日で挑むわけでは無いですし、まだいいかなとは思ってはいますが」

「あ、ちなみに聞いていいものか解りませんが、D部隊で活動する間のドロップ品はどういう処理になっていたんですか? 査定とかその辺」

「査定はギルドとは別枠で行ってましたね。一応人事査定に響く形にはなるらしいのですが、各自ドロップ品として確保してきたものをギルド内にあるダンジョン庁の倉庫に保管して、その後は事務方の仕事なので詳しくは解りませんが、一般流通とは切り離されていたのではないかなと思います。新規層に潜った場合のドロップ品はダンジョン庁に納品して、そのドロップ品にいくらぐらいの価値が有るかを判断してもらうような形になっていると記憶してます」


 なるほど……三十三層以降のドロップ品の報告が無いのはそのあたりが理由か。


「今のうちに言っておきますが、一般人に紛れて探索をするって事は、査定の時も査定カウンターに並ぶことになります。実は今、三十三層以降のドロップ品はまだ査定買い取りの対象物じゃないんですよ」

「ということは、取って持って帰ってきても受け取り拒否の形になるって事ですか」

「えぇ、そうなります。おかげで保管庫の中にはまだ査定できずに換金できてない品物がそれなりに溜まってるんです。足踏みして留まるなら二十八層までで押しとどめておくのが良いと思います」

「なるほど、ご忠告素直に聞いておきます」


 ここでエレベーターが七層に到着する。


「それじゃ、俺はここで。ダーククロウの羽根が待ってますからひとっ走り行ってきます」

「お気をつけて。我々は今日中に二十一層まで目指そうかと。地図もある事ですし、迷子にでもならない限りは問題ないと考えていますので、その次は何時かは解りませんがまた今度お会いしましょう」


 エレベーターの境目でこっそりとリヤカーを出してチームTWYSと別れ、その場にリヤカーを放置しておくと、一回茂君をしに行く。戻った後エレベーターで再び二十八層へ行く。


 いつも通りエレベーター前にリヤカーを放置すると、食事前の一運動と称してまず階段周りのトレントからトレントの実をもぎ取りに行く。二十九層に下りたが、どうやら伐採した木はリポップしていなかった。結構時間がかかるみたいだな。それともミルコが手動で復活させてるんだろうか。どちらにせよ、動きやすい今のうちに丸見えのトレントめがけて柄をふるい、思う存分トレントを倒し続ける。


 トレントも蔓を伸ばして応戦してくるが、雷切に当たった時点で切断されるためこっちに有効打は来ない。やはり倒しやすく数がそこそこ居るトレントは運動相手として申し分ない、楽に倒せてそこそこ儲かるモンスターとしての地位を築いていてくれている。


 一時間ほどトレント相手にばっさりやっている間に、トレントの実を十個ほど手に入れた。このぐらいで良いだろう。昼食を食べに二十八層に一旦戻る。机と椅子を出し、その上に昼食セットをポン。さぁ、お待ちかねの大根とオーク肉煮を食べよう。


 朝温めてから更に数分味が染み込んでいる大根は芯が残ることも無く、しっかり煮込んだおかげで味も染み込んでいる。オーク肉も問題ない。味沁みに加えて肉本来の味も損なってない。だが、もっと美味く出来たとは思う。まだまだ及第点だな。それでも米は進む。今日は肉・大根・米の三種類という非常にシンプルな昼食だが、それでも腹を満たすには十分な量がある。次回は何を作ろうか……またしばらく雑誌を読み込んでレシピの幅を広げていこう。次はボア肉で何か一品作りたいな。


 それなりに満足した食事を済ませ、腹がおちつくまでまた雑誌を読む。特集記事ではないが、スキルオーブの出現は本当にランダムなのか、という話が出てきている。


 最近巷に出てきているスキルオーブの出現間隔とドロップ率について、ちゃんとした統計として扱われているものは無い。ただ、集合知の結果としてこのぐらいではないか、という数値は出てきている。それに対して、もっと盛大に何処かのダンジョンを拠点にしてそれぞれのパーティーが倒した数をカウントして行き、出た段階でのドロップ率、その後継続的に観察する事ではっきりとしたドロップ間隔、スキルオーブの種類などを計測する方法はないのか、という話である。


 これは多分大学の研究とかフィールドワークなんかでやるべき課題なんだろうな、という感想だ。ちょうど新しいダンジョンが見つかったのだから、そこをモデルケースとしてはっきりとした計測を開始することが出来る環境が整っている。ダンジョン攻略サークルなり、新しくダンジョン学部を創設したりして、きっちり情報を蓄積していくのは大事だろうな。俺自身ハッキリした確率で何がどの階層で落ちるか、というものを把握している訳ではない。


 ただ、体感上の積み重ねとふとした思い付きで口走ってその結果が出たものが、知らない間に外部漏洩して検証した結果、今のところ最も現実に近い話になっているのではないかという結果に過ぎない。こうして俺が考え事をしている間にも探索者達は試行錯誤を積み重ねてスキルオーブで一発当てるなり、覚えて鍛えて更にダンジョン探索に活かす、という形で頑張っているはずなのだ。


 もっと賢い人ならそれをより皆が納得できる形でまとめることが出来るだろう。それを待つぐらいしかない、というのが〆の結論だったが、結局のところとにかく数をこなす、というのが一番正解に近いのではないだろうか。その意味では、そろそろトレント君も何かくれてもいい段階に入っているのではないか。


 何をくれるかどうかは解らない。擬態とか隠密とかそういうスキルがあったりするのだろうか。ケルピーが【水魔法】のスキルオーブをくれたのは何というかスタンダードなイメージが有るが、トレントからイメージされるスキルオーブは何だろう。俺の知らないスキルとか思いつかないスキルが何かあるはずだ。出た時に考えるか。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 689話以降の書籍化作業量 [一言] > スナップエンドウ」 絹さや派 > 熱い煮物と冷たい飲料で腹を冷やさないように」 「熱い」二度見 > 今すぐスライス」 そうかな > 自転…
[一言] なぜだろう安村さんにはトレントからの光合成とかに会うんじゃないかと思ってしまった
[一言] 今のペースだと査定待ちの物だけでかなりの量が今後も貯まっていきますもんねー 保管庫のお陰で場所を取りませんがそうじゃなかったら査定できる層に戻る必要もあったかもなー
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